答申第11号

掲載日:2017年12月1日

答申第11号

                         昭和62年2月14日

   神奈川県教育委員会委員長  高橋 長世 殿

                       神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 昭和61年8月4日付けで諮問された昭和59年及び昭和60年に行われた
義務教育費国庫負担金に係る会計検査院の実地検査の結果全部非公開の件(諮
問第13号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
  昭和59年及び昭和60年に行われた義務教育費国庫負担金に係る会計検
 査院の実地検査に関して会計検査院が知事の見解を求めた文書を非公開とし
 たことは、妥当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、昭和59年及び昭和60年に行われた義務教育費
  国庫負担金に係る会計検査院の実地検査に関して会計検査院が知事の見解
  を求めた文書(以下「本件文書」という。)を神奈川県教育委員会が昭和
  61年5月26日に非公開とした処分の取消しを求める、というものであ
  る。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県教育委員会が「特定の児童及
  び生徒の在籍の状況が明らかになる。会計検査院は、検査終了後内閣へ報
  告した決算検査報告書以外の検査過程段階における資料についてはすべて
  公表していないため、本件文書を公開することは、国との協力関係を著し
  く害するおそれがあるとともに、会計検査事務の円滑な実施を著しく困難
  にするおそれがあるため」神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例
  (以下「条例」という。)第5条第1項第1号、第3号及び第5号に該当
  するとした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を
  誤っている、というものである。
  ア 学級編制は、本来的に個人に関する措置とは別の次元である。また、
   学級編制は、法律に基づき、便宜的に児童及び生徒が学級ごとに区分さ
   れるのであって、これは義務教育を受けた国民各人が経験するところで
   ある。それは、児童及び生徒の就学年齢も法定され、おのずから明らか
   であり、秘密に付することは、児童、生徒、父母及び地域住民にとって、
   全く無意味なことである。
  イ 会計検査院は、憲法上独立の行政機関であって、会計検査院法によっ
   て検査が行われるものであり、国と県との協議により、又は県の要請に
   基づいて行われるのではない。
  ウ 本件文書に係る検査は、昭和59年及び昭和60年に会計検査院によ
   って既に実施済みの検査であるので、本件文書を公開することにより会
   計検査院による検査の円滑な実施を妨げるものは何も見当たらない。
  エ 会計検査院法及び会計検査院規則には、公開を禁止した条項は見当た
   らない。
  オ 水増し学級があったとすれば、それは架空の学級の編制があったこと
   であり、国民の知らないところで故意に間違った操作が行われたものと
   言わなければならない。教育に対する国民の信頼を著しく損ねるもので
   あり、国民としても、承認できるものではない。
  カ 不正常を正すには、住民が本件についても監視しなければならない。
   この事案は、外から知るのが最も困難なものであり、公開されなければ
   ならない。

3 実施機関の職員(教育庁教職員課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件文書を非公開とした理由は、次
 のとおりである。
(1)条例第5条第1項第1号該当性について
   児童及び生徒の氏名等児童及び生徒の在籍の状況が具体的に記載されて
  いる部分は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるもので
  あり、明らかに条例第5条第1項第1号に該当する。
(2)条例第5条第1項第3号該当性について
  ア 国等の発意による協議又は依頼に基づき、県が受身の立場に立って作
   成し、又は取得した情報の中には、公開か否かが国等の判断にゆだねら
   れるべき性格の情報がある。条例第5条第1項第3号は、そのような情
   報であって公開することにより国等との協力関係を著しく害するおそれ
   のある情報は、非公開とすることができるとしている。
  イ 本件文書は、義務教育費国庫負担金について会計検査院が行う会計検
   査の手続の一環として、県に実地検査の結果を通知し、それに対する県
   の見解を求め、その結果を踏まえて決算検査報告をまとめようとするも
   のであり、その実質的な性格は、会計検査院の発意による協議又は依頼
   に該当する。
  ウ 会計検査の手続の一端を公開することによって生ずる支障の有無は、
   県が判断し得るところではなく、専ら会計検査院の判断にゆだねられる
   べき性格のものである。
  エ 会計検査院は、本件文書が検査官会議で検査報告を正式決定する前に
   調査事務を担当する部局が報告書を取りまとめるに当たって県の見解を
   求めたあくまでも調査過程における内部資料であって、このような情報
   を公開すると調査過程における情報の収集が困難になる等の理由から内
   閣に提出する決算検査報告書以外の調査過程に関する文書は従来から一
   切外部に公表しておらず、本件文書を公開してはならないと明確に指示
   している。
  オ 以上のことから、本件文書を公開すると、会計検査院が意図する円滑
   な処理の妨げとなることが考えられ、国との協力関係を著しく害するお
   それがある。
(3)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 本件文書は、会計検査院が県に対して実地検査の結果を示して、県の
   見解を求めているものであるが、その過程において、県が会計検査院の
   内閣に対する決算検査報告書の提出以前に、調査状況の詳細を確認し、
   義務教育費国庫負担金交付の決定権を有する文部省と調整すること、そ
   の結果として、県としての速やかな対応、対策がとられることをも期待
   しているものと考えられる。
  イ 県としても、義務教育費国庫負担金を受領する者としての責任を果た
   すために、このような確認、調整、対応、対策を速やかに行うべきであ
   ると考え、本件文書に基づいて、現に自主的に返還する措置等をとって
   いる。
  ウ 本件文書が公開されることになると、会計検査院は、決算検査報告書
   以外の調査過程に関する文書は一切公表しないとしていることから、今
   後、本県に関しては、上記のように実地検査の結果を示して、県の見解
   を求めることが難しくなる。その結果、県も自主的措置等をとる機会を
   失い、会計検査院が意図するような会計検査事務の円滑な実施を著しく
   困難にするおそれがある。

4 審査会の判断理由
(1)本件文書の性格について
   本件文書は、会計検査院が、義務教育費国庫負担金の算定の基礎となる
  小中学校の児童及び生徒の在籍状況を調査し、知事にその結果を示して、
  見解を求めてきたものである。
(2)条例第5条第1項第1号該当性について
   本件文書のうち児童及び生徒の氏名及び組並びに当該児童及び生徒の転
  退学等の事実(以下「児童及び生徒の氏名等」という。)を記載した部分
  は、一定の期日における特定の児童及び生徒の在籍等の状況を明らかにし
  たものである。したがって、児童及び生徒の氏名等を記載した部分は、個
  人に関する情報であり、特定の個人が識別され、又は識別され得るもので
  あって、条例第5条第1項第1号本文に該当すると判断する。
   同号ただし書は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、
  又は識別され得るものであっても、例外的に公開できる情報を列挙してい
  るが、当審査会は、児童及び生徒の氏名等を記載した部分は同号ただし書
  ア、イ及びウのいずれにも該当しないものであると判断する。
(3)条例第5条第1項第3号該当性について
  ア 条例第5条第1項第3号は、国等の機関からの協議又は依頼に基づい
   て作成し、又は取得した情報であって、公開することにより、国等との
   協力関係を著しく害するおそれのあるものを非公開とすることができる
   としている。
    以下、本件文書が、同号に該当するかどうか検討する。
  イ 会計検査院は、会計検査院法第20条第2項に規定する「会計経理を
   監督し、その適正を期し、且つ是正を図る」ことを目的として検査を行
   うことになっている。また、会計検査院は、その過程で、検査を受ける
   者により提出された書類の検査、実地の検査、帳簿等の提出要求、質問
   等の方法により必要な資料を収集し、最終的には、それらの資料に基づ
   き、国の収入支出の決算を確認するほか、法律、政令若しくは予算に違
   反し、又は不当と認めた事項等を決算検査報告書にまとめ、内閣に提出
   することになっている(会計検査院法第29条その他の規定)。
  ウ ここで「是正を図る」としているのは、会計検査院の行う検査が、法
   律、政令若しくは予算に違反した経理又は不当な経理を摘発し、糾弾す
   ることを目的とするばかりでなく、更に進んで、その原因を究明し、是
   正の方途を講じさせることも目的とすることを明らかにしたものである
   と考えられる。そして、会計検査院は、このような検査の目的を達成す
   るために、種々の方法を用いて事実を調査し、その結果の確認を求める
   のみならず、改善方策を検討し、その結果を踏まえて被検査者に対する
   指導等を行うものであると認められる。
  エ 本件文書は、会計検査院が当該負担金の直接の受領者である知事に実
   地検査の結果を通知し、その確認及び本件事案の是正に関する見解を求
   めているものである。会計検査院は、本件文書とこれに対する知事の回
   答とを合わせて、本件事案の改善方策の検討及び指導等並びに決算検査
   報告書の作成の一資料とするものであると認められる。
  オ このように、本件文書は、会計検査院の行う検査について専ら同院が
   必要であると判断して知事の回答を求めているものであるから、条例第
   5条第1項第3号に規定する協議又は依頼に基づいて県が取得した文書
   に当たると判断する。
  カ また、会計検査院の行う検査は、ウで述べたとおり、是正の方途を講
   じさせることをも目的とするものであるが、一方で、義務教育費国庫負
   担金の交付を受けている県もまた当該負担金の適正な支出に努め、不当
   な支出があった場合には、是正又は改善の措置をとるべき立場であるこ
   とが認められ、会計検査院と県との相互の協力関係のもとに負担金事務
   の適正な執行という目的の実現が図られていると考えることができる。
  キ 当審査会は、これまでに述べてきたような会計検査院が行う検査の目
   的及び方法並びに会計検査院と県との協力関係、更に県が本件文書の閲
   覧等の請求に対する諾否の決定に当たって行った会計検査院に対する調
   査の結果を勘案して本件について検討した。その結果、本件文書を公開
   すると、会計検査院としては、検査過程に関する情報について、一般に
   公開された場合の支障の有無を個別具体的に検討した上で取り扱わざる
   を得なくなり、情報の交換等にも支障を来し、負担金事務の適正な執行
   という目的のもとにおける国と県との協力関係を著しく害するおそれが
   あると判断する。
  ク 以上に述べたことから、当審査会は、本件文書は条例第5条第1項第
   3号に該当すると判断する。
(4)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、県の機関又は国等の機関が行う検査、監
   査、取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価格、
   試験の問題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は
   事業の性質上、公開することにより、当該事務又は事業の実施の目的を
   失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれ
   のあるものを非公開とすることができるとしている。
  イ 当審査会は、同号に該当することを理由に非公開とするためには、請
   求に係る公文書を公開することと事務又は事業の円滑な実施を著しく困
   難にすることとの関係を具体的に明らかにする必要があると考える。
  ウ 実施機関は、本件文書が同号に該当するとした理由を、会計検査院が
   決算検査報告書以外の調査過程に関する文書は一切公表していないこと
   から、本件文書を公開すると、今後、県に実地検査の結果を示して県の
   見解を求めることが難しくなり、その結果、県が自主的措置をとる機会
   を失い、会計検査院が意図するような会計検査事務の円滑な実施を著し
   く困難にするおそれがあると説明している。その説明は、本件文書を公
   開すると、会計検査事務に支障が生じ得るという意味では理解できると
   ころもある。
  エ しかしながら、会計検査院が法に基づいて検査を実施するものである
   こと、及び会計検査院が本件のように実地検査の結果を通知し、是正に
   関する見解を求める方法以外にも検査の目的を達成するために種々の方
   法を用いて検査を実施するものであることを考慮すると、当審査会とし
   ては、本件文書を公開することにより、仮に支障を生ずることがあると
   しても、会計検査事務の円滑な実施を著しく困難にするおそれがあると
   までは言えないと判断する。
  オ 以上に述べたことから、当審査会は、同号を本件文書を非公開とする
   理由としたことは妥当でないと判断する。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                           審査会の処理経過

年月日

処理経過

 昭和61.8.4

○諮問

   61.8.5

○実施機関の職員(教育庁管理部教職員課長)に非公開理由説明書の提出要求

   61.8.20

○非公開理由説明書の受理
○異議申立人に非公開理由説明書を送付

   61.9.13

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理
○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   61.9.13
  (第37回審査会)

○実施機関の職員(教育庁管理部教職員課長ほか)から非公開理由説明の聴取
○異議申立人から意見の聴取
○審議

   61.10.11
  (第38回審査会)

○審議

   61.11.15
  (第39回審査会)

○審議

   61.12.13
  (第40回審査会)

○審議

   62. 1.31
  (第41回審査会)

○審議

   62. 2.14
  (第42回審査会)

○審議

                    神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                                     (昭和60.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

筑波大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社代表取締役社長

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                                              (昭和62.2.14現在)(五十音順)

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本文ここまで
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