答申第12号

掲載日:2017年12月1日

答申第12号

                         昭和62年7月18日

   神奈川県人事委員会委員長  羽毛田 潔 殿

                    神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 昭和62年1月21日付けで諮問され、昭和62年7月1日付けで諮問の一
部取下げがあった、全職員リストのうち特定の職員に係る記載部分(氏名、所
属、種類、職名)全部非公開の件(諮問第14号)について、次のとおり答申
します。

1 審査会の結論
  全職員リストのうち特定の職員に係る記載部分(氏名、所属、種類及び職
 名)は、公開すべきである。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、全職員リストに記載された特定の職員の職場(部、
  課)及び階級(特定された公文書としては、全職員リストのうち特定の職
  員に係る記載部分(氏名、所属、種類及び職名))を神奈川県人事委員会
  (以下「人事委員会」という。)が昭和62年1月7日付けで非公開とし
  た処分の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、人事委員会が「当委員会が所管する全
  職員リストには、職員の所属、採用年月日、職務の級等が記載されている
  が、これらの情報は特定の個人が識別されるものに当たるため」神奈川県
  の機関の公文書の公開に関する条例(以下「条例」という。)第5条第1
  項第1号に該当するとした非公開の決定は、次に掲げる埋由から、条例の
  解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 公開請求の対象としての特定の県職員の「所属」、「種類」及び「職
   名」は、いずれも公務員の行政組織における職階に関する事項である。
   これら公務員の職階に関する事項は、国民全体の奉仕者である公務員が
   行政組織の一員として公務を遂行するに当たり、その具体的な権限行使
   を正当化する根拠としての地位、資格である。これら公務員の行政組織
   における職階に関する事項は、法令により定められた地位、資格であり、
   それ自体、個人に関する情報でないことは明らかである。仮にそれが特
   定の個人の属性であっても、公務員という公的地位に基づくもので、個
   人の私的な領域における事項とは性質を全く異にする。
  イ 公開請求の対象としての特定の県職員の「氏名」は、県の行政組織に
   所属する公務員を特定する情報であり、憲法上公務員が国民全体の奉仕
   者とされていることからすれば、単なる私人の氏名とは情報としての意
   義・性格を異にするものである。
  ウ 条例第5条第1項第1号の個人情報の範囲については単に条文の文言
   解釈にとどまらず、条例の立法趣旨及び解釈運用方針に照らして、その
   対象範囲を確定すべきである。
  エ 条例がいわゆる個人情報として保護を図った対象の中核は、県の実施
   機関により収集・蓄積された私人のいわゆるプライバシーに関する情報
   である。公開請求の対象としての特定の県職員の「氏名」、「所属」、
   「種類」及び「職名」(以下「本件対象部分」という。)は公務員の行
   政組織における職階に関する情報であって、いかなる意味においても個
   人の秘密あるいは個人の私生活に関する情報とはいえず、それ自体憲法
   上の公務員の地位から公表価値を有するものであり、条例が非公開によ
   り本来保護の対象とした情報では全くない。
  オ 神奈川県警察(以下「県警」という。)以外の行政組織の職員につい
   ては、神奈川県職員録(以下「県職員録」という。)において本件対象
   部分と同一の情報である氏名、所属及び職名が公表され、県自身この取
   扱いを従前より長年の慣行として承認してきているもので、既に非公開
   とすべき埋由はない。にもかかわらず、県が県警の職員の情報につき例
   外的に非公開としているが、何故このような扱いが正当化されるのか、
   合理的な理由は全くうかがえない。
  カ 本件対象部分と同一の、県警職員の氏名、所属及び職名については、
   昭和45年以前の県職員録においては公開されていた。過去において現
   実に公表されていたのであり、当時との比較において、現在非公開とし
   ている扱いを正当化する合埋的埋由は見いだし難い。
  キ 本件対象部分は、県の実施機関が過去において条例第5条第1項第1
   号の規定に形式的に該当する情報について公開している事案と比較した
   場合、公開の必要性は大きいと考えられる。また、条例の解釈及び運用
   の基準は、条例第5条第1項第1号ただし書イに該当する情報として、
   「審議会委員名簿」という具体的な例を挙げているが、この名簿がただ
   し書イに該当するならば、本件対象部分も同様に解するべきである。
  ク 本件対象部分と同一の情報は、従前、県自身が慣行上公表していたも
   のであり、かつ、公表することにより公務員自身が何ら被害を受けるも
   のでない。したがって、仮に本件対象部分が条例第5条第1項第1号に
   該当するという人事委員会の見解に立つとしても、同号ただし書イの適
   用は認められるべきである。
  ケ 条例第2条の解釈運用方針からすると、実施機関としては、仮に全職
   員リストの記載事項が条例第5条第1項第1号の要件を形式的に充たす
   としても、なお、具体的な事案に即して県民の知る権利の充足の必要性
   と個人のプライバシーの保護の必要性とを衡量の上裁量権を適切に行使
   しなければならない。
  コ 本件対象部分は、具体的事件に関与した疑いについて県民の知る権利
   の充足のため、公開する必要性が非常に大きい。また、本件対象部分を
   公開する以外に、特定の職員の身分を公的に確認できる代替手段はない。
   他方、本件対象部分は、公務員の行政組織における職階に関する情報で
   あって、情報公開の例外として保護されるべきプライバシーではなく、
   かつ、積極的な公表価値さえ持つものであり、これを非公開とする理由
   はおよそ認められない。

3 実施機関の職員(人事委員会事務局給与課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件全職員リストのうち特定の職員
  に係る記載部分(氏名、所属、種類及び職名)を非公開とした理由は、次
  のとおりである。
(1)人事委員会が保管している全職員リストは、昭和61年4月1日現在に
  おける、神奈川県職員及び市町村立学校職員の氏名、所属、種類、職名、
  採用年月日、適用給料表、級、号給、性別等のデータが入力されている
  「昭和61年人事統計・職員給与調査用マスターテープ(磁気テープ)」
  (以下「調査用マスター」という。)の一部を所定の様式に基づき打ち出
  したものであり、人事委員会が発行する「人事に関する統計報告」の動態
  統計を作成するに際して、参照資料として使用しているものである。
   また、調査用マスターに入力されているデータは、各任命権者が保管す
  る人事・給与に係る磁気テープに入力されているデータの中から、人事委
  員会が必要とするデータについて提供を受けて作成するものである。
   なお、全職員リストには、本件請求に係る職場(部、課)は所属として、
  また、階級は種類及び職名として、それぞれ記載されている。
(2)条例第5条第1項第1号本文について
   条例第5条第1項第1号本文は、個人に関する情報であって特定の個人
  が識別され、又は識別され得るものは非公開とすることができるとしてい
  る。
   この規定は、特定の個人に関する情報であれば、いわゆるプライバシー
  に当たるものはもとより、プライバシーであることが不明確なものであっ
  ても非公開とすることができることを明文をもって定め、また、公務員と
  その他の個人に関する情報とを区別して公開、非公開の判断を行うように
  は明文化されていない。
   (1)において述べたとおり、全職員リストに記載されている内容は、
  明らかに個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるものである。
  したがって、全職員リストに掲載されている内容は、条例第5条第1項第
  1号本文に該当する情報であると判断する。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報で、特定の個
   人が識別されるものであっても例外的に公開できる情報を規定したもの
   であるが、これを全職員リストについてみると、同号ただし書ア及びウ
   に該当する情報でないことは明らかである。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書イの規定は、公表することを目的と
   して作成し、又は取得した情報については公開することと定められてい
   るが、全職員リストは、(1)において述べたとおり、「人事に関する
   統計報告」の動態統計を作成するに際しての参照資料であって、それ自
   体公表することを目的として作成したものでなく、本件対象部分に係る
   情報は、従来から慣行上あるいは公務遂行上の埋由でも公表されたもの
   ではないので、同号ただし書イに該当しないと判断する。
  ウ 県警の職員については、幹部職員のみの氏名、所属及び階級が県職員
   録に掲載されているにすぎず、幹部職員以外の職員については、氏名等
   は掲載されていない。このような取扱いについて、警察本部に照会した
   ところ、昭和45年当時、第一線で取締活動に当たっている個々の警察
   官に対する公私にわたる監視、牽制活動が活発化する等の捜査上の支障
   及び本人あるいは家族に対して危害を加えられる危険性を避ける必要が
   あると判断したこと並びに県警は、県公安委員会の管理の下に、警察本
   部長を最高責任者に組織として活動しており、それぞれの所属における
   責任者である課長代理、次長等相当以上の職員を県職員録に掲載してお
   くことで、県民に対する利便上何ら支障が生じないと判断したことから、
   昭和46年以降、県職員録への掲載は行わなくなったとのことである。
(4)条例第5条第1項の規定は、同項各号のいずれかに該当する情報が記録
  されている公文書について実施機関の公開を拒む権限及び拒むことができ
  る情報の範囲を定めたものと解される。
(5)異議申立人は、請求に係る特定の人物がある事件に関与した疑いが持た
  れていることから公益上公開すべき必要性が大きいことを併せ主張してい
  るが、当人事委員会は、異議申立人が主張する事件について言及し、判断
  する立場にはない。

4 審査会の判断理由
(1)本件全職員リストの性格について
   人事委員会は、人事行政及び給与制度の適正な維持・運営を行う上に必
  要な統計資料を得るために、各任命権者からデータの提供を受けて、調査
  用マスターを作成し、保管している。本件全職員リストは、地方公務員法
  第8条第1項第1号の規定に基づく「人事に関する統計報告」の動態統計
  を作成するに際して参照資料として使用するために、調査用マスターの一
  部の項目を出力した文書であると認められる。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
   本件全職員リストに記載された特定の職員の氏名、所属、種類及び職名
  は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるものであるから、
  条例第5条第1項第1号本文に該当する情報であると判断する。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書ア及びウ該当性について
   条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報で特定の個人が
  識別されるものであっても、例外的に公開することができる情報を列挙し
  ている。当審査会は、本件対象部分がただし書のいずれかに該当するかど
  うか審議したが、当該情報が同号ただし書ア及びウに該当しないことは明
  白である。そこで、当該情報が同号ただし書イに該当するかどうか審議し
  た。
(4)条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  ア ただし書イは、公表することを目的として作成し、又は取得した情報
   は公開することとしている。ここで公表することとは、広報紙等を通じ
   広く県民一般に積極的に周知する場合だけでなく、事務事業の執行上又
   は行政の責務として県民の要望に応じて情報を提供することが予定され
   ているものも含まれると解される。
  イ ところで、国民主権原埋をとる憲法の下にあっては、行政組織は、直
   接間接に民意に基礎を置き民意を反映する組織でなければならないとと
   もに、行政組織に対する民主的コントロールの途が開かれ、行政の責任
   体制が明らかにされなければならないと考える。
    その観点から、県の職員の配属状況に関する情報は、県の組織に関す
   る情報として、県政の言わば主権者である県民の前に明らかにされるべ
   きものである。現に、県の知事部局等においては、各所属毎に配属して
   いる全職員の氏名及び職名を県職員録に掲載したり、執務室の入口に職
   員配置表を掲示するなどして、県民にその組織の状況を明らかにしてい
   るところであり、本件対象部分に係る情報もこの県職員録や職員配置表
   により公表されている情報と同様な情報であると認められる。このよう
   に組織に関する情報が公にされる結果として、職員個人の職名等が明ら
   かとなるが、この種の情報の公開は、公務員としては認容しているもの
   と考えられる。
  ウ 以上のことからすると、県の組織における職員の氏名、所属、種類及
   び職名という情報は、現実の取扱い状況等からみて、行政の責務として
   県民の要望に応じて情報を提供することが予定されているものとして扱
   われているというべきであって、条例第5条第1項第1号ただし書イに
   規定する公表することを目的として取得し、作成された情報であると認
   められる。本件全職員リスト自体は、公表することを目的として作成さ
   れたものではないが、本件対象部分に係る情報に限っていえば、このよ
   うな情報と同様な性格を有するものであると考えられる。
  エ したがって、本件全職員リストのうち特定の職員に係る氏名、所属、
   種類及び職名という情報は、条例第5条第1項第1号ただし書イに該当
   すると認められる。
(5)県警職員の県職員録への掲載状況について
  ア 本県の場合、県警の職員については、幹部職員以外の職員の氏名及び
   職名は県職員録に掲載されていない。実施機関の説明によると、昭和4
   5年当時、第一線で取締活動に当たっている個々の警察官に対する公私
   にわたる監視、牽制活動が活発化する等の捜査上の支障及び本人あるい
   は家族に対して危害を加えられる危険性を避ける必要があると判断した
   こと等から、昭和46年以降、県職員録への掲載は行わなくなった、と
   いうことである。
  イ 実施機関の説明する埋由を条例第5条第1項第1号の個人に関する情
   報との関係でみると、職員の氏名等が明らかになることによって、職員
   個人が私生活にわたる監視を受け、本人又は家族に対して危害を加えら
   れる危険性があるため、特に個人情報として保護されるべきであるとい
   う趣旨であると解される。
  ウ 県警が職員等の安全を図ろうとしていることは理解できる。しかし、
   職務に関連して職員等が嫌がらせを受けたり、時には危害を加えられる
   おそれがあるということは、他の一般職員や民間企業の役職員について
   もあり得ることであって、このことが、条例の適用上、知事部局等の職
   員と区別して、県警の職員の氏名、職名等を個人情報として特別に保護
   する合埋的根拠になるとは認められない。
(6)以上のことを総合すると、本件全職員リストのうち特定の職員に係る氏
  名、所属、種類及び職名という情報は、条例第5条第1項第1号本文の個
  人に関する情報であって、特定の個人が識別されるものであるが、同号た
  だし書イに該当する情報であると判断する。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                             審査会の処理経過

年月日

処理経過

 昭和62.1.21

○諮問

   62.1.22

○実施機関の職員(人事委員会事務局給与課長)に非公開理由説明書の提出要求

   62.1.29

○非公開埋由説明書の受理
○異議申立人に非公開理由説明書を送付

   62.2.14
  (第42回審査会)

○実施機関の職員(人事委員会事務局給与課長ほか)から非公開理由説明の聴取
○異議申立人及び代理人から意見の聴取
○異議申立人から求釈明書の受理
○審議

   62.2.28

○実施機関に求釈明書を送付

   62.3.12

○実施機関から求釈明書に対する回答書を受理

   62.3.16
  (第43回審査会)

○審議

   62.3.24

○異議申立人に求釈明書に対する回答書を送付

   62.4.25
  (第44回審査会)

○審議
○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受埋

   62.4.28

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   62.5.30
  (第45回審査会)

○審議

   62.6.20
  (第46回審査会)

○審議

   62.7.1

○諮問の一部取下げ

   62.7.18
  (第47回審査会)

○実施機関の職員(人事委員会事務局給与課長)及び関係者(警察本部警務部長)から説明及び意見の聴取
○審議

                      神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                                     (昭和62.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

筑波大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社代表取締役社長

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                                             (昭和62.7.18現在)(五十音順)

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本文ここまで
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