答申第50号

掲載日:2017年12月1日

答申第50号

                         平成9年10月29日

 神奈川県教育委員会 委員長 櫻井 義英 殿

               神奈川県公文書公開審査会 会長 堀部 政男

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成8年9月9日付けで諮問された退職手当支給調書一部非公開の件(諮問
第56号)について、次のとおり答申します。 

1 審査会の結論
 横浜市立養護学校に係る退職手当支給調書に記載された氏名は公開すべきで
ある。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、横浜市立養護学校(以下「同校」という。)に係
  る退職手当支給調書(以下「本件支給調書」という。)に記載された退職
  手当支給対象者の氏名(以下「本件氏名」という。)を神奈川県教育委員
  会(以下「県教育委員会」という。)が平成8年8月27日付けで非公開
  とした処分の取消しを求めるというものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、県教育委員会が「本件氏名は、個人に
  関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得ることから、
  神奈川県の機関の公文書の開に関する条例(以下「条例」という。)第5
  条第1項第1号に該当する」とした非公開の処分は、次に掲げる理由から、
  条例の解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 異議申立人は、退職者の代替で勤務していた者であるから、その代替
   の当事者の退職者氏名及び退職期日は、職務上の情報と認定されるもの
   であり、プライバシーには該当しない。
  イ 退職者の氏名は、公務に就いていた事実を証するものであり、公務上
   の氏名は公開すべきであること、並びに、実施機関は、既に、退職者の
   氏名及び退職日を一般商業新聞に公表している先例があることから、非
   公開とする理由に該当しない。
    また、実施機関は、本件支給調書に記載された本件氏名は、退職手当
   の支給対象者であり、本件氏名を公開した場合、職員リスト等と照合す
   ることにより、退職手当支給の有無及び退職手当が支給されない者の氏
   名が明らかになると主張するが、退職手当額や退職理由は公開請求して
   いない。
  ウ 本件支給調書は、実施機関が横浜市教育委員会(以下「市教育委員会」
   という。)からの届出により取得した情報であり、異議申立人の退職に
   関して同人の主張を明らかにするために必要であることから、公開する
   公益性がある。
  エ 異議申立人は、退職者の代替で勤務していた者であるから、そのよう
   な者による公開請求については、直接利害関係のない者による請求とは
   区別して判断されるべきである。

3 実施機関の職員(教育庁管理部教職員課課長代理)の説明要旨
(1)本件支給調書について
  ア 県は、市町村立学校職員給与負担法(以下「負担法」という。)の規
   定に基づき、市町村立の小学校、中学校、盲学校、ろう学校及び養護学
   校の校長、教頭、教諭及び養護教諭等の給料や退職手当を含む各種手当
   等を負担している。また、横浜市等の指定都市にあっては、地方教育行
   政の組織及び運営に関する法律第58条により常勤の教職員及び臨時的
   任用職員の任免等の人事事務は、当該指定都市に法定委任されている。
  イ 本件支給調書は、退職手当支給の事務執行に関して教職員退職者の退
   職手当支給に関する事務取扱要領(以下「取扱要領」という。)により
   市教育委員会から県教育委員会に提出されたものである。
    退職手当支給調書は、退職手当の支給事務を執行する上で必要な調書
   であり、退職手当支給対象者のみを記載したものである。
  ウ 本件支給調書は、同校高等部を退職した教職員に係る平成3年度及び
   4年度分であり、記載内容のうち、標題、項目、学校名、職名、氏名、
   退職年月日等を請求対象として特定し、他の部分は対象外とした。この
   うち本件氏名を非公開としたものである。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
   本件氏名は、退職手当の支給対象者の氏名であり、条例第5条第1項第
  1号本文に該当することは明らかである。
(3)同号ただし書該当性について
  ア 本件氏名は、ただし書ア及びウのいずれにも該当しない。
  イ 退職手当は、職員の退職手当に関する条例(以下「退職手当条例」と
   いう。)第8条に規定されている退職手当の支給制限により、退職者全
   員に支給されるわけではない。
    退職手当を支給されたか、支給されなかったかが明らかになる情報は、
   個人の所得に関する情報であり、このような情報は、事務事業の執行上
   又は行政の責務として県民の要望に応じて情報を提供することが予定さ
   れた情報には該当しない。
  ウ 公務員の退職の事実や職員名簿等勤務した事実についての情報は公開
   していることから、本件氏名を公開した場合、これらの職員情報と照合
   することにより、退職手当を支給された者と支給されなかった者が明確
   になり、支給されなかった者の退職理由が明らかになる可能性がある。
    したがって、公務員の退職理由については、私的な個人に関する情報
   といえることから、公表を予定された個人情報には該当しない。
    以上のことから、本件個人情報は、条例第5条第1項第1号ただし書
   イには該当しない。

4 審査会の判断理由
(1)本件公文書について
   県は、負担法の規定に基づき、市町村立の小学校、中学校、盲学校、ろ
  う学校及び養護学校の校長、教頭、教諭及び養護教諭等の給料、退職手当
  を含む各種手当等を負担している。退職手当支給調書は、退職手当支給対
  象者について作成されるものであり、退職手当条例第8条に規定されてい
  る退職手当の支給制限により、退職手当は、必ずしも退職者全員に支給さ
  れていないことが認められる。
   本件支給調書は、取扱要領により市教育委員会から県教育委員会に提出
  されたものであり、同校高等部の平成3年度及び4年度に同校を退職した
  教職員の情報が記載されている。このうち標題、項目、学校名、職名、氏
  名、退職年月日等を請求対象として特定し、その他の部分は、請求対象外
  としたことが認められる。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、知る権利の保
   障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調
   整しながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることとしている。
    そして、同号本文は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別
   され、又は識別され得るもの(以下「個人情報」という。)を非公開と
   することができるとしている。
  イ したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われる
   ものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含め
   て非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。また、条例
   第2条後段で「個人の秘密、個人の私生活その他の他人に知られたくな
   い個人に関する情報がみだりに公にされないように最大限の配慮をしな
   ければならない」と規定している趣旨にかんがみ、明らかに他人に知ら
   れたくないと認められるものについては、非公開とするものとしている。
  ウ さらに、氏名等を削除したとしても、それ以外の部分の情報から、又
   はそれ以外の部分の情報と容易に取得し得る他の情報とを照合すること
   により、特定の個人が推測できるものであれば、当該部分については非
   公開とするものとしている。
  エ 実施機関は、本件支給調書のうち、標題、項目、学校名、職名、退職
   年月日等の欄を公開し、本件氏名は非公開としたが、当該非公開部分は、
   個人情報であって特定の個人が識別されるため、条例第5条第1項第1
   号本文に該当すると判断する。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的に
   公開できる情報について規定している。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書ア該当性について
    条例第5条第1項第1号ただし書アは、何人でも法令の規定により閲
   覧することができるとされている情報は、公開することを規定している。
    本件支給調書は、法令による閲覧規定がないので、条例第5条第1項
   第1号ただし書アに該当しない。
  ウ 条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書イは、公表することを目的として
    作成し、又は取得した情報については公開することを規定している。
     ここでいう「公表することを目的として作成し、又は取得した情報」
    は、広報紙等を通じ広く県民に積極的に周知する情報だけでなく、条
    例第2条前段が「公文書の閲覧及び公文書の写しの交付を求める権利
    が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用するものとする」
    と規定している趣旨から考えると、事務事業の執行上又は行政の責務
    として県民の要望に応じて情報を提供することが予定されているもの
    を含むと解される。公務員の職、氏名等の情報であって、当該公務員
    が分掌する事務又は事業の執行に関するものは、原則として「事務事
    業の執行上又は行政の責務として県民の要望に応じて情報を提供する
    ことが予定されているもの」と解される。
     公務員の退職の事実については、一般的に事務事業の執行上又は行
    政の責務として県民の要望に応じて情報を提供することが予定されて
    いるものと考えられる。
  (イ)実施機関は、年度末の退職者については一覧表を作成し新聞等に公
    表しており、さらに年度途中に退職する校長及び教頭についても公表
    している事実が認められる。これらの事実を踏まえると、本件氏名を
    公開した場合、これらの職員情報と照合することにより、退職手当を
    支給された者と支給されなかった者が判別される可能性があると認め
    られる。
     しかしながら、退職手当を支給されない者は、退職手当条例第8条
    の制限規定による懲戒処分を受けた者、失職した者、争議行為を行っ
    た者等に限定されるものではなく、退職手当条例第13条に規定する、
    職員以外の地方公務員等となった者についても退職手当を支給されな
    い者に該当することが認められる。そして、このような公務員等は、
    毎年相当数存在することが認められる。
     公務員の退職理由は、個人に関する情報であるが、退職手当の支給
    の有無は、退職理由を直接的に示すものではなく、当該退職者の利益
    を損なうものとまではいえない。
  (ウ)したがって、本件氏名は、公務員の職務に関する情報であって、事
    務事業の執行上又は行政の責務として県民の要望に応じて情報を提供
    することが予定されているものと解するのが相当であり、条例第5条
    第1項第1号ただし書イに該当すると判断する。
  エ 条例第5条第1項第1号ただし書ウ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書ウは、法令の規定により行われた
    許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、又は
    取得した情報であって、公開することが公益上必要と認められるもの
    は公開することを規定している。
  (イ)本件支給調書は、取扱要領に基づき市教育委員会から県教育委員会
    に提出されたものであるが、同号前段の「法令の規定により行われた
    許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、又は
    取得した情報」とは認められず、条例第5条第1項第1号ただし書ウ
    には該当しない。
(4)その他
   異議申立人は、退職者の代替で勤務していた者であるから、そのような
  者による公開請求については、直接利害関係のない者による請求とは区別
  して判断されるべきであると主張するが、実施機関には、条例上、公文書
  の閲覧等の請求に対し、その請求者が誰であるかにかかわらず、条例の趣
  旨に照らして諾否の判断をしなければならないことが義務づけられている。
   したがって、この点に関する異議申立人の主張は相当ではない。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

別紙

                  審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成8.9.9

○諮問

   8.9.18

○実施機関に非公開理由説明書の提出要求

   8.10.16

○非公開理由説明書の受理

   8.10.28

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   8.11.29

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

   8.12.9

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   9.1.16
 (第147回審査会)

○審議

   9.2.6
 (第148回審査会)

○実施機関の職員(神奈川県教育庁教職員課課長代理ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   9.8.18
 (第154回審査会)

○審議

   9.8.18
 (第155回審査会)

〇審議

   9.9.4
 (第158回審査会)

〇審議

   9.10.9
 (第159回審査会)

〇審議

               神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                               (平成9年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小早川 光郎

東京大学教授

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

                        (平成9年10月29日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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