答申第46号

掲載日:2017年12月1日

答申46号

                          平成8年10月16日

 神奈川県知事 岡崎 洋 殿

                神奈川県公文書公開審査会 会長 原 寿雄

   公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成7年11月17日付けで諮問された神奈川県環境影響評価制度検討委員
会の議事録及び会議資料非公開の件(諮問第50号)について、次のとおり答
申します。

1 審査会の結論
  神奈川県環境影響評価制度検討委員会の議事録及び会議資料(平成6年度
 第1回から平成7年度第4回までの分)は、公開することが相当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、神奈川県環境影響評価制度検討委員会(以下「検
  討委員会」という。)の議事録及び会議資料(平成6年度第1回から平成
  7年度第4回までの分)(以下「本件議事録等」という。)を、神奈川県
  知事が平成7年11月9日付けで非公開とした処分(以下「本件非公開処
  分」という。)の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「本件議事録等は、調
  査検討過程の未成熟な時点の情報であり、公開することにより、県民に不
  正確な理解や誤解を与える情報であることから、神奈川県の機関の公文書
  の公開に関する条例(以下「条例」という。)第5条第1項第4号に該当
  する」とした非公開の決定は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用
  を誤っている、というものである。
  ア 本件議事録等の公開の必要性
  (ア)環境影響評価制度に関しては、県民の財産である自然環境や生命・
    健康に影響を与える環境を開発から守るために、重要な機能を担う制
    度であると考える。したがって、環境影響評価制度の改正に当たって
    は、十分な県民参加が保障されなければならない。そして、県民が意
    見を形成するためには、この制度に関するあらゆる情報の公開が前提
    条件として不可欠である。
  (イ)県民は環境影響評価制度の内容に関して、様々な意見を持っている
    と思われる。県民が意見表明をするためには、県民の関心の対象とな
    る様々な問題点が検討委員会で十分に議論されて検討されているかど
    うかを知る必要がある。また、検討委員会で大きな問題点があるとさ
    れながら、県民に知らされていない問題点について、県民は、新たに
    見識を得て、意見を形成する必要がある。それには、検討委員会が、
    いかなる部分に問題があると考えて、それらの問題点がどのような議
    論を経て、報告書の結論に達したのか、十分に公開される必要がある。
  (ウ)現在の神奈川県環境影響評価条例(以下「環境影響評価条例」とい
    う。)は、大きな問題点を抱えていると考えている。生物調査に関し
    ては、十分な調査と影響評価を行う必要性を感じている。都市化の進
    む神奈川県では、絶滅にひんする生物種が増加するばかりである。開
    発を全面否定するものではないが、環境影響評価は科学的、社会的に
    さらなる方式を新しい環境影響評価条例に盛り込むべきであると考え
    ている。現在の環境影響評価条例では限界があることは、県も県民も
    事業者、専門家を含めて認識していると思う。だからこそ、様々な県
    民の意見を反映させるために早い段階での公開を求めるものである。
  (エ)環境影響評価条例では、結果公表(同条例第1条)が位置づけられ
    ている。環境影響評価制度の見直しにおいても、県民に情報を公開し
    て住民参加を認めるべきである。また、議論の形成過程こそ公開され
    るべき情報である。
  イ 条例第5条第1項第4号該当の点について
  (ア)実施機関の「不正確な理解や誤解を与え混乱を招く可能性がある」
    との主張について
     検討委員会は、県民生活に重大な影響を与える環境影響評価条例の
    改正を念頭において作業を進めている。今後、県民からの意見聴取を
    行うようであるが、県民が意見形成を行うためには、検討委員会の答
    申のみならず、その過程で提出された様々な意見の資料が必要である
    と考える。県は、県民参加を様々な場面で強調しているが、意思形成
    過程での本当の意味での情報公開なくして、本来の県民参加はあり得
    ない。
     実施機関があげた非公開理由では、客観的で具体的な説明がなされ
    ていないので、納得できない。
  (イ)実施機関の「検討委員会の委員の公正かつ適正な報告が得られなく
    なるおそれがある」との主張について
     県民から隠された所でなければ発言し得ないような意見とはどのよ
    うなものであるのか理解に苦しむ。そのような無責任な意見を述べる
    委員が存在するのであれば、県の諮問姿勢にも問題がある。また、検
    討委員会の答申の信頼性をなくすものである。委員の発言は、無記名
    の公開でも十分である。
  (ウ)実施機関の「情報提供者との協力関係に重大な影響を与え、今後十
    分な検討材料が得られなくなるおそれがある」との主張について
     プライバシーの保護の観点から個々の文書ごとに検討し、非公開文
    書を決定すればよいと考える。今回の文書をすべて非公開とする理由
    にはならない。
  ウ その他
    平成7年10月24日の環境影響審査課の職員の説明では、検討委員
   会に係る会議の議事録は作成していないとのことであった。公文書の閲
   覧等の請求書には、閲覧等の請求に係る公文書として、「検討委員会の
   会議資料及び会議経過の分かる資料」と記載した。非公開理由説明書に
   よると、議事録が作成されているかのような内容に変化しているが、こ
   の点が不明である。

3 実施機関の職員(環境部環境影響審査課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明(平成7年12月20日付けで提出された非公開理
 由説明書及び平成8年4月25日の当審査会における口頭説明)を総合する
 と、本件議事録等を非公開とした理由は、次のとおりである。
(1)検討委員会について
   環境影響評価条例は、昭和55年10月に公布され、昭和56年7月か
  ら施行されて以来14年を経過し、制度的に広く定着してきているところ
  である。この間、自動車交通公害や生活排水による水質汚濁等、都市・生
  活型公害の顕在化、さらに地球環境問題に対する関心の高まり等を背景と
  した県民の環境に対する意識の変化がみられる。また、現行制度について、
  制度面や運用面からの検討すべき課題も生じている。
   このような状況を踏まえ、現行制度を総合的に見直し、制度の充実と強
  化の方策について調査検討を行うため、平成5年度に神奈川県環境影響評
  価制度研究会を発足し、現行制度の課題について討議を行った。さらに、
  平成6年度には当該研究会を発展的に解消し、検討委員会を設置し、現在、
  引き続き現行の環境影響評価条例の改正を念頭に置いて調査検討を行って
  いるところである。
(2)本件議事録等について
   本件議事録等は、閲覧等の請求のあった時点までに開催された計8回分
  (平成6年度第1回から平成7年度第4回までの分)の検討委員会の議事
  録及び会議資料である。
(3)条例第5条第1項第4号該当性について
  ア 検討委員会における現段階の審議は未成熟であり、公開することによ
   り、県民等に対し本県の今後の環境影響評価制度の方向性について不正
   確な理解や誤解を与え混乱を招く可能性がある。
  イ 審議内容を公開することにより、検討委員会委員は、アのような社会
   的影響を事実上認識することになり、専門的な見地に基づく公正かつ適
   正な報告が得られなくなるおそれがある。
  ウ 検討委員会の会議資料にあっては、調査検討のために、本県以外から
   取得した情報を整理加工したものが含まれ、公開することにより、これ
   を提供した者との協力関係に重大な影響を与え、今後十分な検討材料が
   得られなくなるおそれがある。
(4)第5条第2項該当性について
   条例第5条第2項の規定によると、公文書の閲覧又は公文書の写しの交
  付を求める趣旨を失わない程度に、合理的に分離できるときは、部分的に
  公開することになっている。対象公文書の中には、良好な環境の確保に関
  する基本条例、自然環境保全条例等のように、既に公表されている文書も
  含まれている。しかし、これらを公開するだけでは、「会議資料及び会議
  経過の分かる資料」という請求趣旨を失うので、部分公開はしなかった。
(5)本件議事録等の取扱いについて
   神奈川県環境基本条例の制定後においては、検討委員会の審議の方向性
  が定まると考えられるため、この段階で政策の実現可能性を踏まえた論議
  を行い、それまでの検討結果を報告書として取りまとめの上、公表するこ
  とが適当であり、併せて検討委員会の議事録及び会議資料についても、原
  則として公開することとした。この点については、平成7年11月30日
  開催の検討委員会において確認されている。

4 審査会の判断理由
(1)条例第5条第1項第4号該当性について
  ア 条例第5条第1項第4号は、県の機関内部若しくは機関相互又は県の
   機関と国又は他の地方公共団体との間における審議、検討、調査研究等
   に関する情報であって、公開することにより、当該審議、検討、調査研
   究等に著しい支障が生ずるおそれのあるものは、非公開とすることがで
   きるとしている。
  イ この規定は、行政内部の審議、検討、調査研究等が円滑に行われるこ
   とを確保する観点から定められたものであり、一般的には、審議、検討、
   調査研究等に基づき一定の結論が得られているものについては、公開す
   ることにより、当該審議、検討、調査研究等に著しい支障が生ずるとは
   認められないと解される。
  ウ 閲覧等の請求に係る諾否の決定に関する異議申立てについて、実施機
   関が当審査会に諮問する趣旨は、条例第5条第1項各号で規定する適用
   除外事項の該当性等を実施機関が改めて判断する際の意見を求めている
   ものと解される。したがって、当該諾否の決定後に事実状態等の変動が
   あったときには、処分時の事実状態等によって判断しなければならない
   特段の事情が存在しない限り、当審査会は新たな事実状態等をも考慮し
   て、審査、判断できるものと考える。
  エ 実施機関は、平成7年12月20日付けで当審査会に提出した非公開
   理由説明書の中で、「検討委員会の検討結果を報告書として取りまとめ
   の上、公表することが適当であり、併せて検討委員会の議事録及び会議
   資料についても、原則として公開することとした」と説明している。
    そして、当該検討委員会の報告書は、平成8年5月30日に、記者発
   表するなどして公表された事実が認められる。
    また、異議申立人から、平成8年6月5日に、再度、本件議事録等に
   ついて閲覧等の請求がなされているが、実施機関は、当該請求に対して、
   平成8年6月18日付けで全部公開の決定をし、同月25日に閲覧等が
   行われていることが認められる。
  オ 前記エの事実からすると、本件議事録等に関しては、本件非公開処分
   時の事実状態等によって、公開・非公開の適否を判断しなければならな
   い特段の事情は存在せず、また、現時点においては、これを公開するこ
   とにより、著しい支障が生ずるおそれがあるか否かの判断をすべき対象
   となる審議、検討等は、既に終了しているものと認められ、条例第5条
   第1項第4号に該当しないことは明らかである。
(2)その他
   異議申立人は、閲覧等の請求時の実施機関の説明では、検討委員会に係
  る会議の議事録は作成していないとのことであったが、非公開理由説明書
  によると、議事録が作成されているかのように内容が変化しており、この
  点が不明である旨述べている。しかしながら、当審査会は、条例第11条
  第1項により、公文書の閲覧等の諾否の決定に対する不服申立てにつき実
  施機関から意見を求められているのであって、検討委員会に係る会議の議
  事録の作成等に関して判断する立場にはない。なお、付言するならば、条
  例の趣旨、目的にかんがみると、実施機関は、異議申立人からこの点につ
  いて説明を求められた場合は、適切に対応する必要があると考える。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                  審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成7.11.17

○諮問

   7.11.20

○実施機関に非公開理由説明書の提出要求

   7.12.20

○非公開理由説明書の受理

   7.12.27

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   8.1.29

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理
○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   8.4.25
 (第138回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員(環境影響審査課長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   8.7.22
 (第141回審査会)

○審議

   8.8.22
 (第142回審査会)

○審議

   8.10.3
 (第143回審査会)

〇審議

                神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                               (平成7年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

 

原 寿雄

ジャーナリスト

会長

堀部 政男

一橋大学教授

会長職務代理者

若杉 明

高千穂商科大学教授

 

                        (平成8年10月16日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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