答申第1号

掲載日:2017年12月1日

答申第1号

 答申第1号

 

                     昭和58年9月17日

 

 神奈川県知事 長洲 一二 殿

 

                   神奈川県公文書公開審査会

                   会長 原 寿雄

 

 

公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 

 

 昭和58年5月21日付けで諮問された逗子市内マンシヨン建築

確認申請書等一部非公開の件について、次のとおり答申します。

 

 

 

 

1 審査会の結論

(1) 審議カードは、別紙1に指定する部分を除いて、公開すべきであ

 る。

(2) 平面図、立面図、断面図、伏図、構造詳細図(計算書)及び室内

 仕上表を非公開としたことは、妥当である。

 

2 異議申立人の主張要旨

(1) 異議申立ての趣旨

  異議申立ての趣旨は、逗子市内マンシヨン建築確認申請書等のう

 ち、審議カード、平面図、立面図、断面図、伏図、構造詳細図(計

 算書)及び室内仕上表を神奈川県知事が昭和58年4月14日付け

 で非公開とした処分の取消しを求める、というものである。

(2) 異議申立ての理由

  異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「間取り等が明

 らかになり、プライバシー、防犯上問題がある。特技を持つ設計者

 の不利益につながるため」神奈川県の機関の公文書の公開に関する

 条例(以下「条例」という。)第5条第1項第1号及び第2号に該

 当するとした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及

 び運用を誤つている、というものである。

ア マンシヨン等の大型建造物は、日照、眺望、通風、緑化環境など

 さまざまな面で周辺住民の生活環境や自然環境に多大の影響を与

 えるものであるから、その建築確認申請に関する書類を公開する公

 益上の必要性は大きい。

イ マンシヨンの平面図等は、売出しの際の広告や業者の地元住民へ

 の説明会では公表されるのが通常であり、これを非公開とする利益

 は少ない。

ウ 条例第5条第1項第1号にいう特定の個人が識別され、又は識

 別され得る情報とは、具体的な特定個人が当該公文書から判明す

 るものをいうものであるが、平面図等はこの要件を欠いている。

エ 当該マンシヨンが建築中であって、入居者も定まらない現時点で

 は、平面図等は、条例第5条第1項第1号にいう特定の個人が識別

 され、又は識別され得る情報とは言い難い。

オ 仮に平面図等が条例第5条第1項第1号本文に該当するとして

 も、公開する公益上の必要性が高いものなので、同号ただし書ウに

 該当する。

カ 防犯上問題があるという非公開理由についても、条例による公文

 書公開請求は、住所、氏名を明らかにして行うのだから、犯罪に利

 用される可能性は極めて乏しい。

キ 条例第5条第1項第2号にいう法人等に明らかに不利益を与え

 る情報とは、一見明白かつ現実的な不利益を要件としたものである。

 また、それが公開されることによって、その法人等の正当な活動が

 不可能になるものに限定されるべきである。この件の場合、公開に

 よっていかなる不利益を与えるかについて何ら具体的に示されて

 いない。

ク 平面図等が著作物にあたるとしても、氏名、住所等を示して公開

 を求める者が盗用に及ぶことは実際にはほとんどありえない。著作

 権については、別に法律で民事上も刑事上も厳重に保護されている。

 これらにかんがみれば、知る権利を犠牲にしてまで著作権侵害とい

 う明らかでもなく、かつ、現実的でもない不利益を優越させること

 は、条例の明文上も、結果の妥当性からしてもとうてい合理性を見

 出すことはできない。

ケ 審議カードの公開が設計図書等の評価に関する不正確な理解を

 与えるということは、審査に際して行う行政指導がよほど不可解で

 あるか、住民をよほど無能と考えるのでなければ理解できない。ま

 た、設計図書等の不備を指摘された事実が公になることで不利益を

 きたすことがあるとしても、こうした不利益が保護に値するものと

 はとうてい考えられず、条例第5条第1項第2号に該当しない。

コ 仮に非公開とされた各公文書が条例第5条第1項第2 号本文に

 該当するとしても、法人の活動によって生ずる危害(環境破壊)か

 ら周辺住民の生活環境を保護するために公開することが必要な情

 報にあたるから同号ただし書アに準ずるべきものであり、かつ、公

 益上の必要性も高いものなので、同号ただし書ウに該当する。

 

3 実施機関の職員(横須賀三浦地区行政センター所長)の説明要旨

  実施機関の職員の説明を総合すると、逗子市内マンシヨン建築確

 認申請書等のうち、審議カード、平面図、立面図、断面図、伏図、

 構造詳細図(計算書)及び室内仕上表を非公開とした理由は、次の

 とおりである。

(1) 条例第5条第1項第1号について

ア 間取りを示した平面図や室内の仕上材、施錠の位置及び種類を示

 した室内仕上表は、通常居住者にとつては、私生活の内容が明らか

 になるのを防ぎ、防犯上の危惧を解消するなどの理由により、他人

 に知られたくない個人に関する情報と考えられる。

イ 共同住宅にあっては、完成後、入居している個人の住所、氏名と

 その住戸の平面図とを合せ知ることにより、特定個人に関する情報

 を知り得ることとなる。

ウ この件のマンシヨンは、既に予約販売がなされており、完成後入

 居する特定個人の私生活に関する情報についても条例第2条に定

 めるとおり、最大限保護する必要がある。

エ 条例第5条第1項第1号ただし書ウは、県民の生命、身体等を危

 害から保護し、公共の安全を確保する観点から公益上公開すべき積

 極的理由が強い情報に限定して解すべきであり、平面図及び室内仕

 上表については、そのような積極的な理由がない。

(2) 条例第5条第1項第2号について

ア 平面図、立面図、断面図、伏図、構造詳細図(計算書)及び室内

 仕上表は、建築設計に関する高度の専門的な知識と技術を駆使して、

 独自の作品として作成されたものである。それらの利用によって得

 られる利益は設計者に専属するものであるから、これを公開するこ

 とは設計者に明らかに不利益を与えると認められる。

イ 審議カードは、設計図書等に関する不備、疑問点等をメモしたも

 のであり、これがそのままの形で公開されると、設計図書等の評価

 に関する不正確な理解を与え、設計者の信用上の利益に関し、明ら

 かに不利益を与えると認められる。

ウ 条例第5条第1項第2号ただし書アは、現に発生しているか、又

 は将来発生するであろうことが確実である人の生命等に対する危

 険及び損害に限られる、と考えられ、同号ただし書イは、消費者保

 護のためであると考えられる。また、同号ただし書ウは、ただし書

 ア又はイと同趣旨で類似する情報に限られるので、平面図、立面図、

 断面図、伏図、構造詳細図(計算書)、室内仕上表及び審議カード

 は、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。

(3) 販売用広告等について

  販売用広告や地元説明会資料は、それぞれ限定された目的の範囲

 で、限定された期間、建物の概要を述べているのが通例であり、確

 認申請に添付される図書とは異質なものと理解される。

(4) 公開した文書について

  建築基準法には、建築物が周辺の敷地や建築物等にどのような影

 響を与えるかを知るために設けられた建築計画概要書の閲覧制度

 がある。更に、今回、情報公開制度により申請書、附近見取図、配

 置図及び日影図を公開した。これらの図書から、建物の配置、外形

 及び日影の様子が詳しくわかり、周囲に与える影響をより細かく予

 測できるようにした。

 

4 審査会の判断理由

(1) 審議カードについて

ア 審議カードは、建築主事が建築基準法に基づく建築確認をする際

 に作成される内部審査書類であって、その中には、建築確認申請書

 及び添付書類の不備や疑問点も記載されるが、最終的にはそれらの

 不備が補われ、疑問点が解消されて、建築確認が適正な審査を経て

 行われたことを示すものである。したがって、法人等に関する情報

 を含んでいても、一般的には、条例第5条第1項第2号の「公開す

 ることにより、当該法人等又は当該個人に明らかに不利益を与える

 と認められるもの」には該当しないと解される。

イ しかし、この審議カードには、どのようにして不備が補われ、疑

 問点が解消されたかという処理経緯が記載されていないことなどか

 ら、そのままの状態で公開されると、設計者に明らかに信用上の不

 利益を与えると認められる箇所がある。したがって、別紙1に指定

 する部分を除き、その他の部分は公開すべきであると判断する。

(2) 平面図、立面図、断面図、伏図、構造詳細図(計算書)及び室内

 仕上表について

ア ー般に、建築物の建築に関して作成される設計図書は、設計者が

 その知識と技能を駆使して創作する貴重な知的生産物であり、相当

 の報酬を支払う依頼主だけに使用目的を特定して提供する設計者に

 とっての重要な財産であるということができる。このような性格を

 持つ設計図書は、設計者の人格上及び財産上の権利の対象として保

 護されるべきものである。

イ 非公開とされた平面図、立面図、断面図、伏図、構造詳細図(計

 算書)及び室内仕上表(以下「平面図等」という。)は、法人であ

 る設計者が作成した上記アと同様の性格を持つ設計図書であり、そ

 の設計者は、平面図等に関する人格上及び財産上の権利を持つてい

 る。したがって、平面図等を公開することは、明らかに設計者の人

 格上及び財産上の権利を侵害することになると認められるので、平

 面図等は、条例第5条第1項第2号に規定する「公開することによ

 り、当該法人等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められ

 る」情報に該当する。

  なお、平面図及び室内仕上表については、この件の場合、「特定

 の個人が識別され、又は識別され得る情報」とは考えられないので、

 条例第5条第1項第1号を非公開の理由としたことは妥当でない。

ウ 法人等に明らかに不利益を与えると認められる情報であっても、

 条例第5条第1項第2号ただし書ア、イ、又はウのいずれかの規定

 に該当する情報は公開されることになる。しかし、当審査会は、平

 面図等はそのいずれの規定にも該当しないものと認める。

(ア)ただし書アは、現に発生しているか、又は将来発生するであろ

  うことが確実である人の生命、身体又は健康に対する危険及び損

  害を防止するために公開することが必要と認められる情報に限

  られると解することができるが、この件の平面図等には、ただし

  書アに規定する公開することの必要性はないものと判断する。

(イ)ただし書イは、消費者を保護する必要性から公開すべき情報を

  定めたものであるが、この件の平面図等には、ただし書イに規定

  する公開することの必要性はないものと判断する。

(ウ)ただし書ウは、ただし書ア又はイに掲げる情報に準じた情報で

  あり、公開することが公益上必要と認められるものと定められて

  いるが、平面図等は、ただし書ア又はイに掲げる情報に準じた情

  報ではないと認められると同時に、平面図等を公開することの公

  益上の利益と公開されることによる設計者の不利益とを比較衡

  量すれば、ただし書ウに規定する公益上の必要性も認められない

  と判断する。

 

5 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙2のとおりである。

 

別紙1

 

 審議カードの中で、設計者に明らかに信用上の不利益を与えると認

められる部分は、審査意見欄の次の記載事項である。

(非公開とした部分に関する具体的な指定であるため、この資料から

は、削除した。)

 

別紙2

 

        審査会の処理経過

 

年月日

処理内容

 昭和58.5.21

(第3回審査会)

○諮問

 

 58.6.18

(第4回審査会)

○異議申立人、代理人から意見の聴取

○実施機関の職員(横須賀三浦地区行政センタ

  ―建築部長ほか)から非公開理由説明の聴取

○審議

 58.7.9

 (第5回審査会)

○審議

 

 58.7.16

 (第6回審査会)

○審議

 58.7.25

○実施機関の職員(横須賀三浦地区行政センタ

 ー所長)に非公開理由説明書の提出要求

 58.8.3

○非公開理由説明書の受理

 58.8.8

○異議申立代理人に非公開理由説明書を送付

 58.8.17

○非公開理由説明書に対する意見書の受理

 58.8.19

 (第7回審査会)

○審議

 58.9.3

 (第8回審査会)

○審議

 

 58.9.17

 (第9回審査会)

○審議

 

        神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                      (昭和58.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

日本経済新聞社論説委員

 

原 寿雄

共同通信社常務理事

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                (昭和58.9.17現在)(五十音順)

 

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本文ここまで
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