答申第55号

掲載日:2017年12月1日

答申第55号

                         平成10年8月18日

 神奈川県知事 岡崎 洋 殿

              神奈川県公文書公開審査会 会長 堀部 政男

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成9年2月26日付けで諮問された神奈川東部方面線地質概査報告書等一
部非公開の件(諮問第59号)について、次のとおり答申します。 

1 審査会の結論
  神奈川東部方面線地質概査報告書及び神奈川東部方面線環境基礎調査報告
 書(横浜市域)は、別表1及び別表2に掲げる部分を除いて公開すべきであ
 る。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、神奈川東部方面線地質概査報告書(以下「地質概
  査報告書」という。)及び神奈川東部方面線環境基礎調査報告書(横浜市
  域)(以下「環境基礎調査報告書」という。)(以下、これらを総称して
  「本件公文書」という。)を、神奈川県知事が平成8年12月20日付け
  で一部非公開とした処分の取消しを求めるというものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「地質概査報告書のう
  ち、調査担当の氏名(以下「調査者氏名」という。)は、個人に関する情
  報であって、特定の個人が識別されること及び調査者氏名を公開すると、
  地質概査報告書の作成を受託した法人(以下「調査受託法人」という。)
  に明らかに不利益を与えることから、神奈川県の機関の公文書の公開に関
  する条例(以下「条例」という。)第5条第1項第1号及び第2号に該当
  し、また、本件公文書のうち、ルート及び駅位置等が判明する記述等は、
  公開すると、神奈川東部方面線(仮称)(以下「東部方面線」という。)に関
  する審議、検討、調査研究等に著しい支障が生ずるおそれがあることから、
  条例第5条第1項第4号に該当する」とした一部非公開の処分は、次に掲
  げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 条例第5条第1項第1号該当の点について
    報告書作成者は、報告書ができるだけ多く利用又は引用されることを
   期待し、また、そのようにされることを名誉として作成するものである。
  イ 条例第5条第1項第2号該当の点について
   調査者氏名は、条例第5条第1項第2号には該当しない。
  ウ 条例第5条第1項第4号該当の点について
  (ア)本件公文書に含まれる情報は客観的なデータであり、公開すると著
    しい支障が生じるおそれがあるようなものではない。
  (イ)本件公文書は、いずれも環境情報に該当するものである。環境情報
    を一部とはいえ公開すると決めた以上、住民が検討するに値するデー
    タを公開しなければ意味がない。ところが、一部非公開とされた本件
    公文書を見ると、肝心の環境情報は一つも公開されていない。実質的
    には全部非公開と何ら変わるところがない。
  (ウ)環境アセスメントへの住民参加をできる限り尊重すべきであると
    いうのが、最近の基本的な動向である。本件公文書を一部非公開とし
    たことは、こうした動向に反し、住民にデータを公開することを拒否
    するものでしかない。

3 実施機関の職員(都市部都市政策課長)の説明要旨
(1)対象文書の概要等
  ア 東部方面線に関する計画は、昭和60年7月に運輸政策審議会答申第
   7号で整備が必要であると位置づけられた、二俣川から新横浜を経て大
   倉山・川崎方面へ至る新設鉄道計画である。
  イ 地質概査報告書は、計画路線沿いの地質を既往ボーリング資料等から
   整理した地質に関する概略的な調査であり、環境基礎調査報告書は、環
   境影響評価の事前調査として、二俣川から大倉山に係る区間について評
   価項目の抽出、既存資料などをまとめたものであり、いずれも本路線の
   整備方針及び整備計画の検討過程での基礎的調査として、平成3年度に
   作成された報告書である。
(2)条例第5条第1項第1号該当性について
   調査者氏名については、個人情報である。
(3)条例第5条第1項第2号該当性について
   調査者氏名については、調査受託法人がどの職員をどの調査にあたらせ
  るのかの人事上の情報であり、もっぱら法人内部の情報である。
(4)条例第5条第1項第4号該当性について
  ア 東部方面線については、神奈川県、横浜市及び川崎市の3団体(以下
   「3団体」という。)が要綱により羽田アクセス協議会を組織し、調査・
   検討を行っているところであるが、現在も、事業主体等の整備方針、整
   備計画について具体的に検討している段階であり、ルート、需要予測、
   建設計画、事業採算性等について継続して調査検討を行っているところ
   である。
    したがって、本件公文書のうち、ルート及び駅位置等が判明又は特定
   される記述や、未決定の段階にある整備計画を前提に予測、推定した記
   述内容については、現段階では、意思決定されていない行政内部におけ
   る審議、検討過程の情報であり、未成熟なものであると言わざるを得な
   い。
  イ また、鉄道事業の性格からして、ルート等の整備計画の内容は、個人
   の財産、利害に密接に関係するものであることから、そのような情報を
   行政内部で検討している段階で公開すると県民に不正確な理解や誤解
   を与えるおそれがあり、その結果、当該審議、検討、調査研究等に著し
   い支障が生じるおそれがある。

4 審査会の判断理由
(1)本件公文書について
   本件公文書は、東部方面線に関する検討を行うための基礎的調査として、
  計画路線沿いの地質及び都市計画決定時に実施される環境影響評価に関し
  て実施した調査の報告書である。また、本件公文書には、自然界の客観的
  な事実等に関する情報と東部方面線の整備計画等に関する情報が記載され
  ていると認められる。
(2)条例第5条第1項第1号該当性について
  ア 本件公文書のうち、個人に関する情報であって、特定の個人が識別さ
   れ、又は識別され得るもの(以下「個人情報」という。)に該当するも
   のは、別表1に掲げる調査者氏名のみであることが認められる。調査者
   氏名は、個人情報を原則的に非公開とすることとしている条例第5条第
   1項第1号本文に該当することは明らかである。
  イ 次に、調査者氏名が条例第5条第1項第1号ただし書に該当するかど
   うかについて検討したが、当審査会は、調査者氏名は同号ただし書ア、
   イ及びウのいずれにも該当しないと判断する。
(3)条例第5条第1項第2号該当性について
   前記(2)で述べたとおり、調査者氏名は、条例第5条第1項第1号に
  該当すると結論づけたので、本件公文書における条例第5条第1項第2号
  該当性については論ずる必要はないと判断する。
(4)条例第5条第1項第4号該当性について
  ア 条例第5条第1項第4号は、県の機関内部若しくは機関相互又は県の
   機関と国又は他の地方公共団体との間における審議、検討、調査研究等
   に関する情報であって、公開することにより、当該審議、検討、調査研
   究等に著しい支障が生ずるおそれのあるものは、非公開とすることがで
   きるとしている。
    この規定の趣旨は、特定の行政課題に対する意思形成のための内部的
   な審議、検討、調査研究等を行う場合に、当該審議、検討、調査研究等
   に関する情報を公開することにより、著しい支障が生じないようにする
   ことを目的としているものと考えられる。
  イ まず、条例第5条第1項第4号前段の該当性についてみると、3団体
   は本件公文書を資料として、東部方面線に関する審議、検討、調査研究
   等を行っていることから、本件公文書は、同号前段で規定する「県の機
   関内部若しくは機関相互又は県の機関と国等の機関との間における審議、
   検討、調査研究等に関する情報」に該当するものと認められる。
    そこで、以下、同号後段で規定する「公開することにより、当該審議、
   検討、調査研究等に著しい支障が生ずるおそれ」があるかどうかについ
   て判断する。
  ウ 当審査会は、神奈川東部方面線調査報告書(平成元年12月作成)非
   公開の件に係る答申(平成5年1月26日答申第24号)において、鉄道
   事業の推進に当たっては、路線の設定、巨額となる事業費、広範囲にわ
   たる用地取得、事業採算性の確保、関連鉄道事業者や地元住民との調整
   等を必要とし、困難を伴う場合が少なくないこと、そして東部方面線に
   ついて、実施機関は検討している段階にあることを認定したところであ
   る。
    東部方面線に関するその後の検討状況等について当審査会が調査し
   たところ、現段階では次の事実が認められる。
  (ア)県は、総合交通対策特別委員会(平成9年3月11日)において、
    東部方面線の関連鉄道事業者からの出資が厳しい状況の中で、事業主
    体として予定していた第三セクター設立のめどが立ちにくくなって
    おり、目標としていた平成12年の一部区間の開業は厳しい状況にあ
    るが、事業主体を含めさらに検討していく旨の答弁を行っている。
  (イ)神奈川県知事は、平成9年県議会9月定例会(平成9年9月26日)
    において、2000年に予定されている運輸政策審議会の答申に東部
    方面線が引き続き位置づけられるよう、横浜、川崎両市と協調して取
    り組んでいる旨述べている。また、知事は、平成9年県議会12月定
    例会(平成9年12月9日)において、東部方面線については、現在、
    両市とともに路線の位置づけ、事業化の優先度等、新たな事業展開へ
    向けた検討を行っている旨述べている。
  (ウ)平成9年3月に策定された「かながわ新総合計画21」において、
    県は東部方面線の路線整備推進を2006年度までの事業目標とし
    て位置づけている。
  (エ)羽田アクセス協議会(平成10年4月1日から神奈川東部方面線協
    議会に名称変更)は、前記答申交付後も、東部方面線に係るルート、
    需要予測、建設計画、事業採算性等の調査について調査機関に委託し
    ている。
    以上のように、新たな事実が公になってきているとはいえ、東部方面
   線については、現在もなお3団体により検討されている段階にあり、前
   記答申交付時と同様、いまだ調査研究が続いていると認められる。
  エ 本件公文書を実施機関が一部非公開とした処分の是非については、次
   のように判断する。
  (ア)実施機関が条例第5条第1項第4号に該当するとして非公開とし
    た情報の中には、ルート、新設駅等を記載した情報及びルート、新
    設駅等が推測される情報が含まれている。これらは検討段階にある情報
    であり、現時点で公開すると、東部方面線に関する審議、検討、調査
    研究等に著しい支障が生ずるおそれがある。
  (イ)しかしながら、前記(ア)で判断した情報を除いた部分には、東部方
    面線の初期開業目標区間の路線延長の数値等の情報が含まれており、
    この情報は行政が公にした情報から類推できると認められる情報で
    あるので、同号を理由として非公開とすることはできない。また、
    行政が公にした情報から類推できると認められる情報以外にも、地図、
    地質記号凡例等の情報が含まれており、この情報は東部方面線の審議、
    検討、調査研究等の性質、状況にかんがみると、公開することによ
    る支障が著しいとまでは認められないため、同号を理由として非公開と
    することはできない。
  オ 前記エの判断に従い実施機関が条例第5条第1項第4号に該当すると
   して非公開とした部分を精査したところ、別表2に掲げる部分は同号に
   該当するが、その余の部分は同号には該当しないと判断する。
(5)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開す
   ることのできない情報が記録されている場合であっても、容易に、かつ、
   公文書の閲覧又は写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理的に
   分離できる場合には、部分公開をしなければならないと規定している。
  イ 本件公文書については、当審査会が前記(2)及び(4)により非公開とす
   ることが妥当と認めた部分以外の部分を公開したとしても、本件公文書
   の構成からして、容易に、かつ、公文書の閲覧又は写しの交付を求める
   趣旨を失わない程度に合理的に分離できる場合に該当すると判断する。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は別紙のとおりである。

別表1

地質概査報告書

本件報告書のうち条例第5条第1項第1号に該当する部分

該当頁

該当行等

7行目12文字目から15文字目まで、8行目4文字目から7文字目まで

別表2 

1 地質概査報告書

本件報告書のうち条例第5条第1項第4号に該当する部分

該当頁等

該当行等

目次1枚目

16行目1文字目から10文字目まで、17行目1文字目から14文字目まで、18行目1文字目から16文字目まで、19行目1文字目から17文字目まで、20行目1文字目から17文字目まで、21行目1文字目から15文字目まで、22行目1文字目から15文字目まで、23行目1文字目から15文字目まで、24行目1文字目から12文字目まで、

目次2枚目

5行目1文字目から8文字目まで、6行目1文字目から12文字目まで、7行目1文字目から14文字目まで、8行目1文字目から15文字目まで、9行目1文字目から15文字目まで、10行目1文字目から13文字目まで、11行目1文字目から13文字目まで、12行目1文字目から13文字目まで、13行目1文字目から10文字目まで、16行目1文字目から10文字目まで、17行目1文字目から14文字目まで、18行目1文字目から16文字目まで、19行目1文字目から17文字目まで、20行目1文字目から17文字目まで、21行目1文字目から15文字目まで、22行目1文字目から15文字目まで、23行目1文字目から15文字目まで、24行目1文字目から12文字目まで

全部

23行目から32行目まで

3行目17文字目から19文字目まで

全部

全部

10

全部

11

全部

19

全部

26

5行目から23行目まで

27

全部

28

全部

29

全部

30

全部

31

全部

32

全部

33

全部

34

全部

35

全部

36

全部

37

全部

38

全部

39

全部

40

5行目2文字目から22文字目まで、6行目2文字目から26文字目まで、7行目2文字目から19文字目まで、8行目2文字目から13文字目まで、9行目2文字目から20文字目まで、10行目2文字目から14文字目まで

41

全部

72

全部

73

全部

82

全部

83

全部

84

全部

101

全部

102

全部

103

全部

104

全部

105

全部

107

全部

108

全部

109

全部

110

全部

111

全部

113

全部

神奈川東部方面線地質概査調査数量表

全部

地質平面図5枚

全部

地質断面図18枚

全部

地質横断図16枚

全部

2 地質概査報告書資料編

本件報告書のうち条例第5条第1項第4号に該当する部分

該当頁等

該当行等

巻末柱状図集について

14行目から15行目まで、17行目から18行目まで、20行目から21行目まで、23行目から24行目まで

表紙から数えて6枚目から238枚目まで

全部

表紙から数えて240枚目から263枚目まで

全部

3 環境基礎調査報告書

本件報告書のうち条例第5条第1項第4号に該当する部分

該当頁等

該当行等

56

2行目10文字目から30文字目まで

179

全部

180

全部

181

全部

182

全部

183

全部

184

全部

185

全部

186

全部

187

全部

188

全部

189

全部

備考1 行数は、文字(表を構成する罫線は含まないものとする。)が記載された行を上か
   ら数えたものである。

備考2 文字数は、当該行の記載のある文字について左から数えたものである。句読点及び
   「(」、「.」、「-」等の標記は一文字とし、数字は、桁数にかかわらず一文字と
   数えたものである。

別紙

                  審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成9.2.26

○諮問

   9.3.10

○実施機関に非公開理由説明書の提出要求

   9.3.31

○非公開理由説明書の受理

   9.4.21

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   9.5.19

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

   9.5.23

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   9.8.18
 (第155回審査会)

○実施機関の職員(神奈川県都市部都市政策課長ほか)から非公開理由説明の聴取

   9.8.28
 (第156回審査会)

○異議申立人から意見の聴取

  10.6.15
 (第167回審査会)

〇審議

  10.7.9
 (第168回審査会)

〇審議

  10.8.5
 (第169回審査会)

〇審議

                神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                               (平成9年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小早川 光郎

東京大学教授

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

                        (平成10年8月18日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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