答申第4号

掲載日:2017年12月1日

答申第4号

 

                    昭和58年12月23日

 

神奈川県議会議長 田島 信雄 殿

 

                   神奈川県公文書公開審査会

                   会長 原 寿雄

 

公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 

 昭和58年7月9日付けで諮問された昭和57年12月、昭和58

年2月定例会厚生常任委員会における優生保護法に関する討議記録全

部非公開の件について、次のとおり答申します。

 

 

 

 

1 本件審議の対象となつた昭和57年12月、昭和58年2月定例

 会厚生常任委員会における優生保護法に関する討議記録は、当該委

 員会の審議状況を要点記録として記録し、委員長及び出席委員2人

 の署名がなされている委員会記録の一部である。

  この記録文書について、当審査会は、異議申立人の主張及び議会

 (実施機関の職員)の説明を聴きながら慎重に審議した。

 

2 異議申立人の主張要旨

(1) 異議申立ての趣旨

  異議申立ての趣旨は、昭和57年12月、昭和58年2月定例会

 厚生常任委員会における優生保護法に関する討議記録(以下「本件

 討議記録」という。)を神奈川県議会議長が昭和58年4月26日

 付けで非公開とした処分の取消しを求める、というものである。

(2) 異議申立ての理由

  異議申立人の主張を総合すると、神奈川県議会議長が「記録を公

 開することにより、今後の委員会審議に著しい支障が生ずるおそれ

 があるため」神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(以下「

 条例」という。)第5条第1項第4号に該当するとした非公開の決

 定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、と

 いうものである。

ア 政治は、主権者である国民、県民を中心として行われるべきであ

 り、県民は、県民の代表である県議会の議員の討議内容を正確に知

 る権利を有すると考える。

  そのためには、本会議が公開されているだけでは不十分であり、

 個々の案件について具体的、専門的に討議され、審査される委員会

 も公開されるべきである。委員会の傍聴を許可しないのであれば、

 その討議記録は、公開すべきである。

イ 記録を公開すると委員会審議に支障があることを非公開の理由と

 しているが、本件討議記録は、優生保護法という一般的な問題を審

 議した記録であり、公開することにより委員会審議に支障が生ずる

 とは考えられない。

ウ 当該委員会の審議は、優生保護法という女性に深く関係する問題

 であるにもかかわらず、男性議員のみによって構成されたなかで行

 われた。

  その結果、委員会では継続審議とされたにもかかわらず、議会は、

 厚生省に対し「改正は時期尚早」という優生保護法改正に関する意

 見書を提出している。

  本会議は、委員会報告をふまえて審議し、議会の最終意思を決定

 するのであれば、委員会が継続審議としたことと議会が厚生省へ優

 生保護法改正に関する意見書を提出したこととの間にどのような審

 議経過があったのか、最も知りたいところである。

エ 委員会は、本会議の予備的審査機関であり、その審議記録は未成

 熟な情報であることを非公開理由としているが、委員会は、重要な

 実質的審査機関であり、県民は、その審議過程を正しく理解するた

 めにも正確な情報を知る必要がある。

オ 委員会記録は、要点記録であるため不正確な理解と誤解を与える

 情報ということを非公開理由としているが、要点記録であっても、

 審議のポイントを正確に把握し、記録してあれば、審議の過程を知

 るには、十分なものである。

 

3 実施機関の職員(議会事務局議事課長)の説明要旨

  実施機関の職員の説明を総合すると、本件討議記録を非公開とし

 た理由は、次のとおりである。

(1) 委員会の傍聴については、制限公開制をとっているため、委員会

 記録については、議会関係者以外に公開をしていない。

  普通地方公共団体の議会の本会議は、地方自治法第115条の規

 定により、公開(傍聴の自由、報道の自由及び会議録の公表)とさ

 れている

 が、本会議の予備的審査機関であり、本会議から付託された案件に

 ついて自由な討議をし、慎重審査を期している委員会の公開につい

 ては、明文の定めがない。

  委員会に関し必要な事項は、同法第111条の規定により条例で

 定めることとされており、委員会を公開するか否かは、当該議会の

 判断に委ねられているところである。

  本県の委員会は、神奈川県議会委員会条例第17条に基づき、一

 般人の傍聴について制限公開制を採用し、当該委員会の議決により、

 その許否を決定している。

 記録は傍聴とほぼ表裏一体をなすものであり、議会先例により議会

 関係者についてのみ閲覧を認め、それ以外の者への閲覧を認めてい

 ないものである。

(2) 委員会記録は、審査過程の記録であり、未成熟な情報である。

 委員会は、本会議の予備的審査機関であって、本会議から付託を受

 けた案件を審査し、その結果を本会議に報告することとなっている。

  本会議は、この報告をふまえて審議し、議会の最終意思を決定す

 るものである。

  従って、委員会の審査は、議会としての最終的な意思を決定する

 前段階のものである。

  このため、その記録は、審査過程、意思決定途上のものであって、

 いわゆる未成熟な情報である。

(3) 委員会記録は、要点記録であるため、不正確な理解と誤解を与え

 る情報である。

  本会議の記録は、速記法により、全ての発言が記録されるが、委

 員会記録は、議会先例により要点記録とされている。

  このことは、委員会が本会議の予備的審査機関として審査を行う

 ことからきているものである。

  要点記録は、審査のポイントのみを記録しているもので、この要

 点記録の方法では、発言内容を取捨選択しているため、発言の微妙

 なところまでは読みとることは不可能であり、発言者の真意が十分

 反映されないことなどがある。

  従って、このような記録を公開することは、不正確な理解と誤解

 を与えるおそれがあるものである。

 

4 答申するに当たっての審査会の基本的考え方

  議会は、地方自治制度の上で、執行機関とは異なる特有の自律性

 を持ち、会議規則や議会先例を定め、議会運営の円滑化を図ってい

 る。

  当審査会は、このことを十分理解するが、本件討議記録は、条例

 上の実施機関が管理する公文書であるので、条例に基づき審議する

 ものである。

  この場合、本件討議記録の公開・非公開の判断は、条例第5条第

 1項各号に照らして個別具体的に行われるものである。

 

5 非公開理由の検討

  当審査会は、上記のような基本的考え方に立たって、神奈川県議

 会議長が「記録を公開することにより、今後の委員会審議に著しい

 支障が生ずるおそれがあるため」という理由で本件討議記録を非公

 開としたことについて、条例第5条第1項各号に照らして、次のと

 おり検討した。

(1) 委員会の傍聴は制限公開制であるため、委員会記録も議会関係者

 以外に公開していないとする理由について会議の公開の制限とその

 会議の記録である公文書の公開の制限とは、異なるところがあるも

 のと考えられる。

  会議の公開の制限は、当該会議体が判断して自主的に決められる

 場合があるとしても、公文書の公開の制限は、条例が施行されてい

 る本県にあっては、条例第5条第1項各号に該当する場合に限られ

 る。また、会議の公開とその記録である公文書の公開とは、公文書

 の公開が会議の終了後に行われるものであることから、会議の審議

 に与える影響が全く同じであるとはいえない。

  したがって、委員会が制限公開制をとっているという制度的な理

 由をもって、直ちに本件討議記録を非公開とするのは、妥当でない

 と判断する。

(2) 委員会記録は審査過程の記録であり、未成熟な情報であるとする

 理由について実施機関が審議、検討、調査研究等に関して作成する

 公文書には、検討素案、参考資料、最終決定書等種々のものがある。

  条例は、このような種々の公文書を前提として、公開・非公開の

 基準を定めている。条例第5条第1項第4号の規定は、審議、検討、

 調査研究等の過程の情報であるというだけで非公開とするのではな

 く、そのなかには公開できるものと公開できないものとがあること

 を予定している。

  したがって、委員会が本会議の予備的審査機関であるとしても、

 その機能及び性格からみて、本件討議記録が審査過程・意思決定途

 上の情報であることを理由に非公開とするのは、妥当でないと判断

 する。

(3) 委員会記録は要点記録であるため、不正確な理解と誤解を与える

 おそれのある情報であるとする理由について要点記録は、発言の微

 妙なニユアンス等を十分に表現していないとしても、会議の概要を

 伝え得るものであると考えられる。

  本件討議記録を含む委員会記録は、委員長及び2人の出席委員が

 署名しているので、要点記録として確定されたものであるといえる。

  したがって、本件討議記録が要点記録であるため、不正確な理解

 と誤解を与えるおそれがあることを理由に非公開とするのは、妥当

 でないと判断する。

 

6 審査会の結論

  以上、議会の自律性を十分に理解しながら、条例にのとって本件

 討議記録について審議した結果、公開することが妥当であると判断

 する。

  なお、本件討議記録を非公開とする議会の理由は、一般的、制度

 的なものであり、委員会記録を公開することにより委員会審議に著

 しい支障が生ずるおそれのある情報、その他非公開とされる情報が

 ある場合には、条例第5条第1項各号に定めるところに従い、理由

 を具体的に明らかにする必要がある。

 

7 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

別紙

 

                   審査会の処理経過

 

年月日

処理内容

 昭和58.7.9

(第5回審査会)

○諮問

○審議

  58.7.16

(第6回審査会)

○異議申立人、補佐人から意見の聴取

○審議

  58.7.21

○議長に非公開理由説明書の提出要求

  58.8.8

 

○非公開理由説明書の受理

○異議申立人に非公開理由説明書を送付

  58.8.18

○非公開理由説明書に対する意見書の受理

  58.8.19

(第7回審査会)

 

 

○異議申立人、補佐人から意見の聴取

○実施機関の職員(議会事務局議事課長ほか)から非公開理由説明の聴取

○審議

  58.10.29

(第10回審査会)

○審議

  58.11.14

(第11回審査会)

○審議

 

  58.11.26

(第12回審査会)

○審議

 

  58.12.23

(第13回審査会)

○審議

 

 

       神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                    (昭和58.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

日本経済新聞社論説委員

 

原 寿雄

共同通信社常務理事

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

              (昭和58.12.23現在)(五十音順)

 

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本文ここまで
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