答申第14号

掲載日:2017年12月1日

答申第14号

                          昭和63年2月6日

   神奈川県知事  長 洲  一 二  殿

                    神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 昭和62年8月25日付けで諮問された昭和58年度通常砂防工事に係る測
量調査実施設計書一部非公開の件(諮問第16号)について、次のとおり答申
します。

1 審査会の結論
  昭和58年度通常砂防工事(柿ノ木平川、愛甲郡清川村煤ケ谷地先)測量
 調査実施設計書の実施設計金額並びに実施設計金額の算出の基礎となる単価、
 金額及び歩掛り並びにこれらに係る計算式を非公開としたことは、妥当であ
 る。ただし、別紙に指定する箇所はこれらの情報に該当しないので、公開す
 べきである。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、昭和58年度通常砂防工事(柿ノ木平川、愛甲郡
  清川村煤ケ谷地先)測量調査実施設計書(以下「本件実施設計書」という。)
  の一部を神奈川県知事が昭和62年6月23日付けで非公開とした処分の
  取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての埋由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「今後の測量委託の契
  約における予定価格がほぼ正確に推測されることになり、契約事務の円滑
  な実施を著しく困難にするおそれがあるため」神奈川県の機関の公文書の
  公開に関する条例(以下「条例」という。)第5条第1項第5号に該当す
  るとした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤
  っている、というものである。
  ア 本件実施設計書により作成された面積計算図及び本件実施設計書の中
   の単価起算書はねつ造された疑いがあり、本件実施設計書はそれを明ら
   かにするのに必要な文書であるため公開されるべきである。これを非公
   開とすることは、県民の県への信頼を失わせる結果となるので条例第1
   条の目的に反する。
  イ 公文書の閲覧等の請求承諾通知書の「公開することができない部分の
   概要」の欄には、単価、金額と記載されているが、工事内訳書及び一位
   単価表の数量欄及び摘要欄には単価、金額が書かれているはずがない。
   また、単価起算書に書かれているであろう面積計算のための数字は単価、
   金額ではない。理由を明らかにしないでこれらを非公開とするのは不法、
   不当である。

3 実施機関の職員(厚木土木事務所長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件実施設計書のうち実施設計金額
 並びに実施設計金額の算出の基礎となる単価、金額及び歩掛り並びにこれら
 に係る計算式等(以下「本件単価、金額等」という。)を非公開とした理由
 は、次のとおりである。
(1)本件実施設計書について
  ア 本件実施設計書は、通常砂防工事(ダム工)を実施するための設計資
   料を得ることを目的に、測量業者に当該砂防工事に関係する土地の測量
   調査を委託するに際して作成されたものである。
  イ 当該測量調査の主な目的は、通常砂防工事の事業実施に必要な用地と
   して買収を予定している土地の面積を算出する丈量図及び砂防計画拡大
   について建設省に説明するために、いわゆる概算潰地面積を算出する面
   積計算図を作成することである。
  ウ 本件実施設計書は、工事概要、起工理由、本工事費内訳書、工事内訳
   書、一位単価表、単価起算書等から構成されており、本件実施設計書に
   係る測量調査(以下「本件測量調査」という。)の内容を明らかにする
   とともに、それに要する費用の総額を算出したものである。
  エ 本件実施設計書による費用の算出は、毎年土木部において設定する「
   設計単価表」及び「土木工事積算基準及び標準歩掛」に定められた設計
   単価及び歩掛りをもとに行われており、単価起算書もこれらをもとに作
   成されたものである。
    なお、「設計単価表」及び「土木工事積算基準及び標準歩掛」は、関
   係職員のみが取り扱うこととしており、関係職員以外に漏えいすること
   のないように厳重な管理を行っているところである。
    本件実施設計書には、ねつ造、改ざん等異議申立人の主張する不正が
   存在する余地はない。
(2)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 契約金額を決定する際の予定価格は、落札決定の基準とするため入札
   執行権者が設計書等により定めるものであり、予定価格が入札参加者に
   知られると契約事務の公正かつ適正な実施ができなくなる。したがって、
   予定価格の秘密性は厳格に保つべきものであり、そのため、予定価格の
   作成に当たっては、直接契約に関係する責任職員以外の者をこれに関与
   させることなく、厳にこれが漏れることを防止している。
  イ 本件測量調査の契約は随意契約の方法により行われており、契約に当
   たっては、予定価格を本件実施設計書等によって作成し、複数の業者か
   ら見積書を徴し、契約の相手方を決定しているが、アに述べたような予
   定価格の取扱いは、随意契約の場合においても一般競争入札又は指名競
   争入札の場合と同様である。
  ウ 本件実施設計書に記載された本件単価、金額等は予定価格に直接結び
   つく情報であり、公開されると契約事務の公正性及び適正性が保てない。
  エ 本件測量調査は既に事業が実施済みのものであるが、もし本件単価、
   金額等を公開すれば、労務単価、資材単価等の上昇率から、現在の単価、
   金額等が推測されるため、今後の測量調査委託契約事務、ひいては県の
   契約事務全般にわたり公正かつ円滑な実施が極めて困難になるおそれが
   強い。
  オ 本件実施設計書の工事内訳書及び一位単価表の数量欄及び摘要欄並び
   に単価起算書には、「設計単価表」及び「土木工事積算基準及び標準歩
   掛」に係る実施設計金額の算出の基礎となる情報が含まれているため、
   単価及び金額と一体のものであるという考え方のもとに、事業実施に当
   たり見積合せに参加した業者にも説明していない箇所と同じ部分を非公
   開としたものである。

4 審査会の判断理由
(1)本件実施設計書の性格について
   本件実施設計書は、本件測量調査に要する実施設計金額を積算したもの
  であり、本件測量調査委託契約の予定価格を定めるもととなったものであ
  ると認められる。この中には、実施設計金額の外に実施設計金額の算出の
  基礎となる単価、金額、歩掛り、作業の種類及び数量等が記載されている。
(2)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、県の機関又は国等の機関が行う検査、監
   査、取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価格、
   試験の問題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は
   事業の性質上、公開することにより、当該事務又は事業の実施の目的を
   失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれ
   のあるものは、非公開にすることができるとしている。
  イ 一般競争入札、指名競争入札又は随意契約(以下「入札等」という。)
   の予定価格が入札等の参加者に知られると契約事務の公正かつ適正な実
   施ができなくなることから、予定価格の秘密性は厳格に保つべきもので
   あり、そのため、実施機関が直接契約事務に関係する責任職員以外の職
   員に関与させることなく、厳にこれが漏れることを防止しているという
   ことは埋解できる。
  ウ 測量調査に要する費用を算出するために用いる設計単価及び歩掛りが
   掲載されている「設計単価表」及び「土木工事積算基準及び標準歩掛」
   は、実施機関においては関係職員のみが取り扱うこととしており、関係
   職員以外に漏えいすることのないように厳重な管埋がなされていること
   も入札等の契約事務の公正かつ適正を期すために必要なことであると認
   められる。
  エ 実施機関において予定価格等がイ及びウで述べたように取り扱われて
   いること並びに実施設計金額は予定価格そのものではないが、予定価格
   が実施設計金額を算出した実施設計書等に基づいて定められるものであ
   ることからすると、実施設計書に記載された実施設計金額並びに実施設
   計金額の算出の基礎となる単価、金額及び歩掛り並びにこれらに係る計
   算式は予定価格に結びつく情報であって、公開すると契約事務の円滑な
   実施を著しく困難にするおそれがあるものと認められる。
  オ 本件実施設計書は、昭和58年度に作成されたもので、既に測量調査
   自体も完了しており、その中に記載された実施設計金額並びに実施設計
   金額の算出の基礎となる単価、金額及び歩掛りは、昭和58年度当時の
   ものであり、現行のものとは異なっているところがある。
    しかしながら、神奈川県土木部が毎年「設計単価表」及び「土木工事
   積算基準及び標準歩掛」を設定しているのは、労務単価、資材単価等の
   変動の有無、程度等を検討して実勢価格等とかい離しないようにしてい
   る趣旨であると解されることから、昭和58年度当時の単価、金額等を
   公開すると、労務単価、資材単価等を比較することにより、現在の単価、
   金額等を推測することは可能であると考えられる。また、入札等が終了
   し、落札価格が公表された後においても当該入札等の予定価格は公表さ
   れないのが一般的であると認められる。
  カ 以上のことから、本件実施設計書に記載された実施設計金額並びに実
   施設計金額の算出の基礎となる単価、金額及び歩掛り並びにこれらに係
   る計算式を公開すると、今後の測量調査委託の実施設計金額が推知され、
   その結果入札等の予定価格が推測されることとなり、今後の同種の契約
   事務の円滑な実施を著しく困難にするおそれがあると認められる。
    したがって、本件実施設計書に記載された実施設計金額並びに実施設
   計金額の算出の基礎となる単価、金額及び歩掛り並びにこれらに係る計
   算式は、条例第5条第1項第5号に該当する情報であると判断する。
  キ しかしながら、本件実施設計書において非公開とした部分のうちの本
   工事費内訳書及び工事内訳書の摘要欄の記載部分並びに用地幅杭設置に
   係る一位単価表の変化率記載部分については、実施設計金額並びに実施
   設計金額の算出の基礎となる単価、金額及び歩掛り並びにこれらに係る
   計算式に該当しない情報が含まれていると認められる。
    したがって、別紙1に指定する箇所はこれらの情報に該当しないので、
   公開すべきであると判断する。
(3)その他
   異議申立人は本件実施設計書の一部はねつ追された疑いがあると主張し
  ているが、当審査会は、公文書の閲覧等の請求を実施機関が拒んだ場合に
  おいて、実施機関の判断が妥当であったか否かについて審議するのであっ
  て、そのようなことについて調査審議するものではない。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処埋経過は、別紙2のとおりである。

別紙1

 本件実施設計書の本工事費内訳書及び工事内訳書の摘要欄の記載部分並びに
用地幅杭設置に係る一位単価表の変化率記載部分の中で、次の記載事項を除く
箇所。(非公開とした部分に関する具体的な指定であるため、この資料からは、
削除した。)

別紙2

                           審査会の処理経過

年月日

処理経過

 昭和62.8.25

○諮問
○実施機関の職員(厚木土木事務所長)に非公開埋由説明書の提出要求

   62.9.2

○非公開理由説明書の受埋

   62.9.3

○異議申立人に非公開埋由説明書を送付

   62.9.12
  (第48回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員(厚木土木事務所長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   62.9.21

○異議申立人から非公開埋由説明書に対する意見書の受理

   62.10.22

○実施機関の職員(厚木土木事務所長)に非公開埋由説明書に対する意見書を送付

   62.10.31
  (第49回審査会)

○審議

   62.11.21
  (第50回審査会)

○審議

   62.12.26
  (第51回審査会)

○審議

   63.2.6
  (第52回審査会)

○審議

                  神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                                      (昭和62.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

筑波大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社代表取締役社長

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                                               (昭和63.2.6現在)(五十音順)

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本文ここまで
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