答申第65号

掲載日:2017年12月1日

 答申第65号

                       平成12年11月2日

神奈川県教育委員会委員長  牧野 カツコ 殿

              神奈川県公文書公開審査会 会長 堀部 政男

   公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成10年12月28日付けで諮問された神奈川県立高等学校職員会議録
一部非公開の件(諮問第76号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論

  神奈川県立高等学校職員会議録のうち、生徒の氏名、生徒指導における事
 情聴取内容、生徒の主張及び指導措置内容、転入試験受験者に関する情報、
 生徒の成績、原級留置、進路等の生徒の身分に係る情報、個人の心身及び家
 庭の状況、校務分掌主任等選出投票に関する氏名並びに思想・信条に関する
 発言者の氏名を非公開としたことは、妥当である。
2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、神奈川県立高等学校(以下「当該高校」という。)
  において、平成6年4月8日から平成9年5月7日の間に開催された職員
  会議の会議録(以下「本件公文書」という。)のうち、生徒の氏名、生徒
  指導における事情聴取内容、生徒の主張及び指導措置内容、転入試験受験
  者に関する情報、生徒の成績、原級留置、進路等の生徒の身分に係る情報、
  個人の心身及び家庭の状況、校務分掌主任等選出投票に関する氏名、思想
  ・信条に関する発言者の氏名を平成10年10月9日付けで神奈川県教育
  委員会(以下「教育委員会」という。)が非公開とした処分の取消しを求
  める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、教育委員会が非公開とした情報のうち、
  生徒の氏名等真のプライバシー情報を除く部分は、神奈川県の機関の公文
  書の公開に関する条例(以下、原則として「条例」という。)第5条第1
  項第1号に該当せず、また、条例第5条第1項第5号に該当するという教
  育委員会の説明は、漠然としていて非公開理由とはならないので、本件非
  公開処分は、条例の解釈と運用を誤った違法、不当なものだというもので
  ある。
  ア 条例第5条第1項第1号該当の点について
  (ア)実施機関は、非公開情報を生徒の心身の状況、生徒への事情聴取内
    容、生徒への指導措置内容、関係者の発言内容というように並列的に
    列挙し、その非公開理由も「個人の思想・信条を述べた個人に関する
    情報」、「特定の個人が識別され、または識別され得る」、「個人に
    とってもっとも知られたくない情報」というように並列的に主張して
    いる。しかし、この主張方法は、前者と後者の対応関係及び論理関係
    が不明確であり、説明的とは言えない。
     強引な主張により非公開理由を構成しようとする態度は、異議申立
    人の正当な反論の機会を奪う役割を果たすものであり、公正でない。
    明確に非公開理由を立証すべきである。
  (イ)また、指導措置内容は、同じクラスの生徒にとっては容易に又は推
    測して知ることができる情報であり、プライバシー性の低い個人情報
    と言うことができるが、本来、個人情報の公開・非公開は、第三者調
    査を踏まえて、基本的には本人が決めることであり、何がプライバシ
    ーかは、当該本人の意見を尊重しながら、個別の事例について、常識
    的な判断をすべきである。
  (ウ)学校の事件・事故に係る情報については、当該学校の教員のみで抱
    え込まずに、学校の実態情報として可能な限り広く公開することが、
    事件・事故の適切な事後対応と再発防止につながると考える。生徒に
    対する指導措置情報についても、広く公開することで、措置権限を持
    つ教員の説明責任を社会的に全うすることになり、また、指導措置の
    意思決定における適正手続と公正な判断の確保につながる。
  イ 条例第5条第1項第5号該当の点について
    実施機関の非公開理由には、「萎縮」とか「破壊」という表現が出て
   くるが、この提示の仕方は、第5号該当性について、類型化された非公
   開情報をそれぞれの類型化ごとに丁寧に説明するものではなく、第5号
   該当の非公開情報について一括して、「教員が萎縮的になる」、「教育
   が回復不可能なほどに破壊される」、「県民が著しく歪曲して理解する」
   といったような高圧的で被害妄想的な説明の仕方となっている。逆説的
   に言うならば、冷静な説明ができない学校の現実そのものが、教育情報
   や学校情報の公開の徹底をしなければならない理由そのものと言える。
  ウ 以上のように、実施機関の説明は、明確でなく、本件異議申立てにつ
   いては、異議申立人の主張のとおり公開されるべきである。

3 実施機関の職員(教育庁教育部高校教育課)の説明要旨
(1)本件公文書の概要等について
   本件公文書は、当該高校において、平成6年4月8日から平成9年5月
  7日の間に開催された職員会議の会議録である。
(2)条例第5条第1項第1号該当性について
   本件公文書に記載された生徒の氏名、生徒指導における事情聴取内容、
  生徒の主張及び指導措置内容、転入試験受験者に関する情報、生徒の成績、
  原級留置、進路等の生徒の身分に係る情報、個人の心身及び家庭の状況、
  校務分掌主任等選出投票に関する氏名並びに思想・信条に関する発言者の
  氏名は、その内容の如何にかかわらず、個人が特定される情報であって、
  他人に知られたくない情報である
   これらの情報を公開すると、プライバシーが著しく侵害され、結果とし
  て本人の社会生活に様々な不利益を与えることは明らかである。
   条例第2条においてもプライバシーに対する最大限の配慮を規定してい
  ることを考えると、条例第5条第1項第1号を適用し、非公開とすること
  が妥当である。
(3)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 校務の決定は、学校教育法第28条(高校への準用第51条)に基づき、
   最終的には校長の権限と責任において行うものであり、職員会議はあく
   までも補助的機関であるにもかかわらず、その性格や機能が理解されな
   いまま内容が公開されると、会議の運営方法について適切さを欠く批判
   等が加わり、保護者や県民の間に誤解や混乱が広がる懸念がある。
    また、本件の職員会議録は、担当者が聞き書きで記録したものであり、
   発言の省略、誤記、記入漏れ等があり、必ずしも正確に記録されていな
   い。したがって、学校のあり方や校長をはじめとする教職員の考え方が
   著しく県民に誤解され、歪曲されて受け取られるおそれがある。
  イ 生徒指導における事情聴取内容、生徒の主張及び指導措置内容、転入
   試験受験者に関する情報、生徒の成績、原級留置、進路等の生徒の身分
   に係る情報を公表すると、公表を意識することで今後の協議等が自由に
   かつ十分に行われず、萎縮的なものになる可能性が高いとともに、教員
   と生徒・保護者間の信頼関係が回復不可能なほどに破壊されるおそれが
   ある。その結果、今後反復継続される学校における生徒指導をはじめと
   する学校業務の円滑な実施が阻害されることは明らかである。
  ウ したがって、条例第5条第1項第5号の「県の機関が行う事務又は事
   業の円滑な実施を著しく困難にするおそれのあるもの」に該当する。

4 審査会の判断理由
(1)答申するに当たっての適用条例の考え方
   神奈川県情報公開条例が平成12年3月28日に公布され、平成12年
  4月1日に施行されたが、本諮問案件は神奈川県の機関の公文書の公開に
  関する条例(昭和57年神奈川県条例第42号)に基づきなされた処分で
  あるので、当審査会としては、当該条例に基づき本諮問案件を審議するこ
  ととする。
(2)本件公文書等について
  ア 県立高等学校における職員会議の設置や権限については、法令上の規
   定は存在しないが、東京地方裁判所判決(昭和44年8月6日)では「職
   員会議は終局的には校長の管理権の下に開かれ、その機能は学校運営や
   教育活動を円滑かつ効果的に進めるために、校務を掌理する学校長を補
   佐し、あるいは協力するためのものであり、学校運営上の重要な機関と
   しての作用をもつ」とされている。
  イ 本件公文書は、こうした性格を持つとされている職員会議の会議録で
   あり、当該高校において平成6年4月8日から平成9年5月7日の間に
   開催されたときのものである。そこには、開催月日時欄、校長及び教頭
   の押印欄、司会者及び記録者の欄、欠席者の欄等が設けられた様式によ
   り校務に関する議事が記録されていることが認められる。
(3)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、知る権利の保
   障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調
   整しながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定して
   いる。
    そして、同号本文は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識
   別され、又は識別され得るもの」(以下「個人情報」という。)を非公
   開とすることができるとしている。
    したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われる
   ものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含め
   て非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。
  イ 本件公文書に記載された生徒の氏名、生徒指導における事情聴取内容、
   生徒の主張及び指導措置内容、転入試験受験者に関する情報、生徒の成
   績、原級留置、進路等の生徒の身分に係る情報、個人の心身及び家庭の
   状況、校務分掌主任等選出投票に関する教職員の氏名並びに思想・信条
   に関する発言者(卒業式における君が代の取扱いについて意見を述べた
   教員)の氏名は、明らかに個人に関する情報であって、特定の個人が識
   別され、又は識別され得ることから、条例第5条第1項第1号本文に該
   当すると判断する。
  ウ なお、異議申立人は、指導措置内容は同じクラスの生徒にとっては容
   易に又は推測して知ることができる情報であり、プライバシー性の低い
   個人情報であると主張するが、条例第5条第1項第1号は特定の個人が
   識別され、又は識別され得るものを非公開とすることができると規定し
   ており、プライバシー性の低い個人情報であったとしてもそれをもって
   公開すべき情報であると解釈することはできない。また、情報公開請求
   が誰に対しても保障されている趣旨にかんがみると、一部関係者にとっ
   ては容易に又は推測して知ることができる情報であったとしても、それ
   をもって公開すべきという異議申立人の主張は、とることができない。
    さらに、異議申立人は、個人情報の公開・非公開の決定に当たっては、
   第三者調査を行い、当該第三者の意見を尊重した上で、常識的な判断を
   すべきであると主張するが、第三者調査は、実施機関が非公開情報の基
   準に照らして公開しようと判断した情報について調査するものであり、
   個人情報のすべてについてプライバシーを放棄するかどうかを調査する
   ものではない。
(4)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的に
   公開できる情報について規定している。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書ア該当性について
    条例第5条第1項第1号ただし書アは、「何人でも法令の規定により
   閲覧することができるとされている情報」については公開することを規
   定している。
    職員会議録については、閲覧できるとする法令の規定は存在しないの
   で、本件公文書は、同号ただし書アには該当しないと判断する。
  ウ 条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書イは、「公表することを目的とし
    て作成し、又は取得した情報」については公開することを規定してい
    る。
     ここでいう「公表することを目的として作成し、又は取得した情報」
    は、広報紙等を通じて広く県民に積極的に周知する情報だけでなく、
    条例第2条が「公文書の閲覧及び公文書の写しの交付を求める権利が
    十分に尊重されるようこの条例を解釈し、運用するものとする」と規
    定している趣旨から考えると、事務事業の執行上又は行政の責務とし
    て県民の要望に応じて提供するものを含むと解される。
  (イ)そこで、非公開とされた情報を事項別に見ると、校務分掌主任等選
    出投票に関する氏名、思想・信条に関する発言者の氏名については、
    いずれも学校運営上の重要な機関としての作用を持つとされている職
    員会議における言動等に係る教職員の氏名であり、公務員の職務に関
    する情報であると判断することができる。
  (ウ)しかし、職員会議は、結果としては学校の意思決定をする場合があ
    るとしても、その過程においては、教職員の率直で自由な意見交換が
    図られる必要があり、そのためには職員会議における発言者の氏名等
    を保護する必要性があることも否定できないところである。したがっ
    て、公務員の職務に関する情報であったとしても、事務事業の執行上
    又は行政の責務として県民の要望に応じて提供する情報に該当しない
    場合もあると考えるのが相当である。
  (エ)すなわち、校務分掌主任等選出投票に関する氏名、思想・信条に関
    する発言者の氏名については、教職員の立場に基づくものと自己の意
    見に基づくものとが密接不可分な関係にあり、これらの情報が明らか
    にされると、それぞれの教職員の立場が判明し、率直で自由な意見交
    換に支障が生じる可能性があり、また、特定の教職員個人の思想・信
    条という、いわゆるセンシティブ情報が公開されることになるとも考
    えられる。このような情報は、公務員の職務に関する情報といえども、
    事務事業の執行上又は行政の責務として県民の要望に応じて提供する
    ことが予定されているとまでは認められず、同号ただし書イを適用す
    ることは妥当でないと解される。
     そして、このことは、条例第2条後段で「個人の秘密、個人の私生
    活その他の他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに公にさ
    れないように最大限の配慮をしなければならない」と規定している趣
    旨にもかなっているものと考える。
  エ 条例第5条第1項第1号ただし書ウ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書ウは、「法令の規定により行われ
    た許可、免許、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、又
    は取得した情報であって、公開することが公益上必要と認められるも
    の」については公開することを規定している。
  (イ)本件公文書は、学校運営上の重要な機関としての作用を持つ職員会
    議の会議録であり、同号ただし書ウに規定する「許可、免許、届出そ
    の他これらに相当する行為に際して作成し、又は取得した情報」に該
    当しないと判断する。
(5)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、「県の機関又は国等の機関が行う検査、
   監査、取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価
   格、試験の問題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該事務
   又は事業の性質上、公開することにより、当該事務又は事業の実施の目
   的を失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするお
   それのあるもの」については、非公開とすることができるとしている。
    この規定は、事務又は事業の性質に着目し、当該事務又は事業の円滑
   な実施を確保する観点から定められたものであり、同号前段は、本来公
   開にはなじまない性格を有する情報の典型例を示したものである。した
   がって、これらと同様の性格を有する情報も同号の対象となると解され
   る。
  イ 本件公文書のうち、生徒指導における事情聴取内容、生徒の主張及び
   指導措置内容、転入試験受験者に関する情報、生徒の成績、原級留置、
   進路等の生徒の身分に係る情報については、前述のとおり条例第5条第
   1項第1号に該当すると判断したところであるが、実施機関は、これら
   の情報は条例第5条第1項第5号にも該当するとしているので、これに
   ついて検討する。
  ウ これらの情報のうち、転入試験受験者に関する情報、生徒の成績、原
   級留置及び進路等の生徒の身分に係る情報については、転入試験受験者
   の合否基準等の内部的な基準が推測される情報ということができるが、
   生徒指導における事情聴取内容並びに生徒の主張及び指導措置内容につ
   いては、公開することにより、今後の学校運営に支障を来すおそれが生
   じるとまでは認められない。
    したがって、転入試験受験者に関する情報、生徒の成績、原級留置及
   び進路等の生徒の身分に係る情報については、これらの情報を公開する
   ことにより、公正で適切な転入試験や原級留置等の進路決定等の円滑な
   実施を著しく困難にするおそれが生じると認められるので、条例第5条
   第1項第5号に該当し、その他の情報については該当しないと判断する。

5 審査会の処理軽過
  当審査会の処埋経過は、別紙のとおりである。

別紙

                     審査会の処理経過

年月日

処理内容

   平成10.12.28

○諮問

     11. 1.14

○実施機関に非公開理由説明書の提出を要求

     11. 2.15

〇非公開理由説明書の受理

     11. 2.22

〇異議申立人に非公開理由説明書の送付

     11. 3.23

〇異議申立人から非公開理由書に対する意見書を受理

     11. 3.26

〇実施機関に非公開理由説明書に対する意見書を送付

     11.11. 8
  (第187回審査会)

〇異議申立人から意見を聴取

     12. 7.18
  (第1回部会)

○審議

     12. 8.14
  (第2回部会)

○審議

     12. 9. 4
  (第3回部会)

○審議

     12.10.16
  (第195回審査会)

○審議

               神奈川県情報公開審査会委員名簿

                               (平成11.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

 弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小早川 光郎

 東京大学教授

会長職務代理者

部会員

小林 重敬

 横浜国立大学教授

 

千葉 準一

 東京都立大学教授

部会員

堀部 政男

 中央大学教授

会長

(部会長を兼ねる)

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本文ここまで
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