答申第23号

掲載日:2017年12月1日

答申第23号

 

                          平成3年6月12日

 

   神奈川県議会議長 原 正巳 殿

 

                     神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

 

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 

 平成3年1月31日付けで諮問された、平成2年11月12日の即位礼正殿
儀及び同月22日から23日にかけての大嘗宮儀の出席者及び同行者に係る旅
行命令簿非公開の件(諮問第27号)について、次のとおり答申します。

 

 

 

1 審査会の結論
  平成2年11月12日の即位礼正殿儀及び同月22日から23日にかけて
 の大嘗宮儀の出席者及び同行者に係る旅行命令簿は、同行者の職及び氏名の
 記載部分を除いて公開すべきである。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、平成2年11月12日の即位礼正殿儀及び同月2
  2日から23日にかけての大嘗宮儀の出席者及び同行者に係る旅行命令簿
  (以下「本件文書」という。)を、神奈川県議会議長が平成2年12月2
  8日付けで非公開とした処分の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県議会議長が「個人に関する情
  報であって、特定の個人が識別されるため」神奈川県の機関の公文書の公
  開に関する条例(以下「条例」という。)第5条第1項第1号に該当する
  とした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っ
  ている、というものである。
  ア 実施機関は、旅行命令簿は特定の個人が識別され又は識別され得る情
   報であり、したがって原則として非公開になると言うが、個人が識別さ
   れるものを一括して原則非公開だとする条例は、非公開理由の定め方と
   して広すぎる。
  イ 旅行命令簿は、非公開としなければならないという法令上の明文の規
   定はない。
  ウ 公務出張は、公務員が公金を使って公の仕事を行うために勤務時間を
   割いて用務地に赴くものであるから、公務としてどこへ行き、何時から
   何時までどういう仕事をしたかについては、市民として当然知る権利が
   ある。
   そういう前提で考えれば、本件文書を作成したときには公開されるとい
   うことを意識していなくても、本件文書は、公開されることを前提とし
   て作成された又は公表を目的として作成されたものと同様の性格を有す
   るものである。
    ちなみに、埼玉県では、公務員の公務に係る旅行命令簿の内容は、プ
   ライバシーに当たらないとされ、公開になっている。
  エ 平成2年11月23日の朝日新聞の大嘗祭に関する特集記事には、神
   奈川県知事と神奈川県議会議長の談話の内容が掲載されており、知事は
   宗教色が強いので出席しないと言っているが、議長は「違う宗教だから
   と他人の慶弔に出ないということはない」と出席の意向を述べており、
   出席したことは公になっている。
    今回の場合、大嘗祭という公的な、しかも、大々的な行事であって、
   そこに出席した事実及びそのために使われた金額については、公開され
   るべきである。
  オ 実施機関は、本件文書は公開部分と非公開部分とを分離できないので
   全部を非公開としたと言うが、同時に請求した平成2年11月12日即
   位礼正殿儀の出席者及び同行者に係る旅行命令簿について、神奈川県知
   事は、一部を除いて公開している。それを見ても、公開部分と非公開部
   分とを分離できることは明らかである。

3 実施機関の職員(議会事務局総務課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件文書を非公開とした理由は、次
 のとおりである。
(1)条例第5条第1項第1号本文該当性について
   本件文書には、出席者及び同行者の氏名、職、給料表、級・号給、旅行
  月日、用務地、請求額等、特定の個人の身分、収入、行動が明らかになる
  情報が記録されている。したがって、本件文書は、条例第5条第1項第1
  号本文に該当する。
(2)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 本件文書は、法令の規定により閲覧することができるとされている情
   報とは認められない。
  イ 本件文書は、公表することを目的として作成したものではなく、行政
   の責務として県民に明らかにされる情報とは認められない。
  ウ 本件文書は、法令の規定により行われる許可、免許、届け出その他こ
   れらに相当する行為に際して作成されたものではない。したがって、本
   件文書は、条例第5条第1項第1号ただし書のいずれにも該当しない。
(3)出席の事実の公表の有無について
   神奈川県知事が即位礼正殿儀に出席することが新聞等で公表された事情
  はあるが、神奈川県議会議長が即位礼正殿儀及び大嘗祭に出席したという
  ことは、公表されていない。
(4)議員の個人情報について
   議長であっても、議長職のほかに一議員としての政治活動の場があり、
  その自由は保障される必要があると考えている。議員がどこへ行ったかが
  公開されると、対選挙民や政治活動上、何らかの制約が出てくる。
(5)条例第5条第2項該当性について
   条例第5条第2項は、閲覧等の請求に対して、可能な限り公文書を公開
  しようとする趣旨であるが、本件文書は、適用除外事項に該当する部分と
  そうでない部分とを分離できないため、全部非公開としたものである。

4 審査会の判断理由
(1)答申に当たっての審査会の基本的考え方
   議会は、地方自治制度上、執行機関とは異なる特有の自律性を持ち、各
  議員には政治活動の自由が保障されている。当審査会は、このことを十分
  に理解した上で、条例の規定に基づき審議するものである。
(2)本件文書について
  ア 本件文書は、神奈川県議会議長及び同行者(随行職員1名及び公用車
   の運転員1名)の平成2年11月12日及び同月22日から23日にか
   けてのそれぞれの旅行命令簿であり、議長の旅行命令簿の給料表及び級
   ・号給の欄を除いては、必要な事項が各欄に記載されている。また、随
   行職員の平成2年11月22日から23日にかけての旅行命令簿には、
   別紙として計算用紙が添付されている。
  イ 県議会議員の旅費については、県議会議員の報酬、費用弁償及び期末
   手当に関する条例(昭和31年神奈川県条例第41号)によって定めら
   れているが、具体的な内容については、同条例第6条に旅費の額につい
   ての規定があるほかは、県職員の例によることとされている(同条例第
   8条)。
  ウ 職員の旅費に関する条例(昭和31年神奈川県条例第26号)第3条
   は、職員が出張し又は赴任した場合には、当該職員に対し、旅費を支給
   することを規定している。また、同条例第4条は、職員が出張し又は赴
   任するための旅行は任命権者等の発する旅行命令等によって行わなけれ
   ばならないこと、任命権者等は旅行命令等を発しようとするときは旅行
   命令簿等に当旅行に関する事項を記載してこれを行うこと並びに旅行命
   令簿等の記載事項及び様式は知事が規則で定めることを規定している。
  エ 旅行命令簿の様式は、職員の旅費に関する条例施行規則(昭和47年
   神奈川県規則第80号)で第1号様式として定められたものであり、旅
   行命令簿と旅費の請求書を兼ねたものとなっている。また、その内容は、
   年度、会計区分等コード、所属名(出発地コード)、職、給料表、級・
   号給、氏名、命令権者、旅行月日、用務地(到着地コード)、用務内容、
   請求額等(以下「各項目」という。)であり、1枚で5件の旅行命令を
   発することができる様式となっている。
(3)条例第5条第1項第1号本文該当性について
   条例第5条第1項第1号本文は、個人の尊重という観点から個人に関す
  る情報であって、特定の個人が識別される情報を原則非公開とする方針を
  明確に規定したものである。
   個人情報を「思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学
  歴、出身、住所、所属団体、財産等」と限定して規定する団体の例もある
  が、条例第2条に規定する「他人に知られたくない個人に関する情報」は、
  プライバシーの具体的な内容及び保護されるべきプライバシーの範囲が何
  であるかについて一律に結論を出すことが困難であることから、条例第5
  条第1項第1号本文の規定は、特定の個人に関する情報であれば、いわゆ
  るプライバシーに当たるものはもとより、プライバシーであることが不明
  確なものであっても非公開とすることができることを明文をもって定めた
  ものと解すべきである。また、同規定は、公務員や公職者の個人に関する
  情報とその他の個人に関する情報とを区別して公開、非公開の判断を行う
  ようには定めていないと解される。
   本件文書の各項目に記載された情報は、個人に関する情報であって、特
  定の個人が識別されるものであるから、条例第5条第1項第1号本文に該
  当する情報であることは明らかである。
(4)条例第5条第1項第1号ただし書ア及びウ該当性について
   条例第5条第1項第1号ただし書は、個人に関する情報で特定の個人が
  識別されるものであっても、例外的に公開できる情報を規定したものであ
  る。本件文書に記載された情報は、何人も法令の規定により閲覧すること
  ができるとされている情報とは認められず、また、法令の規定により行わ
  れた許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、又は
  取得した情報でもない。したがって、本件文書に記載された情報は同号た
  だし書ア又はウには該当しないことは明らかである。
(5)条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書イは、公表することを目的として作
   成し、又は取得した情報については公開することとしている。
    ここでいう「公表することを目的として作成した情報」とは、広報紙
   等を通じ広く県民一般に積極的に周知する情報だけではなく、条例第2
   条が「公文書の閲覧及び公文書の交付を求める権利が十分に尊重される
   ようにこの条例を解釈し、運用するものとする。」と規定する趣旨から
   考えると、事務事業の執行上又は行政の責務として県民の要望に応じて
   提供することが予定されている情報、公的責任者が自主的に公表した資
   料等から何人でも知り得る情報と同様の情報も含むと解される。
  イ 県議会議長については、今回の即位礼正殿儀及び大嘗宮儀にそれぞれ
   出席したことが、新聞による報道等で既に明らかにされ、その氏名は県
   の職員録等により公表されている。また、請求額は、用務地から、職員
   の旅費に関する条例等により、明らかになる情報であると認められる。
   したがって、本件文書のうち県議会議長に係る旅行命令簿については、
   条例第5条第1項第1号ただし書イに該当し、公開すべきであると判断
   する。
  ウ 同行者については、それが誰であるかが明らかにされた事実はない。
   また、それは、事務事業の執行上又は行政の責務として公表することが
   予定されている情報とも認められない。したがって、本件文書のうち同
   行者に係る旅行命令簿には、条例第5条第1項第1号ただし書イに該当
   しないものがあると判断する。
(6)条例第5条第2項該当性について
   本件文書のうち同行者に係る旅行命令簿は、職員の職及び氏名を分離す
  ると、残りの情報から特定の個人が識別され得るものとは認められず、ま
  た、特定の個人が識別され得る情報とそれ以外の情報とを容易に、かつ、
  公文書の閲覧又は公文書の写しの交付を求める趣旨を失ない程度に合理的
  に分離できることは明らかである。したがって、本件文書のうち同行者に
  係る旅行命令簿は、条例第5条第1項の規定にかかわらず条例第5条第2
  項を適用して、行者に係る旅行命令簿の職及び氏名の記載部分を除いて、
  公開すべきであると判断する。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

 

 

別紙

                         審査会の処理経過

年月日

処理内容

 平成3.1.31

○諮問

   3.2.4

○実施機関の職員(議会事務局総務課長)に非公開理由説明書の提出要求

   3.2.18

○非公開理由説明書の受理

   3.2.19

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   3.3.12

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理
○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   3.3.23
  (第77回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員(議会事務局総務課長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   3.4.15

○異議申立人から審議促進のお願い受理

   3.5.11
  (第78回審査会)

○審議

   3.6.8
  (第79回審査会)

○審議

 

 

 

                   神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                            (平成3年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

黒羽 亮一

筑波大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社代表取締役社長

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

渡辺 保男

国際基督教大学学長

 

                                    (平成3年6月12日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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