答申第17号

掲載日:2017年12月1日

答申第17号

 

                          平成元年3月11日

 

   神奈川県知事  長 洲  一 二  殿

 

                       神奈川県公文書公開審査会
                       会 長   原  寿 雄

 

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 

 昭和63年6月9日付けで諮問された昭和58年4月1日から昭和62年1
2月31日までの間の単身者からの分家住宅に係る建築許可申請書及び申請者
が結婚することを証するための添付資料一部非公開の件(諮問第19号)につ
いて、次のとおり答申します。

 

 

 

1 審査会の結論
  昭和58年4月1日から昭和62年12月31日までの間の単身者からの
 分家住宅に係る建築許可申請書及び申請者が結婚することを証するための添
 付資料について、一部非公開としたことは、妥当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、昭和58年4月1日から昭和62年12月31日
  までの間の単身者からの分家住宅に係る建築許可申請書(以下「本件建築
  許可申請書」という。)及び申請者が結婚することを証するための添付資
  料(仲人の証明、式場申込書、式場領収書、婚約者の戸籍謄本及び婚約者
  の住民票の写し。以下「本件添付資料」という。)について、神奈川県知
  事が昭和63年5月6日付けで次に掲げる事項を非公開とした処分の取消
  しを求める、というものである。
  ア 本件建築許可申請書中の申請者の住所、氏名、印影及び電話番号、建
   築物を建築しようとする土地の所在及び地番並びに神奈川県収受印の収
   受番号(以下「申請書の一部事項」という。)
  イ 本件添付資料のうち
  (ア)仲人の証明
  (イ)式場申込書中の申込者の住所、氏名、印影、電話番号及び郵便番号、
    結婚しようとする者の住所、氏名、電話番号、生年月日、年齢、親の
    氏名、続柄、勤務先及び勤務先の電話番号、媒酌人の住所、氏名及び
    電話番号並びに担当者の氏名及び印影(以下「式場申込書の一部事項」
    という。)
  (ウ)式場領収書中の申込金納入者の住所、氏名及び電話番号、結婚をし
    ようとする者の住所、氏名、電話番号及び郵便番号並びに担当者の氏
    名及び印影(以下「式場領収書の一部事項」という。)
  (エ)婚約者の戸籍謄本
  (オ)婚約者の住民票の写し
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「建築許可を申請した
  特定の個人の、分家をして結婚をしようとする意思表示の内容が明らかに
  なるため」及び「特定の個人が識別され、又は識別され得るため」神奈川
  県の機関の公文書の公開に関する条例(以下「条例」という。)第5条第
  1項第1号に該当するとした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例
  の解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 本件建築許可申請書及び本件添付資料のうち非公開とされた部分は、
   条例第5条第1項第1号ただし書アに該当し、公開されるべきである。
  イ 本件建築許可申請書のうち非公開とされた部分の情報は、神奈川県の
   他の機関及び市町村では公開されているのに、なぜ非公開とされたのか
   分からない。県の他の機関等で調査したところ非公開とされた部分の情
   報を知ることができた。
  ウ 建築に際しては、許可の内容を現地に掲示することが法令によって義
   務付けられているので、本件建築許可申請書自体に記載された内容は、
   公開されることを前提に申請者が提出したものと考える。仮に、申請者
   は結婚することについて公開されることを予定していないとすれば、本
   件添付資料のみを非公開とすれば足りる。
  エ 条例第5条第1項は、単に非公開とすることができると規定している
   のであって、非公開を必ずしも義務付けているわけではない。
    条例第5条第1項第1号本文に規定している保護すべき個人に関する
   情報とは、法令の規定により強制的に提出させられた情報及び本人の知
   らない間に収集された情報に限られるのであって、法律的に根拠がなく、
   申請者が任意に提出した本件添付資料のような情報は、個人に関する情
   報であっても保護する必要はない。公文書の閲覧等の請求承諾通知書に
   よれば、随所に本件添付資料が不存在である旨の記載があることから、
   本件添付資料は、法律により添付が義務付けられたものではなく、任意
   に提出されたものと認められる。
  オ 本件建築許可申請書及び本件添付資料の一部を、個人に関する情報で
   あって、特定の個人が識別でき、又は識別され得るものとして非公開と
   するのであれば、本件処分に当たって、条例第7条により公開の決定を
   した旨を第三者に告知した文書に、異議申立人の住所及び氏名を記載し
   たこととの整合性がない。
  カ 非公開理由説明書に「異議申立人から申請者が結婚することを理由に
   分家する建築許可申請書の閲覧等の請求があったため」とあるが、結婚
   を理由とする分家に限らず、結婚を前提としない単身者が申請した分家
   住宅に係る建築許可申請書及び本件添付資料も含めて請求しており、そ
   のことは閲覧等の請求の際に口頭でも確認したはずである。実施機関は、
   請求の趣旨を誤解しており、結婚を前提としない単身者が申請した分家
   住宅に係る建築許可申請書及び本件添付資料について、公開又は非公開
   の判断をしないのはなぜか。

3 実施機関の職員(都市部都市整備課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件建築許可申請書及び本件添付資
 料の一部を非公開とした理由は、次のとおりである。
(1)本件建築許可申請書及び本件添付資料について
   本件建築許可申請書は、農家の合理的事情の存する世帯構成員から、都
  市計画法に基づく市街化調整区域に存する土地について、分家することを
  理由に都市計画法施行令第36条第1項第3号ハに該当するものとして、
  都市計画法第43条第1項の建築許可を受けるために提出された申請書で
  ある。
   また、本件添付資料は、申請者が近い将来結婚して新しく所帯を持つと
  いう事実を確認するために必要な書類である。これについて、昭和57年
  7月16日付け建設省計民発第31号「市街化調整区域における開発許可
  制度の運用について」の通達では、「地域によっては分家住宅の名目であ
  れば半ば自動的に許可されるとの申請事例も見受けられるが、許可に当た
  っては、例えば、結婚その他独立して世帯を構成する合理的事情、勤務地、
  予定建築物の規模等の適正さ、過去における同様の申請の有無等に照らし
  て必要性及び確実性を判断すること」とされている。そのための判断材料
  として添付資料の提出を求めている。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号本文は、個人の尊重という観点から、個人に
   関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得るものについて
   は非公開とする方針を明確に規定したものである。
  イ 本件建築許可申請書は、異議申立人から結婚を理由とする分家住宅に
   係る建築許可申請書の閲覧等の請求があったため、本件添付資料を基に
   特定したものであり、申請者が近い将来結婚するために分家するという
   意思表示をした個人に関する情報である。そして、申請書の一部事項は、
   特定の個人が識別され、又は識別され得るものである。
  ウ 仲人の証明は、申請者と婚約者が結婚することを仲人が証する書類で
   あり、仲人が両人の結婚の仲介をするという意思表示をした個人に関す
   る情報である。そして、仲人の証明には、申請者、婚約者及び仲人の住
   所及び氏名並びに仲人が両人の結婚の仲介をする旨が記載されており、
   特定の個人が識別され、又は識別され得るものである。
  エ 式場申込書は、申請者に係る結婚式場の利用の申込みをした書類であ
   り、式場申込書の一部事項は、個人に関する情報であって、特定の個人
   が識別され、又は識別され得るものである。
  オ 式場領収書は、結婚式場に申込者が申込金を納入したことを証する書
   類であり、式場領収書の一部事項は、個人に関する情報であって、特定
   の個人が識別され、又は識別され得るものである。
  カ 婚約者の戸籍謄本及び住民票の写しは、婚約者の住所、氏名、本籍等
   が記載されており、個人に関する情報であって、結婚しようとする特定
   の個人が識別され、又は識別され得るものである。
  キ したがって、本件建築許可申請書及び本件添付資料のうち非公開とし
   た部分は、条例第5条第1項第1号本文に該当する個人に関する情報で
   あって、特定の個人が識別され、又は識別され得るものであることは明
   らかである。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報で、特定の個
   人が識別され、又は識別され得るものであっても、例外的に公開するこ
   とができる情報を規定したものであるが、同号ただし書の運用及び解択
   は、条例第2条後段に規定する個人情報の原則非公開の趣旨に則して厳
   格に行われるべきものである。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書アは、何人でも法令の規定により閲
   覧することができるとされている情報と規定しており、法令の規定では
   「何人」とされていても現に制限されているもの及び閲覧を利害関係人
   等にのみ認めているものは含まれない。
  (ア)まず、本件建築許可申請書については、都市計画法や関係法令等の
    いずれにも何人でも閲覧することができる旨の規定は存しない。
  (イ)次に、本件添付資料のうち、式場申込書及び式場領収書については、
    何人でも閲覧できる旨を規定した法令が存しないことは明らかである。
  (ウ)戸籍謄本については、戸籍法には何人でも戸籍簿を閲覧することが
    できる旨の規定は存しない。

  (エ)住民票の写しについては、住民基本台帳法第11条第1項の規定で
    は何人でも市町村長に対し住民基本台帳の閲覧を請求することができ
    るとされているが、同条第4項の規定では「請求が不当な目的による
    ことが明らかなとき又は住民基本台帳の閲覧により知り得た事項を不
    当な目的に使用されるおそれがあることその他の当該請求を拒むに足
    りる相当な理由があると認めるときは、当該請求を拒むことができる」
    とされており、現実には制限されている。
  (オ)したがって、本件建築許可申請書及び本件添付資料のうち非公開と
    した部分は、条例第5条第1項第1号ただし書アに該当しない。
  ウ また、申請者が結婚しようとする意思が明らかになる本件建築許可申
   請書及び本件添付資料が条例第5条第1項第1号ただし書イ及びウに該
   当しないことは明らかである。
(4)第三者に対する告知文書に異議申立人の住所及び氏名を記載したことに
  ついて第三者に対する告知文書に異議申立人の住所及び氏名を記載したこ
  とは、誤りであって、今後はこのようなことがないように慎重に配慮する。
(5)結婚を前提としない単身者が申請した分家住宅に係る建築許可申請書及
  び本件添付資料について異議申立人がなした公文書の閲覧等の請求の趣旨
  は、結婚を理由とする分家に係る建築許可申請書及び本件添付資料に限定
  されるのであって、結婚を前提としない単身者からの建築許可申請書及び
  本件添付資料は、請求の対象外である。
   このことは、異議申立人が閲覧等の請求をした際に確認をしたはずであ
  る。

4 審査会の判断理由
(1)閲覧等の請求のあった公文書の範囲について
   閲覧等の請求のあった公文書の範囲について、異議申立人は結婚を前提
  としない単身者が申請した分家住宅に係る建築許可申請書及び本件添付資
  料を含めて請求していると主張している。これに対し、実施機関は閲覧等
  の請求のあった公文書の範囲は結婚を理由とする分家住宅に係る建築許可
  申請書及び本件添付資料に限定されているものとして諾否の決定をしてい
  るので、当審査会はそれを前提に以下検討することとする。
(2)本件建築許可申請書及び本件添付資料の性格について
   本件建築許可申請書は、例えば、結婚その他独立して世帯を構成する合
  理的事情等の存する世帯構成員から、都市計画法に基づく市街化調整区域
  に存する土地について、分家することを理由に都市計画法施行令第36条
  第1項第3号ハに該当するものとして、都市計画法第43条第1項の建築
  許可を受けるために提出された申請書であると認められる。
   また、本件添付資料は、申請者が近い将来結婚して新しく所帯を持つと
  いう事実を確認するために必要な書類であると認められる。
(3)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 申請書の一部事項並びに本件添付資料のうち仲人の証明、式場申込書
   の一部事項、式場領収書の一部事項、婚約者の戸籍謄本及び婚約者の住
   民票の写しは、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又
   は識別され得るものであるから、条例第5条第1項第1号本文に該当す
   ると判断する。
  イ 異議申立人は、条例第5条第1項第1号本文に規定している保護すべ
   き個人に関する情報は、法令の規定により強制的に提出させられた情報
   及び本人の知らない間に収集された情報に限られるのであって、申請者
   が任意に提出した本件添付資料のような情報は保護する必要はないと主
   張する。
    しかし、同号は、実施機関が保有している情報について、法令によっ
   て強制的に収集したか、あるいは、任意に提出したか等を区別していな
   いので、異議申立人の主張は理由がないと判断する。
(4)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報であって、持
   定の個人が識別され、又は識別され得るものであっても、例外的に公開
   することができる情報を列挙している。
  イ 異議申立人は、本件建築許可申請書のうち非公開とされた部分の情報
   は、神奈川県の他の機関及び市町村では公開されており、また、建築に
   際しては、許可の内容を現地に掲示することが法令によって義務付けら
   れているので、条例第5条第1項第1号ただし書アにより公開されるべ
   きであると主張する。
  ウ 都市計画法第43条第1項の許可を受けた者は、都市計画法に基づく
   開発行為等の規制に関する細則第19条第2項により、許可の年月日及
   び番号、許可を受けた者の住所、氏名及び電話番号、建築(建設)に係
   る土地の所在等を記載した「都市計画法による建築等許可済の標識」を
   当該工事が完了するまでの期間、工事現場に掲示する義務がある。した
   がって、建築許可申請書のうち「都市計画法による建築等許可済の標識」
   で明らかにされた情報は、一般的には、条例第5条第1項第1号ただし
   書に該当するものと考えられる。
    しかしながら、閲覧等の請求が単身者からの結婚を前提とする本件建
   築許可申請書及び本件添付資料に限定して公開を求めていることから、
   これを公開すると、結婚を予定しているという特定個人の意思が判明す
   ることになる。この情報は、同号ただし書ア、イ及びウのいずれにも該
   当しないと判断する。
(5)その他
  ア 実施機関が第三者に対する告知文書に異議申立人の住所及び氏名を記
   載したことは誠に遣憾であるが、実施機関においては、今後はこのよう
   な事態が再発しないよう各機関に指導通知をしているので、これが確実
   に実施されるよう期待する。
  イ 異議申立人が主張している結婚を前提としない単身者の分家住宅に係
   る建築許可申請書及び本件添付資料については、新たに公文書の閲覧等
   の請求をすれば解決できることであると考える。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

 

 

別 紙

              審 査 会 の 処 理 経 過

年 月 日

処  理  内  容

 昭和63. 6. 9

○諮問

   63. 6.10

○実施機関の職員(都市部都市整備課長)に非公開理由説明書の提出要求

   63. 6.24

○非公開理由説明書の受理

   63. 6.27

○異議申立人に非公開理由説明書を送付

   63. 7.18

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

   63. 7.20

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   63. 7.30
  (第55回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員(都市部都市整備課長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   63.10. 8
  (第56回審査会)

○審議

   63.11.26
  (第57回審査会)

○審議

 平成元. 1.28
  (第60回審査会)

○審議

   元. 2.18
  (第61回審査会)

○審議

   元. 3.11
  (第62回審査会)

○審議

 

 

 

              神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                            (昭和62年4月1日委嘱)

氏   名

現    職

備   考

黒 羽  亮 一

筑波大学教授

 

原    寿 雄

(株)共同通信社代表取締役社長

会   長

堀 部  政 男

一橋大学教授

会長職務代理者

若 杉    明

横浜国立大学教授

 

渡 辺  保 男

国際基督教大学学長

 

                       (平成元年3月11日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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