答申第26号

掲載日:2017年12月1日

答申第26号

                          平成5年8月27日

   神奈川県知事 長洲 一二 殿

                    神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成4年9月17日付けで諮問された平成2年度東京都市圏総合都市交通体
系調査報告書・計画編非公開の件(諮問第30号)について、次のとおり答申
します。

1 審査会の結論
  平成2年度東京都市圏総合都市交通体系調査報告書・計画編を非公開とし
 たことは、妥当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、平成2年度東京都市圏総合都市交通体系調査報告
  書・計画編(以下「本件文書」という。)を神奈川県知事が平成4年7月
  9日付けで非公開とした処分の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「当該調査は、国等関
  係機関との共同調査であり、本件文書を公開することにより、国等との協
  力関係を害するおそれがあるため」神奈川県の機関の公文書の公開に関す
  る条例(以下「条例」という。)第5条第1項第3号に該当するとした非
  公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、
  というものである。
  ア 道路等の計画における計画交通量は、大気汚染、騒音、振動等の予測
   に当たっての基本的数値であり、これを明らかにすることは、事業主体
   の義務である。
    環境関連情報の適正入手と意思決定過程への参加については、環境と
   開発に関するリオ宣言で「環境問題は、それぞれのレベルで、関心のあ
   るすべての市民が参加することにより最も適切に扱われる。国内レベル
   では、各個人が、有害物質や地域社会における活動の情報を含め、公共
   機関が有している環境関連情報を適正に入手し、そして、意思決定過程
   に参加する機会を有しなくてはならない。各国は、情報を広く行き渡ら
   せることにより、国民の啓発と参加を促進し、かつ奨励しなければなら
   ない。」とうたわれている。
  イ 条例第5条第1項第3号に該当する文書とは、国又は他の地方公共団
   体(以下「国等」という。)の発意に基づき、神奈川県が受身若しくは
   第三者として作成し、又は取得した情報である。しかし、神奈川県は、
   建設省関東地方建設局等とともに東京都市圏交通計画協議会(以下「協
   議会」という。)の構成員であり、本件文書が協議会における共同調査
   の結果であることを実施機関自らが認めていることからして、本件文書
   は、神奈川県が受け身若しくは第三者として作成し、又は取得した文書
   ではない。
  ウ 仮に本件文書が条例第5条第1項第3号に該当するものであるならば、
   実施機関は、本件文書について非公開とする結論が出されていることを
   主張するのみではなく、国等との協力関係を著しく害するおそれを示す
   文書をもって、非公開の趣旨及び理由を明らかにすべきである。

3 実施機関の職員(都市部都市政策課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明要旨を総合すると、本件文書を非公開とした理由は、
 次のとおりである。
(1)本件文書は、昭和63年度から平成2年度にかけて行われた東京都市圏
  総合都市交通体系調査(以下「本調査」という。)の結果である「実査・
  基礎集計編」、「現況把握編」及び「現況分析編」とともに協議会におい
  てまとめられたもので、21世紀初頭を目標とした調査に関する報告書で
  ある。
   協議会は、建設省関東地方建設局、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、
  神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、住宅・都市整備公団、日本道路公団
  及び首都高速道路公団を構成員とし、東京都市圏における総合的な都市交
  通計画の推進に資するため昭和56年に設置された団体であり、建設省関
  東地方建設局が事務局となって運営している。
(2)条例第5条第1項第3号該当性について
  ア 協議会では、本調査に係る報告書の取扱いについて従前から国を中心
   に協議してきたところであるが、「実査・基礎集計編」、「現況把握編」
   及び「現況分析編」については公開とするものの、「計画編」について
   は、非公開とする結論が出されている。
  イ 異議申立人から本件文書に係る公文書の閲覧等の請求を受けて、「第
   三者情報の取扱い要領」に基づき、協議会の構成員である国、地方公共
   団体等各構成員の意向を確認したところ、前記アと同様の意向であった。
  ウ 本調査は、2010年(平成22年)の将来交通量を予測し、その交
   通量に対応した東京都市圏の望ましい総合的な都市交通体系を検討した
   ものであるが、神奈川県が独自の判断をし、本件文書を公開する結論を
   出すことは、国、関係都県市等との協力及び信頼関係を著しく害すると
   ともに、今後の共同調査に重大な影響を及ぼし、神奈川県における交通
   政策立案に支障をきたすと判断した。
  エ したがって、本件文書は、条例第5条第1項第3号に該当する。

4 審査会の判断理由
(1)協議会について
   実施機関は、本件文書が協議会においてまとめられた調査に関する報告
  書である旨説明しているので、当審査会として協議会について調査したと
  ころ、次に掲げる事実が認められる。
  ア 協議会は、建設省関束地方建設局、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、
   神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、住宅・都市整備公団、日本道路公
   団及び首都高速道路公団を構成員とし、東京都市圏における総合的な都
   市交通計画の推進に資することを目的に都市交通計画の推進に必要な調
   査研究、都市交通に関する都市計画及び調査の相互調整、共同調査の企
   画及び実施等の事業を行っている。
  イ 協議会は、建設省の発意の下で設置され、その会長、幹事長及び事務
   局長には、いずれも建設省関東地方建設局の職員が充てられ、事務局は、
   同建設局に置かれている。
    また、昭和63年度から平成2年度にかけて行われた本調査における
   事業費のうち、国が実質的に負担したと認められる割合が全体の2分の
   1以上を占めているのに対し、神奈川県が実質的に負担したと認められ
   る割合は5.5パーセントに過ぎない。
(2)本件文書について
   実施機関は、本件文書が21世紀初頭の総合的な都市交通のあり方を共
  同調査したものである旨説明しているので、当審査会として本件文書の内
  容、性格等について調査したところ、次に掲げる事実が認められる。
  ア 本件文書は、東京都市圏における人の動きの実態調査、現況把握、現
   況分析等を踏まえ、平成2年度に東京都市圏の将来都市構造や交通需要
   の見通し、総合交通施策計画案等を検討し、2010年における東京都
   市圏全体の都市交通体系のあり方等をとりまとめたものであり、今後の
   都市交通計画はもとより、生活環境の整備等都市計画全般の資料として
   活用することが期待されているものである。
  イ 本件文書は、協議会が各構成団体から各種データ、開発計画等の様々
   な情報を収集し、それらについての収集先の団体の考え方や計画内容等
   とは必ずしも整合性を図らずに、広域的観点から協議会として望ましい
   東京都市圏の将来像を想定し、協議会が独自に分析、条件設定を行うな
   どして、各種の予測、評価、検討等を行ったものである。
  ウ 本件文書は、このように必ずしも整合性を図らずに検討等を行ったも
   のではあるが、全体的には東京都市圏という観点から協議会構成団体が
   行った共同調査の結果をとりまとめたものであるから、協議会構成団体
   の共有物たる性格を有しており、また、内容的にも、協議会構成団体相
   互の情報が密接に関連し、一体不可分となっているため、部分的に取り
   出すことのできないものである。
  エ 本件文書を公開するか否かについては、協議会における事務局会議及
   び幹事会で検討が行われ、さらに、協議会においても議論された上で非
   公開とする旨の決定がなされ、協議会事務局長である建設省関東地方建
   設局企画部都市調査課長から本件文書を非公開とする旨の文書が各構成
   団体の本調査に係る担当課長あてに発せられている。
(3)条例第5条第1項第3号該当性について
   協議会における非公開とする旨の決定にかかわらず、当審査会は、独自
  に本件文書が条例第5条第1項第3号に該当するかどうかについて慎重に
  審議した結果、次のとおり判断する。
  ア 条例第5条第1項第3号の趣旨について
    条例第5条第1項第3号は、県と国等との協力関係を確保する観点か
   ら設けられたものであり、国等の発意に基づき、県が受身の立場に立っ
   て行う協議又は依頼に基づき作成又は取得した情報であって、公開する
   ことにより、国等との協力関係を著しく害するおそれがあるものについ
   て、非公開とすることができるとしている。
  イ 国等の発意に基づき、県が受身の立場に立って行う協議又は依頼に基
   づき作成又は取得した情報であるかどうかについて
    東京都市圏では、東京を中心とする人口、業務機能、都市機能の集中
   に伴う土地、住宅、交通等各種の都市問題、とりわけ、慢性的な交通渋
   滞や通勤ラッシュ等の都市交通問題を解決し、安全で快適な都市環境を
   確保することが、緊急かつ重要な課題となっている。
    このような状況下において、東京都市圏の交通政策は、一地方公共団
   体単独では立案することができるものではなく、長期的、広域的観点か
   ら建設省が中心となって国の機関、他の地方公共団体等と率直な意見交
   換、共同調査、情報収集、計画内容等の相互調整等を行わなければ策定
   することができないものであると考える。
    このことを踏まえ、前記(1) で述べたような事実、すなわち、協議会
   は、建設省の発意に基づき設置され、その主要な役職には建設省関東地
   方建設局の職員が充てられ、さらに、予算面から見ても国の実質的負担
   が他の構成員のそれよりも大きいと認められることなどから判断すると、
   協議会は国の主導で運営され、国が中心となって共同調査等の事業を行
   っていると認められる。このような性格の協議会で作成された本件文書
   は、県が受身の立場に立って行う協議に基づき取得したものと解するこ
   とが妥当である。
  ウ 公開することにより、国等との協力関係を著しく害するおそれがある
   かどうかについて
  (ア)このように神奈川県が受身の立場に立って行う協議に基づき取得し
    た本件文書について、県の判断で公開することが可能かどうかを検討
    した。
     その結果、予算的にもわずかな負担をしているに過ぎないなど受身
    の立場である県が、協議会構成団体の共有物たる性格を有し、協議会
    において非公開とする旨の決定がなされ、協議会各構成団体において
    も公表していないと認められる本件文書を公開することについては、
    相当の困難が伴うものと認めざるを得ない。
  (イ)本件文書は、前記(2) で述べたとおり、協議会が各構成団体から様
    々な情報を収集、分析し、各構成団体が策定している各種計画や方針
    等とは必ずしも整合性を図らずに21世紀初頭の望ましい都市交通体
    系のあり方等をとりまとめたものであり、そのため、これを現時点で
    公開することにより、協議会各構成団体が現在策定中の都市交通計画
    や個別の事業計画等に係る内部的な検討等に際して行う国の機関や他
    の地方公共団体等との率直な意見交換、計画内容の調整等が行えなく
    なるなど著しい支障が生ずるおそれがあることを否定することはでき
    ないと考える。
  (ウ)前記(ア)及び(イ)から判断すると、本件文書を公開することによ
    り、交通政策に係る国等との意見交換、共同調査、情報収集等の実施
    が困難になるなど、国等との協力関係を著しく害するおそれがあると
    認められる。
  エ したがって、本件文書は、条例第5条第1項第3号に該当すると判断する。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                          審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成 4.9.17

○諮問

   4.9.24

○実施機関の職員(都市部都市政策課長)に非公開理由説明書の提出要求

   4.10.14

○非公開理由説明書の受理

   4.10.19

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   4.12.24

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

   4.12.28

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   5.1.21
  (第91回審査会)

○審議

   5.2.25
  (第92回審査会)

○異議申立人からの意見の聴取
○実施機関の職員(都市部都市政策課長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   5.3.18
  (第93回審査会)

○審議

   5.4.22
  (第94回審査会)

○審議

   5.5.20
  (第95回審査会)

○審議

   5.6.17
  (第96回審査会)

○審議

   5.7.15
  (第97回審査会)

○審議

   5.8.20
  (第98回審査会)

○審議

                    神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                                  (平成5年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社相談役

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

                                         (平成5年8月27日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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