答申第18号

掲載日:2017年12月1日

答申第18号

 

                          平成元年6月17日

 

   神奈川県知事 長洲 一二 殿

 

                     神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

 

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 

 平成元年2月7日付けで諮問された公共職業安定所にかかる裁決書の決定が
されるまでの調査記録非公開の件(諮問第20号)について、次のとおり答申
します。

1 審査会の結論
  公共職業安定所に係る裁決書が出されるまでの調査記録文書は、審査請求
 人の氏名を除いて公開すべきである。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、公共職業安定所に係る裁決書が出されるまでの調
  査記録文書(以下「本件文書」という。)を神奈川県知事が平成元年1月
  31日付けで非公開とした処分の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が、本件文書を「個人に
  関する情報であって、特定の個人が識別され得るため」神奈川県の機関の
  公文書の公開に関する条例(以下「条例」という。)第5条第1項第1号
  に該当するとした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び
  運用を誤っている、というものである。
  ア 個人情報の本人への公開について
  (ア)何人も自己の個人情報は、自己が管理する権利を有し、情報管理者
    は本人に個人情報を公開する義務がある。したがって、神奈川県に存
    在する異議申立人の個人情報は、異議申立人が知る権利を有する。
  (イ)公開できない個人情報とは、他人の個人情報のことである。異議申
    立人は、他人の個人情報については関心がないので、その公開を請求
    していない。したがって、条例第5条第1項第1号に何ら抵触するも
    のではない。
  イ 他の地方公共団体の事例と条例の解釈について
  (ア)東京都大田区では、裁決書が出されるまでの調査記録文書は公開さ
    れている。東京都大田区公文書開示条例(以下「大田区条例」という。)
    第9条第1号は、個人情報の開示拒否を規定している。しかし、大田
    区条例第10条は個人情報の本人開示を認めているので、自己情報は
    何の障害もなく、本人に公開されるわけである。
  (イ)条例には、大田区条例のように個人情報の本人開示を認める明文の
    規定は存在しない。しかし、神奈川県も東京都大田区も、公文書を公
    開する目的は同一である。東京都大田区が自己の個人情報の開示を認
    めている以上、神奈川県が開示できない理由はない。
  (ウ)また、神奈川県では、今後、個人情報保護条例を制定して、個人情
    報を本人に公開する方針であると聞いている。しかし、個人情報保護
    条例の制定過程において、県の機関内部で、現在保有している個人情
    報を廃棄するおそれがないとはいえない。したがって、いずれにしろ
    公開する情報であるならば、現在の条例のもとでも公開すべきである。
  ウ 職員の印影の公開について
  (ア)本件文書に記載されている職員の印影は、公開すべきである。神奈
    川県が本件文書に記載されている職員の印影を公開しないのは、職員
    の行った不正の発覚をおそれてのことである。
  (イ)東京都大田区では、従来、職員の印影を個人情報として非公開とし
    てきたが、これらの情報は、当該職員の個人生活に関する情報とは異
    質なものとして、公開しても直ちにプライバシー侵害に当たらないと
    判断し、平成元年4月1日から解釈運用方針を改めている。

3 実施機関の職員の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件文書を非公開とした理由は、次
 のとおりである。
(1)本件文書について
  ア 異議申立人は、鶴見公共職業安定所において、「紹介禁止処分」を受
   けたことを不服として、職業安定法第7条によって、鶴見公共職業安定
   所長の直近上級行政庁とされている神奈川県知事に、行政不服審査法第
   5条に基づき、審査請求を行った。
  イ これに対し、神奈川県知事は、昭和63年12月14日付けで、公共
   職業安定所の行う職業紹介は公権力の行使に当たる行為とはいえず、鶴
   見公共職業安定所長の行った「紹介禁止処分」は行政不服審査法第2条
   第1項に定める処分に該当しないとして、同法第40条第1項に基づき、
   裁決で当該審査請求を却下した。
  ウ 本件文書は、この裁決の過程で作成又は取得した文書のうち、調査記
   録文書という請求趣旨から特定した文書である。その内訳は、鶴見公共
   職業安定所長あての審査請求書副本の送付と弁明書の提出についての伺
   い及び通知案、異議申立人あての弁明書副本の送付と反論書の提出につ
   いての伺い及び通知案並びに審査請求に係る裁決についての伺い及び異
   議申立人あての裁決書送付文案である。
(2)個人情報の本人への公開について
  ア 条例は、県政に対する県民の理解と信頼を深め、公正な県政の一層の
   進展に寄与することを目的として制定されたものであり、県民が自己に
   関する情報を行政機関から得ることを目的として制定されたものではな
   い。
  イ したがって、条例の定める適用除外事項は、請求人のいかんを問わず
   公開か否かの判断をすることができるものであり、請求が県民のいずれ
   から行われても同じ結論になるものであって、個人に関する情報につい
   て当該本人が閲覧等を請求した場合であっても、これを拒否することが
   できることは明白である。この判断は、昭和62年10月22日の長野
   地方裁判所の判決によっても示されている。
  ウ 地方公共団体の条例は、憲法第94条及び地方自治法第14条に基づ
   き、それぞれの議会の議決を経て制定する法規であり、他の地方公共団
   体が制定した条例の規定、あるいはその解釈及び運用によって拘束され
   るものではない。
  エ したがって、条例の解釈及び運用は、個人情報の本人開示を認める明
   文の規定を定めている他の地方公共団体の情報公開条例の規定並びにそ
   の解釈及び運用によって拘束されるものではない。
(3)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号本文は、個人に関する情報であって、特定の
   個人が識別され、又は識別され得るものは原則として非公開とする方針
   を明確に定めたものである。
  イ 本件文書には、特定の個人の氏名が随所に記載されており、これらの
   氏名が、条例第5条第1項第1号本文に該当する個人に関する情報であ
   って、特定の個人が識別され、又は識別され得るものであることは明ら
   かである。
(4)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
   条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報であって、特定
  の個人が識別され、又は識別され得るものであっても、例外的に公開する
  ことができる情報を定めたものであるが、この解釈及び運用は条例第2条
  後段に規定する個人情報の原則非公開の趣旨に即して厳格に行われるべき
  であり、本件文書がこのただし書のいずれにも該当しないことは明らかで
  ある。
(5)条例第5条第2項の適用について
   仮に、本件文書に記載されている特定の個人の氏名を削除して、一部公
  開したとしても、文書全体から特定の個人が識別され得るものであること
  から、全部を非公開としたものである。

4 審査会の判断理由
(1)本件文書について
   本件文書は、異議申立人が、鶴見公共職業安定所長の行った「紹介禁止
  処分」を不服として、神奈川県知事に提起した審査請求に関する裁決書が
  出される過程で作成された伺い文書であると認められる。
(2)個人情報の本人への公開について
  ア 他の地方公共団体では、情報公開条例の中に個人情報の本人への公開
   を規定している例も見受けられる。しかし、神奈川県では、個人情報の
   本人ヘの公開について条例に規定がないことは、異議申立人も承知して
   いるとおりである。
  イ 異議申立人が主張するように、何人も自己の個人情報は自己が管理す
   る権利を有するとしても、その権利の行使については、明文の規定が必
   要である。したがって、明文の規定がない以上、条例第5条第1項第1
   号の適用については、請求人のいかんを問わず、判断を行うべきである。
(3)条例第5条第1項第1号について
  ア 本件文書には、審査請求を行った特定の個人に関する情報と、裁決に
   関する事務処理を行った職員の印影及び氏名が記載されている。
    したがって、本件文書は、条例第5条第1項第1号に該当する個人情
   報の記録された文書であると認められる。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書イは、公表することを目的として作
   成し、又は取得した情報は公開することとしている。ここで公表するこ
   ととは、積極的に県民一般に周知する場合だけでなく、事務事業の執行
   上又は行政の責務として県民の要望に応じて情報を提供することが予定
   されている場合も含むと解される。
    県の職員の職名、氏名及び事務分掌は、県の組織に関する情報として、
   職員録、職員配置表等によって公表されており、本件文書に記載された
   職員の印影及び氏名は、これらの公表されている情報と同様の情報であ
   ると認められる。
    したがって、本件文書に記載された職員の印影及び氏名は、現実の取
   扱い状況等からみて、事務事業上又は行政の責務として、県民の要望に
   応じて明らかにされるべき情報であり、条例第5条第1項第1号ただし
   書イに該当する情報であると判断する。
  ウ なお、本件文書に記載された個人情報のうち、職員の印影及び氏名を
   除く情報は、条例第5条第1項第1号ただし書のいずれにも該当しない
   情報であることは明らかである。
(4)条例第5条第2項の適用について
   本件文書は、審査請求人の氏名を分離すると、残りの情報から、特定の
  個人が識別され得るものとは認められない。また、本件文書は、特定の個
  人が識別され得る情報とそれ以外の情報とを容易に、かつ、公文書の閲覧
  又は公文書の写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理的に分離でき
  ることは明らかである。したがって、条例第5条第1項の規定にかかわら
  ず、条例第5条第2項を適用して、本件文書のうち、審査請求人の氏名の
  記載された部分を除いて、公開すベきである。
(5)その他
   本件文書の保存期間は、神奈川県文書管理規程第50条第2項の規定に
  より、10年又は永年となっている。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

別紙

                        審査会の処理経過

年月日

処理内容

 平成元.2.7

○諮問

   元.2.8

○実施機関の職員(労働部職業安定課長)に非公開理由説明書の提出要求

   元.2.25

○非公開理由説明書の受理

   元.3. 1

○異議申立人に非公開理由説明書を送付

   元.3.22

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

   元.3.27

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   元.4.22
 (第63回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員から非公開理由説明の聴取
○審議

   元.5.20
  (第64回審査会)

○審議

   元.6.17
  (第65回審査会)

○審議

 

 

 

                   神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                             (平成元年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

筑波大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社代表取締役社長

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                                    (平成元年6月17日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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