答申第8号

掲載日:2017年12月1日

答申第8号

                         昭和60年3月16日

   神奈川県公営企業管理者
   企業庁長 阿部 治夫 殿

                    神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 昭和59年10月17日付けで諮問された三保ダム補償に係る土地売買契約
書及び補償契約書全部非公開の件(諮問第10号)について、次のとおり答申
します。

1 審査会の結論
  三保ダム補償に係る土地売買契約書及び補償契約書を非公開としたことは、
 妥当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、特定の個人と神奈川県公営企業管理者との間で締
  結された、三保ダム補償に係る土地売買契約書(以下「本件土地売買契約
  書」という。)及び補償契約書(以下「本件補償契約書」という。)を神
  奈川県公営企業管理者が昭和59年8月6日付けで非公開とした処分の取
  消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県公営企業管理者が「個人の財
  産の処分及び補償に係る契約上の意思表示であり、特定の個人が識別でき
  るため」神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(以下「条例」とい
  う。)第5条第1項第1号に該当するとした非公開の決定は、次に掲げる
  理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 県が作成し保有する公文書は、ほとんど個人にかかわりを持つもので
   あるから、条例第2条後段を個人情報の原則非公開の趣旨を規定したも
   のと理解し、条例第5条第1項第1号の対象を個人に関するすべての情
   報ととらえる企業庁の考え方に立てば、ほとんどすべての公文書が非公
   開となる。
  イ 単に個人情報であるとかプライバシーが絡んでいるという理由で、情
   報を非公開とすべきではない。個人情報であっても、個人の道徳的自律
   性を侵すおそれのない情報は、開示すべきである。
  ウ プライバシーの権利は、絶対的なものではなく、相対的なものである
   という認識も重要であって、個人情報の開示がもたらす公的利益と開示
   によって侵害される個人のプライバシーの有する利益とが比較衡量され
   なければならない。したがって、公職者又は公職にあった者に係る事項
   で、開示させることについて公益上の必要性が認められる場合には、当
   該個人のプライバシー保護の考慮は相当後退せざるを得ない。
  エ 上に述べたことは、立法論ではなく、条例第2条後段の趣旨からすれ
   ば、条例第5条第1項第1号の解釈として可能である。
  オ 本件土地売買契約書及び本件補償契約書に含まれる情報の内容は土地
   売買代金及び補償金額であり、個人の道徳的自律性とは何ら関係のない
   情報である。また、本件契約の相手方は公職にあった者等である。した
   がって、個人のプライバシーの権利を不当に侵すおそれなど問題になら
   ないケースである。しかも、本件土地売買契約書及び本件補償契約書は、
   10年以上前のものである。
  カ 以上のことから、本件土地売買契約書及び本件補償契約書は、条例第
   5条第1項第1号本文の「非公開とすることができる公文書」に該当し
   ない。

3 実施機関の職員(企業庁管理局三保事務所長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件土地売買契約書及び本件補償契
  約書を非公開とした理由は、次のとおりである。
(1)条例第5条第1項第1号本文は、個人の尊重という観点から個人に関す
  る情報(生活記録等に関する情報、財産の状況、所得等に関する情報など
  個人に関するすべての情報をいい、公職者等に係る情報であるか否かを問
  わないものである。)で、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報
  については非公開とする方針を明確に規定したものである。
   本件土地売買契約書は、個人と神奈川県公営企業管理者との間で締結さ
  れた契約書で、個人が所有する土地を神奈川県に譲渡することに伴う土地
  売買代金その他の契約上の意思表示を記載した個人に関する情報である。
  また、本件補償契約書は、個人と神奈川県公営企業管理者との間で締結さ
  れた契約書で、建物移転等に伴う補償金その他の契約上の意思表示を記載
  した個人に関する情報である。そして、本件土地売買契約書及び本件補償
  契約書は、契約当事者である当該個人の住所及び氏名が記載されており、
  特定の個人が識別されるものである。
   以上のことから、本件土地売買契約書及び本件補償契約書が条例第5条
  第1項第1号本文に該当する情報であることは明白である。
(2)条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報であっても、例
  外的に公開することができる情報を規定したものであるが、同号ただし書
  の運用及び解釈は、条例第2条後段に規定する個人情報の原則非公開の趣
  旨に則して厳格に行われるべきであり、本件土地売買契約書及び本件補償
  契約書が条例第5条第1項第1号ただし書ア、イ及びウに該当する情報で
  ないことは明らかである。

4 審査会の判断理由
(1)本件土地売買契約書及び本件補償契約書は、三保ダム建設に際して、特
  定の個人と神奈川県公営企業管理者との間で締結された契約書である。本
  件土地売買契約書は、特定の個人が所有する土地を神奈川県に譲渡するこ
  とに伴う土地売買代金その他の当該個人の権利義務の内容を記載し、また、
  本件補償契約書は、特定の個人が所有する建物の移転等に伴う補償金その
  他の当該個人の権利義務の内容を記載したものである。
(2)条例第5条第1項第1号本文は、個人に関する情報であって、特定の個
  人が識別され、又は識別され得るものは、非公開とすることができるとし
  ている。
   この規定は、特定の個人に関する情報であれば、いわゆるプライバシー
  に当たるものはもとより、プライバシーであることが不明確なものであっ
  ても非公開とすることができることを明文をもって定めたものと解すべき
  である。また、同規定は、公職者又は公職にあった者の個人に関する情報
  とその他の個人に関する情報とを区別して公開、非公開の判断を行うよう
  には定めていないと解される。
(3)前記(1)及び(2)に述べたことから、本件土地売買契約書及び本件
  補償契約書に記載されている内容は、明らかに個人に関する情報であって、
  特定の個人が識別されるものである。したがって、本件土地売買契約書及
  び本件補償契約書に記載されている内容は、条例第5条第1項第1号本文
  に該当する情報であると判断する。
(4)条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報で、特定の個人
  が識別されるものであっても、例外的に公開することができる情報を列挙
  している。当審査会は、本件土地売買契約書及び本件補償契約書に記載さ
  れている内容が、同号ただし書
  ア(何人でも法令の規定により閲覧することができるとされている情報)、
  イ(公表することを目的として作成し、又は取得した情報)及び
  ウ(法令の規定により行われた許可、免許、届出その他これらに相当する
   行為に際して作成し、又は取得した情報であって、公開することが公益
   上必要と認められるもの)
  のいずれかに該当する情報であるかについて審議したところ、いずれにも
  該当しないものであると判断する。
(5)当審査会は、本件土地売買契約書及び本件補償契約書について、部分公
  開することができるかどうかについても審議したが、条例第5条第2項に
  規定する「公文書の閲覧又は公文書の写しの交付を求める趣旨を失わない
  程度に合理的に分離できる」場合に該当しないものと判断する。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                             審査会の処理経過

年月日

処理経過

 昭和59.10.17

○諮問

   59.10.23

○実施機関の職員(企業庁管理局三保事務所長)に非公開理由説明書の提出要求

   59.10.29

○非公開理由説明書の受理

   59.11.1

○異議申立代理人に非公開理由説明書を送付

   59.11.9

○異議申立代理人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

   59.11.24
  (第23回審査会)

○異議申立人、代理人から意見の聴取
○実施機関の職員(企業庁管理局三保事務所長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   59.12.15
  (第24回審査会)

○実施機関の職員(企業庁管理局三保事務所長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   60.2.2
  (第25回審査会)

○審議

   60.3.16
  (第26回審査会)

○審議

                     神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                                      (昭和58.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

日本経済新聞社論説委員

 

原 寿雄

共同通信社常務理事

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                                              (昭和60.3.16現在)(五十音順)

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本文ここまで
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