答申第16号

掲載日:2017年12月1日

答申第16号

 

                        昭和63年12月24日

 

   神奈川県知事 長洲  一二 殿

 

                   神奈川県公文書公開審査会 会長  原 寿雄

 

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 

 昭和63年4月22日付けで諮問された事業団用地に関する地方公共団体の
利用計画調査表及び添付資料全部非公開の件(諮問第18号)について、次の
とおり答申します。

 

 

 

1 審査会の結論
(1)事業団用地に関する地方公共団体の利用計画調査表のうち、番号、件名、
  所在地及び面積の各項目の記載事項は、公開すべきである。
(2)その他の部分を非公開としたことは、妥当である。

2 異議申立人の主張
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、事業団用地に関する地方公共団体の利用計画調査
  表(以下「利用計画調査表」という。)及び添付資料を神奈川県知事が昭
  和63年2月17日付けで非公開とした処分の取消しを求める、というも
  のである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「今後変更もあり得る
  未成熟な情報であり、県と市町の事業計画に対する県民の不正確な理解や
  誤解を招き、今後の調整及び検討に著しい支障を生じるおそれがあるとと
  もに、県及び市町の土地利用計画や事業計画策定の円滑な実施を困難にす
  るおそれがある」ため、神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(以
  下「条例」という。)第5条第1項第4号及び同項第5号に該当するとし
  た非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤ってい
  る、というものである。
  ア 実施機関は、利用計画調査表及び添付資料が「今後変更もあり得る未
   成熟な情報」であり、「そのため公開することにより、……今後の調整
   及び検討に著しい支障を生じるおそれがある」ことを理由に非公開とし
   たが、ここでいう「著しい支障」は抽象的なものであり、非公開を正当
   化することはできない。実施機関は、「著しい支障」の例示のーつとし
   て「県と市町の事業計画に不正確な理解や誤解を招く」としているが、
   「利用意向及びその内容の調査表」という当該情報の性質からすればそ
   れが確定したものとして理解されることはない。
    それでもなお、公開により「不正確な理解や誤解を招く」ことを懸念
   するのならば、公開に際して当該情報が、今後変更もあり得る計画段階
   のものであることを請求者に理解させればよい。
  イ 大阪府公文書公開審査会答申(ダム地質総合解析評価業務報告書の件)
   では、意思形成過程を細分化して、個々のプロセスが終了したか否かで、
   公開、非公開を判断するというものであった。意思形成過程の情報の公
   開については、プロセスごとに公開の是非を判断することを原則とすべ
   きである。そうでなければ意思形成が完全に終わるまで「未成熟である」
   ことを理由に情報が公開されず、「情報なければ参加なし」を理念とし
   た情報公開制度の意義がない。また、最終決定以前に公表される中間答
   申の説明がつかない。
  ウ 「意思形成のプロセスごとに情報を公開すべきである」という原則か
   らすれば、利用計画調査表は「調整し、整理したうえ取りまとめて」日
   本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)に提出したものであ
   り、意思形成の一つのプロセスを終えたものということができるので公
   開すべきである。
  エ 事業団の用地処分をめぐり各地方公共団体と事業団との交渉が長引い
   ているとの報道もあるが、各地方公共団体の利用計画が明らかにされる
   ことによって土地利用に対する市民の理解や協力も期待できる。当該情
   報を公開することによって「今後の調整及び検討に著しい支障を生じる
   おそれ」はなく、むしろ市民の理解や協力によってそれが促進されるこ
   とも考えられる。
  オ 実施機関は「県及び市町の土地利用計画や事業計画策定の円滑な実施
   を困難にするおそれがある。」ことも非公開理由として挙げているが、
   条例は円滑な実施を「著しく」困難にするものに限って非公開にするこ
   とができるとしている。また、どのように「円滑な実施を困難にする」
   のか具体的に明らかにされていない。
  カ 「市町の県に対する積極的な情報提供を期待できなくなる」ことも非
   公開理由に挙げられているが、第三者情報調査の結果では「未成熟な情
   報である。」と記載されているだけで、県に対する情報提供に支障が生
   じる旨を回答又は示唆している市町はない。「市町の県に対する積極的
   な情報提供を期待できなくなる」というのは抽象的な可能性にすぎない。
   また、未成熟であることの具体的理由が明らかでなく、市町ごとの個別
   具体的内容を検討すべきである。あるいは、市町によっては、現在では
   未成熟でなくなった例もあるのではないか。
  キ 公開すると「県の総合的な調整事務に著しい障害が生じるおそれがあ
   る」という非公開理由は、市町の利用計画調査表についてのものであり、
   県自身の利用計画調査表についてのものではない。県は、県の分だけで
   も公開すべきである。
  ク 公共用地である事業団用地の利用計画の策定に当たってその公共性を
   確保していくためには、地方公共団体内部の慎重な検討はもちろんのこ
   と、用地利用についての市民の要望、意見をくみ上げていくことが必要
   である。そうした市民参加による利用計画の策定のためには、各地方公
   共団体が現段階で持っている計画案を積極的に公開していくことが不可
   欠である。

3 実施機関の職員(都市部都市政策課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、利用計画調査表及び添付資料を非公
  開とした理由は、次のとおりである。
(1)利用計画調査表及び添付資料について
  ア 利用計画調査表及び添付資料は、事業団の要請に基づき、県及び市町
   が作成した利用計画で、県が調整して、整理したうえ取りまとめて事業
   団へ提出したものである。
  イ 利用計画調査表は、個々の用地について取得面積、譲受希望者名、事
   業主体、事業年度、購入年度等を記載したものである。また、添付資料
   は、一部の市町から利用計画調査表の記述を補足するため提出された文
   書及び図面であり、利用計画調査表と密接に関連しており、公開の諾否
   については、利用計画調査表と一体に扱う必要がある資料である。
(2)条例第5条第1項第4号該当性について
  ア 県及び市町の利用計画は、周知のごとく地価急騰により公共事業用地
   の取得が著しく困難な時期でもあったことから、県及び市町の内部並び
   に県と市町との間において適切な処分を目指した内部検討や事業団への
   働きかけを続けるため、暫定的に取りまとめたものである。
  イ また、事業団から提供されていた土地の状況、随意契約条件等の情報
   には、未成熟な部分と事業団内部における未調整な部分が多分に含まれ
   ていた。加えて、事業団からの照会から約1箇月という短期間であった
   ため、用地取得の見通し等計画策定は困難を極めた。そのため、利用計
   画調査表は、十分な調整及び検討がなされずに回答したものであり、事
   実、事業計画が同一箇所について重複しているものや、その後、利用計
   画が取り下げられたものもある。
  ウ さらに、市町から利用計画が提出された際の県の聞き取り調査や、市
   町ごとに個別に行った事業団の聞き取り調査の結果等を確認したところ、
   大部分の利用計画が未成熟なものであると判断された。利用計画を提出
   した市町に対する第三者情報調査の結果でも、「未成熟情報である」と
   の回答を得ている。したがって、利用計画調査表は今後変更もあり得る
   未成熟な内容の情報であると判断した。
  エ 県及び市町の利用計画は、上記のとおり計画内容等が今後変更もあり
   得る未成熟な情報であり、公開した場合は、県と市町の事業計画に対す
   る県民の不正確な理解や誤解を招くおそれがある。また、未成熟な情報
   であることから非公開として欲しいとの市町の意向に反することになり、
   市町の県に対する積極的な情報提供を期待できなくなるなど、今後の県
   及び市町内部又は相互間の調整及び検討に著しい支障が生ずるおそれが
   ある。
(3)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 県及び市町の利用計画は、上記(2)に述べたとおり計画内容等が今
   後変更もあり得る未成熟な情報であり、公開した場合は、県と市町の土
   地利用計画及び事業計画に対する県民の不正確な理解や誤解を招き、計
   画の策定及び事業の実施に際し合意形成が得られなくなるなど、県及び
   市町の事務及び事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれがあり、結
   局は県民全体の利益に損失をもたらすものである。
  イ また、第三者である市町の意向に反し公開することは、県に対して不
   信感を招き、今後、各市町からそれぞれの計画の進捗状況、事業団との
   交渉経緯その他利用調整に際しての課題に関する情報を得られなくなる
   など、県の総合的な調整事務の円滑な実施を著しく困難にするおそれが
   ある。
(4)意思形成過程の情報の公開について
   利用計画調査表及び添付資料に係る情報の未成熟性及びこれを公開した
  場合の支障については以上のとおりであるが、当該情報がどの段階で公開
  することができるかについては、次のとおり考える。
   地方公共団体と事業団の交渉が一応まとまった段階で、地方公共団体が
  売払出願書を提出し、その後、随意契約を締結することになる。売払出願
  書には、取得面積、利用目的、出願した理由、用地の利用計画、計画実施
  のスケジュール、資金計画等をかなり固定されたものとして記載して提出
  する必要がある。そこまで調整が詰められた段階であれば公開の対象とな
  ると考える。
(5)事業団用地の土地利用計画に対する住民参加について
   大規摸用地については、都市計画決定手続きを要するものがあり、この
  ような用地については、都市計画決定手続きの過程で住民の意思を取り入
  れることができる場合があり、その他の用地については、個々の予算執行
  の段階で、地元議会を通じて住民の意思を反映させることができると考え
  る。

4 審査会の判断理由
(1)利用計画調査表及び添付資料の性格について
   利用計画調査表及び添付資料は、事業団から依頼のあった利用計画調査
  に対して、神奈川県が、県、市町等の利用計画をまとめて事業団に提出し
  た回答書である。
   利用計画調査表は、事業団から示された様式により作成され、それには、
  番号、件名、所在地、面積(千平方メートル)、譲受希望者名、利用目的(施設名)、
  事業計画(事業主体、事業年度)、購入年度、施設又は事業の根拠法及び
  その他の各項目があり、県、市町等の利用計画の有無及び内容が記載され
  ている。また、添付資料は、一部の市町から提出された利用計画調査表の
  内容の補足文書及び図面である。
(2)条例第5条第1項第4号該当性について
  ア 条例第5条第1項第4号は、県の機関内部若しくは機関相互又は県の
   機関と国等の機関との間における審議、検討、調査研究等に関する情報
   であって、公開することにより、当該審議、検討、調査研究等に著しい
   支障が生ずるおそれのあるものについては、非公開とすることができる
   としている。
    「審議、検討、調査研究等に関する情報」には、行政内部における審
   議、検討、調査研究、意見調整、打合せ、相談等に直接使用する目的で
   作成し、又は取得した情報のほか、これらの審議等に関連して作成し、
   又は取得した情報を含むと考えられる。
  イ 利用計画調査表及び添付資料は、神奈川県が事業団用地に対する県、
   市町等の利用計画について、県の機関内部若しくは機関相互又は県の機
   関と市町の機関との間で、審議し、意見調整したうえ取りまとめて事業
   団に提出したものと認められ、本号の審議、検討、調査研究等に関する
   情報に該当すると判断する。
  ウ このような意思形成過程の情報については、異議申立人が主張するよ
   うに、個々のプロセスごとに公開の是非を判断すべきであり、また、一
   般論としては、公的に外部に発せられた文書は、行政内部の一応の検討
   を経たもので、一つのプロセスを終えた情報と考えることができる。
    しかし、本件についていえば、事業団が、利用計画を調査するに当た
   って、「期限までに回答がなかった場合は、『当面利用計画がないもの』
   といたします」との条件を付けていたこと、及び、調査依頼から提出ま
   での期間が1箇月に満たない極めて短期間であったことから、形式的な
   手続きは経たものの、利用計画のすべてについて、実質的に十分な検討
   を行ったものとは認められない。利用計画が同一箇所に重複しているも
   のがあること、後に利用計画が取り下げられたものもあること等からし
   ても、利用計画調査表及び添付資料は、全体として、県及び市町が、暫
   定的希望を表明したものにすぎないものと認められ、今後変更のあり得
   る未成熟な情報であるという実施機関の説明は理解できる。
  オ 未成熟な情報であっても、それを公開することによって当該審議、検
   討等に著しい支障が生ずるおそれがあることの具体的理由が明らかにさ
   れる必要がある。
    異議申立人は、各地方公共団体の利用計画が明らかにされることによ
   って、土地利用に対する市民の理解や協力も期待でき、公開することに
   よって今後の調整及び検討に著しい支障が生ずるおそれはないと主張す
   る。また、異議申立人は、利用意向についての調査表であれば、それが
   確定したものとして理解されることはなく、不正確な理解や誤解を招く
   ことはないとも主張する。
    しかし、神奈川県における異常な地価高騰の折から、土地利用につい
   ての未成熟な情報が明らかになれば、不正確な理解や思惑によって、無
   用な混乱や摩擦を引き起こすおそれがあることは十分予測できるところ
   であり、県機関等における事業団用地の利用計画についての審議、検討
   等に著しい支陣が生ずるおそれがあるものと認められる。
  カ しかしながら、利用計画調査表の番号、件名、所在地及び面積の各項
   目に記載されている情報は、既に公開されている事業団の用地件名表と
   同様の情報である。これらの情報は、単に、調査時点において、県、市
   町等が利用計画について検討した用地がどこであるかを示す情報であり、
   これらを公開しても、県等の機関の今後の審議、検討等に著しい支障が
   生ずるものとは認められない。したがって、利用計画調査表のうち、番
   号、件名、所在地及び面積の各項目に記載された事項は、条例第5条第
   1項第4号に該当する情報ではないと判断する。
(3)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、県の機関又は国等の機関の行う検査、監
   査、取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価格、
   試験の問題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は
   事業の性質上、公開することにより、当該事務又は事業の実施の目的を
   失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれ
   のあるものは、非公開にすることができるとしている。
  イ 実施機関は、県及び市町の利用計画が未成熟な情報であることによる
   県民の不正確な理解や誤解を招き、県と市町の土地利用計画及び事業計
   画の策定及び円滑な実施を著しく困難にするおそれがあること、並びに
   未成熟であるという市町の意向に反して公開すると市町の県に対する不
   信感から、今後の県の総合的調整事務の円滑な実施を著しく困難にする
   おそれがあることを説明するが、それは、既に上記(2)で判断したと
   おり、条例第5条第1項第4号の説明としては妥当であるが、同項第5
   号の説明としては妥当ではない。
(4)その他
   本件異議申立てに係る公開請求に対する実施機関の諾否の決定は、昭和
  63年2月17日に行われているが、当審査会が実施機関に確認したとこ
  ろ、同年3月9日から3月22日までの間に、利用計画調査表に記載され
  た用地について事業団と県又は2町との間で3件の売買契約が結ばれてい
  ることが明らかになった。この3件の利用計画については、現時点では未
  成熟な情報とはいえない。
   したがって、利用計画調査表のうち、売買契約が締結された番号113
  (神奈川県が譲受希望者となっている部分)、番号194及び番号199
  に係る欄の各項目に記載された情報は、現時点では条例第5条第1項第4
  号には該当しないと判断する。
   当審査会は、これらの情報について再度閲覧等の請求があれば、公開さ
  れるべきものと考える。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

 

 

別紙

                        審査会の処理経過

年月日

処理内容

 昭和63.4.22

○諮問
○実施機関の職員(都市部都市政策課長)に非公開理由説明書の提出要求

   63.5.13

○非公開理由説明書の受理
○異議申立人に非公開理由説明書を送付

   63.6.3

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

   63.6.10

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   63.6.18
  (第54回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員(都市部都市政策課長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   63.7.30
  (第55回審査会)

○審議

   63.10.8
  (第56回審査会)

○審議

   63.11.26
  (第57回審査会)

○審議

   63.12.10
  (第58回審査会)

○審議

   63.12.24
  (第59回審査会)

○審議

 

 

 

               神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                            (昭和62年4月1日委嘱)

氏 名

現職

備考

黒羽 亮一

筑波大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社代表取締役社長

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                                  (昭和63年12月24日現在) (五十音順)

目次にもどる

 

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • ラグビーワールドカップ2019
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa