答申第81号

掲載日:2017年12月1日

答申第81号

                               平成13年8月28日

神奈川県教育委員会 委員長 櫻井 義英 殿

                   神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

      公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

    平成12年2月15日付けで諮問された国旗掲揚及び国歌斉唱取組状況調査に
   対する回答非公開の件(諮問第94号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論

  「平成11年度卒業式及び平成12年度入学式に係る取り組み状況調査につ
  いて(事務連絡)」に対する各県立学校長からの回答書を処分時において非
  公開としたことは、妥当である。

2 異議申立人の主張要旨

(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、平成11年11月5日付けで神奈川県教育委員会(以
  下「教育委員会」という。)が各県立学校長あて送付した「平成11年度卒
  業式及び平成12年度入学式に係る取り組み状況調査について(事務連絡)」
  に対する各県立学校長からの回答書(以下「本件公文書」という。)を、
  教育委員会が平成12年1月31日付けで非公開とした処分(以下「本件処
  分」という。)の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、教育委員会が、本件公文書は「平成11
  年度卒業式及び平成12年度入学式に向けた準備段階の情報であり、現時
  点で公開することにより、円滑な学校運営を著しく困難にするおそれがあ
  る」ことから、神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(以下、原則
  として「条例」という。)第5条第1項第5号に該当するとした非公開の
  処分は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、という
  ものである。
  ア 条例第5条第1項第5号該当の点について
    本件公文書を公開することで「学校運営を著しく困難にする」とは具
   体的にどのような事態を想定しているのか、理解できない。
  イ その他
  (ア)既に文書は、存在しており、情報公開制度の基本的な考え方からす
    れば公開すべきであり、県民として知る権利がある
  (イ)調査の内容は、アジアへの侵略戦争に利用した日の丸・君が代を学
    校現場に強制させるものであり、アジアの人たちの感情を逆撫でする
    ものである。
  (ウ)人間らしく生きたい県民、再び同じ歴史を繰り返さないことを願い
    ながら子供を学校に通わせている親たちの願いを無視している。
  (エ)戦争犠牲者となった民衆への責任と反省もなく公教育現場で日の
    丸・君が代を強制することは、過去の侵略戦争への道を繰り返す。
  (オ)教育委員会が推進する国際化、「人権共生」教育にも反する。
  (カ)県は、外国籍県民かながわ会議を発足させ、外国人への差別解消、
    人権尊重を謳っているが、このような県政姿勢にも反している。

3 実施機関(教育庁教育部高校教育課、障害児教育課)の説明要旨

(1)本件公文書について
   本件公文書は、高校教育課長及び障害児教育課長の連名で平成11年11
  月5日付けで各県立学校長あて送付した「平成11年度卒業式及び平成12
  年度入学式に係る取り組み状況調査について(事務連絡)」に対する各県立
  学校長からの回答書である。調査項目は3つであり、「1 これまでの取り
  組み状況について」、「2 平成11年度卒業式における国旗の掲揚・国歌の
  斉唱に関する現在の課題」及び「3 その他(天皇陛下御在位十年記念式
  典当日の国旗掲揚について)」となっている。
(2)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア「1 これまでの取り組み状況」について
   本項目については、調査時点における各学校の平成11年度卒業式及び平
  成12年度入学式に向けた国旗掲揚・国歌斉唱の取組状況の回答を求めた
  ものである。
   本件請求時点においては、各学校で平成11年度卒業式及び平成12年度
  入学式の実施方針や実施形態、業務分担等に関して、学校長から職員への
  意思伝達が未だなされていなかったり、校内での議論が継続中であったり
  して、式についての教職員の意識が十分に固まっているとはいえない状況
  である。したがって、この時点で回答内容を公開することは、教育委員会
  の学校への指導あるいは当該卒業式・入学式に対して、妨害や学校内外に
  おける混乱が発生することが十分に予想され、円滑な学校運営を著しく困
  難にするおそれがある。
  イ「2 平成11年度卒業式における国旗の掲揚・国歌の斉唱に関する現在
   の課題」について
   本件請求時点において回答内容を公開することにより、校長が課題とし
  て認識している事項が明らかになり、卒業式の実施に向けた校長の校内運
  営を困難にするおそれがある。
  ウ「3 その他(天皇陛下御在位十年記念式典当日の国旗掲揚について)」
   について
   本件請求時点において回答内容を公開することにより、外部からの圧力
  などが想定され、平成11年度卒業式及び平成12年度入学式に向けての円
  滑な学校運営に支障を来すおそれがある。
(3)その他
   平成11年度卒業式及び平成12年度入学式のいずれもが終了した後には
  「当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれがある」とは
  いえなくなるため、改めて請求があった場合には非公開情報を除いて公開
  請求に応じることができると考えており、このような時限性公開の旨を異
  議申立人に交付した決定通知書にも記載している。

4 審査会の判断理由

(1)答申するに当たっての適用条例の考え方等について
  ア 神奈川県情報公開条例が平成12年3月28日に公布され、平成12年4
   月1日に施行されたが、本諮問案件は神奈川県の機関の公文書の公開に
   関する条例(昭和57年神奈川県条例第42号)に基づきなされた処分で
   あるので、当審査会としては、当該条例に基づき本諮問案件を審議する
   こととする。
  イ 本諮問案件は、平成12年1月28日付けの公文書公開請求を受けて、
   1月31日付けで実施機関が行った諾否決定に対し、2月3日付けで提起
   された異議申立てに係るものである。その後平成11年度卒業式が3月上
   旬から中旬にかけて、平成12年度入学式が4月上旬に実施されている。
   実施機関は上記の諾否決定の通知の中で、県立学校におけるすべての平
   成12年度入学式が終了した日以後であれば、本件公文書を公開すること
   ができる旨を異議申立人に伝えていることが認められる。したがって、
   本諮問案件は、公文書の公開を拒む理由がなくなる時期をあらかじめ明
   示した時限性公開に係る事案である。これまで当審査会では、諾否の決
   定後の新たな事実状態の変動をも考慮して、答申時の事実状態を基に諮
   問案件の審議を行ってきた。こうした考え方をとると、本諮問案件の場
   合には答申時において既に公開することができる時期が到来しているこ
   とから、答申時の事実状態を基に判断するならば、異議申立てはその利
   益がないと考えることもできる。
    しかし、本諮問案件が、一定の時期が到来する前に本件公文書を公開
   することにより、当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするお
   それがあるとして非公開としたことの是非の判断を求めるものであるこ
   となどを考慮すると、本諮問案件においては処分時の事実状態を基に審
   議することが妥当であると判断する。
(2)本件公文書について
   本件公文書は、高校教育課長及び障害児教育課長の連名で平成11年11
  月5日付けで各県立学校長あて送付した「平成11年度卒業式及び平成12
  年度入学式に係る取り組み状況調査について(事務連絡)」に対する各県立
  学校長からの回答書である。調査項目は3つであり、「1 これまでの取り
  組み状況について」、「2 平成11年度卒業式における国旗の掲揚・国歌の
  斉唱に関する現在の課題」及び「3 その他(天皇陛下御在位十年記念式
  典当日の国旗掲揚について)」となっている。
(3)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、「県の機関又は国等の機関が行う検査、監
   査、取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価格、
   試験の問題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は
   事業の性質上、公開することにより、当該事務又は事業の実施の目的を
   失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれ
   のあるもの」は非公開にすることができるとしている。
  イ この規定は、事務又は事業の性質に着目し、当該事務又は事業の円滑
   な実施を確保する観点から定められたものであり、同号前段は、本来公
   開になじまない性格を有する情報の典型例を示したものである。したが
   って、「その他の事務又は事業に関する情報」には、これらに類似し又は
   関連する情報も含まれると解される。
  ウ 本件公文書に記載されている情報は、平成11年度卒業式及び平成12
   年度入学式にかかる国旗掲揚・国歌斉唱への各学校の取組状況等であり、
   これは学校運営に係る事務に関する情報として「その他の事務又は事業
   に関する情報」に該当する。
  エ また、本件公文書には、当該卒業式及び入学式における国旗掲揚・国
   歌斉唱についての職員会議での議論の状況や妨害、反対行動の有無につ
   いての記載が含まれている。実施機関は、これらの情報を当該卒業式及
   び入学式が終了する前に公開することにより、教育委員会の学校への指
   導や当該卒業式及び入学式に対する妨害、学校内外における混乱の発生
   が予想され、円滑な学校運営を著しく困難にするおそれがあると説明し
   ている。
  オ 当審査会が調査したところ、県立学校における国旗掲揚・国歌斉唱の
   実施については、職員会議での反対発言や校長への個別申入れが多数見
   られ、実施に向けての教職員間の共通の意識が当該卒業式及び入学式の
   直前まで十分に固まっているとはいえない状況にあったと考えられる。
   また、平成12年度入学式において看板が設置されるなど一定の反対行動
   があった事実も認められた。
    このような状況を勘案すると、当該卒業式及び入学式が終了する前に
   本件公文書を公開することによって、当該卒業式及び入学式に対する
   様々な立場からの反対行動や学校内外における混乱が発生することは十
   分に予想され、学校運営に関する事務又は事業の円滑な実施を著しく困
   難にするおそれがあると認められるので、条例第5条第1項第5号に該
   当すると判断する。
(4)その他
   異議申立人は、前記2(2)イ(イ)から(カ)までに記載したとおり、
  他の論点についても主張しているが、当審査会は、公文書の公開の請求に
  対する決定の当否について実施機関から意見を求められているのであり、
  前記2(2)イ(イ)から(カ)までの異議申立人の主張の当否について
  は、当審査会は意見を述べる立場にない。
(5)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開す
   ることのできない情報が記載されている場合において、それらを容易に、
   かつ、公文書の閲覧又は写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理
   的に分離できるときは、公開できない部分を除いて公開をしなければな
   らないと規定している。
  イ 当審査会は、本件公文書について、部分公開できるかどうかについて
   も審議したが、本件公文書は、その性質上一体のものとして取り扱われ
   るべきものであると考えられるので、条例第5条第2項の「容易に、か
   つ、公文書の閲覧又は写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理的
   に分離できるとき」に該当しないものと判断する。

5 審査会の処理経過

  当審査会の処埋経過は、別紙のとおりである。

別紙
                審査会の処理経過

年月日   

処理内容

 平成12年2月15日

○諮問

       2月22日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

       3月22日

○実施機関から非公開理由説明書を受理

       3月23日

○異議申立人に非公開等理由説明書を送付し、非
 公開等理由説明書に対する意見書の提出を要求

 平成13年4月26日
   (第1回部会)

○審議

       5月30日
   (第2回部会)

○審議

       7月25日
   (第3回部会)

○審議

       8月8日
   (第4回部会)

○審議

       8月13日
   (第199回審査会)

○審議

           神奈川県情報公開審査会委員名簿
                          (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考    

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)    

 

小林 重敬

横浜国立大学教授       

会長職務代理者

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)    

部会員

玉巻 弘光

東海大学教授         

 

千葉 準一

東京都立大学教授       

部会員

堀部 政男

中央大学教授         

会長(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長 

 

        (平成13年8月28日現在)(五十音順)

本文ここまで
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