答申第5号

掲載日:2017年12月1日

答申第5号

 

                    昭和58年12月23日

 

神奈川県議会議長 田島 信雄 殿

 

            神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

 

 公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて

 (答申)

 

 昭和58年9月17日付けで諮問された昭和57年9月定例会県民

環境常任委員会記録全部非公開の件について、次のとおり答申します。

 

 

 

1 本件審議の対象となつた昭和57年9月定例会県民環境常任委員

 会記録は、当該委員会の審議状況を要点記録として記録し、委員長

 及び出席委員2人の署名がなされているものである。

 この記録文書について、当審査会は、異議申立人の主張及び議会

(実施機関の職員)の説明を聴きながら慎重に審議した。

 

2 異議申立人の主張要旨

(1) 異議申立ての趣旨

  異議申立ての趣旨は、昭和57年9月定例会県民環境常任委員会

 記録(以下「本件委員会記録」という。)を神奈川県議会議長が昭

 和58年7月7日付けで非公開とした処分の取消しを求める、とい

 うものである。

(2) 異議申立ての理由

  異議申立人の主張を総合すると、神奈川県議会議長が「記録を公

 開することにより、今後の委員会審議に著しい支障が生ずるおそれ

 があるため」神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(以下「

 条例」という。)第5条第1項第4号に該当するとした非公開の決

 定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、と

 いうものである。

 ア 地方自治法第115条で定める議事公開の原則は、本会議に限

  定することなく、実質審議を行う委員会等も含めた議会のすべて

  の議事公開を定めたものと広義に解すべきである。

   実質的審査機関である委員会等が公開されることによってはじ

  めて地域の抱える問題やその争点が明らかになり、住民は政治に

  直接、間接に参加する権利を行使できる。

   本県議会は、自ら進んで情報公開制度に参加し、条例を可決し

  たのだから、委員会の制限公開制という従来の委員会の傍聴につ

  いての考え方を再検討し、原則公開制に改めるべきである。

   また、委員会記録は議会関係者についてのみ閲覧を認め、それ

  以外の者への閲覧を認めていないとする議会先例は、原則公開と

  いう情報公開制度の理念に反するものである。

   したがって、委員会の傍聴は制限公開制であるため、委員会記

  録も議会関係者以外に公開していないとする理由は、委員会記録

  を非公開とする理由にはならない。

 イ 住民の知る権利を保障するためには、審査過程、意思決定過程

  の情報でも積極的に公開すべきである。

   本件委員会記録は、審査過程又は意思決定過程に関する情報と

  いう範ちゅうに入るとしても、本件委員会記録の内容である条例

  は、昭和57年10月に本県議会で可決され、議会の最終的意思

  は決定されたことになるので、本件委員会記録を公開したところ

  で、既になされた議会の意思決定には何ら支障を及ぼすものでは

  ない。したがって、本件委員会記録は、条例第5条第1項第4号

  の「公開することにより、当該審議、検討、調査研究等に著しい

  支障が生ずるおそれのあるもの」には該当せず、非公開とするこ

  とはできない。

 ウ 委員会記録は、要点記録とはいえ議会関係者には閲覧を認めて

  いることからすれば、委員会記録を公開すると住民に不正確な理

  解と誤解を与えるというのは、根拠がないものである。

 エ 委員会は、報道関係者には公開されていることからすれば、住

  民に対しても公開されるべきであり、その記録である委員会記録

  も住民に公開されるべきである。

 

3 実施機関の職員(議会事務局議事課長)の説明要旨

  実施機関の職員の説明を総合すると、本件委員会記録を非公開と

 した理由は、次のとおりである。

 (1) 委員会の傍聴については、制限公開制をとっているため、委員

 会記録については、議会関係者以外に公開をしていない。

  普通地方公共団体の議会の本会議は、地方自治法第115条の規

 定により、公開(傍聴の自由、報道の自由及び会議録の公表)とさ

 れているが、本会議の予備的審査機関であり、本会議から付託され

 た案件について自由な討議をし、慎重審査を期している委員会の公

 開については、明文の定めがない。

  委員会に関し必要な事項は、同法第111条の規定により条例で

 定めることとされており、委員会を公開するか否かは、当該議会の

 判断に委ねられているところである。

  本県の委員会は、神奈川県議会委員会条例第17条に基づき、一

 般人の傍聴について制限公開制を採用し、当該委員会の議決により、

 その許否を決定している。

  記録は傍聴とほぼ表裏一体をなすものであり、議会先例により議

 会関係者についてのみ閲覧を認め、それ以外の者への閲覧を認めて

 いないものである。

(2) 委員会記録は、審査過程の記録であり、未成熟な情報である。

  委員会は、本会議の予備的審査機関であって、本会議から付託を

 受けた案件を審査し、その結果を本会議に報告することとなってい

 る。

  本会議は、この報告をふまえて審議し、議会の最終意思を決定す

 るものである。従って、委員会の審査は、議会としての最終的な意

 思を決定する前段階のものである。

  このため、その記録は、審査過程、意思決定途上のものであって、

 いわゆる未成熟な情報である。

(3) 委員会記録は、要点記録であるため、不正確な理解と誤解を与え

 る情報である。

  本会議の記録は、速記法により、全ての発言が記録されるが、委

 員会記録は、議会先例により要点記録とされている。

  このことは、委員会が本会議の予備的審査機関として審査を行う

 ことからきているものである。

  要点記録は、審査のポイントのみを記録しているもので、この要

 点記録の方法では、発言内容を取捨選択しているため、発言の微妙

 なところまでは読みとることは不可能であり、発言者の真意が十分

 反映されないことなどがある。

  従って、このような記録を公開することは、不正確な理解と誤解

 を与えるおそれがあるものである。

 

4 答申するに当たっての審査会の基本的考え方

  議会は、地方自治制度の上で、執行機関とは異なる特有の自律性

 を持ち、会議規則や議会先例を定め、議会運営の円滑化を図ってい

 る。

  当審査会は、このことを十分理解するが、本件委員会記録は、条

 例上の実施機関が管理する公文書であるので、条例に基づき審議す

 るものである。

  この場合、本件委員会記録の公開・非公開の判断は、条例第5条

 第1項各号に照らして個別具体的に行われるものである。

 

5 非公開理由の検討

  当審査会は、上記のような基本的考え方に立って、神奈川県議会

 議長が「記録を公開することにより、今後の委員会審議に著しい支

 障が生ずるおそれがあるため」という理由で本件委員会記録を非公

 開としたことについて、条例第5条第1項各号に照らして、次のと

 おり検討した。

(1) 委員会の傍聴は制限公開制であるため、委員会記録も議会関係者

 以外に公開していないとする理由について会議の公開の制限とその

 会議の記録である公文書の公開の制限とは、異なるところがあるも

 のと考えられる。

  会議の公開の制限は、当該会議体が判断して自主的に決められる

 場合があるとしても、公文書の公開の制限は、条例が施行されてい

 る本県にあっては、条例第5条第1項各号に該当する場合に限られ

 る。また、会議の公開とその記録である公文書の公開とは、公文書

 の公開が会議の終了後に行われるものであることから、会議の審議

 に与える影響が全く同じであるとはいえない。

  したがって、委員会が制限公開制をちっているという制度的な理

 由をもって、直ちに本件委員会記録を非公開とするのは、妥当でな

 いと判断する。

(2) 委員会記録は審査過程の記録であり、未成熟な情報であるとする

 理由について実施機関が審議、検討、調査研究等に関して作成する

 公文書には、検討素案、参考資料、最終決定書等種々のものがある。

  条例は、このような種々の公文書を前提として、公開・非公開の

 基準を定めている。

  条例第5条第1項第4号の規定は、審議、検討、調査研究等の過

 程の情報であるというだけで非公開とするのではなく、そのなかに

 は公開できるものと公開できないものとがあることを予定している。

  したがって、委員会が本会議の予備的審査機関であるとしても、

 その機能及び性格からみて、本件委員会記録が審査過程・意思決定

 途上の情報であることを理由に非公開とするのは、妥当でないと判

 断する。

(3) 委員会記録は要点記録であるため、不正確な理解と誤解を与える

 おそれのある情報であるとする理由について要点記録は、発言の微

 妙なニユアンス等を十分に表現していないとしても、会議の概要を

 伝え得るものであると考えられる。

  本件委員会記録は、委員長及び2人の出席委員が署名しているの

 で、要点記録として確定されたものであるといえる。

  したがって、本件委員会記録が要点記録であるため、不正確な理

 解と誤解を与えるおそれがあることを理由に非公開とするのは、妥

 当でないと判断する。

 

6 審査会の結論

  以上、議会の自律性を十分に理解しながら、条例にのとって本件

 委員会記録について審議した結果、公開することが妥当であると判

 断する。

  なお、本件委員会記録を非公開とする議会の理由は、一般的、制

 度的なものであり、委員会記録を公開することにより委員会審議に

 著しい支障が生ずるおそれのある情報、その他非公開とされる情報

 がある場合には、条例第5条第1項各号に定めるところに従い、理

 由を具体的に明らかにする必要がある。

 

7 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

別紙

                 審査会の処理経過

年月日

             処理内容

昭和58.9.17

(第9回審査会)

○諮問

○審議

○議長に非公開理由説明書の提出要求

  58.9.19

○非公開理由説明書の受理

 

  58.9.26

○異議申立人に非公開理由説明書を送付

  58.10.15

○非公開理由説明書に対する意見書の受理

  58.10.29

(第10回審査会)

 

○異議申立人、補佐人から意見の聴取

○実施機関の職員(議会事務局議事課長ほか)から非公開理由説明の聴取

○審議

  58.11.14

(第11回審査会)

○審議

 

  58.11.26

(第12回審査会)

 

○審議

 

58.12.23

(第13回審査会)

○審議

 

 

       神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                    (昭和58.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

日本経済新聞社論説委員

 

原 寿雄

共同通信社常務理事

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                       (昭和58.12.23現在)(五十音順)

目次にもどる

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • ラグビーワールドカップ2019
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa