答申第13号

掲載日:2017年12月1日

答申第13号

                          昭和63年2月6日

   神奈川県知事 長洲 一二 殿

                   神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 昭和62年8月25日付けで諮問された昭和59年度通常砂防工事に係る残
地求積図(特定された公文書としては、延命沢残地丈量図)全部非公開の件
(諮問第15号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
  延命沢残地丈量図を非公開としたことは、妥当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、昭和59年度通常砂防工事(延命沢、足柄上郡松
  田町松田惣領地先)(以下「本件工事」という。)に係る残地求積図(特
  定された公文書としては、延命沢残地丈量図。以下「残地丈量図」という。)
  を神奈川県知事が昭和62年6月23日付けで非公開とした処分の取消し
  を求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「特定の個人の情報が
  記載されており、形状、寸法及び面積が明らかになるため」神奈川県の機
  関の公文書の公開に関する条例(以下「条例」という。)第5条第1項第
  1号に該当するとした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈
  及び運用を誤っている、というものである。
  ア 残地丈量図は正規契約により納品されたものではなく、後日ねつ造さ
   れた疑いがあり、そこに記載された土地の形状、寸法及び面積は架空の
   ものと思われるので個人情報には当たらない。たとえ、そこに記載され
   た情報が個人情報に該当する情報であるとしても、文書ねつ造の再発防
   止のために積極的に公開すべきものである。
  イ 2年ほど前に本件工事に係る丈量図を請求したときには、いわゆる潰
   地丈量図のみが公開され、残地丈量図についてはその存在の有無すら回
   答されなかった。そのときには、残地丈量図はなかったので、実施機関
   として回答することができなかったものと思われる。

3 実施機関の職員(松田土木事務所長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、残地丈量図を非公開とした理由は、
 次のとおりである。
(1)残地丈量図について
   残地丈量図は、本件工事の事業用地として買収する予定の土地が含まれ
  る各筆の土地であって買収されずに残る部分の土地、いわゆる残地のうち、
  一部の所有者の残地(以下「本件残地」という。)について各筆ごとに面
  積を算出するため測量して、その結果を表示した縮尺250分の1の地積
  の測量図である。そして、残地丈量図には本件残地の地番、形状、寸法及
  び面積、そこに記載された内容を確認する旨の所有者の記名及び押印等が
  記載されている。
   なお、残地丈量図は、本件工事の実施に当たり、その工事計画の説明を
  買収予定地の所有者に行った際、一部の所有者から残地の面積を明らかに
  して欲しい旨の強い要望が出されたために、用地交渉の円滑な推進を図る
  観点から作成されたものであって、異議申立人が主張する後日ねつ造され
  たという事実はない。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
   残地丈量図には、特定の個人が所有する土地について一筆ごとの形状、
  寸法及び面積の実測値等が記載されている。これらの情報は、個人の財産
  の状況を示すものであり、また、そのうちの記名及び押印の部分は特定の
  個人の意思表示に関する情報である。
   したがって、残地丈量図に記載された情報は、条例第5条第1項第1号
  本文に該当する個人に関する情報であって、特定の個人が識別されるもの
  であることは明らかである。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書について
   条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報であっても、例
  外的に公開できる情報を規定したものであるが、同号ただし書の解釈及び
  運用は、条例第2条後段に規定する個人情報原則非公開の趣旨に即して厳
  格に行われるべきである。
   一筆の土地の所有者、形状、面積等は不動産登記法の規定によって何人
  でも閲覧することができるとされている情報である。しかし、山間部では
  実測した土地の面積、形状等は、同法の規定により閲覧できる登記簿記載
  面積等と異なることが多い。本件残地についても、現実に実測した数値等
  は登記簿記載面積等と異なっている。したがって、残地丈量図に記載され
  た本件残地の面積、形状等は、同法の規定によっては知り得ない情報とな
  っており、実測と登記簿等の内容とがどの程度異なっているかを示す情報
  で、個人にとって他人に知られたくない情報である。
   以上のことから、残地丈量図に記載された情報は、条例第5条第1項第
  1号ただし書アに該当しない。また、同号ただし書イ及びウに該当しない
  ことは明らかである。
   なお、残地丈量図は、隣接土地所有者の境界立会いを受けてなく、確定
  された境界に基づいて作成されたものではない。これを公開すれば、隣接
  土地所有者との間で土地の境界争いの原因となるおそれがある。

4 審査会の判断理由
(1)残地丈量図の性格について
   残地丈量図には、本件残地を測量した結果が縮尺250分の1で表示さ
  れ、各筆ごとに算出された面積が記載されている。あわせて、本件残地の
  隣接土地の形状が記載されている。また、残地丈量図の求積表にはその内
  容を確認する旨の本件残地所有者の個人の記名及び押印がなされている。
   しかし、残地丈量図に記載された内容から、隣接土地所有者は境界確認
  を行っていないことが認められる。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
   残地丈量図に記載されている個人の記名及び押印の部分は、残地丈量図
  に記載された内容を確認する旨の個人の意思表示に関する情報であって、
  特定の個人が識別される情報である。また、本件残地の形状、寸法及び面
  積が記載されている部分は、不動産登記簿等の他の情報と照合することに
  より特定の個人が識別され得る個人に関する情報である。したがって、残
  地丈量図に記載されている個人の記名及び押印の部分並びに本件残地の形
  状、寸法及び面積の部分は、いずれも条例第5条第1項第1号本文に該当
  する情報であると判断する。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報で、特定の個
   人が識別されるものであっても、例外的に公開できる情報を列挙してい
   るが、当審査会は、残地丈量図のうち個人の記名及び押印の部分は同号
   ただし書ア、イ及びウのいずれにも該当しないものであると判断する。
  イ 次に、残地丈量図に記載されている本件残地の形状、寸法及び面積に
   ついて検討する。
  (ア)不動産登記法では、何人といえども手数料を納付して、登記簿の謄
    本若しくは抄本又は地図若しくは建物所在図の全部若しくは一部の写
    しの交付を請求することができること、また、利害の関係ある部分に
    限り登記簿若しくはその付属書類又は地図若しくは建物所在図の閲覧
    を請求することができることが規定されている(同法第21条第1項)。
     このような取扱いとなっているのは、不動産登記制度というものが、
    登記簿等に不動産の客観的状況とその不動産についての権利関係を記
    載し、それを一般に公開することによって不動産取引の安全に寄与す
    るためのものであるので、登記所に備え付けられている登記簿等を公
    開しなければ、制度の目的が達せられないためであると考えられる。
     したがって、制度上からは一筆の土地の形状、寸法、面積等は何人
    でも知り得る情報であるといえる。
  (イ)しかしながら、残地丈量図は、隣接土地所有者の境界立会いを受け
    ていないことから、確定された境界に基づいて作成されたものではな
    いことが認められる。このことと、残地丈量図が本件残地所有者の要
    望に基づき作成されたという経過等からすれば、残地丈量図に記載さ
    れた本件残地の形状、寸法及び面積は、一方的に自らの土地の範囲を
    確認するという本件残地所有者の意思を表示したにすぎないというべ
    き情報であって、不動産登記制度が予定している土地の客観的状況を
    示す情報と同様の性質を有する情報とは認められない。
  (ウ)したがって、一筆の土地の形状、寸法及び面積は不動産登記法の規
    定により何人でも知り得るとされている情報であるが、残地丈量図に
    記載された本件残地の形状、寸法及び面積については、条例第5条第
    1項第1号ただし書アに該当しない情報であると判断する。
     また、同号ただし書イ及びウに該当するか否かについて審議したが、
    当審査会はいずれにも該当しないと判断する。
(4)条例第5条第2項の適用について
   当審査会は、残地丈量図について、部分公開することができるかどうか
  についても審議したが、条例第5条第2項に規定する「公文書の閲覧又は
  公文書の写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理的に分離できる」
  場合に該当しないものと判断する。
(5)その他
   異議申立人は残地丈量図はねつ造された疑いがあると主張しているが当
  審査会は、公文書の閲覧等の請求を実施機関が拒んだ場合において、実施
  機関の判断が妥当であったか否かについて審議するのであって、そのよう
  なことについて調査審議するものではない。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                             審査会の処理経過

年月日

処理経過

 昭和62.8.25

○諮問
○実施機関の職員(松田土木事務所長)に非公開理由説明書の提出要求

   62.9.2

○非公開理由説明書の受理

   62.9.3

○異議申立人に非公開理由説明書を送付

   62.9.12
  (第48回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員(松田土木事務所長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   62.10.31
  (第49回審査会)

○審議

   62.11.21
  (第50回審査会)

○審議

   62.12.26
  (第51回審査会)

○審議

   63.2.6
  (第52回審査会)

○審議

                     神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                                      (昭和62.4.1委嘱)

氏   名

現    職

備   考

黒羽 亮一

筑波大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社代表取締役社長

会  長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                                              (昭和63.2.6現在)(五十音順)

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本文ここまで
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