答申第53号

掲載日:2017年12月1日

答申第53号

                       平成10年6月15日

神奈川県知事 岡崎 洋 殿

             神奈川県公文書公開審査会 会長 堀部 政男

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

平成9年1月27日付けで諮問された道路用地の購入価格に関する書類非
公開の件(諮問第57号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
  道路用地の購入価格に関する書類は、別表に掲げる部分を除いて公開す
 べきである。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、神奈川県土木事務所が施行する交通安全施設等
  整備工事(以下「本件整備工事」という。)に伴う道路用地として、取
  得し、又は権利関係を定めた土地売買契約書(権利消滅契約書を含む。
  以下「本件売買契約書等」という。)及び本件売買契約書等に係る画地
  評価書(標準地土地評価書、地域要因格差率算定表、土地価格算定書、
  土地価格調整説明書、土地評価算定に係る意見書、標準地評価算定調書、
  及び不動産鑑定評価書を含む。以下「本件画地評価書等」という。)に
  記載された内容を神奈川県知事が平成8年12月20日付けで非公開と
  した処分の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「本件土地売買契約
  書等及び本件画地評価書等(以下「本件公文書」という。)に記載され
  た内容は、神奈川県が行う事業に関する情報であって、公開することに
  より、当該事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれがあることから、
  神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(以下「条例」という。)
  第5条第1項第5号に該当し、本件公文書のうち個人に係る土地売買契
  約書及び画地評価書等に記載された内容は、個人に関する情報であって、
  特定の個人が識別されることから条例第5条第1項第1号に該当する」
  とした非公開の処分は、次に掲げる理由から、条例の解釈運用を誤って
  いる、というものである。
  ア 土地を譲渡する側としては、県から提示された単価が妥当かどうか
   を判断するために、客観的な情報と単価の算出根拠を聞くことは当然
   のことである。
  イ 土地売買契約書においては、土地の譲渡の目的、場所等は極めて明
   解であり、個人のプライバシーを害する情報はない。
  ウ 単価の設定は、透明かつ公平であるべきであり、県は客観情報を踏
   まえた誠意ある説明をすべきである。

3実施機関の職員(神奈川県土木事務所副所長)の説明要旨
 実施機関の職員の説明を総合すると、本件公文書を非公開とした理由は、
次のとおりである。
(1)本件公文書について
   本件売買契約書等は、道路用地の購入に際して、神奈川県と各地権者
  (個人及び法人)との間で締結したものであり、契約者の住所、氏名、
  印影、売買金額、土地の所在、地目及び購入面積等が記載されている。
   本件画地評価書等は、道路用地の購入価格の算定を行うために作成さ
  れたものであり、評価対象不動産、評価条件、鑑定評価額、評価方法、
  評価額の決定及びその理由等が記載されている。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
   本件売買契約書等のうち個人に係る土地売買契約書に記載されている
  内容は、個人が所有する土地を神奈川県に譲渡する意思を表示した個人
  に関する情報である。そして、当該売買契約書には、契約者の住所、氏
  名、印影、売買金額、土地の所在、地目及び購入面積等が記載されてお
  り、それらは、特定の個人が識別されるものである。
   また、本件画地評価書等のうち個人に係る画地評価書等についても、
  特定個人から購入する土地の価格を算定するために作成したものであり、
  個人所有の評価対象不動産の所在及び地番が記載されていることから、
  特定の個人が識別されるものである。
   したがって、本件公文書のうち、個人に係る土地売買契約書及び画地
  評価書等は、条例第5条第1項第1号本文に該当する。
(3)同号ただし書該当性について
   本件公文書のうち個人に係る土地売買契約書及び画地評価書等は、た
  だし書ア、イ及びウのいずれにも該当しないことは明らかである。
(4)条例第5条第1項第2号本文該当性について
   本件画地評価書等のうち土地評価算定に係る意見書、標準地評価算定
  調書及び不動産鑑定評価書(以下「意見書等」という。)は、購入価格
  を算定するための参考資料として不動産鑑定士に作成を委託したもので、
  不動産鑑定士の土地鑑定評価に関するノウハウが含まれていることから、
  意見書等を公開することにより、不動産鑑定士に明らかに不利益を与え
  る。
   したがって、意見書等は、条例第5条第1項第2号に該当する。
(5)同号ただし書該当性について
   意見書等は、ただし書ア、イ及びウのいずれにも該当しないことは明
  らかである。
(6)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 県が取得する土地の購入価格を適正に算定するため、本県において
   も国の基準に準じて基準を設けており、その基準に従い、購入価格を
   算定して各地権者に提示し、合意を得て契約を締結している。
  イ 公共事業の用地交渉において、県が算定した購入価格及び補償額を、
   直接の交渉相手以外の第三者に公表しないことは、県と交渉相手との
   間の信頼関係上欠かせない基本原則である。
    このような情報は、一般に、他人に知られたくない情報である。
  ウ また、用地買収が完了していない現段階において本件公文書を公開
   することにより、県の手の内、考え方あるいは最終的な購入価格が明
   らかになることから、本件整備工事に係る用地買収事業が著しく困難
   になる。それに加えて今後の用地買収事業全般の円滑な実施を著しく
   困難にするおそれがある。
  エ 併せて、意見書等については、公開することにより、不動産鑑定士
   間での評価内容の比較が可能となり、実施機関と不動産鑑定士との間
   の信頼関係が失われるおそれがある。
    以上のことから、本件公文書は、条例第5条第1項第5号に該当す
   る。

4 審査会の判断理由
(1)本件公文書について
   本件公文書は、本件売買契約書等と本件画地評価書等から構成されて
  いると認められる。本件売買契約書等は、県が道路用地の購入に際し、
  土木部長通知である「土木事業用地の取得等に係る契約事務の取扱につ
  いて」に基づいて、個人及び法人を相手方として契約を締結したことを
  証したものであり、契約者の住所、氏名、印影、売買金額、土地の所在、
  地目及び購入面積等が記載されていることが認められる。本件画地評価
  書等は、県が道路用地の購入価格の算定に際し、土木用地課長通知であ
  る「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則に定める別記土地評価事務
  処理要領の運用方針」に基づいて作成されたものであり、個人及び法人
  の所有する評価対象不動産、評価条件、鑑定評価額、評価方法、評価額
  の決定及びその理由等が記載されていることが認められる。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、「知る権利」
   の保障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要
   請を調整しながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることと
   している。
    そして、同号本文は、個人に関する情報であって、特定の個人が識
   別され、又は識別され得るもの(以下「個人情報」という。)を非公
   開とすることができるとしている。
  イ 同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われるものはもと
   より、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含めて非公開
   とすることを明文をもって定めたものと解される。また、条例第2条
   後段で「個人の秘密、個人の私生活その他の他人に知られたくない個
   人に関する情報がみだりに公にされないように最大限の配慮をしなけ
   ればならない」と規定している趣旨にかんがみ、明らかに他人に知ら
   れたくないと認められるものについては、非公開とするものとしてい
   る。
  ウ さらに氏名等を削除したとしても、それ以外の部分の情報から、又
   はそれ以外の部分の情報と容易に取得し得る他の情報とを照合するこ
   とにより、特定の個人が推測できるものであれば、当該部分について
   は非公開とするものとしている。
  エ 本件公文書のうち個人に係る土地売買契約書及び画地評価書等に記
   載されている内容は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別
   されることから、条例第5条第1項第1号本文に該当すると判断する。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的
   に公開できる情報について規定している。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書ア該当性について
    条例第5条第1項第1号ただし書アは、何人でも法令の規定により
   閲覧することができるとされている情報については公開することを規
   定している。
    本件公文書のうち個人に係る土地売買契約書及び画地評価書等は、
   法令による閲覧規定がないので、条例第5条第1項第1号ただし書ア
   に該当しないと判断する。
  ウ 条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書イは、公表することを目的とし
    て作成し、又は取得した情報については公開することを規定してい
    る。
     ここでいう「公表することを目的として作成し、又は取得した情
    報」は、広報紙等を通じ広く県民に積極的に周知する情報だけでな
    く、条例第2条前段が「公文書の閲覧及び公文書の写しの交付を求
    める権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用するも
    のとする」と規定している趣旨から考えると、事務事業の執行上又
    は行政の責務として県民の要望に応じて提供することが予定されて
    いるものを含むと解される。
  (イ)本件公文書のうち個人に係る土地売買契約書は、特定個人の契約
    に関する意思表示に係る情報であって、当該個人にとって他人に知
    られたくない売買価格等が含まれている。
  (ウ)本件公文書のうち画地評価書等は、特定個人の不動産の評価に係
    る情報であって、このような情報は一般に、当該個人にとって他人
    に知られたくない情報と認められる。
  (エ)以上のことから判断すると、本件公文書のうち個人に係る土地売
    買契約書及び画地評価書等は、行政の責務として提供することが予
    定されている情報とは認められず、条例第5条第1項第1号ただし
    書イには該当しないと判断する。
  エ 条例第5条第1項第1号ただし書ウ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書ウは、法令の規定により行われ
    た許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、
    又は取得した情報であって、公開することが公益上必要と認められ
    るものについては公開することを規定している。
  (イ)本件公文書のうち個人に係る土地売買契約書及び画地評価書等は、
    同号前段の「法令の規定により行われた許可、免許、届出その他こ
    れらに相当する行為に際して作成し、又は取得した情報」とは認め
    られず、条例第5条第1項第1号ただし書ウには該当しないと判断
    する。
(4)条例第5条第1項第2号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号本文は、法人その他の団体(国及び地方公
   共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営
   む個人(以下「個人事業者」という。)の当該事業に関する情報であ
   って、公開することにより、当該法人等又は個人事業者に明らかに不
   利益を与えると認められるものは非公開とすることができると規定し
   ている。
    公開することにより、法人等又は個人事業者に明らかに不利益を与
   えると認められるか否かの判断は、当該情報の内容のみではなく、当
   該法人等又は個人事業者の性格、事業活動における当該情報の位置づ
   け等を吟味した上で行う必要があると考える。
  イ 本件公文書のうち法人に係る土地売買契約書等は、公金の支出に関
   する文書であり、公開することにより当該法人に明らかに不利益を与
   えるとは認められない。したがって、本件公文書のうち法人に係る土
   地売買契約書等は条例第5条第1項第2号本文に該当しないと判断す
   る。
  ウ 不動産鑑定士は、地方税法第72条第7項第16号の2に掲げる不
   動産鑑定業を営む個人であって、意見書等は、地価公示法に基づき設
   置された土地鑑定委員会の定めた「不動産鑑定評価基準」により鑑定
   評価を行い、作成された文書である。意見書等に記載された情報のう
   ち、不動産鑑定士が識別される部分は、実施機関から委託を受けた不
   動産鑑定士が不動産鑑定の専門家としての知識と経験に基づいて作成
   したことを証する情報であることから、公開することにより当該不動
   産鑑定士に明らかに不利益を与えるとは認められない。したがって、
   意見書等に記載された情報のうち、不動産鑑定士が識別される部分は、
   条例第5条第1項第2号本文に該当しないと判断する。
  エ 不動産鑑定士は、意見書等を作成するに当たって、独自に収集した
   豊富な事例、情報、知識等を活用しており、また、鑑定評価を行う土
   地の形態、特徴等に、どのように着目するか、それをどのように評価
   するかは、不動産鑑定士の経験によるところが大きいと認められる。
  オ このことから、意見書等には、不動産鑑定士の土地鑑定評価に関す
   るノウハウが含まれているということができるので、公開することに
   より、不動産鑑定士に明らかに不利益を与えると認められる。
    したがって、意見書等に記載された情報のうち、別表に掲げた標準
   地の地番、評価額、評価額の算出方法等に係る部分は、条例第5条第
   1項第2号本文に該当すると判断する。
(5)条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号本文に該当する情報であっても、同号ただ
   し書ア、イ、又はウに該当するものは公開することとされている。
    そこで、前記(4)において、同号本文に該当すると認定した部分
   (以下「本文該当部分」という。)が同号ただし書のいずれかに該当
   するか否かについて検討する。
  イ 同号ただし書アは、人の生命、身体又は健康を法人等又は個人事業
   者の事業活動によって生ずる危害から保護するため、公開することが
   必要と認められる情報について規定している。
  ウ 同号ただし書イは、法人等又は個人事業者の違法又は不当な事業活
   動によって生ずる消費生活の安定に対する著しい支障から消費者を保
   護するため、公開することが必要と認められる情報について規定して
   いる。
  エ 同号ただし書ウは、同号ただし書ア又はイに掲げる情報に準じる情
   報であって、公開することが公益上必要と認められるものについて規
   定している。
    ここでいう「ア又はイに掲げる情報に準ずる情報」とは、ア又はイ
   には直接該当しないが、それらと同様の趣旨であり、情報の内容も類
   似しているものをいい、生活環境、自然環境の破壊等に関する情報が
   含まれるものと解される。
  オ 本文該当部分には、人の生命、身体又は健康に対する危害、消費生
   活の安定に対する支障及び生活環境、自然破壊の環境等に関する情報
   は記載されていないと認められることから、同号ただし書ア、イ及び
   ウのいずれにも該当しないと判断する。
(6)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、県の機関又は国等の機関が行う検査、
   監査、取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定
   価格、試験の問題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該
   事務又は事業の性質上、公開することにより、当該事務又は事業の実
   施の目的を失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難
   にするおそれのあるものは、非公開とすることができるとしている。
    この規定は、事務又は事業の性質に着目し、当該事務又は事業の円
   滑な実施を確保する観点から定められたものであり、同号前段は、本
   来公開になじまない性格を有する情報の典型例を示したものであるこ
   とから、これらの情報のほか、これらに類似し、又は関連する情報に
   ついても、「その他の事務又は事業」に関する情報として、対象とな
   ると解される。また、公開することにより、反復継続される同種の事
   業の公正かつ円滑な実施を著しく困難にする情報についても、同号後
   段の「当該事務又は事業の実施の目的を失わせ、又は当該事務又は事
   業の円滑な実施を著しく困難にするおそれのある」情報に含まれると
   解される。
  イ 本件売買契約書等には、前記(1)で述べたように、契約者の住所、
   氏名、印影、売買金額、土地の所在、地目及び購入面積等が記載され
   ている。
    本件画地評価書等には、同じく前記(1)で述べたように、評価対
   象不動産、評価条件、鑑定評価額、評価方法、評価額の決定及びその
   理由等が記載され、本件整備工事に伴う道路用地の購入価格の算出方
   法も併せて記載されている。
    また、本件公文書は、道路用地の購入等に際して取得又は作成され
   ていることから、記載されている情報は、県の機関が行う用地買収事
   業に関する情報であると認められる。
  ウ 本件売買契約書等について
  (ア)用地買収事業を進めていく過程において、購入対象地の地権者と
    の交渉は、事業の展開を左右する重要な意味を持つものであると認
    められる。
  (イ)一般に、交渉の中で地権者が最も重要視している情報は、購入単
    価や売買金額等の金銭に係る情報であると考えられる。地権者とし
    ては、このような情報が公になることは予想していないと推測され
    ることから、公開することにより、契約の締結に難色を示す地権者
    が現れることが考えられる。
     また、購入した土地の所在や面積等を公開すると、今後事業を進
    めるに当たって購入を予定している土地の所在及び地権者が判明す
    ることで、県は地権者に対して不信感を与え、交渉に入る前に既に
    地権者との信頼関係が失われる場合があることも必ずしも否定する
    ことはできない。
  (ウ)したがって、本件売買契約書等のうち個人に係る土地売買契約書
    は、公開することにより、事業完了の時期が大幅に遅れ、当該事業
    の円滑な実施を著しく困難にするおそれがあると認められる。
  (エ)一方、本件売買契約書等のうち法人に係る土地売買契約書等は、
    前記(4)のイで述べたとおり、公開することにより、当該法人に
    明らかに不利益を与えるとは認められない。しかし、本件整備工事
    においては、連続した道路用地を購入することを予定していること
    から、当該公文書に記載された単価を公開することによって、近隣
    地域における購入予定地の地権者が、その情報をそのまま自己の土
    地が購入される単価であるかのように理解し、その結果用地交渉が
    困難となることが考えられる。このことは、事業経費を著しく増大
    させることなどにより、当該事業の円滑な実施を著しく困難にする
    おそれがあると認められる。
  (オ)以上のことから、本件売買契約書等に記載された情報は、条例第
    5条第1項第5号に該当すると判断する。
  エ 本件画地評価書等について
  (ア)本件画地評価書等は、購入単価を決定するための参考資料として
    作成を委託した不動産鑑定士から提出される意見書等と、その意見
    書等を基に実施機関が購入単価を決定するために作成する画地評価
    書、標準地土地評価書、地域要因格差率算定表、土地価格算定書及
    び土地価格調整説明書(以下「評価書等」という。)から構成され
    ている。
  (イ)異議申立人は、単価の設定は透明かつ公平であるべきである、と
    して本件画地評価書等の公開を主張している。
     確かに、地権者としては、どのようにして単価が算出、決定され
    たのか、納得した上で契約に応じるか否かを決めたい、と思うであ
    ろうことは容易に推測できる。
  (ウ)しかし、意見書等には、購入単価を算定するに当たって標準とな
    る土地(以下「標準地」という。)の地番、評価額及びその算出方
    法が、また、評価書等には、実施機関が決定した購入単価やその算
    出方法がそれぞれ記載されている。これらを公開することにより、
    今後近隣地域において同種の用地買収事業が行われる場合に、当該
    事業における購入予定地の地権者は、公開された土地の価格に基づ
    いて自己の土地も購入されると期待し、その結果、事務事業の円滑
    な実施に著しい支障が生じることも否定することはできない。
     したがって、本件画地評価書等のうち、別表に掲げた標準地の地
    番、評価額、評価額の算出方法、購入単価、購入単価の算出方法等
    に係る部分(以下「別表掲載部分」という。)は、公開することに
    より、今後の用地買収事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれ
    があると認められることから、条例第5条第1項第5号に該当する
    と判断する。
  (エ)意見書等を作成した不動産鑑定士が識別される部分については、
    公開することにより、不動産鑑定士の事業内容の一部が明らかとな
    るが、不動産鑑定士は、前記(4)のウで述べたように、実施機関
    から委託を受けて不動産鑑定の専門家としての知識と経験に基づい
    て意見書等を作成したのであって、公開することにより、その評価
    内容の比較が可能であるということをもって、実施機関と不動産鑑
    定士との間の信頼関係が失われるとまでは言えない。
     また、別表掲載部分を除いた部分は、購入単価やその算出方法に
    直接結び付く情報とまでは言えないことから、公開することにより、
    今後の用地買収事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれがある
    とは認められず、条例第5条第1項第5号には該当しないと判断す
    る。
(7)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開
   することのできない情報が記録されている場合であっても、それらを
   容易に、かつ、公文書の閲覧又は写しの交付を求める趣旨を失わない
   程度に合理的に分離できる場合には、部分公開をしなければならない
   と規定している。
  イ 本件売買契約書等のうち個人に係る土地売買契約書は、全体的に特
   定個人の「契約」という意思表示に係る情報と認められる。
    また、本件売買契約書等のうち法人に係る土地売買契約書等は、全
   体的に用地買収事業の実施に係る情報であり、条例第5条第1項第5
   号の「その他の事務又は事業に関する情報であって、公開することに
   より、当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれのあ
   るもの」に該当すると認められる。
  ウ 以上のことから、本件売買契約書等については、「容易に、かつ、
   公文書の閲覧又は写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理的に
   分離できるとき」には該当しないと判断する。
  エ 本件画地評価書等については、別表掲載部分とそれ以外の部分を分
   離することは、「容易に、かつ、公文書の閲覧又は写しの交付を求め
   る趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」に該当すると判断
   する。

5審査会の処理経過
 当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別表

該当部分

条例第5条第1項各号該当性

<平成2年度土地売買契約書>
  (全部)


第5号

<平成2年度画地評価書(住宅地用)>
  ・評価する画地の地番
  ・標準地の地番、評価額
  ・画地評価額の算定数値
  ・時点修正の内訳
  ・格差率、小計、格差率の合計


第5号
同上
同上
同上
同上

<平成2年度標準地土地評価書>
  ・(1)対象不動産の地番
  ・(3)評価額
  ・(4)不動産鑑定評価格(参考)のうち1平方メ
    -トル当りの価格
  ・(5)取引事例比較法のうち取引価格、並びに補
    正、修正、格差の各数値、試算価格、比準
    価格
  ・(8)公示価格等を規準とした価格のうち補正、
    修正、格差、比較の各数値、規準価格
  ・(9)評価額の決定及びその理由
  ・(10)時点修正の内訳


第5号
同上
同上

同上


同上

同上
同上

<平成2年度地域要因格差率算定表(住宅地用)>
  ・標準地及び取引事例地の地番
  ・格差率、小計、格差率合計


第1号及び第5号
第5号

<平成2年度不動産鑑定評価書>
  ・1.対象不動産の表示のうち地番、権利者名
  ・2.鑑定評価額のうち総額、単価
  ・4.(1)対象不動産の位置
     (2)地域分析中近隣地域の状況地域の
      状況及び標準的使用の判定のうち標準
      的使用の判定内容
     (3)個別的要因の分析及び再有効使用
      判定内容
     (5)鑑定評価方式の適用内容のうち比
      準価格、収益価格、m2当たりの価格
      (算定式を含む)、鑑定評価額
  ・(表-1)取引事例比較法の適用のうち地
      積、取引時点、取引価格、取引事例の
      補正及び修正の内容、地域要因の比較
      及び個別的要因の比較の内容、比準価
      格
  ・(表-2)収益還元法の適用のうち地積建物
      構造階層、用途、延床面積、建築時
      期、月額賃料、敷金、その他の収入、
      収益に対応する期間、年額賃料、敷金
      等の運用益、総収益、総費用、純収
      益、建物に帰属する純収益、土地に帰
      属する純収益、事例地敷地に帰属する
      純収益並びに補正、修正の各数値、補
      修正後の純収益、並びに格差、比較の
      各数値、対象地の純収益、還元利回
      り、収益価格
  ・(表-3)地価公示価格等との規準のうち補
      正及び修正の各数値、補修正後価格、
      並びに地域要因の比較、個別的要因及
      び総合格差の各数値公示価格等と規準
      とした価格
  ・案内図、公図写、写真


第5号
第2号及び第5号
第5号
第2号及び第5号


同上

同上


同上




同上










同上




第5号

<平成3年度土地売買契約書>
  (全部)


第1号及び第5号

<平成3年度画地評価書(住宅地用)>
  ・評価する画地の地番
  ・標準地の地番、評価額
  ・画地評価額の算定数値
  ・時点修正の内訳、備考
  ・格差率、小計、格差率合計


第1号及び第5号
第5号
同上
同上
同上

<平成4年度土地売買契約書、権利消滅契約書>
  (全部)


第1号及び第5号

<平成4年度画地評価書(住宅地用)>
  ・評価する画地の地番
  ・標準地の地番、評価額
  ・画地評価額の算定数値
  ・時点修正の内訳、備考
  ・格差率、小計、合計


第1号及び第5号
同上
同上
同上
同上

<平成6年度土地売買契約書>
  (全部)


第1号及び第5号

<平成6年度土地価格算定書>
  ・1.土地評価の単位のうち地番
  ・2.土地価格の算定のうち地番、評価格買収
     価格の算定数値
  ・3.時点修正の内訳
  ・4.備考


第1号及び第5号
同上

同上
同上

<平成6年度土地価格調整説明書>
  ・標準地の地番
  ・標準地評価格
  ・調整を行う理由


第5号
同上
同上

<平成6年度土地評価算定に係る意見書>
  ・2.個別的要因の平均格差率
  ・3.個別的要因の考え方についてのうち格差
     率
  ・5.個別的要因の平均格差率の査定式
  ・(表-1)国道134号線における個別的要
     因の格差率内訳表のうち格差率指数内訳


第2号及び第5号
同上

同上
同上

<平成6年度標準地評価算定調書>
  ・1.評価査定額
  ・2.標準地の表示のうち地番、権利者名
  ・4.評価算定額決定の理由の要旨中
   (1)地域分析のうち(2)同一状況(近隣)地
    域の状況及び標準的使用の判定内容
   (2)標準地の所在及び標準的な画地の形状
    等のうち標準地の地番
   (4)評価算定方式の適用のうち比準価格、
    収益価格
   (5)試算価格の調整及び評価算定額の決定
    のうち比準価格、収益価格、m2当たりの
    評価算定額(算定式を含む)、評価算定額
  ・(表-1)取引事例比較法の適用、
   (表-2)収益還元法の適用、
   (表-3)地価公示価格との規準のうち<平
   成2年度不動産鑑定評価書>の中で前述し
   た該当部分
  ・位置図、同一状況地域図及び案内図、公図
   写、事例位置図、写真


第2号及び第5号
同上

同上

同上

同上

同上



同上




第2号及び第5号

<平成6年度不動産鑑定評価書>
  ・1.対象不動産の表示及び鑑定評価額のうち
     対象不動産の地番及び鑑定評価額
  ・3.鑑定評価額の決定の理由の要旨のうち
    1.対象不動産の位置
    2.近隣地域の状況(3)標準地の選定の
      うち標準地
    3.対象不動産の状況内容
    4.対象不動産の再有効使用の判定内容
    6.鑑定評価方式の適用のうち比準価格、
      収益価格、基準地価格を比準とした価
      格、1m2当たりの標準地価格、鑑定
      評価額
  ・試算価格算出表のうち地番、地積、取引時
   点、取引価格並びに補正、修正、格差比較の
   各数値、調整理由及び調整価格、比準価格
  ・要因別格差率一覧表の内容
  ・収益還元法(土地残余法)中
    1.採用した収益事例の概要のうち地番、
      地積、並びに建物等、賃貸条件の内容
    2.収益価格(間接法)の内容、事例地に
      帰属する純収益の算出表の内容
  ・位置図、案内図、公図写、写真


第2号及び第5号


同上
同上

同上
同上
同上



同上


同上

同上

同上

第2号及び第5号

<平成7年度土地売買契約書>
  (全部)


第1号及び第5号

<平成7年度土地価格算定書>
  ・1.土地評価の単位のうち地番
  ・2.土地価格の算定のうち地番、評価格買収
     価格の算定数値
  ・3.時点修正の内訳
  ・4.備考


第1号及び第5号
同上

同上
同上

<平成7年度土地価格調整説明書>
  ・標準地の地番
  ・標準地評価格
  ・調整を行う理由


第5号
同上
同上

<平成7年度土地評価算定に係る意見書>
  ・2.個別的要因の平均格差率
  ・3.個別的要因の考え方についてのうち格差
     率
  ・5.個別的要因の平均格差率の査定式


第2号及び第5号
同上

同上

<平成7年度標準地評価算定調書>
  ・1.評価査定額
  ・2.標準地の表示のうち地番、権利者名
  ・4.評価算定額決定の理由の要旨中(1)地域
     分析のうち(2)同一状況(近隣)地域の状
     況及び標準的使用の判定内容
   (2)標準地の所在及び標準的な画地の形状
    等のうち(1)標準地の地番
   (4)評価算定方式の適用のうち比準価格、
    収益価格
   (5)試算価格の調整及び評価算定額の決定
    のうち比準価格、収益価格、1m2当たり
    の評価算定額、鑑定評価額
  ・(表-1)取引事例比較法の適用、
   (表-3)地価公示価格との規準のうち<平
   成2年度不動産鑑定評価書>の中で前述した
   該当部分
  ・(表-2)直接法による収益価格の内容
  ・位置図、同一状況(近隣)地域図、公図写、
   事例位置図、写真


第2号及び第5号
同上
同上


同上

同上

第2号及び第5号


同上



同上
同上

<平成7年度不動産鑑定評価書>
  ・1.対象不動産の表示及び鑑定評価額のうち
     対象不動産の地番及び鑑定評価額
  ・3.鑑定評価額の決定の理由の要旨のうち
    1.対象不動産の位置
    2.近隣地域の状況(3)標準地の選定の
      うち標準地
    3.対象不動産の状況内容
    4.対象不動産の再有効使用の判定内容
    6.鑑定評価方式の適用のうち比準価格、
      収益価格、基準地価格を比準とした価
      格、1m2当たりの標準地価格、鑑定
      評価額
  ・試算価格算出表のうち地番、地積、取引時
   点、取引価格並びに補正、修正、格差比較の
   各数値、調整理由及び調整価格、比準価格
  ・要因別格差率一覧表の内容
  ・収益還元法(土地残余法)中
    1.採用した収益事例の概要のうち地番、
      地積、並びに建物等、賃貸条件の内容
    2.収益価格(間接法)の内容、事例地に
      帰属する純収益の算出表の内容
  ・位置図、案内図、公図写、写真


第2号及び第5号

同上









同上


第2号及び第5号

同上

同上

同上

<平成8年度土地売買契約書>
  (全部)


第5号

<平成8年度土地価格算定書>
  ・1.土地評価の単位のうち地番
  ・2.土地価格の算定のうち地番、評価格買収
     価格の算定数値同上
  ・3.時点修正の内訳
  ・4.備考


第5号
同上

同上
同上

別紙

                  審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成 9.1.27

○諮問

   9.2.13

○実施機関に非公開理由説明書の提出要求

   9.3.12

○非公開理由説明書の受理

   9.3.28

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   9.7.17
 (第153回審査会)

○実施機関の職員(神奈川県土木事務所副所長ほか)から非公開理由説明の聴取

   9.12.17
 (第160回審査会)

○審議

   9.12.22

〇実施機関に審議資料の提出要求

  10.1.9

〇審議資料の受理

  10.1.14
 (第162回審査会)

〇審議

  10.2.9
 (第163回審査会)

〇審議

  10.3.23
 (第164回審査会)

〇審議

  10.4.27
 (第165回審査会)

〇審議

  10.5.28
 (第166回審査会)

〇審議

                神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                               (平成9年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小早川 光郎

東京大学教授

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

                        (平成10年6月15日現在) (五十音順)

目次にもどる

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • ラグビーワールドカップ2019
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa