答申第85~101号

掲載日:2017年12月1日

答申第85号~第101号

                         平成13年11月14日

神奈川県教育委員会
委員長 櫻井 義英 殿

              神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

   行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 平成12年11月16日付けで諮問された平成13年度特定の県立高等学校入学
者選抜における「重視する内容の選考基準」非公開の件(諮問第135号、第136
号、第137号、第138号及び第139号)及び平成13年度特定の県立高等学校入
学者選抜における「重視する内容の選考基準」不存在の件(諮問第140号、第
141号、第142号、第143号、第144号、第145号、第146号、第147号、第
148号、第149号、第150号及び第151号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論

1.    平成13年度県立高等学校入学者選抜における「重視する内容の選考基準」
が請求時に存在した県立高等学校について、処分時において非公開とした
ことは、妥当である。

  1. 平成13年度県立高等学校入学者選抜における「重視する内容の選考基準」
    が請求時に存在しないとした県立高等学校について、処分時において公開
    を拒んだことは、相当である。

2 不服申立人の主張要旨

(1)不服申立ての趣旨

  不服申立ての趣旨は、特定の17の県立高等学校に係るそれぞれの平成13年
度県立高等学校入学者選抜における「重視する内容の選考基準」(以下「本
件行政文書」という。)に関して、神奈川県教育委員会(以下「教育委員会」
という。)が、平成12年9月18日付けで、このうち5つの県立高等学校につ
いては非公開とし、12の県立高等学校については文書不存在を理由として、
公開を拒否した処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める、とい
うものである。

(2)不服申立ての理由

 不服申立人の主張を総合すると、実施機関が神奈川県情報公開条例(以下
「条例」という。)第5条第4号に該当するとして非公開とした理由は極め
て不十分なもので、この理由に基づく本件処分は不当であることから、本件
行政文書は、公開されるべきであるというものである。

  ア 条例第5条第4号該当の点について

条例第5条第4号ア「監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、
正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易
にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」について、「かながわの情
報公開ハンドブック」(平成12年4月)では、「『支障』の程度について
は、名目的なものでは足りず、実質的なものであることが必要であり、『
おそれ』についても、抽象的な可能性では足りず、蓋然性が必要である」
と定めている。したがって、本件についても非公開とするためには、入学
試験事務の適正な遂行に実質的な支障を及ぼす「蓋然性」が必要である。

  イ 本件行政文書の不存在について

平成13年度入学者選抜における重視する内容については既に事前公表さ
れていること、また17校中5校の公開拒否決定理由が文書不存在ではない
ことから考えると、文書不存在として公開拒否した12校においても本件行
政文書が存在していた可能性は十分にある。
 県立高等学校入学者選抜は、極めて公共性が高く、社会的意義の大きい
重要な行政事務であるが、その運営主体である高等学校において、「重視
する内容の選考基準」が決定され、文書化される時期が入試当日直前とは
到底考えにくい。「重視する内容の選考基準」の適用には間違いが生ずる
ことはあってはならないから、相当の時間と労力を割いて決定し、決定後
は相当の期間と手間をかけて関係職員一同への解説、趣旨徹底がなされる
はずである。

  ウ 時限性公開について

 本件請求に対する公開拒否決定通知書上の「時限性公開」欄記載の日付
は平成13年4月1日となっている。しかし、入学試験後とか合格発表後とい
う時期であればまだ理解できるが、4月1日についての根拠が不明である。

  エ その他

  (ア)一部の県立高等学校においては、平成13年度の入学者選抜における「
    重視する内容の選考基準」が記載されている資料を学校説明会で配布し
    ており、一律に非公開とする実施機関の説明は矛盾する。
     また、こうした資料が学校説明会で配布された場合、学校説明会の案
    内を学区内の中学校に限定する場合等もあり、その案内方法によっては、
    学校説明会で配布された資料の存在さえ知らない父兄がいることになる。
    これでは、学校説明会に出席した人としない人の間に不公平が生ずる。

  (イ)実施機関は、非公開等理由説明書において、本件行政文書を公開する
    と、受検生間に不公平が生じたり、恣意的な行為が行われるというが、
    逆に、本件行政文書を非公開とすることは、受検生を選抜する側に恣意
    的な裁量権を与えることになり、情実入試等の大きな弊害をもたらす危
    険があるほか、「重視する内容の選考基準」が非正規な形や不正確な内
    容で漏洩、流布する危険も考えられ、受検生の公平な競争を阻害するお
    それがあるのではないか。

  (ウ)本県においては、県立高等学校の入学者選抜に関して、各校が定める
    「重視する内容の選考基準」のほかに、全校に共通するいわゆる「56%
    枠」の選考基準があるが、これについては事前に公開し、詳細に解説し
    ている。これは、「56%枠」の選考基準を事前に公開しても、選抜にお
    ける公平性が損なわれ、各学校が意図した受検生に対する正確な評価・
    判断ができなくなるおそれがないことの証拠である。したがって、本件
    行政文書についても、かかるおそれがないことは明らかであることから、
    公開されるべきである。


  (エ)この数年、教育委員会は、特色づくり・魅力づくりをキーポイントと
    して、県立高等学校の改革に邁進しており、各高等学校とも特色ある教
    育を実施し、他校との差別化を図り、魅力を高めるため、入学後のカリ
    キュラム見直しに尽力している。
     入学選抜制度の改編もその動きと無関係ではなく、「重視する内容の
    選考基準」は、各高等学校が掲げる特色づくり・魅力づくりのための教
    育方針、カリキュラムの象徴であり、受検生には告知されて当然である。
    その公開は、教育委員会の目指す「多様な教育機会を提供し、生徒の個
    性を活かす教育を実現する」道の第一歩ともいえる。本件に対する公開
    拒否決定は、自ら歩まんとする道を自ら閉ざさんとする矛盾に満ちた行
    為であり、理解に苦しむところである。
     また、この4月に教育委員会が出した「これからの入学者選抜制度を
    考えるために」という冊子の中に総合的選考に触れている部分があるが、
    ここでは、「具体的な選考の方法がわからないなどの指摘も多くあるこ
    とから、選考の方法を明確にしていくことが求められている」といって
    いる。

3 実施機関(教育庁教育部高校教育課)の説明要旨

(1)本件行政文書の概要等について

   本件行政文書は、特定の県立高等学校17校の平成13年度入学者選抜におけ
  る「重視する内容の選考基準」である。選考に当たって重視する内容は、各
  高等学校によって異なり、平成12年7月発行の「平成13年度神奈川県公立高
  等学校入学者選抜募集案内」により既に公表されている。
   また、「重視する内容の選考基準」は、各高等学校ごとに作成されている
  ことから、作成時期も高等学校により異なり、請求時点においては、5校が
  作成済みであり、12校は未作成であった。

(2)条例第5条第4号該当性について

  ア 平成9年度の高等学校入学者選抜制度の改正により、学力検査の数値だ
   けでなく、受検生の学習に対する意欲、関心、興味、個性等をいかに評価
   するかという観点から各学校ごとに選考に当たって重視する内容を定め、
   これを公表している。
    しかし、「重視する内容の選考基準」については、選考が終了していな
   い段階で公開すれば、事前に情報を知り得た受検生に恣意的な行為を許し
   てしまうなど選抜における公平性が損なわれ、各高等学校が意図する受検
   生に対しての正確な評価、判断ができなくなるおそれがある。

  イ また、高等学校の入学者選抜は、公平でなければならないことから、本
   来、選考基準は、一斉に公表されるべき情報である。したがって、情報公
   開請求により「重視する内容の選考基準」を公開すると、当該請求者だけ
   がその情報を知り得ることになり、公平でなければならない入学選抜に不
   公平を生ずることとなる。
    さらに、「重視する内容の選考基準」は各高等学校により作成時期が異
   なることから、請求時点において「重視する内容の選考基準」が作成され
   ている一部の高等学校が個々の情報公開請求によりそれぞれ個別に公開す
   ると、既に決定していた志望校を変更するなど、中学校の進路指導に著し
   い混乱を生ずるおそれがある。

  ウ 以上のことから、本件行政文書は、条例第5条第4号に該当する。

(3)時限性公開について

   請求された年度の入学者選抜業務の終了後においては、上記(2)に記載
  した理由がなくなると考えられるので、平成13年4月1日以降であれば公開
  できるとしたものである。
   なお、本件行政文書は、現在、県政情報センターに配架し、一般に公表し
  ている。

4 審査会の判断理由

(1)判断に当たっての考え方

   実施機関は、本諮問案件に係る行政文書公開拒否決定通知書の中で、入学
  試験事業が完了する平成13年4月1日以降であれば、本件行政文書を公開す
  ることができる旨を不服申立人に伝えていることが認められる。したがって、
  本諮問案件は、行政文書の公開を拒む理由がなくなる時期をあらかじめ明示
  した時限性公開に係る事案である。
   当審査会では、諮問後の新たな事実状態の変動をも考慮して、答申時の状
  況を基に諮問案件の審議を行っている。こうした考え方をとると、本諮問案
  件の場合は、既に本件行政文書を公開することができる時期が到来し、一般
  にも公表されていることから、不服申立ての利益がないと考えることもでき
  る。
   しかし、本件不服申立てが、一定の時期が到来する前に本件行政文書を公
  開することにより、当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそ
  れがあるとして非公開としたことの是非の判断を求めるものであることなど
  を考慮すると、本諮問案件においては処分時の事実状態を基に審議すること
  が適当であると判断する。

(2)審査会における審査方法等

   本諮問案件に係る公開請求は、行政文書公開請求書に17の県立高等学校名
  を記載することにより行われた。これに対して、教育委員会は、それぞれの
  県立高等学校ごとに公開拒否決定を行ったことから、本件不服申立てに対し
  ても、公開拒否決定処分ごとに17件の諮問がなされている。
   しかし、当審査会は、これら17の諮問案件については、請求の内容、文書
  の類似性、判断の共通性等を踏まえ、併合して調査審議することとする。

(3)本件行政文書について

  ア 本県における県立高等学校の入学者選抜では、入学定員の56%を中学校
   の学習成績(調査書の学習の記録)と学力検査(入学試験)の結果により、
   上位から選抜し、次に第2希望の入学枠20%を含めた入学定員の44%につ
   いて、選考に当たって重視する内容に基づき、調査書及び学力検査の結果
   を活用して、総合的に選考することとしている。
    この選考に当たって重視する内容は、各高等学校によって異なり、また
   年度により変更される場合もあることから、各年度ごとに作成する「神奈
   川県公立高等学校入学者選抜募集案内」という冊子により事前に公表して
   おり、「平成13年度神奈川県公立高等学校入学者選抜募集案内」は、平成
   12年7月に発行されている。

  イ 本件行政文書は、特定の県立高等学校17校において、それぞれの高等学
   校で作成されていることから、作成時期も各高等学校によって異なり、不
   服申立人が請求した時点においては、5校が作成済みであり、12校は未作
   成であったとされている。ただし、現在では、本件行政文書はすべて県政
   情報センターに配架され、公表されている。

(4)条例第5条第4号該当性について

  ア 条例第5条第4号は、「県の機関又は国等の機関が行う事務又は事業に
   関する情報であって、公開することにより、次に掲げるおそれその他当該
   事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすお
   それがあるもの」は非公開とすることができるとして、アからオまでの各
   規定においてその典型を例示している。

  イ 本号に掲げられている情報は、該当する情報の典型的な例を示すもので
   あり、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂
   行に支障を及ぼすおそれがあるもの」には、これらに類似し、又は関連す
   る情報も含まれるものと解される。

  ウ 実施機関は、「重視する内容の選考基準」については、選考が終了して
   いない段階で公開すれば、事前に情報を知り得た受検生に恣意的な行為を
   許すなど、選抜における公平性が損なわれ、各学校が意図する受検生に対
   しての正確な評価、判断ができなくなるおそれがあるとしている。
    しかし、事前に情報を知り得た受検生に恣意的な行為を許すという実施
   機関の説明は、中学校から高等学校に提出される調査書が、中学校3年の
   2学期までの状況を基に作成されていることを考慮すると、その可能性は
   極めて低いと考えられる。

  エ また、実施機関は、「重視する内容の選考基準」の作成時期が各高等学
   校により異なることから、個々の情報公開請求によりそれぞれ個別に公開
   すると、当該請求者だけがその情報を知り得ることになり、公平でなけれ
   ばならない入学選抜に不公平を生じ、さらに、中学校においては、既に決
   定している志望校を変更するなど、進路指導に著しい混乱を生ずるおそれ
   があるとしている。
    当審査会が「重視する内容の選考基準」の作成について調査したところ、
   各高等学校では、通常、校内に入学者選抜に係る委員会を組織して「重視
   する内容の選考基準」の案を検討した上、その結果を職員会議に提案し、
   校長が承認して決定していることが認められる。
    また、本件行政文書は、9月から入学試験直前の2月までの6か月にわ
   たる期間に逐次作成されており、各高等学校により作成時期が異なること
   が認められる。
    このように、「重視する内容の選考基準」の作成は、各高等学校に任さ
   れており、入学者選抜に係る委員会や職員会議における検討の進捗状況に
   左右される以上、作成時期が異なることになると考えられる。
    したがって、個々の情報公開請求に基づき、「重視する内容の選考基準」
   が既に作成されている一部の高等学校が公開することにより、中学校にお
   ける進路指導に支障が生ずる可能性は否定できず、入学者選抜に関する事
   務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められるので、本件行政
   文書は、条例第5条第4号に該当すると判断する。

  オ なお、本諮問案件の審議中に、実施機関が平成15年度入学者選抜から
   「重視する内容の選考基準」を一斉に公表すると決定したことが明らかに
   なった。
    当審査会としても、「重視する内容の選考基準」については、条例第24
   条(情報の提供)の趣旨を踏まえ、一斉に事前公表すべきものと考える。

(5)文書不存在について

   当審査会は、実施機関が本件行政文書を不存在とした12校について、職員
  会議録等でその作成時期を確認したところ、いずれの高等学校においても請
  求時点以後に作成されていることが認められる。

(6)その他

  ア 不服申立人は、平成13年度の「重視する内容の選考基準」について、本
   諮問案件に係る17校以外の高等学校の中には、入学者選抜の前に開催され
   た学校説明会において公表した事実があり、一律に非公開とする実施機関
   の説明は矛盾すると主張する。

  イ この点について当審査会が調査したところ、特定の県立高等学校2校の
   学校説明会において、結果として実施機関の意図に沿わない対応や説明が
   不十分であったケースが認められる。しかし、これをもって直ちに、実施
   機関の説明が矛盾するものであって、本件行政文書を公開すべきであると
   することはできないと考える。

  ウ 当審査会は、行政文書公開請求に対する決定の当否について実施機関か
   ら意見を求められているのであり、不服申立人のその他の主張の当否につ
   いては、意見を述べる立場にない。

6 審査会の処理経過

  当審査会の処埋経過は、別紙のとおりである。

別紙

審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成12年11月16日

○諮問

      12月26日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

平成13年 2月5日

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

       2月15日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付し、非公開等理由説明書に対する意見書の提出を要求

       3月29日

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する意見書を受理

      4月9日

○実施機関に非公開等理由説明書に対する意見書を送付

      4月26日

        (部会)

○審議

       5月30日

        (部会)

○不服申立人から意見を聴取

○審議

      7月25日

        (部会)

○審議

      8月8日

        (部会)

○審議

      8月13日

  (第199回審査会)

○審議

      8月29日

        (部会)  

○審議

      9月17日

        (部会)

○審議

      10月24日

        (部会)

○審議

  神奈川県情報公開審査会委員名簿

                        (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

部会員

玉巻 弘光

東海大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

部会員

堀部 政男

中央大学教授

会長

(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長

 

                  (平成13年11月14日現在)(五十音順)

本文ここまで
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