答申第25号

掲載日:2017年12月1日

答申第25号

                          平成5年1月26日

   神奈川県知事 長洲 一二 殿

                    神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成4年5月13日付けで諮問された、平成2年ゴルフ場農薬使用実績報告
一部非公開の件(諮問第29号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
  平成2年ゴルフ場農薬使用実績報告書のゴルフ場名は、公開すべきである。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、平成2年ゴルフ場農薬使用実績報告書(以下「本
  件報告書」という。)に記載された情報のうちゴルフ場名を神奈川県知事
  が平成4年3月24日付けで非公開とした処分の取消しを求める、という
  ものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「当該情報は、公開す
  ると当該法人に明らかに不利益を与えると認められるため」神奈川県の機
  関の公文書の公開に関する条例(以下「条例」という。)第5 条第1項第
  2号に該当するとした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈
  及び運用を誤っている、というものである。
  ア 実施機関は「本件報告書はゴルフ場事業者の理解と協力のもとに提出
   されたもので、公表することを前提としたものではない」旨主張するが、
   任意に提供され、公表を前提としていないということは、非公開の根拠
   になるものではない。
  イ 実施機関は「農薬の使用状況、例えば使用量の多少等が評価の一方的
   な判断材料となり、使用量の多いゴルフ場等の競争上の地位等を害する
   とともに、ゴルフ場事業者の社会的評価、社会活動の自由が損なわれる
   おそれがある」旨主張するが、これは何ら具体的内容を伴わない空虚な
   主張である。ゴルフ場の立地条件を無視して農薬の使用量等を比較して
   も、それが絶対的な評価とはなり得ない。使用量の違いに合理性があれ
   ば、ゴルフ場名が公開されても事業者に不利益な評価にはならない。
  ウ 仮に実施機関が主張するように、各ゴルフ場における農薬使用が何ら
   問題がないものであるならば、ゴルフ場名を公開しても、当該ゴルフ場
   が評価を低下させられる等の不利益を受けることはない。
  エ 実施機関があくまでも秘匿するのは、行政担当者には分かっても、県
   民には分からないだろうという思い上がった考え方に由来する。そのよ
   うな発想を転換して、県民自身が考え、参加するための情報を提供する
   ことこそが、条例の目的である。
  オ よって、本件報告書のゴルフ場名を公開しても、ゴルフ場事業者に明
   らかに不利益を与えるとはいえず、条例第5条第1項第2号本文には該
   当しない。
  カ 仮に条例第5条第1項第2号本文に該当するとしても、実施機関のい
   う環境保全計画や諸調査が実施されているのは、ゴルフ場における農薬
   使用による環境汚染と人の健康への害が問題とされているからであり、
   どこのゴルフ場で、どのような農薬が、どれだけ使われているかは、ま
   さに人の生命、身体又は健康を法人等の事業活動によって生ずる危害か
   ら保護するために公開することが必要な情報であり、条例第5条第1項
   第2号ただし書アに該当する。
  キ 本件と同様の文書(農薬使用実績報告書)が、宮城県の情報公開条例
   に基づき公開請求され、実施機関は一部非公開としたが、同県情報公開
   審査会は、ゴルフ場名も含めすべてを公開するよう答申した。

3 実施機関の職員(農政部農業技術課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件報告書のゴルフ場名を非公開と
 した理由は、次のとおりである。
(1)本件報告書の概要について
   本件報告書は、行政指導の一環として、農薬の安全かつ適正な使用の確
  保の方策を講じ、周辺環境への汚染防止等を図るために制定された「神奈
  川県ゴルフ場農薬安全使用指導要綱」(平成元年4月26日施行。以下「
  指導要綱」という。)第12条に基づき、平成3年2月末日までに、県内
  52ゴルフ場事業者から神奈川県知事あてに提出されたものであり、ゴル
  フ場名、農薬使用管理責任者及び平成2年1月1日から同年12月31日
  までの農薬使用実績(散布場所、月日、対象病害虫雑草名等、使用農薬名、
  剤型、希釈倍率、1平方メートル当たり薬剤量、散布面積、農薬総使用量、防除委託
  先、備考)が記載されている。
   なお、本件報告書に係る農薬使用状況に関しては、水質調査結果等と併
  せ、個別のゴルフ場ごとではなく県総計として、平成3年5月28日に記
  者発表を行った。
(2)条例第5条第1項第2号本文該当性について
  ア 本件報告書は、法令に基づくものでなく、指導要綱に基づきゴルフ場
   事業者の理解と協力のもとに提出されたものであり、公表することを前
   提としたものではない。
  イ 各ゴルフ場の病害虫、雑草等の発生状況は、立地条件により異なって
   おり、それに伴い農薬の使用状況も異なっている。しかし、本件報告書
   に記載されている情報では、立地条件の差異が明らかとなっていない。
  ウ したがって、ゴルフ場の農薬使用に関する社会的関心が高まっている
   現在、その使用量の状況をゴルフ場名とともに公開した場合、農薬の使
   用状況、例えば、使用量の多少等が評価の一方的な判断材料となり、使
   用量の多いゴルフ場等の競争上の地位等を害するとともに、ゴルフ場事
   業者の社会的評価、社会活動の自由が損なわれるおそれがあるので、条
   例第5条第1項第2号本文に該当する。
(3)条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
   条例第5条第1項第2号ただし書アは「人の生命、身体又は健康を法人
  等又は個人の事業活動によって生ずる危害から保護するため、公開するこ
  とが必要と認められる情報」及びただし書ウは「ア又はイに掲げる情報に
  準ずる情報てあつて、公開することが公益上必要と認められるもの」と規
  定している。しかし、ゴルフ場における農薬使用については、(1)指導要綱
  に基づき、ゴルフ場事業者自ら農薬適正使用のために環境保全計画を作成
  し遵守しているとともに、調整池等での常時監視や水質調査も義務づけら
  れていること、(2)県は、水質調査や大気調査を実施していること、(3)ゴル
  フ場事業者及び県の水質調査における水質汚染に影響を及ぼす排水口て検
  出された農薬の濃度は、環境庁の基準を下回るものであること、(4)ゴルフ
  場で使用されている農薬は、全て農薬取締法に基づく登録農薬であり、県
  は毒性の低い農薬を使用するよう指導していること、(5)県の立入り調査の
  結果、各ゴルフ場とも農薬取締法及び指導要綱に違反した行為はなく、ゴ
  ルフ場の農薬により人の生命等が脅かされたと認められる事実は報告され
  ていないこと等からただし書ア又はウに該当しない。
(4)その他
   神奈川県では、平成2年度から神奈川県ゴルフ場農薬問題研究会及び神
  奈川県グリーンキーパーズ協議会を発足させ、農薬の適正使用等について
  の検討を行い、各種の調査研究を実施している。これらの調査研究結果と
  本件報告書に係る農薬使用状況のデータ等を分析し、農薬適正使用及び芝
  の適正管理のマニュアルである「ゴルフ場病害虫雑草防除基準(仮称)」
  (以下「基準」という。)を平成5年度を目途に策定を予定している。
   農薬の使用状況とともにゴルフ場名を公開することは、ゴルフ場事業者
  の理解と協力を損ない、指導要綱に基づく指導や調査研究の遂行に支障を
  きたすとともに、基準策定に向けての必要な資料が得られなくなるおそれ
  がある等の理由から、平成4年度からゴルフ場名については、条例第5条
  第1項第2号該当のほかに、第4号にも該当するとして、公文書の閲覧等
  の一部拒否処分を行っている。

4 審査会の判断理由
(1)条例第5条第1項第2号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号本文は、法人その他の団体(国及び地方公共
   団体は除く。以下「法人等」という。)に関する情報であって、公開す
   ることにより当該法人等に明らかに不利益を与えると認められるものは
   非公開とすることができるとしている。この規定の「明らかに不利益を
   与えると認められるもの」とは、法人等に与える不利益の大小を問わな
   いが、不利益を与えることが客観的かつ明白なものでなければならない
   ことを定めたものと解される(束京高裁平成3年5月31日第9民事部
   判決参照)。
  イ 実施機関は、本件報告書は指導要綱に基づきゴルフ場事業者の理解と
   協力のもとに提出されたものであり、公表することを前提としたもので
   はないと説明しているが、同号本文は、情報の入手の手段、方法等によ
   ってではなく、情報そのものの内容によって公開するかどうかを判断す
   る趣旨のものであると解される。
  ウ 実施機関は、ゴルフ場名を公開すると、使用量の多いゴルフ場等の競
   争上の地位等が害されるとともに、ゴルフ場事業者の社会的評価、社会
   活動の自由が損なわれると説明している。しかし、(1)ゴルフ場で使用さ
   れている農薬は、全て農薬取締法に基づく登録農薬であり、各ゴルフ場
   には農薬取締法及び指導要綱に違反した行為はなく、ゴルフ場の農薬に
   より人の生命等が脅かされたと認められる事実は報告されていないこと、
   (2)各ゴルフ場は、それぞれ立地条件が違っており、それに伴い農薬の種
   類や使用量が異なることについては、合理的理由があるので、農薬の使
   用量の多少そのものだけが評価の一方的な判断材料となることはないこ
   と等が認められる。そのため、ゴルフ場名を公開することにより、農薬
   の種類や使用量等が判明しても、ゴルフ場事業者にとって、明らかに競
   争上の地位等を害されたり、社会的評価、社会活動の自由が損なわれる
   とは認められない。
  エ 当審査会は、県内のゴルフ場において現地調査を行い、ゴルフ場関係
   者に対してゴルフ場名を公開した場合に法人等の事業活動に明らかに不
   利益を与えるかどうかについて具体的な意見を求めたところ、ゴルフ場
   関係者からは事業活動への不利益が生ずるおそれがある点が強調された。
   しかし、当審査会としては、ゴルフ場等の競争上の地位等が明らかに害
   されること、ゴルフ場事業者の社会的評価、社会活動の自由が損なわれ
   ること等が客観的かつ明白であるとの心証を得るまでには至らなかった。
    現在ゴルフ場で使用される農薬等による水質汚染等ゴルフ場をめぐる
   環境問題について県民の関心は非常に高まっていることから、ゴルフ場
   名を公開することにより、ゴルフ場で使用される農薬について正しい情
   報が伝達され、各ゴルフ場に対する公正な社会的評価も期待されるとこ
   ろであり、かえってゴルフ場事業者の社会活動の自由が保障されると考
   えられる。
  オ したがって、ゴルフ場名を公開しても、ゴルフ場事業者に明らかに不
   利益を与えるとは認められず、条例第5条第1項第2号本文に該当しな
   いものと判断するので、本件報告書のゴルフ場名は、公開すべきである。
(2)条例第5 条第1項第2号ただし書該当性について
   異議申立人及び実施機関は、ただし書にもそれぞれ言及しているが、本
  件報告書に記載されたゴルフ場名を公開しても、同号本文に該当しないと
  判断したので、ただし書については論ずる必要はない。
(3)その他
   前記3の「(4)その他」の部分は、平成4年6月4日付け非公開理由説明
  書の中で述べられているものである。しかし、実施機関は、平成4年3月
  24日付け公文書の閲覧等の請求承諾通知書においては、条例第5条第1
  項第4号を非公開理由としては掲げてなく、また、当該非公開理由説明書
  においても、そのような説明をしていない。したがって、当審査会として
  は、条例第5条第1項第4号該当性について判断する必要はないと考える。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                          審査会の処理経過

年月日

処理内容

 平成4.5.13

○諮問

   4.5.15

○実施機関の職員(農政部農業技術課長)に非公開埋由説明書の提出要求

   4.6.4

○非公開理由説明書の受理

   4.6.9

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   4.6.27
  (第84回審査会)

○審議

   4.7.10

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理
○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   4.7.18
  (第85回審査会)

○審議

   4.8.8
  (第86回審査会)

○異議申立人から意見の聰取
○実施機関の職員(農政部農業技術課長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   4.9.5
  (第87回審査会)

○審議
○現地調査

   4.10.3
  (第88回審査会)

○審議

   4.11.26
  (第89回審査会)

○審議

   4.12.17
  (第90回審査会)

○審議

   5.1.21
  (第91回審査会)

○審議

                     神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                                  (平成3年4月1日委嘱)

 

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

平成4.3.11委嘱

黒羽 亮一

学位授与機構教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社相談役

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

                                          (平成5年1月26日現在) (五十音順)

目次にもどる

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • ラグビーワールドカップ2019
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa