答申第56号

掲載日:2017年12月1日

答申第56号

                       平成10年12月24日

 神奈川県知事 岡崎 洋 殿

             神奈川県公文書公開審査会 会長 堀部 政男

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成9年2月26日付けで諮問された社会福祉法人設立認可申請書添付書
類一部非公開の件(諮問第60号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
(1)社会福祉法人設立認可申請書添付書類のうち、次に掲げる部分は、公
  開すべきである。
  ア 社会福祉法人設立等計画概要の中の理事長の住所、施設長の氏名及
   び「親族関係等」の欄
  イ 社会福祉法人設立準備委員会議事録の中の議事録署名人の氏名及び
   印影
  ウ 添付書類目録
(2)その他の部分を非公開としたことは、妥当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、特定の社会福祉法人(以下「本件社会福祉法人」
  という。)の設立認可についての伺いに添付された書類(以下「本件公文
  書」という。)を神奈川県知事が平成9年1月21日付けで一部非公開
  とした処分の取消し(本件公文書のうち、特定個人の所得、給与支払報
  告書及び印鑑登録証明書の部分を除く。)を求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「本件公文書のうち、
  特定個人の氏名、年齢、住所、職歴、社会福祉関係歴、身分証明書及び
  履歴書等は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別されること
  から、神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(以下「条例」とい
  う。)第5条第1項第1号に該当する」とした一部非公開の処分は、次
  に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものであ
  る。
  ア 条例第5条第1項第1号該当の点について
  (ア)本件社会福祉法人は、施設建設事業の妨害を排除する理由で住民
    を告発するに当たって、当該住民のプライバシーを侵害しているこ
    とから、当該法人の理事のプライバシーについても同程度は明らか
    にされるべきである。
  (イ)本件社会福祉法人の理事は、公人又はそれに準ずる資格を有する
    個人として考えるべきである。
  (ウ)本件社会福祉法人の理事が、新しい名称の社会福祉法人を設立し、
    事業を拡大していくことの是非について判断するには、職歴や社会
    福祉関係歴は明らかにされるべきである。
  (エ)借入金に対する寄附金贈与契約の内容については、社会福祉事業
    の透明性を確保するために公開すべきである。
  イ その他
  (ア)本件社会福祉法人の設立準備委員会は、設立認可申請書を県に提
    出する以前に何らかの文書を提出していると考えるのが妥当である。
  (イ)本件社会福祉法人の設立準備委員会は、設立認可を得る以前に市
    から施設建設の設計に関わる補助金を得ており、これに関する文書
    が添付書類の中に含まれているはずである。

3 実施機関の職員(福祉部障害福祉課長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件公文書を一部非公開とした理
 由は、次のとおりである。
(1)本件公文書について
   本件公文書は、社会福祉事業法(以下「法」という。)第29条に基
  づき提出された申請書の添付書類であり、添付されている書類は、以下
  のとおりである。
  ア 社会福祉法人設立等計画概要(以下「設立等計画概要」という。)
  イ 社会福祉法人定款及び添付書類目録
  ウ 設立当初の財産目録
  エ 設立当初の財産が法人に帰属することを証する書類
  オ 法人に帰属しない不動産の使用権限を証する書類
  カ 設立当初の会計年度及び次会計年度の事業計画及び収支予算書
  キ 設立者の履歴書
  ク 設立代表者の権限を証する書類及び身分証明書
  ケ 設立代表者特別代理人の権限を証する書類及び身分証明書
  コ 役員就任予定者の履歴書
  サ 施設建設関係書類
  シ 社会福祉法人設立準備委員会議事録(以下「設立準備委員会議事録」
   という。)
(2)条例第5条第1項第1号該当性について
   前記(1)で述べた本件公文書のうち、次に掲げる部分は、特定の個
  人が識別されることから、条例第5条第1項第1号本文に該当し、同号
  ただし書のいずれにも該当しないと判断した。
  ア 設立等計画概要のうち、以下の部分
    設立当初の役員の年齢、親族関係等、住所(理事長、理事及び監事)、
   職歴及び社会福祉関係歴並びに施設長の氏名、年齢、住所及び職業等
  イ 添付書類目録
  ウ 身分証明書及び履歴書等(以下「身分証明書等」という。)
  エ 設立準備委員会議事録のうち、以下の部分
    議事録署名人の氏名及び印影等
   しかし、当機関において再度検討したところ、設立等計画概要の中の
  設立当初の役員の住所のうち、理事長の住所については、同号ただし書
  アに、施設長の氏名については、同号ただし書イにそれぞれ該当し、ま
  た、添付書類目録については、同項第1号から第7号までの規定のいず
  れにも該当しないと判断するに至った。

4 審査会の判断理由
(1)本件公文書について
   本件公文書は、法第2条第2項第4号に規定する第一種社会福祉事業
  のうち精神薄弱者更生施設、及び同条第3項第2号の3に規定する第二
  種社会福祉事業のうち老人デイサービス施設を経営する事業を行うため
  に本件社会福祉法人の設立認可申請書に添付された書類である。
   また、本件公文書には、設立等計画概要、財産状況、設立当初の事業
  計画及び予算、設立者及び役員の履歴、施設建設計画並びに設立準備委
  員会に係る議事内容等が記載されている。
   なお、異議申立人は、本件公文書のうち、特定個人の所得、給与支払
  報告書及び印鑑登録証明書の部分については処分の取消しを求めていな
  いことから、以下、これらの部分の公開については判断しない。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、「知る権利」
   の保障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要
   請を調整しながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることと
   している。
    そして、同号本文は、個人に関する情報であって、特定の個人が識
   別され、又は識別され得るもの(以下「個人情報」という。)を非公
   開とすることができるとしている。
    したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われ
   るものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも
   含めて非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。
    また、個人に関する情報のうち、特定の個人が識別され、又は識別
   され得る第一義的な要素は、氏名であるが、氏名が記載されていない
   場合であっても、プライバシー性の極めて高い情報については、条例
   第2条後段において「個人の秘密、個人の私生活その他の他人に知ら
   れたくない個人に関する情報がみだりに公にされないように最大限の
   配慮をしなければならない」と規定している趣旨にかんがみ、明らか
   に他人に知られたくないと認められるものについては、非公開とする
   ことができるものと解される。
  イ 本件公文書のうち、次に掲げる部分は、個人に関する情報であって、
   特定の個人が識別されることから、条例第5条第1項第1号本文に該
   当すると判断する。
  (ア)設立等計画概要のうち、以下の部分
     設立当初の役員の年齢、親族関係等、住所(理事長、理事及び監
    事)、職歴及び社会福祉関係歴並びに施設長の氏名、年齢、住所及
    び職業等
  (イ)身分証明書等
  (ウ)設立準備委員会議事録のうち、以下の部分
     議事録署名人の氏名及び印影等
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的
   に公開できる情報について規定している。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書ア該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書アは、何人でも法令の規定によ
    り閲覧することができるとされている情報については公開すること
    を規定している。
  (イ)前記(2)において同号本文に該当すると認定した部分(以下「本
    文該当部分」という。)のうち、設立等計画概要の中の理事長の住
    所は、組合等登記令第2条第4号及び第25条並びに商業登記法第
    10条の規定により「何人でも法令の規定により閲覧することがで
    きるとされている情報」であると認められるので、条例第5条第1
    項第1号ただし書アに該当すると判断する。
  (ウ)その他の本文該当部分は、法令による閲覧規定がないので、条例
    第5条第1項第1号ただし書アに該当しないと判断する。
  ウ 条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書イは、公表することを目的とし
    て作成し、又は取得した情報については公開することを規定してい
    る。
     ここでいう「公表することを目的として作成し、又は取得した情
    報」は、広報紙等を通じ広く県民に積極的に周知する情報だけでな
    く、条例第2条前段が「公文書の閲覧及び公文書の写しの交付を求
    める権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用するも
    のとする」と規定している趣旨から考えると、事務事業の執行上又
    は行政の責務として県民の要望に応じて提供することが予定されて
    いるものを含むと解される。
     一方、同条は、後段において、原則公開を基本とする公文書公開
    制度にあっても、他人に知られたくない個人情報がみだりに公にさ
    れないように最大限の配慮をして、この条例の解釈及び運用をする
    趣旨を明らかにしている。
  (イ)本文該当部分のうち、設立等計画概要の中の施設長の氏名は、社
    会福祉法人神奈川県社会福祉協議会編集発行の神奈川県社会福祉施
    設・団体名簿に記載され、明らかにされている情報であるため、一
    般的に、その氏名は、従来から慣行上公表しており、かつ、今後公
    表してもそれが他人に知られたくない情報でないと認められるので、
    条例第5条第1項第1号ただし書イに該当すると判断する。
  (ウ)本文該当部分のうち、設立等計画概要の中の「親族関係等」の欄
    は、社会福祉法人の公共性の確立及び専断的な運営の防止を図るた
    め、法第34条第3項の規定により親族に当たる人が理事及び監事
    に就くことを人数的に制限していることから、親族に当たる人の数
    を確認する目的で設けられた欄である。
     このことから、本件社会福祉法人の設立認可申請が確かに法に則
    って行われているかどうかを確認するということの意義にかんがみ
    ると、当該欄に記載された情報は、事務事業の執行上又は行政の責
    務として県民の要望に応じて提供することが予定されている情報で
    あると認められる。
     したがって、当該欄に記載された情報は、条例第5条第1項第1
    号ただし書イに該当すると判断する。
  (エ)本文該当部分のうち、設立準備委員会議事録の中の議事録署名人
    の氏名及び印影は、議事の経過及びその結果を記載した記録である
    議事録に署名、捺印されている。
     確かに、署名人は、議事録の内容が確かなものであることを確認
    して議事録に署名、捺印していることから、署名人の氏名及び印影
    部分には、署名するという個人の意思が表示されていると言える。
     しかし、(1)署名は、本件社会福祉法人の定款第5条第8項の規定
    により、議長及び選任された理事2名が行うこととなっていること
    から、役員である理事長又は理事が署名することは明らかであり、
    その氏名は既に公表されていること、(2)そもそも、社会福祉法人は、
    極めて公共性の高い団体であることから、その代表権を有する理事
    長及び役員である理事には、経営する事業内容について社会的責任
    を有していると言えることにかんがみると、その事業に係る議事内
    容を記載した議事録の署名人の氏名及び印影は、当該個人にとって
    は他人に知られたくない個人情報であるとは言えず、むしろ、事務
    事業の執行上又は行政の責務として県民の要望に応じて提供するこ
    とが予定されている情報であると認められる。
     したがって、当該情報は、条例第5条第1項第1号ただし書イに
    該当すると判断する。
  (オ)その他の本文該当部分は、公表することを目的として作成し、又
    は取得した情報ではないので、条例第5条第1項第1号ただし書イ
    に該当しないと判断する。
  エ 条例第5条第1項第1号ただし書ウ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書ウは、法令の規定により行われ
    た許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、
    又は取得した情報であって、公開することが公益上必要と認められ
    るものについては公開することを規定している。
     ここでいう「公開することが公益上必要と認められるもの」とは、
    県民の生命、身体等を危害から保護し、公共の安全を確保する観点
    から公益上公開すべき積極的理由が強いものと解することが相当で
    ある。
  (イ)本文該当部分は、法第2条第2項第4号に規定する第一種社会福
    祉事業のうち精神薄弱者更生施設、及び同条第3項第2号の3に規
    定する第二種社会福祉事業のうち老人デイサービス施設を経営する
    事業を行うために本件社会福祉法人の設立認可申請書に添付された
    書類に記載された情報であることから、同号前段の「法令の規定に
    より行われた、許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際
    して作成し、又は取得した情報」であると認められる。
     しかしながら、本文該当部分は、県民の生命、身体等を危害から
    保護し、公共の安全を確保する観点から公益上公開すべき積極的理
    由が強いものとまでは認められない。
     したがって、本文該当部分は、同号ただし書ウには該当しないと
    判断する。
(4)条例第5条第1項第2号から第7号までの各号該当性について
   添付書類目録について当審査会で検討したところ、当該文書には、本
  件公文書の内訳が記載されているに過ぎないことが認められるので、添
  付書類目録は、条例第5条第1項第2号から第7号までの各号の規定の
  いずれにも該当しないと判断する。
(5)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開
   することのできない情報が記録されている場合であっても、それらを
   容易に、かつ、公文書の閲覧又は写しの交付を求める趣旨を失わない
   程度に合理的に分離できる場合には、部分公開をしなければならない
   と規定している。
  イ 本件公文書のうち、身分証明書等は、仮に画一的に印刷されたもの
   であるとしても、全体が特定個人に係る情報又は特定個人の意思表示
   に係る情報であり、全体的に「個人に関する情報であって、特定個人
   が識別され得るもの」と認めることが相当である。
    したがって、実施機関が、身分証明書等について、「公文書の閲覧
   又は写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理的に分離できる」
   公文書には該当しないと判断し、全体を非公開としたことは妥当であ
   ると考える。
(6)その他
   異議申立人は、実施機関の非公開理由説明書に対する意見書において、
  本件社会福祉法人の設立準備委員会は設立認可申請書を県に提出する以
  前に何らかの文書を提出している旨及び当該委員会は設立認可を得る以
  前に市から施設建設の設計に関わる補助金を得ており、これに関する文
  書が添付書類の中に含まれている旨主張する。
   しかし、当審査会は、公文書の閲覧等の請求に関する決定の当否につ
  いて実施機関から意見を求められているのであり、公文書の存在の有無
  について意見を述べる立場にはなく、この点に関する異議申立人の主張
  の当否については判断できない。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 別紙

              審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成 9.2.26

○諮問

   9.3.10

○実施機関に非公開理由説明書の提出要求

   9.4.25

○非公開理由説明書の受理

   9.5.8

○異議申立人に非公開理由説明書の送付

   9.6.23

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書の受理

   9.8.28
 (第156回審査会)
 (第157回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員(神奈川県福祉部障害福祉課長ほか)から非公開理由説明の聴取

   9.8.28

○実施機関に意見書に対する回答の提出要求

平成10.10.26

○意見書に対する回答の受理

  10.10.26
 (第172回審査会)

〇審議

  10.11.30
 (第174回審査会)

〇審議

  10.12.21
 (第175回審査会)

〇審議

                神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                               (平成9年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小早川 光郎

東京大学教授

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

                       (平成10年12月24日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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