答申第36号

掲載日:2017年12月1日

答申第36号

                         平成7年10月26日

 神奈川県教育委員会
 委員長職務代理者 牧野 カツコ 殿

               神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成6年9月30日付けで諮問された神奈川県立高等学校生徒反省文非公開
の件(諮問第46号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
  神奈川県立高等学校生徒反省文を非公開としたことは妥当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、神奈川県立高等学校(以下「同校」という。)で
  起きた暴力行為(以下「本件暴力行為」という。)に関して、同校が生徒
  指導の一環として、生徒に書かせた反省文(以下「本件反省文」という。)
  を神奈川県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が平成6年7月25
  日付けで非公開とした処分の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、教育委員会が「個人に関する情報であ
  って、特定の個人が識別されるため、神奈川県の機関の公文書の公開に関
  する条例(以下「条例」という。)第5条第1項第1号に該当する」とし
  た非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤ってい
  るというものである。
  ア 本件反省文について
  (ア)「反省文」とは、学校の「二度と起こさない」の決意のもとに、毅
    然とした態度で生徒指導を行った結果、作成されるものである。生徒
    は被害者に対する謝罪の意味を込め、被害者に見せることを前提に書
    いている、と思うのが常識的感覚である。
  (イ)同校は、生徒の暴力行為を黙認し、正当化し、本件暴力行為に直接
    関わった生徒に対して一切指導をしていない。本件反省文は、反省や
    謝罪のない操作された指導によって書かされたものである。
  (ウ)本件暴力行為は、高校生が若さにまかせて起こした事件ではなく、
    学校ぐるみの組織的な暴力行為であり、本件反省文は、生徒が被害者
    に対する疎外意識を募らせている特殊な状況の中で書かれたものであ
    る。
  イ 条例第5条第1項第1号該当の点について
  (ア)本件暴力行為に直接関わった生徒は、既に、ある程度特定され識別
    されている。本件暴力行為の状況、差別意識が反省文の中にどのよう
    に書かれているかによって真実を知りたいだけである。
  (イ)生徒は、後で否定しているが、被害者に見せるからと教頭に言われ
    て書かされたと述べている。したがって、本件反省文は、見せること
    を予定して書かれたものである。
  (ウ)個人のプライバシーと情報公開の必要性の比較衡量により検討すべ
    きであると思われる。本件の場合は、反省文作成時に、教頭が被害者
    に見せることを前提に書かせたものである。また、既に、事件から2
    年以上が経過し、本件暴力行為に直接関わった生徒も卒業しているこ
    とを勘案すると、公開しても当該生徒に不利益が生ずるおそれはない
    はずである。
  (エ)プライバシーの問題が発生すると仮定しても、学校ぐるみの集団暴
    力行為の本質が明らかになることを考えると、プライバシーの侵害を
    上回る公益的価値がある。
  (オ)東京都大田区では、指導要録の開示請求について、従来は非開示扱
    いであったものを、特別の事情の場台は開示するという答申がなされ
    ている。本件の場合も公開は可能であると考える。氏名のみ非公開に
    して、他は公開するという方法も考えられる。

3 実施機関の職員(同校校長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総台すると、本件反省文を非公開とした理由は、
 次のとおりである。
(1)本件反省文について
  ア 本件反省文は、本件暴力行為に関して、同校が生徒指導の一環として、
   教頭、学年主任、学級担任が立ち会って生徒に書かせて提出させたもの
   である。
  イ 同校においては、問題行動を起こした生徒に生徒指導措置として、必
   要がある場合は反省文を書かせている。反省文は、同校が保管し、卒業
   時に個々の生徒に返却しているが、当該生徒は卒業したが、異議申立人
   等と学校側との話し合いが継続中であるので、現在も例外的に同校で保
   管しているものである。
  ウ なお、通常、県立高等学校では、問題行動を起こした生徒を指導する
   ため、反省文を書かせ、校長、教頭、生徒指導主任、学級担任等がそれ
   を見て指導を行っている。通常は、単年度又は卒業時に焼却処分をして
   いる。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 本件反省文は、本件暴力行為に直接関わった生徒が自己の行為を振り
   返って、同校に提出したものであり、まさに個人に関する情報そのもの
   である。
  イ 本件については、反省文を公開した場台、筆跡や書かれている内容か
   ら反省文作成者を識別することが十分可能である。また、本件反省文は
   当該生徒の考えや心情等を記したいわばセンシティブな情報であり、公
   開することはまさしくプライバシーの侵害そのものであり、なお一層慎
   重な取り扱いが必要と考えられる。
  ウ したがって、本件反省文は、そのすべてが特定の個人に関する情報で
   あって、特定の個人が識別されるので、条例第5条第1項第1号本文に
   該当する。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 本件反省文は、法的に閲覧できると規定されていないので、同号ただ
   し書アには該当しない。
  イ 本件反省文は、同校が生徒指導措置により書かせた反省文であり、同
   様の生徒指導措置をとっているいずれの県立高等学校においても、直接
   指導に携わる教師以外に見せることはあり得ない。したがって、本件反
   省文は、県民に公表する目的で取得したものでなく、従来から慣行上公
   表しているものでもなく、かつ、今後公表してもそれが他人に知られた
   くない情報ではないことが確実である情報とはいえないので、同号ただ
   し書イに該当しない。
  ウ 本件反省文は、法令の規定により行われた許可、免許、届出その他こ
   れらに相当する行為に際して作成されたものではなく、かつ取得した情
   報ではないので、同号ただし書ウに該当しない。
  エ したがって、条例第5条第1項第1号ただし書のいずれにも該当しな
   い。

4 審査会の判断理由
(1)本件反省文について
  ア 県立高等学校では、通常、問題行動を起こした生徒に、生徒指導の一
   環として反省文を書かせており、校長、教頭、生徒指導主任、学級担任
   等指導に携わる教師がそれを見て指導し、単年度又は卒業時に焼却処分
   していることが認められる。
  イ 本件反省文は、同校内で起きた本件暴力行為に関して、教頭、学年主
   任、学級担任が立ち会って、生徒にその心情を書かせたものであり、各
   県立高等学校で行われている生徒指導の一環としての反省文であると判
   断される。
    同校は、他の県立高等学校とは異なり、反省文を卒業時に本人に返却
   しているが、本件反省文については、生徒が卒業した後も、本件暴力行
   為に関して異議申立人等との話し合いが継続していたことから、例外的
   に保管し、現在に至っているものと認められる。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、知る権利の保
   障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調
   整しながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定して
   いる。
    そして、同号本文は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別
   され、又は識別され得るもの(以下「個人情報」という。)を非公開と
   することができるとしている。
    したがって、同号本文は、個人情報はプライバシーに該当するものは
   もとより、プライバシーであることが不明確なものであっても非公開と
   することを明文をもって定めたものと解される。
  イ 本件反省文は、生徒が本件暴力行為を反省して書いたものであり、特
   定の個人が識別され得るものであることから、条例第5条第1項第1号
   本文に該当すると判断する。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的に
   公開できる情報について規定している。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書ア該当性について
    条例第5条第1項第1号ただし書アは、何人でも法令の規定により閲
   覧することができるとされている情報については公開することを規定し
   ている。
    生徒指導の一環として書かれた反省文について、閲覧できるとする法
   令の規定は存在しないので、本件反省文は、同号ただし書アには該当し
   ないと判断する。
  ウ 条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書イは、公表することを目的として
    作成し、又は取得した情報については公開することを規定している。
    ここでいう「公表することを目的として作成し、又は取得した情報」
    は、広報紙等を通じて広く県民に積極的に周知する情報だけでなく、
    条例第2条が「公文書の閲覧及び公文書の写しの交付を求める権利が
    十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用するものとする」と
    規定している趣旨から考えると、事務事業の執行上又は行政の責務と
    して県民の要望に応じて提供することが予定されているものを含むと
    解される。
  (イ)本件反省文は、その内容から、生徒が自らの心を見つめ、反省を深
    めるための心情を綴ったものであり、極めて個人的なものと判断され
    ることから、行政の責務として県民の要望に応じて提供することが予
    定されているとは認められない。
     したがって、本件反省文は、同号ただし書イには該当しないと判断
    する。
  エ 条例第5条第1項第1号ただし書ウ該当性について
    本件反省文は、同校が生徒指導措置の一環として、生徒に書かせたも
   のであり、条例第5条第1項第1号ただし書ウ前段の「法令の規定によ
   り行われた許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成
   し、又は取得した情報」に該当しないと認められることから、同号ただ
   し書ウには該当しないと判断する。
(4)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開す
   ることのできない情報が記録されている場合であっても、容易に、かつ、
   公文書の閲覧等を求める趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき
   は、実施機関に部分公開を義務づけているものである。
  イ 異議申立人は、反省文の生徒の氏名を非公開とし、内容は公開する方
   法も考えられると主張する。しかしながら、本件反省文は、全体が特定
   個人の「反省」という意思表示に係る情報であり、全体的に「個人に関
   する情報であって、特定個人が識別され得るもの」と認められることか
   ら、条例第5条第2項の「公文書の閲覧又は公文書の写しの交付を求め
   る趣旨を失わない程度に合理的に分離できる」公文書に該当しないと判
   断する。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                  審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成 6.9.30

○諮問

   6.10.5

○実施機関に非公開理由説明書の提出要求

   6.10.31

○非公開理由説明書の受理

   6.11.4

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   6.11.29

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書を受理

   6.12.2

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   7.4.10
 (第125回審査会)

○審議

   7.6.15
 (第128回審査会)

○異議申立人からの意見の聴取
○実施機関の職員(神奈川県立高等学校長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   7.7.27
 (第129回審査会)

〇審議

   7.8.10
 (第130回審査会)

〇審議

   7.10.19
 (第132回審査会)

〇審議

                神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                               (平成7年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

 

原 寿雄

ジャーナリスト

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

高千穂商科大学教授

 

                        (平成7年10月26日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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