答申第15号

掲載日:2017年12月1日

答申第15号

                        昭和63年12月24日

   神奈川県知事 長洲 一二殿

                    神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 昭和63年4月22日付けで諮問された国鉄清算事業団用地件名表及び付属
図面一部非公開の件(諮問第17号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
(1)国鉄清算事業団用地件名表のうち、表紙中の記号及び記号の説明の部分
  は公開すべきである。
(2)その他の部分を非公開としたことは、妥当である。

2 異議申立人の主張
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、国鉄清算事業団用地件名表(以下「用地件名表」
  という。)のうち個々の用地に付された記号(以下「本件記号」という。)
  並びに表紙中の記号及び記号の説明の部分(以下「凡例」という。)並び
  に付属図面のうち平面図(以下「平面図」という。)を神奈川県知事が昭
  和63年2月17日付けで非公開とした処分の取消しを求める、というも
  のである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「売却方針を示す法人
  内部の情報であり、公開することにより事業団の売却業務に障害を生じ、
  明らかな不利益を与える」ため、神奈川県の機関の公文書の公開に関する
  条例(以下「条例」という。)第5条第1項第2号に該当するとした非公
  開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、と
  いうものである。
  ア 凡例は、日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)の個々
   の用地の具体的な売却方針を示すものではない。埼玉県では同様の文書
   が公開されており、2種類の記号について概括的な説明がなされている。
   この程度のものを公開しても事業団の用地処分業務に支障を生じること
   はない。
  イ 本件記号が上記2種類であるとすれば、この程度の概括的な記号では
   個々の用地の個別具体的な「売却方針」や「評価」が分からず、企業利
   益と呼べるような技術上のノウハウに関する情報ではないので、これを
   公開しても、事業団の企業としての競争上の地泣を脅かすものではなく、
   事業団の用地処分業務に支障を生じることはない。
  ウ 大規模用地については、事業団からのプレス・リリースの形で売却予
   定の内容が新聞報道で既に明らかになっており、本件記号を公開しても
   法人に不利益を与えるとは考えられない。
  エ 大阪府では平面図と同じ内容と思われる「1件5,000平方メートル以上物件
   図目録」という図面が市民の求めに応じて情報提供されている。
    公開された用地件名表及び位置図と他の公開されている情報とを照合
   することで、おおよその位置及び形状をつかむことができる。当該土地
   に投機的価値があるならば、業者は既にそうしたことを行っているはず
   であり、平面図の公開で周辺土地の買収や値上がりを招くとするのは誤
   りである。
  オ 法人の不利益情報として、当該情報の公開の是非を検討する場合には
   事業団の特殊性(公共性)を前提にすべきである。事業団は法人である
   が、旧国鉄用地という公共用地の処分を業務としている点で通常の法人
   とは異なる。
  カ 事業団が個々の用地について売却を予定しているか、売却が困難と考
   えているかが分からなければ、市民はその土地の公共利用を地方公共団
   体や事業団に働きかけることができない。また、そのためには土地のお
   およその位置、形状等も知っておかなければならない。その意味から、
   本件記号及び凡例並びに平面図は公益上公開が必要であるといえるので、
   条例第5条第1項第2号ただし書ウに該当し、公開すべきである。

3 実施機関の職員(都市部都市政策課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件記号及び凡例並びに平面図を非
 公開とした理由は、次のとおりである。
(1)用地件名表及び付属図面について
  ア 事業団用地の多くは市街地の中心部に位置し、その処分や利用のあり
   方は、再開発事業の推進等地方公共団体の都市づくりに重大な影響を与
   えるものであることから、用地の処分に当たっては地元地方公共団体の
   利用意向を尊重し優先的に譲渡することが、事業団に対する社会的な要
   請となっている。
    用地件名表及び付属図面は、地元地方公共団体の具体的利用計画の有
   無を把握するため、あらかじめ事業団から提供されたものである。
  イ 用地件名表には、県下241箇所の処分予定地について、番号、件名、
   所在地及びおおよその面積(1,000平方メートル単位)が記載され
   ており、併せて個々の用地に事業団の売却方針に関連する記号が付され
   ている。
    また、付属図面は、位置図3枚と売却方針に関連する一部の用地の所
   在を示す平面図40枚とからなるものである。
  ウ ところで、事業団は、貨物ヤード跡地等の大規模用地が重要な債務償
   還財源であるとともに、地域整備に活用し得る空間であることから、有
   効かつ適切な土地利用計画の策定に努めることを基本方針としている。
   また、事業団用地の多くについて、鉄道施設等の撤去及び移設又は道路
   及び下水道等の公共施設の整備を進めるとともに、必要に応じ用途地域
   等の変更を経るなど、付加価値を付けて処分すべきものとしている。
  エ 本件記号は、上記の基本方針に沿った資産の重要度の評価や段階的な
   処分計画上での評価等、個々の用地の売却方針を表したものである。な
   お、方針としての精度について、当該資料の提供を受けた以降の調整状
   況等から判断すると、必ずしも個々の土地の経緯等が十分に把握されし
   尽くされていない、一部未成熟な判断を含む売却方針であったものとい
   える。
(2)条例第5条第1項第2号本文該当性について
  ア 異議申立てのあった本件記号及び凡例並びに平面図については、これ
   を公開した場合、不当な目的に基づく隣接地の買収等を発生させて事業
   団用地の利用価値を低下させるなど、事業団の用地処分業務に支障を生
   ずる可能性がある。
    また、投機的行為による周辺土地の値上がりが社会的問題を引き起こ
   すおそれのあること、用地件名表に記載された面積や平面図の用地境界
   線の表示が概略のものであり未成熟部分も含むことから、関係地権者の
   誤解等を生じて権利関係の紛争を招くおそれのあることなど、事業団の
   用地処分業務の支障になることも予想される。
  イ 本件記号及び凡例は一体のものとして、事業団側で業務遂行上の基本
   方針に沿って資産の重要度の評価や段階的な処分計画上での評価等、個
   々の土地の売却方針を表したものである。
    この記号は、国や国民経済全体にも影響する膨大な債務を国鉄から承
   継した事業団の業務遂行上の内部情報であり、26兆円もの天文学的債
   務償還のため、特殊法人として設立された事業団の用地処分業務を行う
   うえで最も重大な売却方針を明らかにしたものである。
  ウ 事業団は、現在旅客鉄道株式会社等及びその他の隣接地権者の立会い
   のもとに、実測により境界確定を行っているところであり、用地件名表
   に記載された面積は、実測により求められたものではない。そのため表
   示も1,000平方メートル単位とされている。しかし、平面図は、当
   該位置を太線で囲って示してあり、それが正確な面積及び用地境界線を
   示すものとして誤解されかねない。
    したがって、面積や用地境界線の表示において未成熟部分を含む平面
   図を公開すると、関係地権者の誤解等を生じさせて権利関係の紛争を招
   かないとはいえず、事業団の事業を遅延させるおそれがある。
  エ また、用地件名表に記載されている所在地は、半数以上が大字までし
   か記載されてなく、地番が記載されている物件でも必ずしも登記簿及び
   公図上に示されたすべてを記載したものではない。平面図の公開は、物
   件のおおむねの位置を示すのみならず、隣接の道路条件及び周辺施設の
   立地条件のほか、その土地が利用しやすい地形及び形状かどうかなど様
   々な情報を提供することになる。
    公開された場合、周辺土地や対象地そのものに、公共性という観点を
   欠いた、市民の福祉の増進に反する土地利用が発生するとすれば、地元
   住民もさることながら、県民全体にかかわる問題である。このことによ
   り、事業団用地の利用価値が低下したり、これら投機的行為による周辺
   土地の値上りが社会問題化するおそれがある。
  オ 以上のとおり、本件記号及び凡例並びに平面図は、ともに売却方針に
   関する法人内部の情報であり、公開することにより事業団の用地処分業
   務に障害を生じ明らかに不利益を与えるものである。
(3)条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号ただし書は法人の事業活動により個人に与え
   る危害からの保護等のため、当該法人に不利益がある情報であっても例
   外的に公益性の重視を認めるものである。しかし、本件記号及び凡例並
   びに平面図は、個人に与える危害等からの保護等のために公開が必要で
   ある情報又はそれに準ずる情報ではない。
  イ また、上記(2)「条例第5条第1項第2号本文該当性について」に
   おいて述べたとおり、申立てに係る情報の公開は事業団の用地処分業務
   に支障を来たすおそれがあるが、このことは、異議申立人も主張してい
   る事業団の公共的性格を勘案した場合、公共的な活動の阻害となり、か
   えって公益に反する可能性がある。
  ウ さらに、事業団用地は、地方公共団体等が公共目的のため利用する場
   合に随意契約で譲渡するものの、基本的には一般競争入札により処分す
   ることとされ、そのための入札規則が定められているが、この入札規則
   によれば、公告により入札日の一定期日前に初めて図面等を閲覧させる
   ことになっている。したがって、特定個人に対して、公告以前に図面及
   び売却方針に結び付く情報を提供することは入札の公平さを欠くことに
   もなり、公益に反する。
    以上のとおり、申立てに係る情報は、条例第5条第1項第2号ただし
   書ア、イ及びウのいずれにも該当しない。

4 審査会の判断理由
(1)用地件名表及び平面図の性格について
   用地件名表及び平面図は、事業団が神奈川県内の地元地方公共団体の具
  体的な土地利用計画の有無を把握するため、神奈川県に調査依頼する際に
  提供したものである。このうち、用地件名表の内容は、本件記号及び番号
  を除いては既に記者発表等で公表されている情報であると認められる。本
  件記号は、凡例と一体となって、個々の処分予定地についての事業団の売
  却方針を示すものであると認められる。また、平面図は、用地件名表のう
  ちある特定の記号が付された用地の所在を示した2,500分の1の縮尺
  の図面である。
(2)条例第5条第1項第2号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号は、法人その他の団体(国及び地方公共団体
   を除く。以下「法人等」という。)に関する情報であって、公開するこ
   とにより、当該法人等に明らかに不利益を与えるものは、非公開とする
   ことができるとしている。
  イ 事業団は、日本国有鉄道清算事業団法によって設立された特殊法人で
   あるので、条例第5条第1項第2号の法人等に該当する。
    事業団は、事業団用地が膨大な債務の重要な償還財源であることから、
   それをできるだけ早期に、計画的かつ効率的に処分することを基本的考
   え方としている。その一方で、事業団は、その用地が地域整備に活用し
   得る空間であることから、関係地方公共団体の意見を聴いたうえ、地域
   整備に有効かつ適切に利用されるよう配慮しつつ、処分地の資産価値が
   最大限増大し、債務の円滑な償還等に資するような土地利用計画の策定
   に努めることとしている。事業団が用地処分に当たって、地元地方公共
   団体の土地利用計画を調査したのは、地方公共団体の要望に配慮したこ
   とによるものであり、そのために、用地の売却方針を示したものと認め
   られる。
  ウ 法人等の用地売却方針の中には、当該法人等がその意図に基づいて自
   ら公表したもの以外は専ら法人内部の情報であって、公開することによ
   り当該法人等に明らかに不利益を与える情報があると考えられる。事業
   団の売却予定地は既に公表されており、その用地は債務償還財源として、
   いずれ何らかの形で処分されることは国民周知の事実である。しかし、
   事業団が、個々の用地の売却方針を地元地方公共団体に示し、調査依頼
   に当たり、これらの情報が公開されないように慎重な取扱いを求めてい
   るのは、個々の用地をどのように処分していくかが、事業団の事業情報
   として重大なものと判断しているためと認められる。
    したがって、事業団の売却方針を示す凡例及び本件記号は、公開する
   ことにより法人に明らかに不利益を与える情報であり、条例第5条第1
   項第2号本文に該当する情報であると判断する。
  エ しかし、本件記号又は凡例のいずれか一方を公開しても、それだけで
   は、個々の用地の売却方針を直ちに明らかにすることにはならない。
    本件記号は個々の用地に結び付いて何らかの意味のあることを示すの
   に対し、凡例は個々の用地との結び付きがない。したがって、凡例は、
   これを公開しても法人に明らかに不利益を与える情報ではないと認めら
   れ、条例第5条第1項第2号本文に該当する情報ではないと判断する。
  オ 平面図は、上記(1)に述べたとおり、用地件名表のうちある特定の
   記号が付された用地の所在を示す図面であって、その記号の意味すると
   ころから個々の用地の売却方針に結び付いている。このことは、平面図
   が用地件名表の一部の用地について作成されたものであることと、事業
   団が土地利用計画の調査のために提出した資料であることとを合わせ考
   えれば、容易に推察できる。したがって、平面図は本件記号と同様、公
   開することにより法人に明らかに不利益を与えるものと認められ、条例
   第5条第1項第2号本文に該当する情報であると判断する。
    なお、異議申立人が主張している大阪府の「1件5,000平方メートル以上物
   件図目録」という図面の公開に関して、当審査会が確認したところ、大
   阪府の事例は事業団が、5,000平方メートル以上の用地について一
   律に図面を添付してきたものであり、個々の用地の売却方針に関連して
   図面が提供された本県の場合とは異なるものである。
(3)条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
   条例第5条第1項第2号本文に該当する情報であっても同号ただし書ア、
  イ又はウに該当するものは公開することとされている。
   異議申立人は、事業団用地の公共利用を地方公共団体等に働きかけるた
  めの公益上の必要性があるので、本件記号及び平面図は、同号ただし書ウ
  に該当すると主張する。しかし、同号ただし書ウは、法人の事業活動によ
  って生ずる人の生命身体への危害からの保護又は消費者保護という具体的
  な保護法益に準ずるものについて公開することを公益上必要と認めるもの
  であって、異議申立人の主張するような一般的な公益性を根拠にして、公
  開を認めているものではない。
   したがって、本件記号及び平面図は同号ただし書のいずれにも該当しな
  いと判断する。
(4)その他
   本件異議申立てに係る公開請求に対する実施機関の諾否の決定は、昭和
  63年2月17日に行われているが、当審査会が実施機関に確認したとこ
  ろ、同年3月9日から3月22日の間に、事業団と県又は2町との間で3
  件の売買契約が結ばれていることが明らかになった。このうち、用地件名
  表の番号113については、用地のごく一部について売却されたもので、
  その残地があるが、番号194及び番号199の2件については、売却済
  みとなっており、この2件に係る本件記号と平面図は、現時点では、もは
  や、公開することによって事業団に不利益を与える情報ではない。
   したがって、本件記号のうち番号194及び番号199に係る部分並び
  に平面図のうち番号194に係る図面の当該番号の部分及び番号199に
  係る図面は、現時点では、条例第5条第1項第2号本文に該当しないと判
  断する。
   当審査会は、これらの情報について再度閲覧等の請求があれば、公開さ
  れるべきものと考える。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                            審査会の処理経過

年月日

処理経過

 昭和63.4.22

○諮問
○実施機関の職員(都市部都市政策課長)に非公開理由説明書の提出要求

   63.5.13

○非公開理由説明書の受理
○異議申立人に非公開理由説明書を送付

   63.6.3

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

   63.6.10

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   63.6.18
  (第54回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員(都市部都市政策課長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   63.7.30
  (第55回審査会)

○審議

   63.10.8
  (第56回審査会)

○審議

   63.11.26
  (第57回審査会)

○審議

   63.12.10
  (第58回審査会)

○審議

   63.12.24
  (第59回審査会)

○審議

                      神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                                      (昭和62.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

筑波大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社代表取締役社長

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                                             (昭和63.12.24現在)(五十音順)

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本文ここまで
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