答申第60号

掲載日:2017年12月1日

答申第60号

                        平成11年11月29日

 神奈川県知事 岡崎 洋 殿

             神奈川県公文書公開審査会 会長 堀部 政男

  公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成9年12月10日付けで諮問された知事等交際費に係る前渡金管理状況
表及び領収書等綴り一部非公開の件(諮問第69号)について、次のとおり答
申します。

1 審査会の結論
  知事等交際費に係る前渡金管理状況表、支払を裏付ける証拠書類である領
 収書、請求書、支払証明書及び振込金受取書(兼振込手数料受取書)の綴り
 に記載されている情報であって非公開としたもののうち、懇談月日、懇談場
 所及び懇談の県側出席者が識別され、又は識別され得る情報は公開すべきで
 ある。その他の情報を非公開としたことは、妥当である。

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、平成9年6月から同年8月までの神奈川県知事及
  び神奈川県副知事(以下「知事等」という。)の交際費に係る前渡金管理
  状況表(以下「本件出納簿」という。)並びに支払を裏付ける証拠書類で
  ある領収書、請求書、支払証明書及び振込金受取書(兼振込手数料受取書)
  の綴り(以下「本件領収書等綴り」という。)(以下、これらを総称して
  「本件公文書」という。)のうち、次に掲げる情報を平成9年10月24
  日付けで非公開とした処分の取消しを求める、というものである。
  ア 「見舞」に係る情報のうち、見舞いの相手方が識別され、又は識別さ
   れ得る情報
  イ 「懇談」に係る情報のうち、懇談月日、懇談場所、県側出席者及び相
   手方出席者が識別され、又は識別され得る情報
  ウ 法人及び事業を営む個人(以下「法人等」という。)の取引先金融機
   関名、預金種目、口座番号及び口座名義人
  エ 法人の経理担当者が識別され、又は識別され得る情報
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、神奈川県知事が「個人に関する情報で
  あって、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報がある。法人等に
  明らかに不利益を与えると認められるものがある。知事等の交際範囲、内
  容等に関する情報であり、公開すると関係者との信頼関係を損ない、理解
  と協力を得られにくくなり、当該事務の公正又は円滑な実施を著しく困難
  にするおそれがある。」として神奈川県の機関の公文書の公開に関する条
  例(以下「条例」という。)第5条第1項第1号、第2号及び第5号に該
  当するとした非公開の処分は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用
  を誤っている、というものである。
  ア 知事等交際費の公開の必要性について
  (ア)住民が地方自治体の運営の実態を知ることは権利であり、同時に義
    務である。神奈川県財政は未曾有の財政難にあると言われている。県
    政を立て直すための信頼を得ようとするならば、財務会計上の情報公
    開を徹底して行い、無駄な支出をチェックすることが最も有効な処方
    せんである。
  (イ)知事等交際費の公開については、平成6年7月22日付け神奈川県
    公文書公開審査会答申第28号知事交際費に係る前渡金管理状況表及
    び領収書等綴り(平成4年1月から同年3月分)一部非公開の件(以
    下「答申第28号」という。)が出された以後の情勢の変化、特に最
    近2、3年における食糧費に関する司法判断の蓄積による影響は大き
    く、重視すべきことは、一般社会がこれらの判決を肯定的に評価して
    いることである。食糧費等の公開請求により、カラ出張や常識の範囲
    を超えた高額の接待の事実が明らかになったことから、食糧費等の情
    報は、常に公開されている状態が現代社会における常識となっており、
    従来の基準を見直すべき時期にきている。
  イ 条例第5条第1項第1号該当の点について
  (ア)知事が見舞金を支出した相手方が、以前に特別職の公務員であった
    人や県から表彰された功労者など公人であれば、公開してもよい。見
    舞いは、基本的には公費により支出すべき性格のものではなく、公開
    できないような見舞いを公人たる知事が公費で行うべきものであろう
    か。個人のプライバシーの問題が絡むような見舞いであるならば、知
    事が私費から支出すべきである。
  (イ)プライバシーに関係がないことまでも非公開とするのは、条例第1
    条の趣旨に反する判断であり、行政の事務事業に関係する会議、懇談
    に公費を使い、自らの公務、職務として出席する限り、プライバシー
    とは関係のない事柄である。
     平成8年7月29日の仙台地方裁判所判決、平成9年2月27日の
    東京高等裁判所判決、同年3月25日の大阪地方裁判所判決及び同年
    9月29日の鹿児島地方裁判所判決など一連の食糧費に関する判決は、
    社会的に高く評価されており、一連の請求の過程でカラ接待や非常識
    な高額の接待が明らかになったこと等もあって、懇談会の公費の支出
    については、相手方を含め公開すべきことが社会的合意となっている
    と言うべきである。
  (ウ)経理担当者が識別され、又は識別され得る情報は、職務上の担当者
    としての表示に過ぎず、法人等の当該事業に関する情報の一部と言う
    べきで、個人情報には該当しないし、その公開は、法人等に不利益を
    与えるものでもない。
  (エ)以上のことから、これらの情報は、「行政の責務として県民の要望
    に応じて提供することが予定されているもの」であり、個人情報とし
    て非公開にすることはできない。
  ウ 条例第5条第1項第2号該当の点について
    法人等の取引先金融機関に関する情報については、領収書等に印刷さ
   れ、若しくは押印されている口座番号などは、相当範囲にわたって公開
   されることが前提となっていることから、非公開とする要素は少なく、
   公開しても法人等に実質的な不利益があるとは考えられない。
  エ 条例第5条第1項第5号該当の点について
  (ア)公金の支出に関する情報は、きちんと公開すべきである。
  (イ)懇談月日、懇談場所まで非公開としなければならないものがそうそ
    うあるとは思われないし、県側出席者及び相手方出席者が識別され、
    又は識別され得る情報も非公開とすべきものとは考えがたく、懇談に
    ついては、実質的には食糧費の支出と同様に考えるべきであり、現状
    のような運用では、何もかも非公開にされてしまう。一般的に、懇談
    に係る事項の公開が、県行政の運営を困難にするというのは、あまり
    にも飛躍である。
  オ その他
    情報公開によって、従前の行政の在り方を維持できないのであれば、
   行政の在り方を変えるべきである。

3 実施機関の職員(総務部秘書室長)の説明要旨
  実施機関の職員の説明を総合すると、本件公文書を非公開とした理由は、
 次のとおりである。
(1)交際費について
  ア 知事等交際費については、知事、副知事が職務上必要な交際を行う経
   費として、神奈川県議会で議決された予算の範囲内で、県民の信頼にこ
   たえられるよう、時代の要請に応じて適宜見直しを図りつつ、社会通念
   上妥当な執行に努めている。
  イ 交際費に係る情報公開請求については、答申第28号が出ており、以
   後は条例及び答申第28号に基づいて、一部の情報を除き原則公開の対
   象として、開かれた県政の推進に努めてきた。
(2)本件公文書について
   本件出納簿は、支出の1件ごとに、支出年月日、摘要欄に支出項目
  (「祝儀」、「見舞」、「不祝儀」、「会費」、「餞別」、「賛助」、
  「記念品等」及び「懇談」の8項目に分類)、支出の具体的内容、支払額
  等を記載し、1か月単位に取りまとめたものである。
   また、本件領収書等綴りは、支出の証拠書類として1か月単位に取りま
  とめ綴ったものである。
   本件公文書については、条例の趣旨に即し、答申第28号に基づき、次
  に掲げる情報の部分を非公開とし、それ以外の部分を公開としたものであ
  る。
  ア 本件出納簿について
  (ア)「見舞」に係る情報のうち、見舞いの相手方が識別され、又は識別
    され得る情報
  (イ)「懇談」に係る情報のうち、懇談月日、懇談場所、県側出席者及び
    相手方出席者が識別され、又は識別され得る情報
  イ 本件領収書等綴りについて
  (ア)「見舞」に係る情報のうち、見舞いの相手方が識別され、又は識別
    され得る情報
  (イ)「懇談」に係る情報のうち、懇談月日、懇談場所が識別され、又は
    識別され得る情報
  (ウ)法人等の取引先金融機関名、預金種目、口座番号及び口座名義人
  (エ)法人の経理担当者が識別され、又は識別され得る情報
(3)条例第5条第1項第1号該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号本文該当性について
    条例第5条第1項第1号本文では、「個人に関する情報であつて、特
   定の個人が識別され、又は識別され得るもの」は非公開とすることがで
   きるとしている。
    本件公文書に記載されている見舞いの相手方、懇談の県側出席者及び
   相手方出席者並びに法人の経理担当者が識別され、又は識別され得る情
   報は、個人に関する情報であり、同号本文に該当する。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書ア及びウ該当性について
     見舞いの相手方、懇談の県側出席者及び相手方出席者並びに法人の
    経理担当者が識別され、又は識別され得る情報は、同号ただし書アに
    規定する「何人でも法令の規定により閲覧することができるとされて
    いる情報」及び同号ただし書ウに規定する「法令の規定により行われ
    た許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、又
    は取得した情報であつて、公開することが公益上必要と認められるも
    の」のいずれにも該当しないことは明らかである。
  (イ)条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
     見舞いの相手方、懇談の県側出席者及び相手方出席者並びに法人の
    経理担当者が識別され、又は識別され得る情報は、一般的に、相手方
    等が自ら公表する性格のものではなく、新聞の「知事等の動向」欄等
    でも従来から公表しておらず、「公表することを目的として作成し、
    又は取得した情報」とは言えないため、条例第5条第1項第1号ただ
    し書イに該当しない。
(4)条例第5条第1項第2号該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号本文該当性について
    条例第5条第1項第2号本文では、「法人その他の団体(国及び地方
   公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営
   む個人の当該事業に関する情報であつて、公開することにより、当該法
   人等に明らかに不利益を与えると認められるもの」は、非公開とするこ
   とができるとしている。
    本件領収書等綴りの非公開部分に記載されている法人等の取引先金融
   機関名、預金種目、口座番号及び口座名義人の情報は、法人等が事業活
   動を行う上での内部管理の事項に属する情報であって、法人等の顧客で
   ある商取引上の債務者に対して、支払のために当該法人等が知らせる性
   格のものであることから、商取引とは関係なく公開することにより、法
   人等の事業運営が損なわれ、明らかに不利益を与える情報であり、同号
   本文に該当する。
  イ 条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
    上記取引先金融機関名、預金種目、口座番号及び口座名義人の情報は、
   条例第5条第1項第2号ただし書アに規定する「人の生命、身体又は健
   康を法人等又は個人の事業活動によつて生ずる危害から保護するため、
   公開することが必要と認められる情報」及び同号ただし書イに規定する
   「法人等又は個人の違法又は不当な事業活動によつて生ずる消費生活の
   安定に対する著しい支障から消費者を保護するため、公開することが必
   要と認められる情報」に該当しない。
    また、これらの情報は、上記アで述べたように、法人等が事業活動を
   行う上での内部管理の事項に属する情報であることから、同号ただし書
   ウに規定する「ア又はイに掲げる情報に準ずる情報であつて、公開する
   ことが公益上必要と認められるもの」にも該当しない。
(5)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 病気入院をした相手方を見舞ったという事実は、見舞いを受けた本人
   にとっては、一般的には、他人に知られたくない極めてプライベートな
   情報であることから、これを公開することにより、相手方や関係者に不
   快の念を抱かせ、ひいては、交際事務の円滑な実施を著しく困難にする
   おそれがある。
  イ 懇談は、知事等による県政の重要な政策課題についての調整や協力関
   係の維持など、県行政の円滑な運営に資する趣旨で行われるものである。
   いつ、どこで、だれが、だれと懇談を行うかは、懇談の趣旨等を考慮し
   て、知事等の裁量によって決める性格のものであり、懇談月日、懇談場
   所、県側出席者及び相手方出席者が識別され、又は識別され得る情報を
   公開することで、県政との関わり合いにおける相手方出席者に対する評
   価、位置付けなどが明らかになり、知事等の裁量に支障が生じ、個別の
   事案ごとの適切な交際ができなくなる、あるいは、これらの情報を未成
   熟な段階で外部に公開することで、相手方に不利益を及ぼす等、様々な
   形で以後の取組に影響を与え、ひいては、県行政の円滑な運営を著しく
   困難にするおそれがある。
    なお、懇談に係る情報のうち、一部の情報を公開することも、県側出
   席者及び相手方出席者や懇談の趣旨を推測させ、結果において県行政の
   円滑な運営を著しく困難にするおそれがある。
  ウ また、見舞い及び懇談については、新聞の「知事等の動向」欄等でも
   従来から原則として公表していない。
  エ 以上のことから、本件公文書に記載されている、「見舞」に係る情報
   のうち、見舞いの相手方が識別され、又は識別され得る情報、「懇談」
   に係る情報のうち、懇談月日、懇談場所、県側出席者及び相手方出席者
   が識別され、又は識別され得る情報は、知事等の交際の範囲、内容等に
   関する情報であり、公開することにより関係者等との信頼関係を損ない、
   理解と協力を得られにくくなり、当該事務の公正又は円滑な実施を著し
   く困難にするおそれがあるため、条例第5条第1項第5号に該当する。

4 審査会の判断理由
(1)本件公文書について
    本件出納簿は、総務部秘書室において、知事等交際費の経理状況を明
   確にするために、支出の1件ごとに、支出年月日、支出項目(「祝儀」、
   「見舞」、「不祝儀」、「会費」、「餞別」、「賛助」、「記念品等」
   及び「懇談」の8項目に分類)、支出の具体的内容、前渡金、支払額及
   び残額等の情報を記載し、1か月単位に取りまとめた帳簿である。
    また、本件領収書等綴りは、総務部秘書室において、支出の証拠書類
   として、1か月単位に取りまとめ綴ったものである。
(2)交際費について
  ア 交際費は、一般的には、「対外的に活動する地方公共団体の長その他
   の執行機関が、その行政執行のために必要な外部との交際上要する経費
   で、交際費の予算科目から支出される経費である(昭和28年7月1日
   付け自治庁行政部行政課長からの千葉県総務部長あての回答)」とされ
   ている。本件における知事等交際費は、こうした交際を行う知事等の職
   務上必要な経費として、予算額は神奈川県議会において議決され、その
   支出は、神奈川県財務規則に基づき行われている。
    知事等が行う交際の目的は、県が行うあらゆる事務事業の推進に当た
   ってなされる交渉、調整等の基礎となる関係者との信頼関係、協力関係
   を維持し、確保することであり、いつ、どこで、だれが、だれと、どの
   ような交際を行うかは、知事等の自由な裁量により決められ、知事等交
   際費はそういうものとして支出されてきたことが認められる。
  イ 当審査会は、知事等交際費について、答申第28号で公開非公開の判
   断を示しており、実施機関は、この判断に則って、本件公文書について
   も公開非公開の判断を行っていることが認められる。一方、知事等交際
   費の透明性を求める声は近年特に高まっており、知事等交際費に係る情
   報公開に関する地方裁判所や高等裁判所の最近の判決を見ると、一層の
   公開を求める方向にあることが認められる。
    そこで、当審査会は、このような先例及び状況の変化を踏まえ、知事
   等交際費の公開非公開について審議した。
(3)条例第5条第1項第1号該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号本文該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、「知る権利」
    の保障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要
    請を調整しながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを
    規定したものである。そして、同号本文は、個人情報はプライバシー
    に当たるものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確である
    ものも含めて非公開とすることができることを明文をもって定めたも
    のと解される。
  (イ)本件出納簿の「見舞」及び「懇談」に係る摘要欄のうち、「見舞」
    及び「懇談」の支出項目名を除く部分には、見舞いの相手方、懇談の
    県側出席者及び相手方出席者が識別され、又は識別され得る情報が記
    載されている部分がある。
     本件領収書等綴りには、見舞いの相手方及び法人の経理担当者が識
    別され、又は識別され得る情報が記載されている部分がある。これら
    の情報は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は
    識別され得る情報であることから、条例第5条第1項第1号本文に該
    当すると判断する。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号本文に該当する情報であっても、同号ただ
    し書ア、イ又はウに該当するものは、公開することとされている。
  (イ)本件公文書に記載されている情報は、同号ただし書アの「何人でも
    法令の規定により閲覧することができるとされている情報」及びただ
    し書ウの「法令の規定により行われた許可、免許、届出その他これら
    に相当する行為に際して作成し、又は取得した情報であつて、公開す
    ることが公益上必要と認められるもの」とは認められないので、同号
    ただし書ア及びウに該当しないと判断する。
  (ウ)条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
    a 条例第5条第1項第1号ただし書イは、「公表することを目的と
     して作成し、又は取得した情報」については、公開することを規定
     している。
      ここでいう「公表することを目的として作成し、又は取得した情
     報」は、広報紙等を通じて広く県民に積極的に周知する情報だけで
     なく、条例第2条前段が「公文書の閲覧及び公文書の写しの交付を
     求める権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用する
     ものとする」と規定している趣旨から考えると、事務事業の執行上
     又は行政の責務として県民の要望に応じて提供することが予定され
     ているものを含むと解される。
      一方、同条は、後段において、原則公開を基本とする公文書公開
     制度にあっても他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに
     公にされないように最大限の配慮をして、この条例の解釈及び運用
     をする趣旨を明らかにしている。
    b 相手方が識別され、又は識別され得る情報であっても、社会的儀
     礼に関する情報、当事者自らが公表している情報等は、行政の責務
     として県民の要望に応じて提供することが予定されている情報であ
     ると認められる。
    c 見舞いは、病気入院等に際し、生花等を贈るものであって、社会
     的儀礼に関するものではあるが、見舞いの相手方が識別され、又は
     識別され得る情報は、「知事等の動向」欄等では従来から公表され
     てなく、見舞いの相手方にとっては、一般的には、他人に知られた
     くない情報であり、相手方自らが公表する性格のものではないこと
     が認められる。
    d また、懇談は、社会的儀礼に関するものとは異なり、知事等が、
     県行政の円滑な運営に資する趣旨で、相手方と話合い等を行うもの
     である。県側出席者及び相手方出席者が識別され、又は識別され得
     る情報は、「知事等の動向」欄等では従来から公表されていないが、
     県側出席者については、公務で出席しており、交際事務における公
     務員の職、氏名等の情報は、当該公務員が分掌する事務又は事業の
     執行に関するものであると認められる。
      しかし、相手方出席者については、懇談に出席したという事実は、
     一般的には相手方自らが公表する性格のものではないことが認めら
     れる。
    e 法人の経理担当者が識別され、又は識別され得る情報は、領収書
     等に付随的に記載されている性格のものであり、一般に公表するこ
     とを予定しているものではない。
    f 以上のことから、見舞いの相手方、懇談の相手方出席者及び法人
     の経理担当者が識別され、又は識別され得る情報は、行政の責務と
     して県民の要望に応じて提供することが予定されているものである
     とは認められず、条例第5条第1項第1号ただし書イに該当しない
     と判断する。
      また、懇談の県側出席者が識別され、又は識別され得る情報は、
     行政の責務として県民の要望に応じて提供することが予定されてい
     るものであると認められる。したがって、同号ただし書イに該当す
     ると判断する。
(4)条例第5条第1項第2号該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号本文該当性について
  (ア)条例第5条第1項第2号本文は、「法人その他の団体(国及び地方
    公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を
    営む個人の当該事業に関する情報であつて、公開することにより、当
    該法人等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められるもの」
    は、非公開とすることができると規定している。
  (イ)本件領収書等綴りの中には法人等の取引先金融機関名、預金種目、
    口座番号及び口座名義人の情報が記載されており、これらの情報は法
    人等に関する情報であると認められる。
     また、これらの情報は、法人等が事業活動を行う上での内部管理の
    事項に属する情報であって、法人等の顧客である商取引上の債務者に
    対して、支払のために当該法人等が知らせる性格のものであることか
    ら、商取引とは関係なく公開することは、法人等の事業運営が損なわ
    れ、明らかに不利益を与える情報であると認められる。
     以上のことから、これらの情報は、同号本文に該当すると判断する。
  イ 条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
  (ア)条例第5条第1項第2号本文に該当する情報であっても、同号ただ
    し書ア、イ又はウに該当するものは、公開することとされている。
  (イ)取引先金融機関名、預金種目、口座番号及び口座名義人の情報は、
    同号ただし書アの「人の生命、身体又は健康を法人等又は個人の事業
    活動によつて生ずる危害から保護するため、公開することが必要と認
    められる情報」及び同号ただし書イの「法人等又は個人の違法又は不
    当な事業活動によつて生ずる消費生活の安定に対する著しい支障から
    消費者を保護するため、公開することが必要と認められる情報」に該
    当しないと判断する。
     また、これらの情報は、上記ア(イ)で述べたように、法人等が事
    業活動を行う上での内部管理の事項に属する情報であることから、同
    号ただし書ウの「ア又はイに掲げる情報に準ずる情報であつて、公開
    することが公益上必要と認められる」ものにも該当しないと判断する。
(5)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、「県の機関又は国等の機関が行う検査、
   監査、取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価
   格、試験の問題その他の事務又は事業に関する情報であつて、当該事務
   又は事業の性質上、公開することにより、当該事務又は事業の実施の目
   的を失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするお
   それのあるもの」は、非公開とすることができるとしている。
  イ 本号に例示されている情報は、該当する情報の典型的な例を示すもの
   であり、「その他の事務又は事業に関する情報」には、これらに類似し、
   又は関連する情報も含まれるものと解される。
    知事等が行う交際の目的は、県が行うあらゆる事務事業の推進に当た
   ってなされる交渉、調整等の基礎となる関係者との信頼関係、協力関係
   を維持し、確保することであるから、知事等の交際事務に関する情報は、
   「交渉の方針」に関する事務に類似し、「その他の事務又は事業に関す
   る情報」に該当すると判断する。
  ウ 知事等が行う交際のうち、社会的儀礼に関する交際は、従来から慣行
   的に行われてきている。他に特段の事情が存在しない限り、社会的儀礼
   に関する交際の相手方の氏名等が明らかにされたとしても、交際それ自
   体の目的が損なわれるとは言えず、また、知事等の裁量に著しい支障が
   生じ、交際事務の円滑な実施を著しく困難にするおそれがあるとは認め
   られない。
    そこで、見舞い及び懇談が社会的儀礼に関するものであるか否か、さ
   らには特段の事情が存在するか否かについて検討する。
  エ 見舞いは、社会的儀礼に関するものではあるが、相手方にとっては、
   前記4(3)イ(ウ)で述べたように、病気入院等に関するものは、一
   般的には、他人に知られたくない情報であることから、特段の事情が存
   在することが認められる。相手方が識別され、又は識別され得る情報を
   公開することは、相手方や関係者に不満や不快の念を抱かせ、したがっ
   て、交際それ自体の目的が失われ、又は交際事務の円滑な実施が著しく
   困難になるおそれがあると認められる。
    以上のことから、「見舞」に係る情報のうち、相手方が識別され、又
   は識別され得る情報は、条例第5条第1項第5号に該当すると判断する。
  オ 懇談は、知事等が県行政の円滑な運営に資するという趣旨で行うもの
   であることから、社会的儀礼に関するものとは異なるものであり、いつ、
   どこで、だれが、だれと懇談を行うかは、懇談の趣旨等を考慮して、知
   事等の裁量によって決められる性格のものである。
    「懇談」に係る情報のうち、懇談月日、懇談場所及び県側出席者が識
   別され、又は識別され得る情報については、公開することにより、知事
   等の裁量に支障が生じ、個別の事案ごとの適切な交際ができなくなると
   は一般的には認められない。したがって、交際それ自体の目的が失われ、
   又は交際事務の円滑な実施が著しく困難になるおそれがあるとは認めら
   れない。
    しかし、「懇談」に係る情報のうち、相手方出席者が識別され、又は
   識別され得る情報については、公開した場合、懇談月日等の情報と照合
   することにより懇談の内容が推測されるおそれがあると認められる。ま
   た、県政との関わり合いにおける相手方に対する評価、位置付けが明ら
   かになり、知事等の裁量に支障が生じ、個別の事案ごとの適切な交際が
   できなくなると一般的には認められる。したがって、交際それ自体の目
   的が失われ、又は交際事務の円滑な実施が著しく困難になるおそれがあ
   ると認められる。
    以上のことから、「懇談」に係る情報のうち、懇談月日、懇談場所及
   び県側出席者が識別され、又は識別され得る情報については、条例第5
   条第1項第5号に該当しないと判断する。
    また、相手方出席者が識別され、又は識別され得る情報は、同号に該
   当すると判断する。
(6)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開す
   ることのできない情報が記録されている場合において、それらを容易に、
   かつ、公文書の閲覧又は写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理
   的に分離できるときは、公開できない部分を除いて公開をしなければな
   らないと規定している。
  イ 本件公文書については、当審査会が前記4(3)、(4)及び(5)
   において非公開とすることが妥当と認めた部分の範囲及び内容にかんが
   みると、その他の情報を公開するとしても、容易に、かつ、公文書の閲
   覧等を求める趣旨を失わない程度に合理的に分離できるときに該当する
   と判断する。
(7)その他
   知事等交際費の透明性を求める声は一段と高まってきている。実施機関
  は、公文書公開と情報提供を情報公開制度の車の両輪として位置付け、こ
  れまで総合的な情報提供の充実に努めてきた。知事等交際費についても積
  極的に情報提供に努められるよう期待する。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

                  審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成9年12月10日

○諮問

   9年12月12日

○実施機関に非公開理由説明書の提出を要求

平成10年1月30日

○実施機関から非公開理由説明書を受理

   10年2月16日

○異議申立人に非公開理由説明書の送付し、非公開理由説明書に対する意見書の提出を要求

   10年3月3日

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書を受理

   10年3月5日

○実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

   10年11月17日

 (第173回審査会)

○異議申立人から意見の聴取
○実施機関の職員(神奈川県総務部秘書室長ほか)から非公開理由説明を聴取
○異議申立人から意見陳述書、補佐人から補佐人意見陳述要旨を受理

平成11年1月18日

〇異議申立人(補佐人)から追加資料を受理

   11年6月8日
 (第181回審査会)

〇審議

   11年7月6日
 (第182回審査会)

〇審議

   11年8月30日
 (第185回審査会)

〇審議

   11年10月12日
 (第186回審査会)

〇審議

   11年11月8日
 (第187回審査会)

〇審議

                 神奈川県公文書公開審査会委員名簿

                              (平成11年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小早川 光郎

東京大学教授

会長職務代理者

小林 重敬

横浜国立大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

                       (平成11年11月29日現在) (五十音順)

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本文ここまで
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