答申第6号

掲載日:2017年12月1日

答申第6号

                          昭和59年4月7日

神奈川県知事 長洲  一二 殿

 

                神奈川県公文書公開審査会 会長 原  寿雄 

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 昭和58年10月29日付けで諮問された酸化防止剤(BHA及びBHT)

の収去品試験成績通知一部非公開の件について、次のとおり答申します。

 

 

1 審査会の結論

 収去品試験成績通知書の被収去者の住所及び氏名は、大和保健所長名の通知

書のうち3番から10番までの検体に係る被収去者の住所及び氏名を除いて、

公開すべきである。

 

2 異議申立人の主張要旨

 (1) 異議申立ての趣旨

   異議申立ての趣旨は、鎌倉保健所、小田原保健所、相模原保健所、厚木

  保健所及び大和保健所の収去品試験成績通知書の被収去者の住所及び氏名

 (以下「被収去者名」という。)を神奈川県知事が昭和58年8月16日及

  び17日付けで非公開とした処分の取消しを求める、というものである。

 (2) 異議申立ての理由

   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「収去先法人等の住所、

  氏名を公開することにより、当該法人に販売上明らかに不利益を与えると

  認められるとともに、今後の食品等の収去検査事務の円滑な実施に著しい

  支障を生ずるおそれがあるため」神奈川県の機関の公文書の公開に関する

  条例(以下『条例』という。)第5条第1項第2号及び第5号に該当する

  とした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っ

  ている、というものである。

 ア 食品の収去検査の信頼性を確保するためには、収去の方法や対象を明ら

  かにすることが必要であり、そのためには、非公開とされた被収去者名も

 公開すべきである。

 イ 商品の検査結果の公開は、消費生活情報のうちでもとりわけ重要なこと

  である。

  特に食品等のようにばらつきの多い商品の場合、どこで販売されていたか

  ということが消費生活情報として不可欠なものである。

 ウ 商品名、製造者名等を公開しても製造者に不利益を与えないのであれば、

  販売店についても同じことがいえるのであって、被収去者名を公開しても

  販売上明らかに不利益を与えるとはいえない。

 エ 消費者の購買意識に影響を与えることなどについては、本件収去検査の

  判定が法令に照らして適正な添加物使用結果であることからすれば、消費

  者の行動を一方的に決めつけ、予測するものであって偏見に基づく判断で

  あり、非公開理由として妥当でない。

 オ 本件とほぼ同様の記載内容を有する食品の試買テスト結果(「魚介乾製

  品及び魚介冷凍品の試買テスト(酸化防止剤の使用状況)結果」)が昭和

  57年10月に県の婦人総合センター生活科学部商品テスト室から公表さ

  れているが、このことによって対象とされた販売業者について客離れなど

  顕著な不利益が生じたとは聞いていない。

 カ 試買テスト結果の中の購入店名と同様のものといえる被収去者名を非公

  開とすることは、情報公開制度の趣旨に反するものである。

 キ 被収去者名を公開することにより、被収去者の食品の仕入れ、販売の状

  況等が明らかになり、営業上不利益を与えるとする理由は、販売店の仕入

  れ状況は店頭での品揃えを見れば判明するものであり、また、被収去者名

  を公開しても販売状況は明らかにならないと考えられることから、非公開

  理由としては妥当でない。

 ク 収去検査は食品衛生法に基づく行政庁の権限行使であることから、被収

  去者名を公開しても被収去者の理解と協力が得られなくなり、今後の食品

  等の収去検査に係る事業を著しく困難にするとはいえない。

3 実施機関の職員(鎌倉保健所長)の説明要旨

  実施機関の職員の説明を総合すると、被収去者名を非公開とした理由は、

  次のとおりである。

 (1) 条例第5条第1項第2号について

 ア 食品等の収去検査は、悉皆検査ではなく、必要最小限に行う抽出検査で

  ある。

   食品添加物を使用している食品が収去検査の対象とされた場合、その使

  用が適正であっても消費者には必ずしも安全な食品とは受けとられていな

  いのが実態である。被収去者名を公開することにより、特定の販売業者に

  ついて食品の収去が行われたことが判明し、そのこと自体が消費者の購買

  意識に影響を与え、又は客離れ現象などを生じさせ、収去の対象とならな

  かった営業者との間に競争上の不均衡をもたらすので、被収去者に販売上

  明らかに不利益を与えると認められるものである。

 イ 被収去者名を公開することにより、競合営業者が既に公開した収去品名、

  製造所所在地、製造者名等を合せ知ることによって被収去者の食品の仕入

  れ、販売の状況等が判明し、被収去者に営業上明らかに不利益を与えると

  認められるものである。

 (2) 条例第5条第1項第5号について

   神奈川県の食品等の収去検査は、県内で製造された食品等は主として製

  造業者を対象とし、県外で製造された食品等は主として市場や大規模小売

  店等販売業者を対象として、計画的かつ効果的に実施し、不良食品等の排

  除に努めている。

   この収去検査は、無償で収去した食品等について行っているもので、そ

  の検査結果が検出の量又は有無にかかわらず適法であれば、被収去者には

  営業上影響を及ぼさないよう最大限の配慮をする必要がある。

   特に、食品添加物の使用状況等製造過程に係る検査であって販売店等か

  らの収去の場合、この事業が円滑に実施され、消費者の健康と安全を図っ

  ていくためには、被収去者の理解と協力が不可欠であり、収去検査は反復、

  継続して行う事業であるため、被収去者の理解と協力が得られなくなると、

  今後の食品等の収去検査に係る事業の円滑な実施を著しく困難にするおそ

  れがある。

 

4 審査会の判断理由

(1)被収去者名を公開することにより被収去者に明らかに不利益を与えるとす

  る理由について。

 ア 食品添加物の使用が適正であっても、必ずしも安全な食品と受けとらない

  消費者がいることは理解できる。一般に消費者が個々の食品を購入するに当

  たっては、食品添加物の使用状況のみを基準としているわけではなく、消費

  者の選択は多様であると考える。このような消費者の選択の多様性と本件収

  去検査の結果が適法であったことからすれば、消費者一般が、特に収去検査

  を受けた食品や営業者を避けるようになるとは断定できない。

   したがって、被収去者名を公開しても、被収去者と収去の対象とならなか

  った営業者との間に競争上の不均衡を生じ、当該被収去者に販売上明らかに

  不利益を与えるとはいえない。

 イ 本件収去検査の被収去者には、販売業者と製造業者とがある。そのうち、

  販売業者については、収去品試験成績通知書の記載事項から食品の仕入れ、

  販売の状況等の一端が明らかになるとしても、それらの情報は、店頭にお

  ける商品の表示及び品揃えから十分把握することができると考えられる。

   したがって、被収去者名を公開しても、販売業者である被収去者に営業

  上明らかに不利益を与えるとはいえない。

 ウ また、食品の製造業者である被収去者(大和保健所長名の通知書のうち

  3番から10番までの検体に係る被収去者)については、当該被収去者名

  を公開すると、既に公開されている収去品の商品名及び製造者名と、被収

  去者名とを合せ知ることができるようになる。その結果、特定の製造業者

  がどこからどのような原材料を仕入れて製品を製造しているかが明らかと

  なる。製造業者は、製品の原材料及びその仕入れ先に関する情報について、

  通常、経営上保護される必要があり、本件の場合も同様であると考える。

   したがった、製造業者である本件被収去者名を公開することは、当該被

  収去者に経営上明らかに不利益を与えると認められるので、条例第5条第

  1項第2号に該当すると判断する。

 (2) 被収去者名を公開することにより、収去事業への理解と協力が得られな

  くなり、今後の収去事業の円滑な実施に著しい支障が生ずるおそれがある

  とする理由について本件収去検査は、食品衛生法第17条第1項の規定を

  根拠にして行ったものであるが、この収去事業が現に被収去者の理解と協

  力のもとに実施されていることは理解できるところである。

   しかし、前記(1)のア及びイで述べたように、被収去者名を公開しても、

  被収去者に明らかに不利益を与えるとは認められないので、被収去者名を

  公開することにより収去事業の実施に多少の支障が生ずる場合があるとし

  ても、その支障の程度は、条例第5条第1項第5号に規定する「円滑な実

  施を著しく困難にするおそれ」があるほどのものではないと判断する。

 

5 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                     審査会の処理経過

年月日

処理内容

 58.10.29

(第10回審査会)

○諮問

○審議

○説明担当保健所の選定依頼

 58.10.31

○ 説明担当保健所を鎌倉保健所とする旨の回答受理

○ 実施機関の職員(鎌倉保健所長)に非公開理由説明書の提出要求

 58.11.9

○非公開理由説明書の受理

 58.11.10

○異議申立人に非公開理由説明書を送付

 58.11.22

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

 58.11.26

(第12回審査会)

○異議申立人、補佐人から意見の聴取

○実施機関の職員(鎌倉保健所長ほか)から非公開理由説明書の聴取

○審議

 58.12.23

(第13回審査会)

○審議

 59.1. 5

(第14回審査会)

○審議

 59.2. 4

(第15回審査会)

○審議

 59.3.17

(第16回審査会)

○現地調査

○審議

 59.3.31

(第17回審査会)

○審議

 59.4.7

(第18回審査会)

○審議

       神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                       (昭和58.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

日本経済新聞社論説委員

 

原 寿雄

共同通信社常務理事

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                  (昭和59.4.7現在)(五十音順)

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本文ここまで
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