答申第28号

掲載日:2017年12月1日

答申第28号

                          平成6年7月22日

  神奈川県知事 長洲 一二 殿

           奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

平成5年1月5日付けで諮問された知事交際費に係る前渡金管理状況表及び
領収書等綴り(平成4年1月から同年3月分まで)一部非公開の件について、
次のとおり答申します。

1 審査会の結論
  平成4年1月から同年3月までの知事交際費に係る前渡金管理状況表の摘
 要欄のうち支出項目を除く部分及び領収書等綴りは、次に掲げる部分を除い
 て公開すべきである。
(1)見舞に係る情報のうち、相手方が識別され得る情報の部分
(2)懇談に係る情報のうち、懇談月日、懇談場所及び懇談当事者が識別され
  得る情報の部分
(3)法人等に関する情報のうち、取引金融機関名、預金種目、口座番号及び
  口座名義人の部分
(4)法人等の経理担当者が識別され得る情報の部分

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、平成4年1月から同年3月までの神奈川県知事及
  び神奈川県副知事(以下「知事等」という。)の交際費に係る前渡金管理
  状況表(以下「本件出納簿」という。)の摘要欄のうち祝儀、見舞、香典
  等の支出項目を除く部分並びに支払いを裏付ける証拠書類である領収書、
  請求書、支払証明書、振込金受取書(兼振込手数料受取書)及び郵便振替
  払込金受領証の綴り(以下「本件領収書等綴り」という。)を神奈川県知
  事が平成4年10月28日付けで非公開とした処分の取消しを求める、と
  いうものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「特定個人が識別され、
  又は識別され得る情報がある。法人に明らかに不利益を与えると認められ
  るものがある。知事等の交際範囲、内容等に関する情報であり、公開する
  と関係者等との信頼関係を損ない、理解と協力を得られにくくなり、当該
  事務の公正又は円滑な実施を著しく困難にするおそれがあるため」神奈川
  県の機関の公文書の公開に関する条例(以下「条例」という。)第5条第
  1項第1号、第2号及び第5号に該当するとした非公開処分の決定は、次
  に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 知事等交際費の公開の必要性について
  (ア)知事等交際費は、県民の税金から支出され、その使途を知りたいと
    の要求は納税者として当然である。本件における知事等の交際費の特
    徴は、懇談経費の占める率が極めて高く、公開して県民の検証を受け、
    理解を得るべきである。
     また、全国的に知事等交際費に対する関心は高く、都道府県で初め
    て公開条例を制定した神奈川県の対応が注目されている。
  (イ)平成6年1月27日の大阪府知事交際費及び栃木県知事交際費に関
    する最高裁判決は、交際の相手方が識別され得る情報は原則として公
    開しないことができるとの判断を示したが、これは、それぞれの公開
    条例についての解釈を示したものであり、大阪府及び栃木県と神奈川
    県とでは同じ知事等交際費であっても支出方法や文書の形態等異なる
    点もあるはずで、これらを同一に扱うべきではない。
  (ウ)実施機関が主張する知事等交際費に関する監査の行政実例は、情報
    公開制度のない時代のものである。実施機関が非公開としている本件
    出納簿の摘要欄のうち祝儀、見舞、香典等の支出項目を除く部分及び
    本件領収書等綴り(以下、これらを「本件非公開部分」という。)に
    係る処分の当否は、このような「過去の遺物」を参考とするのではな
    く、条例の適用除外事項に該当するか否かによってのみ判断されるべ
    きである。
  イ 条例第5条第1項第1号該当の点について
  (ア)本号の立法趣旨は、何よりも個人のプライバシーの保護であり、プ
    ライバシーの概念が明確に定義できないため、立法技術上、最もプラ
    イバシーに敏感な人に合わせ「個人が識別され、又は識別され得る情
    報」を非公開にすることができると規定したものである。しかし、そ
    のように最大限の範囲で、しかも一律に保護すべき範囲を定めたため、
    本来は必要最小限とすべき適用除外事項の原則に抵触しかねないので、
    非公開の範囲が不当に拡大されないよよう、解釈に当たっても十分な
    注意と工夫が必要である。
  (イ)本件出納簿及び本件領収書等綴り(以下、これらを「本件文書」と
    いう。)のうち、本件非公開部分に記載されている個人情報は、いわ
    ゆる公人としての知事等が交際している相手についてのものであり、
    しかも、その相手の氏名・役職名等の個人情報のみが記載されている
    にすぎず、こうした性格及び内容を考えると、ただ単に「個人が識別
    される」ことだけをもって非公開にすることはできず、交際相手の様
    々な属性に分けて判断すべきである。
     少なくとも公務員である場合は、これまでの解釈運用に合わせて、
    明らかにただし書イに該当するというべきである。
     原則公開の趣旨から、少なくとも公知性のある個人情報、例えば、
    公務員の両親や子息等が亡くなった場合等は、報道されている可能性
    があり公開されるべきである。
     その他の個人についても、交際費の使途に対する県民一般の不信感
    が存在している現在、実施機関には、「県政に対する県民の理解を深
    め、県民と県との信頼関係を一層増進する」という条例の目的を果た
    す責務があり、そのために県民の要望に応じて情報を提供することが
    予定されているものであり、ただし書イに該当し、公開されるべきで
    ある。
  (ウ)公人としての知事等が公務に必要な範囲で交際している人々の氏名
    ・肩書・役職名・親族関係等の情報は、互いに個人として交際してい
    る人々の情報ではないことから、知事等との交際が明らかにされても、
    個人の秘密が明らかになるわけではない。なお、懇談は私的な飲食で
    はなく、互いの公務に付随、関連するものであり、参加者氏名等が公
    開されることは受忍すべきものである。
  (エ)本件領収書等綴りの領収書及び請求書については、本来、相手方の
    氏名等は記載されていないはずであり、実施機関の主張は事実に反す
    る。もし、個人名が記載されているとすれば、物品購入や飲食のため
    に使用した法人の代表者等の氏名であり、これらは社会慣行上は公表
    されているので、本号に該当しない。
  ウ 条例第5条第1項第2号該当の点について
  (ア)実施機関は、本件領収書綴りをすべて本号該当により非公開として
    いる。本号適用の可否が問題となるのは、そのうちの領収書及び請求
    書についてである。これらに記載されている物品、飲食の内容や金額
    は、事業・営業上のノウハウでもなく、公開しても当該法人に何ら支
    障は生じない。なお、神奈川県では、領収書を公開している事例があ
    るにもかかわらず、知事等交際費だけ領収書を公開しないのは極めて
    疑問である。
  (イ)物品購入や飲食に利用したという事実とその内容は、当該法人の事
    業のごく一部でしかなく、それを明らかにしたところで何ら問題はな
    い。逆に、一般的には、自治体との取引があるという事実は、当該法
    人の信頼性の目安となり、不利益どころか利益をもたらすことすら考
    えられる。
  (ウ)平成6年2月6日の大阪府水道部懇談会経費に関する最高裁判決(以
    下「懇談会経費最高裁判決」という。)では、公開することにより飲
    食店を経営する業者の地位その他正当な利益を害すると認められない
    とし、公開を命じている。訴訟の対象となった公文書は、外部の飲食
    店を利用して行った懇談会等についての支出伝票、債権者の請求書及
    び経費支出伺いであり、本件領収書等綴りと同種の情報であることか
    ら、本件領収書等綴りの公開が最高裁で争われた場合には、同様の判
    決が出される可能性が高い。
  (エ)したがって、本件領収書等綴りに記載された法人等に関する情報は、
    ただし書該当の有無を判断するまでもなく、明らかに法人等に不利益
    を与える情報には該当しない。
  エ 条例第5条第1項第5号該当の点について
  (ア)実施機関は、本件非公開部分を公開すると、関係者等との信頼関係
    を損ない、理解と協力を得ることができなくなり、当該事務の公正又
    は円滑な実施を著しく困難にするおそれがあると主張するが、それは
    一般的、抽象的な「おそれ」にすぎず、実施機関の主観に左右され、
    必要最小限であるべき非公開の範囲が際限なく拡大してしまう。公開
    による支障が個別・具体的証明されない限り、非公開とすることはで
    きない。このことは、懇談会経費最高裁判決及び平成4年10月の東
    京地方裁判所の束京都知事交際費訴訟の判決で明らかである。
  (イ)都道府県レベルでこそ交際の相手方が特定される情報を公開してい
    ないが、川崎市や那覇市等市区町村レベルではかなり多くの自治体が
    交際の相手方が団体の場合はこれを公開しており、また、相手方が個
    人の場合であっても、公開している自治体がある。しかも、このよう
    に交際の相手方まで公開している自治体で、実施機関が主張するよう
    な交際事務に支障が生じたという話は聞いていない。実施機関の非公
    開理由が現実的な妥当性を欠くことは、他の自治体における公開例に
    より証明されている。
  (ウ)関係者と知事等との交際は、実施機関の行う事務の本体ではなく、
    円滑剤にすぎない。特に交際の多くは儀礼的色彩が極めて強く、その
    概要を公開することが、直ちに本体事務に個別・具体的に影響を与え
    るとは考えにくい。また、本件非公開部分には知事等の交際の内容等
    詳細な情報は記載されていないはずであり、この程度の情報を公開し
    ても、知事等の交際の実態は明らかにならず、事務に対する支障は生
    じない。
  (エ)実施機関は、知事等の裁量を主張するが、公開することにより、裁
    量がどれほどの影響を受けるか個別・具体的に証明していない。本件
    の裁量は、相手方をどの金額のランクにするか、どういう記念品にす
    るかなどである。社会一般の儀礼の中でもランク付けなどは稀ではな
    く、日常の付き合いでもよくあり、公開することにより、この程度の
    裁量が何らかの影響を受けても、本体事務に影響はなく、県民全体の
    利益に重大な損失をもたらさない。
  (オ)実施機関は、交際費を一体としてとらえており、費目別に非公開理
    由を検討することを怠っている。費目別に支障の有無を検討すると、
    実施機関の主張には理由がないことがわかる。
  (カ)したがって、本件非公開部分は、本号には該当しない。

3 実施機関の職員(総務部秘書室長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件非公開部分を非公開とした理由
 は、次のとおりである。
(1)知事等交際費について
   知事等は、行政を円滑に推進するために、極めて広範囲かつ多数の関係
  者との多岐にわたる交際を必要としている。知事等交際費は、こうした交
  際を行う知事等の職務上必要な特別な経費として、予算額は議会において
  議決され、その支出は、神奈川県財務規則に基づき行われている。
   なお、交際費については、監査委員の監査に関する行政実例で、一般監
  査では「交際費の内容まで監査することは、経費の性質にかんがみ適当で
  はない」とされ、住民の直接請求による監査でも「監査結果の公表は、交
  際費の性質上、適当な配慮が必要であり、使途の大要を示し、適不適を明
  らかにすれば足りる」とされるなど、他の費目とは異なる取扱いがされて
  いる。
(2)本件文書について
   本件文書は、平成4年1月から同年3月までの知事等交際費の具体的な
  支出状況を記録した帳簿である出納簿及び支払いを裏付ける証拠書類であ
  る領収書等綴りである。
   本件出納簿は、一件ごとに支出年月日、摘要欄に支出項目(祝儀、見舞、
  香典等)と支出の具体的内容、前渡額、支払額、残額等の情報が記載され
  ており、支出年月日、摘要欄のうち支出項目、前渡額、支払額、残額等を
  公開とし、摘要欄のうち相手方等支出の具体的内容を非公開としたもので
  ある。
   本件領収書等綴りは、支出の証拠書類として領収書等を1か月を単位と
  して取りまとめ、保管したもので、支出の具体的内容等が記載されており、
  全体を非公開としたものである。
(3)条例第5条第1項第1号該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号本文該当性について
    本件非公開部分には、知事等交際費に係る相手方の氏名、肩書、役職
   名、親族関係等の情報が記載されている。これらの情報は、「個人に関
   する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」
   (以下、「個人情報」という。)であるので、条例第5条第1項第1号
   本文に該当する。
    なお、この規定では、個人情報であれば、明白にプライバシーと思わ
   れるものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも
   含めて非公開とすることができるとされている。また、公人とその他の
   個人とを区別して公開、非公開の判断を行うようには明文化されていな
   いので、個人情報については、いずれも非公開とすべきである。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
    同号ただし書は、個人情報であっても例外的に公開できる情報を規定
   したものであるが、本件非公開部分の個人情報は、同号ただし書ア及び
   ウのいずれにも該当しない。
    また、同号ただし書イは、公表することを目的として作成し、又は取
   得した情報については公開することと定められているが、本件非公開部
   分の個人情報は、公表することを目的に作成したものではないので、同
   号ただし書イには該当しない。
(4)条例第5条第1項第2号該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号本文該当性について
    本件領収書等綴りの中には、法人、その他の団体及び事業を営む個人
   (以下「法人等」という。)に関する情報が記載されている。
    取引内容及び収入等を表す情報を公開することは、利用者の氏名等や
   利用内容を明らかにしないことによって信用を保持している法人等にと
   って、信用や社会的評価に影響を及ぼすことになるとともに、当該法人
   等の事業上の情報を明らかにすることになり、同業者間での競争上の地
   位その他正当な利益を害することになる。また、法人等の取引銀行、口
   座番号等の経営内部情報や営業上のノウハウ情報を公開することは、当
   該法人等に明らかに不利益を与えることになる。したがって、本件領収
   書等綴りに記録された法人等に関する情報は、条例第5条第1項第2号
   本文に該当する。
  イ 条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
    同号ただし書は、法人等に関する情報で、公開することにより法人等
   に不利益を与えても、公盃上の埋田から例外的に公開できる精報を規定
   したものであるが、これを本件領収書等綴りについてみると、同号ただ
   し書ア、イ、ウのいずれにも該当する情報ではないことは明らかである。
(5)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 本件非公開部分には、知事等の行政執行上必要な交際の範囲、内容、
   程度等の情報が記載されており、これらは、個々の交際の重要度を示す
   情報である。
  イ 知事等が行う交際の目的は、県が行うあらゆる事務事業の推進に当た
   ってなされる交渉、調整等の基礎となる関係者との信頼関係、協力関係
   の維持、確保である。
  ウ 知事等の交際事務は、一度限りでなく反復継続して行われる性格のも
   のであり、当該支出行為の終了後、相当の期間を経過した場合であって
   も、これらの情報が公開されると、当該関係者はもとよりその他の関係
   者等との信頼関係が損なわれ、理解と協力が得られなくなり、関係者と
   本県との良好な信頼関係、協力関係を維持、確保するという交際事務の
   目的が達成できなくなり、また、交際事務の公正かつ円滑な執行を著し
   く困難にするおそれがある。
  エ 知事等交際費は、前記(1) で述べた行政実例でも明らかなとおり、知
   事等の裁量が認められており、先に公開した内容以上に公開することは、
   専門的、技術的な知識、経験に基づく知事等の裁量に重大な影響を及ぼ
   し、適切な交際事務の執行を著しく困難にし、ひいては県民全体の利益
   に重大な損失をもたらすおそれがある。
  オ なお、「おそれ」とは、その可能性を意味しており、将来の見込、予
   測であることからして、その可能性は一般的、抽象的に存すれば足りる
   と判断される。
  カ したがって、本件非公開部分は、条例第5条第1項第5号に該当する。
(6)条例第5条第2項該当性について
   本件領収書等綴りは、適用除外事項に該当する部分を除くと、公開でき
  る情報は、支出年月日、金額程度であり、本件出納簿で公開した部分以上
  の内容はなく、また、公開する情報と非公開とする情報とを容易に、かつ
  請求の趣旨を失わない程度に合理的に分離できることには当たらないと判
  断し、全体を非公開としたものである。

4 審査会の判断理由
(1)本件文書について
  ア 交際費は、一般的には、「対外的に活動する地方公共団体の長その他
   の執行機関が、その行政執行のために必要な外部との交際上要する経費
   で、交際費の予算科目から支出される経費である。」(昭和28年7月
   1日付け自治庁行政部行政課長からの千葉県総務部長あての回答)とさ
   れている。本件における知事等交際費は、こうした交際を行う知事等の
   職務上必要な経費として、予算額は神奈川県議会において議決され、そ
   の支出は神奈川県財務規則に基づき行われている。
  イ 本件文書は、平成4年1月から同年3月までの知事等交際費の支出に
   関する出納簿及び領収書等綴りである。
    出納簿は、総務部秘書室において知事等交際費の経理状況を明確にす
   るために、支出の1件ごとに、支出年月日、支出項目、支出の具体的内
   容、前渡額、支払額、残額等の情報を記載し、1か月単位に取りまとめ
   た帳簿である。
    また、領収書等綴りは、総務部秘書室において領収書、請求書、支払
   証明書、振込金受取書(兼振込手数料受取書)及び郵便振替払込金受領
   証を支出の証拠書類として、1か月単位に取りまとめ綴ったものである。
  ウ 平成4年1月から同年3月までの交際費の支出項目は、(1)「香典」1
   8件、(2)「不祝儀」20件、(3)「祝儀」43件、(4)「見舞」5件、(5)「懇
   談」22件、(6)「会費」7件、(7)「賛助」5件、(8)「記念品等」2件及
   び(9)「餞別」1件で、合計9項目123件である。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、知る権利の保
   障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調
   整しながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定した
   ものである。そして、同号本文は、個人情報はプライバシーに当たるも
   のはもとより、プライバシーであることが不明確なものであっても非公
   開とすることができることを明文をもって定めたものと解すべきである。
   また、公務員や公職者の個人に関する情報とその他の個人に関する情報
   とを区別して公開又は非公開の判断を行うようには定めていないと解さ
   れる。
  イ 本件出納簿の摘要欄のうち祝儀、見舞、香典等の支出項目を除く部分
   には、知事等の職氏名の情報並びに相手方の氏名、肩書、役職名及び親
   族等の個人情報が記載されている部分がある。本件領収書等綴りには、
   知事等の職氏名の情報並びに相手方の氏名、肩書、役職名及び親族等の
   個人情報が記載されている部分や相手方の経理担当者の個人情報又は利
   用した店舗等(以下「債権者」という。)の経理担当者の個人情報が記
   載されている部分がある。したがって、これらの情報は、個人情報であ
   ると認められるので、条例第5条第1項第1号本文に該当すると判断す
   る。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的に
   公開できる情報を規定している。
  イ 本件非公開部分の個人情報が、同号ただし書アの何人でも法令の規定
   により閲覧できるとされている情報及びただし書ウの公開することが公
   益上必要と認められる情報に該当しないことについては、異議申立人と
   実施機関との間で争いはなく、当審査会としても同号ただし書ア及びウ
   には該当しないものと判断する。
  ウ 条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書イは、県が県民に対して公表する
    ことを目的として作成し、又は取得した情報については公開すること
    としている。
     ここでいう「公表することを目的として作成し、又は取得した情報」
    とは、広報紙等を通じ広く県民に積極的に周知する情報に限られない。
    条例第2条が「公文書の閲覧及び写しの交付を求める権利が十分に尊
    重されるようにこの条例を解釈し、運用するものとする」と規定して
    いる趣旨から考えると、ここでいう情報には、事務事業の執行上又は
    行政の責務として県民の要望に応じて提供することが予定されている
    情報、さらには、個人が自主的に公表した資料等から何人でも知り得
    る情報と同様の情報も含まれると解される。
  (イ)知事等の職氏名の情報は、交際事務に関する職務の情報であり、知
    事の行動については、従来からその一部が新聞の「知事の動向」欄等
    で報道されていることが認められ、また、副知事の行動については、
    新聞等で報道されていないが、副知事の職務は、知事に代わって対外
    的に県を代表するという性格のものであることが認められる。
  (ウ)相手方に係る個人情報としては、「香典」、「不祝儀」、「祝儀」、
    「見舞」、「懇談」及び「記念品等」の項目について記載されている
    ことが認められる。相手方に係る個人情報であっても、社会的儀礼に
    関する情報、当事者自らが公表している情報等は、行政の責務として
    県民の要望に応じて提供することが予定されている情報であると認め
    られるので、各項目ごとに、社会的儀礼に関するものであるか否か、
    当事者自らが公表しているか否かなどについて検討する。
     「香典」は、相手方本人や親族等の葬儀に際し、金銭を支出するも
    のであって、社会的儀礼に関するものである。相手方の氏名等は、
    「知事の動向」欄等で従来から一部公表されている場合があり、相手
    方も新聞等で葬儀を自ら公表している場合のあることが認められる。
    「不祝儀」は、相手方本人や親族等の葬儀に際し、生花を贈るもので
    あって、「香典」と同様の性格を持つ社会的儀礼に関するものである。
    相手方も新聞等で葬儀を自ら公表している場合のあることが認められ
    る。「祝儀」は、相手方の各種の集い、大会、記念式典、賀詞交換会
    等に招待され、あるいは大会に参加する選手団等からのあいさつを受
    けた際、祝金、生花等を贈るものであって、社会的儀礼に関するもの
    である。相手方氏名等は、「知事の動向」欄等で従来から一部公表さ
    れている場合があり、相手方も各種の集い等を行う際に、関係万面に
    広く招待状を出して参加を呼びかける場合のあることが認められる。
    「見舞」は、相手方の病気入院等に際し、生花等を贈るものであって、
    社会的儀礼に関するものではあるが、相手方の氏名等は、「知事の動
    向」欄等では従来から公表されてなく、一般的には、相手方自らが公
    表する性格のものではないことが認められる。「懇談」は、社会的儀
    礼に関するものとは異なり、知事等が、県行政の円滑な運営に資する
    趣旨で、相手方と話合い等を行うものである。相手方の氏名等は、
    「知事の動向」欄等で従来から公表されてなく、一般的には、相手方
    自らが公表する性格のものではないことが認められる。
     「記念品等」は、相手方の記念行事に際し、贈られるものであって、
    「祝儀」と同様の性格を持つ社会的儀礼に関するものである。一般的
    には、記念品を受領した際に、相手方自らが関係者等に披露する性格
    のものであることが認められる。
  (エ)相手方又は債権者の経理担当者の個人情報は、領収書等に付随的に
    記載されている性格のものであり、社会的儀礼に関する情報であると
    は認められない。
  (オ)以上のことから、本件非公開部分について、当審査会が精査したと
    ころ、知事等の職氏名に関する情報並びに「香典」、「不祝儀」、
    「祝儀」及び「記念品等」に係る相手方が識別され得る情報は、行政
    の責務として県民の要望に応じて提供することが予定されている情報
    であると認められ、条例第5条第1項第1号ただし書イに該当すると
    判断する。
     しかし、「見舞」及び「懇談」に係る相手方が識別され得る情報並
    びに相手方及び債権者の経理担当者が識別され得る情報については、
    行政の責務として県民の要望に応じて提供することが予定されている
    情報であるとは認められず、条例第5条第1項第1号ただし書イに該
    当しないと判断する。
(4)条例第5条第1項第2号本文該当性について
  ア 粂例第5条第1項第2号本文は、法人等に関する情報であって、公開
   することにより、当該法人等に明らかに不利益を与えると認められるも
   のは非公開とすることができるとしている。
  イ 本件領収書等綴りの中には、相手方又は債権者である法人等の名称・
   所在地・代表者氏名、品目、単価、合計金額、取引金融機関名、預金種
   目、口座番号、口座名義人等の情報が記載されており、これらの情報は、
   法人等に関する情報であると認められる。なお、「支払証明書」は、香
   典や祝儀等のようにその性質上、相手方から領収書を徴し得ないものに
   ついて、総務部秘書室長が支払いの事実を証明した書類であり、本件出
   納簿の摘要欄に記載された情報と同一のものである。
    実施機関は、これらの情報を公開すると、当該法人等に信用上の不利
   益を与えること、また、当該法人等の内部情報等であることを理由に条
   例第5条第1項第2号本文に該当するとしているので、以下、それぞれ
   の理由について判断する。
  ウ 信用上の不利益の点については、債権者である法人等が、顧客に無断
   で利用の事実を公表する場合はともかく、顧客である実施機関が自ら利
   用の事実を明らかにしたとしても、当該法人等の信用上の不利益を与え
   るとは認められない。
  エ 内部情報等の点については、本件領収書等綴りの「請求書」及び「領
   収書」は、知事等が生花、記念品等を贈る際に、又は懇談の際に、債権
   者の法人等から受領した一般的な請求書及び領収書であり、これらの中
   に、ノウハウ等の情報が記載されているとは認められない。
    しかし、「請求書」、「領収書」、銀行振込みにより相手方又は債権
   者の法人等に支出したことを証明する「振込金受取書(兼振込手数料受
   取書)」及び郵便振替により相手方又は債権者の法人等に支出したこと
   を証明する「郵便振替払込金受領証」の中には、法人等の取引金融機関
   名、預金種目、口座番号及び口座名義人の情報が記載されているものが
   ある。これらの情報は、法人等が事業活動を行う上での内部管理の事項
   に属する情報であって、法人等の顧客である商取引上の債務者に対して、
   債権の支払いのために当該法人等が知らせる性格のものであることから、
   商取引と関係なく公開することは、法人等の事業運営が損なわれ、明ら
   かに不利益を与える情報であると認められる。
  オ 以上のことから、本件非公開部分について、当審査会が精査したとこ
   ろ、本件領収書等綴りの中の相手方又は債権者である法人等に関する情
   報のうち、取引金融機関名、預金種目、口座番号及び口座名義人の情報
   は、条例第5条第1項第2号本文に該当し、それ以外の情報は、同号本
   文には該当しないと判断する。
(5)条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号本文に該当する情報であっても、同号ただし
   書ア、イ又はウに該当するものは、公開することとされている。
  イ 前記(4) オにおいて、当審査会が、条例第5条第1項第2号本文に該
   当すると認定した情報は、同号ただし書アの法人等の事業活動によって
   生ずる人の生命、身体等の保護に関する情報、同号ただし書イの消費者
   の保護に関する情報及び同号ただし書ウの公開することが公益上必要と
   認められる情報ではなく、同号ただし書のいずれにも該当しないと判断
   する。
(6)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、「県の機関又は国等の機関が行う検査、
   監査、取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価
   格、試験の問題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該事務
   又は事業の性質上、公開することにより、当該事務又は事業の実施の目
   的を失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするお
   それのあるもの」は、非公開とすることができるとしている。
  イ 本号に例示されている情報は、該当する情報の典型的な例を示すもの
   であり、「その他の事務又は事業に関する情報」には、これらに類似し、
   又は関連する情報も含まれるものと解される。知事等の交際の目的は、
   県が行う事務又は事業の推進に当たってなされる交渉、調整等を行うた
   め関係者との協力関係等を維持し、確保することであるから、知事等の
   交際事務に関する情報は、「交渉の方針」に関する事務に類似し、「そ
   の他の事務又は事業に関する情報」に該当すると判断する。
  ウ そこで、同号の後段の該当性、すなわち、本件非公開部分を公開する
   ことにより、交際事務の実施の目的を失わせ、又は円滑な実施を著しく
   困難にするおそれがあるか否かについて検討する。
  (ア)交際事務の遂行に当たっては、誰と交際し、交際相手をどの程度接
    遇するかについて決定する際に、県政との関り合いにおける相手方に
    対する評価、位置付けなどを行うのが通常であり、これらは知事等の
    裁量とされていることは否定し得ない。
     しかし、一般的に、知事等が行う交際のうち、社会的儀礼に関する
    交際は、相手方も含めて県民が了解していると考えられる。他に特段
    の事情が存在しない限り、相手方の氏名等が明らかにされたとしても、
    交際それ自体の目的に反せず、また、知事等の裁量に著しい支障が生
    ずるとまではいえず、交際事務の円滑な実施を著しく困難にするおそ
    れがあるとは認められない。
     したがって、各項目ごとに、社会的儀礼に関するものであるか否か、
    さらには特段の事情が存在するか否かなどについて検討する。
  (イ)「香典」は、社会的儀礼に関するものであり、前記(3) ウで述べた
    ように、相手方の氏名等は、「知事の動向」欄で従来から一部公表さ
    れている場合がある。また、知事等が葬儀に参列した場合、参加者は、
    相手方と知事等との交際関係を容易に知ることができると認められ、
    かつ当審査会が調査したところ、特段の事情が存在するとまでは認め
    られない。
     「不祝儀」は、「香典」と同様の性格を持つ社会的儀礼に関するも
    のであり、前記(3) ウで述べたように、相手方も新聞等で葬儀を自ら
    公表している場合がある。また、知事等が生花を贈ることにより、参
    列者は、相手方と知事等との交際関係を知ることができると認められ、
    かつ当審査会が調査したところ、特段の事情が存在するとまでは認め
    られない。
     「祝儀」は、社会的儀礼に関するものであり、前記(3) ウで述べた
    ように、相手方の氏名等は「知事の動向」欄で従来から一部公表され、
    相手方も関係方面に大会等の参加を広く呼びかけている場合がある。
    また、大会等に知事等が参加し、又は、知事等が生花を贈ることによ
    り、参加者は、相手方と知事等との交際関係を知ることができると認
    められ、かつ当審査会が調査したところ、特段の事情が存在するとま
    では認められない。
     「見舞」は、社会的儀礼に関するものではあるが、相手方にとって
    は、前記(3) ウで述べたように、病気入院等に関するものは、一般的
    には、他人に知られたくない情報であることから、特段の事情が存在
    することが認められる。したがって、相手方の個人情報を公開するこ
    とは、相手方や関係者に不満や不快の念を抱かせ、交際それ自体の目
    的が失われ、ひいては交際事務の円滑な実施が著しく困難になるおそ
    れがあると認められる。
     「懇談」は、知事等が、県行政の円滑な運営に資する趣旨で行うも
    のであることから、社会的儀礼に関するものとは異なるものである。
    いつ、どこで、だれが、だれと懇談を行うかは、懇談の趣旨等を考慮
    して、知事等の裁量によって決められる性格のものであることから、
    特段の事情が存在すると認められる。したがって、懇談月日、懇談場
    所及び懇談当事者が識別され得る情報を公開することは、一般的には、
    県政との関り合いにおける相手方に対する評価、位置付けなどが明ら
    かになり、知事等の裁量に支障が生じ、個別の事案ごとの適切な交際
    ができなくなり、交際それ自体の目的が失われ、ひいては、交際事務
    の円滑な実施が著しく困難になるおそれがあると認められる。
     「会費」は、趣旨を踏まえて会員としての会費、シンポジウム等へ
    の参加費を支出したものであって、社会的儀礼に関するものである。
    会員名簿は、一般的には、会員に配布されていることから、他の会員
    には知事等が会員であることが明らかにされる場合がある。また、相
    手方が会員を募る場合には、趣旨と会費を明らかにして募集をするこ
    とが認められ、かつ当審査会が調査したところ、特段の事情が存在す
    るとまでは認められない。
     「賛助」は、相手方の発行する新聞等の購読費等を支出するもので
    あって、相手方の趣旨に賛同して援助する性格の社会的儀礼に関する
    ものである。一般的には、相手方自ら賛助相手を広く募ることが認め
    られ、かつ当審査会が調査したところ、特段の事情が存在するとまで
    は認められない。
     「記念品等」は、「祝儀」と同様の性格を持つ社会的儀礼に関する
    ものである。一般的には、記念品を受領した場合、相手方自らが関係
    者等に披露する性格のものであることが認められ、かつ当審査会が調
    査したところ、特段の事情が存在するとまでは認められない。
     「餞別」は、「祝儀」と同様の性格を持つ社会的儀礼に関するもの
    であることが認められ、かつ当審査会が調査したところ、特段の事情
    が存在するとまでは認められない。
  (エ)以上のことから、本件非公開部分について、当審査会が精査したと
    ころ、「見舞」に係る情報のうち、相手方が識別され得る情報並びに
    「懇談」に係る情報のうち、懇談月日、懇談場所及び懇談当事者が識
    別され得る情報は、条例第5条第1項第5号に該当し、それ以外の情
    報は、同号には該当しないと判断する。
(7)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開す
   ることのできない情報が記録されている場合であっても、容易に、かつ、
   公文書の閲覧等を求める趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき
   は、実施機関に部分公開を義務づけているものである。
  イ そこで、本件非公開部分を部分公開できるか否かについてみると、当
   審査会が非公開とすることが相当と認めた情報以外の情報を公開すると
   しても、容易に、かつ、公文書の閲覧等を求める趣旨を失わない程度に
   合理的に分離できる場合に該当すると判断する。

5 審査会の処埋経過
  当審査会の処理経過は別紙のとおりである。

別紙

                          審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成 5.1.5

○諮問

   5.1.7

○実施機関の職員(総務部秘書室長)に非公開理由説明書の提出要求

   5.1.29

○非公開理由説明書の受理

   5.2.4

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   5.3.15

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理
○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   5.5.20
  (第95回審査会)

〇審議

   5.6.17
  (第96回審査会)

〇異議申立人から意見の聴取
〇実施機関の職員(総務部秘書室長ほか)から非公開理由説明の聴取
〇審議

   5.8.27
  (第99回審査会)

〇審議

   5.9.13
 (第100回審査会)

○審議

   5.11.18
 (第101回審査会)

〇審議

   5.12.22
 (第103回審査会)

〇審議

   6.3.7

○異議申立人から補充意見書の受理

   6.3.11
 (第107回審査会)

〇審議

   6.4.14
 (第109回審査会)

〇審議

   6.5.12
 (第110回審査会)

〇審議

   6.7.14
 (第112回審査会)

〇審議

                     神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                                                  (平成5年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

 

原 寿雄

(株)共同通信社顧問

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

横浜国立大学教授

 

                                         (平成6年7月22日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
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