答申第51号

掲載日:2017年12月1日

答申第51号

                         平成9年10月29日

 神奈川県教員委員会 委員長 櫻井 義英 殿

                   神奈川県公文書公開審査会 会長 堀部 政男

   公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成9年2月27日付けで諮問された非常勤講師勤務状況調書等一部非公開
の件(諮問第61号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
 横浜市立養護学校の非常勤講師任用名簿中の「療休・その他( )」欄及び
非常勤講師勤務状況調書の「出欠事由および採用事由等記入」欄に関する記載
を非公開としたことは妥当である。
 ただし、別表に指定する箇所は、公開すべきである。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、横浜市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)
  から提出された横浜市立養護学校(以下「同校」という。)に係る非常勤
  講師任用名簿(以下「本件任用名簿」という。)のうち、「療休・その他
  ( )」欄の記載内容、及び同校から提出された同校に係る非常勤講師勤
  務状況調書(以下「本件勤務状況調書」という。)のうち、「出欠事由お
  よび採用事由等記入」欄の記載内容を神奈川県教育委員会(以下「県教育
  委員会」という。)が平成9年2月10日付けで非公開とした処分の取消
  しを求めるというものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、県教育委員会が「療休・その他( )」
  欄及び「出欠事由および採用事由等記入」欄の記載内容は、個人に関する
  情報であって、特定の個人が識別されることから神奈川県の機関の公文書
  の公開に関する条例(以下「条例」という。)第5条第1項第1号に該当
  するとした非公開の処分は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を
  誤っているというものである。
  ア 県教育委員会及び横浜給与事務所(以下「本件給与事務所」という。)
   は、既に異議申立てに係る公文書を裁判所に書証として提出しており、
   公開されている。
  イ 本件勤務状況調書のうち「出欠事由および採用事由等記入」欄に記載
   されている療養休暇、休職代替等の内容は、病名や属性を記載したもの
   ではない。
  ウ このような情報は、代替勤務した異議申立人には、同僚の職務上の情
   報であり、また、地域の住民や自治会には、学校だより等に記載され公
   開されている情報である。

3 実施機関の職員(横浜給与事務所副所長)の説明要旨
(1)異議申立対象公文書について
  ア 異議申立対象公文書は、平成3年5月から7月まで及び平成4年4月
   から10月までの同校の非常勤講師報酬支給に関して市教育委員会から
   提出された本件任用名簿及び同校から提出された本件勤務状況調書(以
   下これらを総称して「本件公文書」という。)である。
  イ 本件公文書は、具体的には横浜市の小学校、中学校、盲学校、ろう学
   校及び養護学校に係る非常勤講師の報酬支出手続に関する文書である。
    県は、市町村立学校職員給与負担法(以下「負担法」という。)に基
   づき教職員の給与等を負担している。また、負担法で規定されている教
   職員(以下「本務者」という。)が病気等で療養休暇を取得し、学校現
   場で一時的に欠員を生じることになる場合等にその期間に限って非常勤
   講師を雇用しており、当該講師の報酬についても県が負担している。
  ウ 本件公文書に係る非常勤講師については、講師の決定、雇用場所、期
   間、日額報酬等の雇用関係はすべて市教育委員会で決定しており、本件
   給与事務所は、毎月各学校から提出される非常勤講師勤務状況調書等に
   基づき報酬の支出事務を行っている。
(2)条例第5条第1項第1号該当性について
  ア 本件任用名簿の記載内容は、非常勤講師名、年齢、学年教科、任用期
   間、報酬額、本務者名、療休その他等であり、同校以外の学校の部分及
   び同校の非常勤講師の年齢、報酬額を請求対象外として、「療休・その
   他( )」欄を非公開としたものである。
    「療休・その他( )」欄は、代替の理由として本務者の休暇、休職
   の種類が記載されており、当該情報は、本務者の身体の状況や身分上の
   扱いに関する個人情報であるので、条例第5条第1項第1号本文に該当
   し、同号ただし書のいずれにも該当しないと判断したものである。
  イ 本件勤務状況調書の記載内容は、非常勤講師名、任用期間、報酬日額、
   通勤手当相当額、支給額、支出方法、勤務状況内訳の出欠事由および採
   用事由等であり、このうち報酬日額、通勤手当相当額、支給額、支出方
   法等の欄を請求対象外とし、勤務状況内訳の「出欠事由および採用事由
   等記入」欄を非公開としたものである。
    「出欠事由および採用事由等記入」欄には、非常勤講師の出欠状況、
   代替理由及び本務者の休暇、休職の種類が記載されており、当該情報は、
   非常勤講師及び本務者の身体の状況や身分上の扱いに関する個人情報で
   あるので、条例第5条第1項第1号本文に該当し、同号ただし書のいず
   れにも該当しないと判断したものである。

4 審査会の判断理由
(1)本件公文書について
   県は、負担法の規定に基づき、市町村立の小学校、中学校、盲学校、ろ
  う学校及び養護学校の校長、教頭、教諭、養護教諭等の給料や退職手当を
  含む各種手当等を負担している。これに関連して、負担法の規定に基づく
  ものではないが、県は非常勤講師の報酬についても負担しており、本件公
  文書は、当該報酬の支出手続のために本件給与事務所に対して市教育委員
  会から提出された本件任用名簿及び同校から提出された本件勤務状況調書
  であることが認められる。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、知る権利の保
   障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調
   整しながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることとしている。
    そして、同号本文は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別
   され、又は識別され得るもの(以下「個人情報」という。)を非公開と
   することができるとしている。
  イ したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われる
   ものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含め
   て非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。また、条例
   第2条後段で「個人の秘密、個人の私生活その他の他人に知られたくな
   い個人に関する情報がみだりに公にされないように最大限の配慮をしな
   ければならない」と規定している趣旨にかんがみ、明らかに他人に知ら
   れたくないと認められるものについては、非公開とするものとしている。
  ウ さらに、氏名等を削除したとしても、それ以外の部分の情報から、又
   はそれ以外の部分の情報と容易に取得し得る他の情報とを照合すること
   により、特定の個人が推測できるものであれば、当該部分については非
   公開とするものとしている。
  エ 本件任用名簿における「療休・その他( )」欄の記載は、本務者に
   係る個人情報であり、特定の個人が識別され得るので、条例第5条第1
   項第1号本文に該当すると判断する。
  オ 次に、本件勤務状況調書における「出欠事由および採用事由等記入」
   欄は、非常勤講師の出欠状況及び代替理由であるとともに、本務者の休
   暇、休職の種類が記載されている。したがって、「出欠事由および採用
   事由等記入」欄の記載は、非常勤講師の個人情報であって、特定の個人
   が識別され得るとともに、本務者の個人情報でもあり、本務者の氏名は
   記載されていないものの、本件任用名簿の公開部分と照合することによ
   り特定の個人が識別され得ると認められるので、条例第5条第1項第1
   号本文に該当すると判断する。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的に
   公開できる情報について規定している。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書ア該当性について
    条例第5条第1項第1号ただし書アは、何人でも法令の規定により閲
   覧することができるとされている情報は、公開することを規定している。
    本件任用名簿及び本件勤務状況調書については、法令による閲覧規定
   はないので、条例第5条第1項第1号ただし書アに該当しない。
    ただし、別表に指定する箇所については、県が被告となっている地位
   確認等請求事件の書証として裁判所に提出していることが認められる。
    訴訟記録については、民事訴訟法第151条第1項の規定により、何
   人も訴訟記録の閲覧を裁判所書記官に請求することができるため、当該
   箇所については、条例第5条第1項第1号ただし書アに該当すると判断
   する。
  ウ 条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書イは、公表することを目的として
    作成し、又は取得した情報については公開することを規定している。
     ここでいう「公表することを目的として作成し、又は取得した情報」
    は、広報紙等を通じ広く県民に積極的に周知する情報だけでなく、条
    例第2条前段が「公文書の閲覧及び公文書の写しの交付を求める権利
    が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用するものとする」
    と規定している趣旨から考えると、事務事業の執行上又は行政の責務
    として県民の要望に応じて情報を提供することが予定されているもの
    を含むと解される。公務員の職、氏名等の情報であって、当該公務員
    が分掌する事務又は事業の執行に関するものは、原則として「事務事
    業の執行上又は行政の責務として県民の要望に応じて情報を提供する
    ことが予定されているもの」と解される。
     一方、同条は、後段において「個人の秘密、個人の私生活その他の
    他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに公にされないよう
    に最大限の配慮をしなければならない」と規定し、原則公開を基本と
    する公文書公開制度にあっても、他人に知られたくない個人情報をみ
    だりに公にしないよう最大限の配慮をして、この条例の解釈及び運用
    をする旨を明らかにしている。
  (イ)本件任用名簿における「療休・その他( )」欄には、本務者の休
    暇、休職の種類が記載されており、当該記載内容は、個人情報であっ
    て、一般的には他人に知られたくない情報であると認められる。この
    ような情報は、公務員の職務に関連する情報であるとしても、事務事
    業の執行上又は行政の責務として県民の要望に応じて情報を提供する
    ことが予定されているものとまでは認められないと判断する。
  (ウ)本件勤務状況調書における「出欠事由および採用事由等記入」欄に
    は、非常勤講師の出欠状況、代替理由及び本務者の休暇、休職の種類
    が記載されている。当該記載内容は、一般的には他人に知られたくな
    い情報であると認められるので、このような情報は、公務員の職務に
    関連する情報であるとしても、事務事業の執行上又は行政の責務とし
    て県民の要望に応じて情報を提供することが予定されているものとま
    では認められないと判断する。
  (エ)異議申立人は、同校以外の学校の例を用い、教員の代替に関する情
    報は地域の住民や自治会に学校だより等で知らされている情報である
    と主張している。
     しかし、このような情報は、特定の者に対して、必要な範囲内で提
    供されているに過ぎず、また、一般的には他人に知られたくない情報
    であることにかんがみると、公務員の職務に関連する情報であっても、
    事務事業の執行上又は行政の責務として県民の要望に応じて提供する
    ことが予定されているものとまでは認められないと判断する。
  (オ)以上のことから、「療休・その他( )」欄及び「出欠事由および
    採用事由等記入」欄の記載内容については、条例第5条第1項第1号
    ただし書イには該当しない。
  エ 条例第5条第1項第1号ただし書ウ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書ウは、法令の規定により行われた
    許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、又は
    取得した情報であって、公開することが公益上必要と認められるもの
    は公開することを規定している。
  (イ)本件公文書は、同号前段の「法令の規定により行われた許可、免許、
    届出その他これらに相当する行為に際して作成し、又は取得した情報」
    とは認められず、条例第5条第1項第1号ただし書ウには該当しない。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別表

文書件名等

指定箇所

横浜市教育委員会から横浜給与事務所に提出された「非常勤講師任用名簿」平成3年7月P.1

「療休・その他( )」欄

横浜市立養護学校から横浜給与事務所に提出された平成3年7月22日付け「公立養護学校非常勤講師7月分勤務状況調書」2枚目

「(出欠事由および採用事由等記入)」欄

別紙

                  審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成9.2.27

○諮問

   8.3.10

○実施機関に非公開理由説明書の提出要求

   8.4.28

○非公開理由説明書の受理

   8.5.6

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   8.5.27

○異議申立人から意見書の提出及び意見陳述辞退の申出書受理

   9.6.19
 (第152回審査会)

○実施機関の職員(神奈川県横浜給与事務所副所長ほか)から非公開理由説明の聴取
○審議

   9.8.18
 (第154回審査会)

○審議

   9.8.28
 (第157回審査会)

〇審議

   9.9.4
 (第158回審査会)

〇審議

   9.10.9
 (第159回審査会)

〇審議

                神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                               (平成9年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小早川 光郎

東京大学教授

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

                        (平成9年10月29日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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