答申第67号

掲載日:2017年12月1日

答申第67号

                        平成12年11月2日

 神奈川県知事 岡崎  洋 殿

               神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

   公文書の閲覧等の拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 平成9年3月26日付けで諮問された特定の産業廃棄物処理業者に関する在
日米海軍厚木航空施設基地司令官からの要望書非公開の件(諮問第78号)に
ついて、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
  特定の産業廃棄物処理業者に関する在日米海軍厚木航空施設基地司令官か
 らの要望書は、別表1及び別表2に掲げる部分を除いて公開すべきである。

2 異議申立人の主張の要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、神奈川県知事(以下「知事」という。)あてに出
  された特定の産業廃棄物処理業者(以下「本件法人」という。)に関する
  在日米海軍厚木航空施設基地司令官(以下「司令官」という。)からの要
  望書(以下「本件公文書」という。)を知事が平成11年1月22日付け
  で非公開とした処分の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、知事が「本件公文書は、(1)個人に関す
  る情報であって、特定の個人が識別されること、(2)特定の法人の事業活動
  に関するものであり、公開すると本件法人に明らかに信用上の不利益を与
  えるものと認められること、(3)日米合同委員会で取り扱われているもので
  あり、公開すると、同委員会の運営に支障を来し、その結果、国の事務又
  は事業の円滑な実施を困難にするおそれがあることから、神奈川県の機関
  の公文書の公開に関する条例(以下、原則として「条例」という。)第5
  条第1項第1号、第2号及び第5号に該当する」とした非公開の処分は、
  次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものであ
  る。
  ア 条例第5条第1項第1号本文該当の点について
    本件公文書は、本件法人の事業活動に伴う排煙問題に対する司令官
   からの要望書であり、条例第5条第1項第1号で規定している「個人
   に関する情報」には当たらない。
    また、異議申立人が知ろうとしていることも、司令官からの要望書
   に記載された本件法人の事業活動に関する事項と要望内容であり、特
   定の個人が識別される情報ではない。したがって、条例第5条第1項
   第1号本文には該当しない。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書該当の点について
   実施機関は、本件公文書について条例第5条第1項第1号ただし書ア、
  イ及びウに該当しないと主張しているが、これらのただし書に該当しな
  いことが、全部非公開の理由となるものではないことは言うまでもない。
  ウ 条例第5条第1項第2号本文該当の点について
  (ア)本件法人の排煙については、本件公文書の公開請求時点で、日本政
    府がダイオキシンの調査結果を発表しており、本件公文書のデータだ
    けが一方的、確定的なものとして公になるわけではない。日本政府の
    調査は、環境庁が神奈川県とともに実施したものである。
     県や日本政府も在日米海軍と同様に社会的な影響が大きいことは言
    うまでもなく、本件法人の排煙についての調査結果が発表されると、
    本件法人に信用上の不利益を与えると考えているのであるならば、県
    自身が日本政府とともに調査したデータを日本政府が公表したことに
    ついてどう考えているのか。
  (イ)本件法人及び同法人代表取締役が法人税法違反で逮捕、起訴されて
    いること、参議院国土・環境委員会では、本件法人による静岡県内で
    の不法投棄が指摘されたこと、さらに、本件法人が静岡県内の水源地
    の近くに最終処分場計画を有しており、地元住民の反対運動及び町も
    法的対応に乗り出していることについて綾瀬市議会で指摘されている
    ことなどから、本件法人の「信用上の不利益」などはそもそも問題に
    ならない。
  エ 条例第5条第1項第2号ただし書該当の点について
  (ア)条例第5条第1項第2号ただし書ア該当の点について
     本件公文書における米海軍が測定したデータは、環境庁による測定
    結果と大きく異なるものであるが、本件法人の排煙に対しては、近隣
    の工業団地で働く人たち等から、悪臭がひどい、目が痛い、吐き気が
    するなどの深刻な被害を訴える声が上がってきた経緯がある。大気汚
    染の実態や健康への影響を心配する地元の人たちや関心を持つ県民が
    大気の状況について、日本政府と米海軍がそれぞれ調査した結果の両
    者を知りたいと考えることは、何ら不当なことではない。
     したがって、本件公文書の内容は、条例第5条第1項第2号ただし
    書アに該当する。
  (イ)ダイオキシン等の有害物質を含む焼却灰の不法投棄等、違法操業か
    ら住民の健康と安全を守る上でも、本件公文書は条例第5条第1項第
    2号ただし書イに該当する。
  (ウ)なお、実施機関は、本件公文書のデータについて、米海軍基地内で
    測定されたものであり、その真偽について県として検証することはで
    きないとしているが、本件公文書の公開請求時点で、県は本件法人の
    排煙被害を知っており、現実に被害が出ている以上、米海軍からデー
    タを受け取った行政は、進んで実態調査を行えばよい。そのような努
    力もせずに米海軍のデータについて検証することができないなどと決
    めつけるのは、自らの怠慢を棚に上げた開き直りではないか。
  オ 条例第5条第1項第5号該当の点について
    本件法人の排煙問題に対する日本政府の態度が日米間のやり取りの実
   際をごまかしたものであることは国会内の審議においても指摘されてお
   り、国の事務事業の円滑な実施を困難にするおそれがあるとの理由で本
   件公文書の公開を拒否することは、国の理不尽なやり方を助長するもの
   であり、県民・国民の利益に反し、健全な県政・国政、外交をかえって
   妨げることになる。この問題に対して何の説明もなく、環境庁と米海軍
   の意向に沿って本件公文書を全部非公開としたことは県民のいのちと健
   康、利益を守るべき地方自治体本来の自主的な判断と責任を放棄したも
   のだと言わざるを得ない。

3 実施機関(大気保全課(現大気水質課))の説明要旨
  実施機関が本件公文書を非公開とした理由は、次のとおりである。
(1)本件公文書について
   本件公文書は、本件法人の産業廃棄物処理事業に伴う排煙による大気汚
  染に関する苦情を内容とするものであり、神奈川県公害防止条例(現行条
  例名「神奈川県生活環境の保全等に関する条例」。以下「公害防止条例」
  という。)等に基づく措置を要請したものである。
   また、本件公文書には資料として、米海軍側の記録報告書、基地従業員
  等の証言書類等が添付されている。
(2)条例第5条第1項第1号本文該当性について
   条例第5条第1項第1号は、個人に関する情報であって、特定の個人が
  識別されるものについては、非公開とすることができるとしている。
   本件公文書の中には、基地内の日本人従業員及び米海軍住民等に対して
  行ったアンケート及び職員等の名簿があり、これらは、個人の健康状態に
  関する情報であり、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報である。
   異議申立人は、本件法人の事業活動に伴う排煙問題に対する司令官から
  の要望書は条例第5条第1項第1号本文で規定している「個人に関する情
  報」には当たらないとしているが、前述のとおり、本件公文書の添付書類
  である基地従業員等の健康状態に係る個人票は、特定個人の健康状態につ
  いて証言している文書であり、特定の個人が識別され、又は識別され得る
  情報であることから、条例第5条第1項第1号本文に該当する。
(3)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書ア及びウ該当性について
    本件公文書は、法令の規定により閲覧できるものではなく、また、法
   令の許可、届出等に基づいて提出されたものでもないことから、条例第
   5条第1項第1号ただし書ア及びウに該当しない。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
    本件公文書については、作成者である在日米海軍に対し、環境庁を通
   じて第三者情報調査を実施した結果、本件公文書には個人的な情報が多
   く、また、一部に内部事情が分かるような情報が入っているので公開を
   拒否したいとの回答であった。
    したがって、本件公文書が公表を目的として作成し、又は取得したも
   のではないことから、条例第5条第1項第1号ただし書イには該当しな
   い。
(4)条例第5条第1項第2号本文該当性について
  ア 本件公文書は、本件法人の主たる事業である廃棄物の処理に伴う大気
   汚染に関する苦情を内容とするものである。本件公文書のような法人等
   に対する苦情を内容とした文書を公開すると、作成者の一方的な主張が
   本件法人の反論の機会なく公になることになり、本件法人に信用上の不
   利益を与えることは明らかである。
    特に、本件公文書の作成者は在日米海軍であり、その社会的な影響が
   大きいことを考慮すると、本件公文書を公開した場合は、その内容が確
   定的なものとして認識される可能性は極めて高い。
  イ 本件法人が、法人税法違反として逮捕、起訴された事実は、非公開決
   定の通知後のことであり、本件公文書で、当該法人税法の違反について
   言及しているものではなく、静岡県内での不法投棄の事実については、
   確認されたものではない。さらに、静岡県内の最終処分場計画は、本県
   の関知するものではなく、仮にそのような計画を有していたとしても、
   そもそも最終処分場を計画すること自体は、異議申立人が主張するよう
   な違法・不当な事業活動に該当するものではない。
    したがって、公開請求時点において、異議申立人が主張するように、
   本件法人の取引上の信用が既に失われているといった状況にはないと判
   断する。
  ウ 以上のことから、本件公文書を公開すると、本件法人に対して明らか
   に信用上の不利益を与えるものであり、条例第5条第1項第2号本文に
   該当する。
(5)条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号ただし書ア該当性について
    条例第5条第1項第2号ただし書アに規定する「人の生命、身体、又
   は健康を法人等又は個人の事業活動によって生じる危険から保護するた
   め、公開することが必要と認められる情報」とは、人の生命等に対する
   危害の未然防止、拡大防止又は再発防止のために公開することが必要と
   認められる情報をいう。
    実施機関は、公開請求時点において、大気汚染防止法、公害防止条例、
   廃棄物の処理及び清掃に関する法律等所管の環境関連の法令について、
   本件法人の違法性を確認しておらず、したがって、本件法人に対して、
   これら法令に基づく命令等の措置は執っていない。
    なお、本件公文書に記載されたデータについては、基地内で測定され
   たデータであり、その真偽については、県として検証することはできな
   いものである。
    以上のことから、公開請求時点において本件法人の事業活動によって
   人の生命等に危害があると認めることはできないので、条例第5条第1
   項第2号ただし書アに該当しない。
  イ 条例第5条第1項第2号ただし書イ該当性について
    県は、前述のとおり、公開請求時点において法的な違法性は確認して
   おらず、本件法人の事業活動によって消費生活の安定を損なうような著
   しい支障が生じていると認めることはできないので、条例第5条第1項
   第2号ただし書イに該当しない。
  ウ 条例第5条第1項第2号ただし書ウ該当性について
    本件法人は、公開請求時点で生活環境や自然環境を破壊し、環境関連
   の法令に違反した操業を行っているとは認められないし、現にそのよう
   な状況にあると判断することはできないので、条例第5条第1項第2号
   ただし書ウにも該当しない。
(6)条例第5条第1項第5号該当性について
   本件法人の排煙問題については、現在、日米合同委員会の場で協議が行
  われているが、同委員会は、その内容を原則非公開としている。本件公文
  書は、同委員会を経由して提出されたものであるため、その取扱いについ
  て環境庁及び在日米海軍に対し第三者情報調査を行った結果、双方から非
  公開とする旨の回答があった。
   したがって、このような状況の中で、本件公文書を公開すると、日米合
  同委員会の円滑な運営に支障があるものと判断されるため、条例第5条第
  1項第5号に該当する。

4 審査会の判断理由
(1)答申するに当たっての適用条例の考え方
   神奈川県情報公開条例が平成12年3月28日に公布され、同年4月1
  日に施行されたが、当審査会としては、本諮問案件は神奈川県の機関の公
  文書の公開に関する条例(昭和57年神奈川県条例第42号)に基づきな
  された処分であるので、当該条例に基づき本諮問案件を審議することとす
  る。
(2)本件公文書について
  ア 本件公文書は、司令官から知事及び厚生大臣にあてた本件法人の産業
   廃棄物処理事業に伴う排煙による大気汚染に関する苦情と公害防止条例
   等に基づく措置を要請したものであり、次の書類が添付されている。
   (1) 異議の根拠
   (2) 県央地区行政センター所長が産業廃棄物の焼却処理に係る法令違反
    について改善を指示した書類
   (3) 本件法人の改善計画書
   (4) 綾瀬市長による指定工場排煙の改善について指示した書類
   (5) 県央地区行政センター所長が産業廃棄物の焼却処理に係る法令違反
    について改善計画書の提出を指示した書類
   (6) 本件法人の改善計画書
   (7) 厚木米海軍航空施設警察施行通知記録報告書(以下「報告書」とい
    う。)
   (8) 本件法人の操業状況を示す写真
   (9) 本件法人の焼却場総合施設の大気の品質と人体保健に対する初段的
    な危険度査定(以下「危険度査定」という。)
   (10) 基地住民と従業員から提出された被爆状況、身体症状についての証
    言書類及び証言者の名簿
  イ 審査対象文書について
    本件公文書のうち、前記(2)アの(2)、(3)、(5)及び(6)については、当審
   査会が調査した結果、既に、公開請求に基づき公開されていることが判
   明したので、公開すべきであると判断する。以下、その他の公文書につ
   いて審議する。
(3)条例第5条第1項第1号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、「知る権利」
   の保障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請
   を調整しながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることとして
   いる。
    そして、同号本文は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別
   され、又は識別され得るもの(以下「個人情報」という。)を非公開と
   することができるとしている。
    したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われる
   ものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含め
   て非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。
  イ 本件公文書のうち、次に掲げる部分は、個人に関する情報であって、
   特定の個人が識別されることから、条例第5条第1項第1号本文に該当
   すると判断する。
  (ア)要望書のうち、
    (1) 在日米海軍司令官の署名
    (2) アメリカ側日米合同委員会環境分科委員会代表の署名
    (3) 日本側日米合同委員会環境分科委員会代表の署名
    (4) 司令官の氏名及び署名
  (イ)前記(2)ア(7)の報告書のうち、氏名
  (ウ)前記(2)ア(9)の危険度査定のうち、調査者の氏名及び電話番号
  (エ)前記(2)ア(10)の基地住民と従業員から提出された被爆状況、身体症
    状についての証言書類及び証言者の名簿のうち、証言者の氏名、職場
    又は住所、身体症状に関する証言、居住場所を示す地図
(4)条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的に
   公開できる情報について規定している。
  イ 本件公文書に記載されている情報は、同号ただし書アの「何人でも法
   令の規定により閲覧することができるとされている情報」及びウの「法
   令の規定により行われた許可、免許、届出その他これらに相当する行為
   に際して作成し、又は取得した情報」とは認められないので、同号ただ
   し書ア及びウに該当しないと判断する。
  ウ 条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号ただし書イは、「公表することを目的とし
    て作成し、又は取得した情報」については、公開することを規定して
    いる。
     ここでいう「公表することを目的として作成し、又は取得した情報」
    は、広報紙等を通じて広く県民に積極的に周知する情報だけでなく、
    条例第2条前段が「公文書の閲覧及び公文書の写しの交付を求める権
    利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用するものとする」
    と規定している趣旨から考えると、事務事業の執行上又は行政の責務
    として県民の要望に応じて提供することが予定されているものを含む
    と解される。
     そして、相手方が識別され、又は識別され得る情報であっても、当
    事者自ら公表している情報等は、行政の責務として県民の要望に応じ
    て提供することが予定されている情報であると認められる。
  (イ)在日米軍基地は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安
    全保障条約に基づき、アメリカ合衆国軍隊が、日本国内において使用
    を許された施設であり、その長たる基地司令官から知事に対して要望
    書を提出した場合、要望書に記載されている要望者等の氏名及び署名
    は、一般的には公表を予定しているものであると認められる。
  (ウ)また、基地司令官の氏名は、その公的性格からも一般に公表を予定
    しているものであると認められる。
     日米合同委員会は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
    安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆
    国軍隊の地位に関する協定の実施に関して、日本国政府と合衆国政府
    との間の協議機関として設置されたもので、事務局は外務省に置かれ
    ている。また、同委員会には、協議内容により分科委員会が設置され、
    主管官庁の特定の職にある者が、分科委員会の日本側代表に当たって
    いることから、日本側日米合同委員会環境分科委員会代表の署名は、
    国家公務員が分掌する事務又は事業の執行に関するものであると認め
    られる。
     さらに、アメリカ側日米合同委員会環境分科委員会代表の署名は、
    政府間の協議機関の代表を務める以上、前記の国家公務員に準ずる者
    と認められる。
     したがって、前記(3)イ(ア)の要望書に記載されている個人情報は、
    条例第5条第1項ただし書イに該当すると判断する。
(5)条例第5条第1項第2号本文該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号本文は、「法人その他の団体(国及び地方公
   共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む
   個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該法人
   等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められるもの」は、非公
   開とすることができると規定している。
  イ 閲覧等の請求に係る諾否の決定に関する異議申立てについて、実施機
   関が当審査会に諮問する趣旨は、条例第5条で規定する適用除外事項の
   該当性等を実施機関が改めて判断する際の意見を求めているものと解さ
   れる。したがって、当該諾否の決定後に新たな事実状態等の変動があっ
   たときには、処分時の事実状態等によって判断しなければならない特段
   の事情が存在しない限り、当審査会は新たな事実状態等の変動をも考慮
   して審査・判断できるものと考える。
  ウ 本件公文書のうち、要望書、前記(2)ア(1)の異議の根拠は、本件法人
   の事業活動に伴う排煙問題について、違法行為を指摘し、知事に対し公
   害防止条例等に基づく措置を求めたものである。
    実施機関は、要望者の一方的な主張、特に在日米海軍という社会的影
   響力の大きいものによる主張が、本件法人の反論の機会なく公になるこ
   とにより、本件法人に信用上の不利益を与えると説明している。
    しかしながら、米海軍側の本件法人に対する苦情、要望については、
   米海軍側の報道官を通じた発表等により、マスメディアに大きく取り上
   げられているところであり、米国側が、本件法人の施設の操業停止の仮
   処分を申し立て、公開の法廷で争われていることも、既に周知の事実で
   あることから、公開しても本件法人に明らかに信用上の不利益を与える
   ことにはならず、条例第5条第1項第2号本文に該当しないと判断する。
  エ 前記(2)ア(4)の綾瀬市長による指定工場排煙の改善について指示した
   書類は、公害防止条例に規定する排煙の規制基準に対する違反について、
   改善を指示したものであるが、本件指導事項の内容、既に指導事項につ
   いての改善がなされていることなどから、公開することにより本件法人
   に明らかに信用上の不利益を与えるとまでは言えず、条例第5条第1項
   第2号本文に該当しないと判断する。
  オ 前記(2)ア(8)の本件法人の操業状況を示す写真は、本件法人の産業廃
   棄物処理施設から出る排煙の状況及び施設内の廃棄物の状況について撮
   影したものであり、その当時、周辺の者であれば誰でも確認できる情報
   であることから、本件法人に明らかに信用上の不利益を与えることには
   ならず、条例第5条第1項第2号本文に該当しないと判断する。
  カ 前記(2)ア(9)の危険度査定は、米海軍側が、ダイオキシンについて独
   自の調査を実施し、その結果をまとめたものである。
    実施機関は、調査の正確性及び調査結果と本件法人の操業との因果関
   係について検証できないことを理由に非公開としている。
    しかしながら、基地内外のダイオキシンについては、次のとおり、県
   が調査等を実施し、調査結果及び県の対応について記者発表するととも
   に、県のホームページに掲載していることが認められる(平成12年
   10月16日現在)。
  (ア)平成11年7月から約2か月間、日米合同モニタリング調査を実施
    した結果、基地内の1地点において大気環境中のダイオキシン類に
    つき、大気環境指針値を大幅に超える異常な数値を検出したことを
    受け、同年10月、本件法人に対し、施設の改善勧告をした。
  (イ)平成11年10月から1週間、基地周辺の大気、土壌等について、
    ダイオキシン調査を実施した。
  (ウ)環境庁と合同により、平成11年12月から約2か月間、基地周辺
    の大気、土壌等について、ダイオキシン調査を実施した。
  (エ)平成12年4月に本件法人の施設改善後の効果を確認するための調
    査を実施し、産業廃棄物処理施設から出る排出ガス及び基地周辺の
    大気中のダイオキシン類濃度が、施設改善前より低減していること
    を確認した。
  (オ)産業廃棄物処理施設のバグフィルター稼働前95日間及び稼働後
    91日間の基地周辺の3地点における大気環境調査を実施し、ダイ
    オキシン類の平均濃度が、バグフィルター稼働前に比べ低減してい
    ることを確認した。
     以上のことから、実施機関が、米海軍側の調査の正確性及び調査結果
    と本件法人の操業との因果関係について検証できないとしていた当初の
    説明は、現時点では正当な理由であるとは認められない。
     さらに、前述した操業停止の仮処分の申立てについては、公開の法廷
    で口頭弁論が行われ、マスメディアを通じて双方の主張が公にされてい
    るなどのことから、データを公開しても本件法人に明らかに信用上の不
    利益を与えることにはならず、条例第5条第1項第2号本文に該当しな
    いと判断する。
   キ 前記(2)ア(7)の報告書は、米海軍基地内のパトロールの実施状況等を
    記録したもので、パトロールの時間、地点、パトロール時の状況等が記
    載されており、米海軍の施設管理上の内部情報であり、公開することに
    より米海軍に明らかに不利益を与えると認められることから、条例第5
    条第1項第2号本文に該当すると判断する。
(6)条例第5条第1項第2号ただし書該当性について
  ア 条例第5条第1項第2号ただし書は、法人等に関する情報又は事業を
   営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該
   法人等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められるものであっ
   ても、例外的に公開できる情報について規定している。
  イ 前記(2)ア(7)の報告書のパトロール実施状況の情報は、条例第5条第
   1項第2号ただし書アに規定する「人の生命、身体又は健康を法人等又
   は個人の事業活動によって生ずる危害から保護するため、公開すること
   が必要と認められる情報」、同号ただし書イ「法人等又は個人の違法又
   は不当な事業活動によって生ずる消費生活の安定に対する著しい支障か
   ら消費者を保護するため、公開することが必要と認められる情報」及び
   同号ただし書ウ「ア又はイに掲げる情報に準ずる情報であって、公開す
   ることが公益上必要と認められるもの」のいずれにも該当しない。
(7)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、「県の機関又は国等の機関が行う検査、
   監査、取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価
   格、試験の問題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該事務
   又は事業の性質上、公開することにより、当該事務又は事業の実施の目
   的を失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするお
   それのあるもの」については、非公開とすることができるとしている。
    この規定は、事務又は事業の性質に着目し、当該事務又は事業の円滑
   な実施を確保する観点から定められたものであり、同号前段は、本来公
   開になじまない性格を有する情報の典型例を示したものであることか
   ら、これらの情報のほか、これらに類似し、又は関連する情報について
   も、「その他の事務又は事業」に関する情報として、対象となると解さ
   れる。
    また、公開することにより、反復継続される同種の事業の公正かつ円
   滑な実施を著しく困難にする情報についても、同号後段の「当該事務又
   は事業の実施の目的を失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著
   しく困難にするおそれのある」情報に含まれると解される。
  イ 当審査会は、同号に該当することを理由に非公開とするためには、請
   求に係る公文書を公開することと事務又は事業の円滑な実施を著しく困
   難にすることの関係を具体的に明らかにする必要があると考える。
  ウ 実施機関は、本件法人の排煙問題については、現在、日米合同委員会
   の場で協議が行われており、日米合同委員会は、その内容を原則非公開
   としていること、本件公文書が、日米合同委員会を経由して、知事及び
   厚生大臣に送付されたものであり、日米合同委員会に係る内容であるこ
   と、また、第三者調査により、司令官から非公開の回答を得ていること
   により、本件公文書を公開すると国の事業の円滑な実施を著しく困難に
   するとしている。
  エ しかしながら、米海軍側からの本件法人に対する要望の概要について
   は、マスメディアを通じて広く知られていること、また、本件公文書の
   要請内容を見ても、知事の行政権限の行使に係る事項であり、公開した
   からといって、政府間交渉に直接影響を及ぼすとは考えられないことを
   考慮すると、当審査会としては、本件公文書を公開することにより、仮
   に支障が生ずることがあるとしても、国の事業の円滑な実施を著しく困
   難にするおそれがあるとまでは言えず、条例第5条第1項第5号に該当
   しないと判断する。
(8)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開す
   ることのできない情報が記載されている場合において、それらを容易に、
   かつ、公文書の閲覧又は写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理
   的に分離できるときは、公開できない部分を除いて公開をしなければな
   らないと規定している。
  イ 本件公文書については、当審査会が前記(3)、(4)、(5)及び(6)
   において非公開とすることが妥当と認めた部分の範囲及び内容にかんが
   みると、その他の情報を分離して公開することは、「容易に、かつ、公
   文書の閲覧等を求める趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」
   に該当すると判断する。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別表1

条例第5条第1項第1号に該当する部分

文書名

該当部分

本件法人の焼却場総合施設の大気の品質と人体保健に関する初段的な危険度査定

調査者の氏名及び電話番号

基地住民と従業員から提出された被爆状況、身体症状についての証言書類及び証言者の名簿

証言者の氏名、職場、住所、証言部分、居住場所を示す地図

別表2

条例第5条第1項第2号に該当する部分

文書名

該当部分

厚木米海軍航空施設警察施行通知記録報告書

全部

別紙

                 審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成11年3月26日

○諮問

  11年4月2日

○実施機関に非公開理由の説明書の提出を要求

  11年4月28日

○実施機関から非公開理由説明書を受理

  11年5月10日

○異議申立人に非公開理由説明書を送付し、非公開理由説明書に対する意見書の提出を要求

  11年6月14日

○異議申立人から非公開理由説明書に対する意見書を受理

平成12年1月17日
  (第189回審査会)

○異議申立人から意見を聴取
○異議申立人から追加資料を受理

  12年2月18日

○異議申立人から追加資料を受理

  12年6月12日
  (第1回部会)

○審議

  12年7月24日
  (第2回部会)

○審議

  12年8月7日
  (第3回部会)

○審議

  12年9月4日
  (第4回部会)

○審議

  12年9月13日
   (第5回部会)

○審議

  12年10月16日
   (第195回審査会)

○審議

            神奈川県情報公開審査会委員等名簿

1 神奈川県情報公開審査会委員           

                              (平成11.4.1委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

部会員

小早川 光郎

東京大学教授

会長職務代理者

小林 重敬

横浜国立大学教授

部会員

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長
(部会長を兼ねる)

                                     (五十音順)

2 神奈川県情報公開審査会部会特別委員        

                               (平成12.6.12委嘱)

氏名

現職

備考

玉巻 弘光

東海大学教授

 

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