答申第107号

掲載日:2017年12月1日

答申第107号

 

                             平成14年1月10日

 

 

 神奈川県教育委員会 委員長 櫻井 義英 殿

 

              神奈川県情報公開審査会 会長  堀部 政男

 

 

 

    公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 

 

 平成12年2月16日付けで諮問された公立小学校教員に係る事実確認に関する書類
一部非公開の件(諮問第95号)について、次のとおり答申します。

 

 

 

 

1 審査会の結論
  公立小学校教員の行為の事実確認に関する依頼文書は、別表に掲げる部分を除い
 て公開すべきである。

 

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨
   異議申立ての趣旨は、特定の市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)
  が神奈川県教育委員会(以下「県教育委員会」という。)に提出した公立小学校
  教員(以下「本件教員」という。)に係る事故報告書に関して、県教育委員会が
  市教育委員会に対して再度本件教員の行為の内容等についての報告を依頼した文
  書(以下「本件公文書」という。)を、県教育委員会が平成12年1月25日付けで
  一部非公開とした処分のうち、本件教員の氏名を除く部分を非公開とした処分の
  取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、県教育委員会が本件公文書は個人に関する情
  報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得ること及び県の機関が行う
  事務又は事業に関する情報であって、公開することにより、反復継続される同種
  の事業の公正かつ円滑な実施を著しく困難にするおそれがあることから、神奈川
  県の機関の公文書の公開に関する条例(以下、原則として「条例」という。)第
  5条第1項第1号及び第5号に該当するとした一部非公開の処分は、次に掲げる
  理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 条例第5条第1項第1号及び第5号該当の点について
    個人情報である本件教員の氏名を非公開としたことに異議はない。しかし、
   それ以外の部分の非公開理由には具体性がなく、理解できない。条例の規定と
   の整合性のとれた情報公開を行うべきである。
  イ その他
  (ア)異議申立人は市教育委員会の事故報告書を入手しており、事故当初のマス
    コミの報道内容に照らしても、当該事故の概要は、ほぼ当該事故報告書の記
    載のとおりであろうと考えていた。しかし、県教育委員会は当該事故報告書
    だけでは事故に係る事実が判明しないと判断したのであるから、本件非公開
    部分に記載されていると思われる県教育委員会が疑問とした点が分からない
    以上、我々県民も事故の真相は分からないということになる。当該事故は教
    育の現場で起きたものであり、場合によっては市に賠償責任が生じる可能性
    があることから、事実を的確に把握するために本件公文書の公開を求める。
  (イ)本件非公開部分が公開されることによって、非違行為に関する県教育委員
    会の考えが明らかになり、今後、市教育委員会が作成する事故報告書が適切
    なものか否かを確認することに寄与する。

 

3 実施機関(教育庁管理部教職員課)の説明要旨
  実施機関の説明を総合すると、本件公文書を非公開とした理由は、次のとおりで
 ある。
(1)本件公文書について
   県教育委員会は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第37条の規定によ
  り、市町村立学校職員給与負担法第1条及び第2条に規定する職員(以下「県費
  負担教職員」という。)の任命権を有しており、県費負担教職員が服務違反行為
  を行うなどの事故が発生した場合、市町村教育委員会から提出された事故報告書
  を踏まえて当該県費負担教職員等に対して事情聴取を行い、人事考査委員会での
  検討の結果、当該県費負担教職員の責任を問う必要があると認められる場合は、
  地方公務員法第29条に基づく懲戒処分等の人事上の措置を実施している。
   本件公文書は、市教育委員会が提出した本件教員に係る事故報告書に基づいて、
  本件教員等に対して事情聴取を実施したところ、県教育委員会として本件教員に
  対して責任を問うべき非違行為の存在を確認できなかったため、市教育委員会に
  対して再度本件教員の行為の内容等について確認するように依頼した文書である。
(2)条例第5条第1項第1号該当性について
  ア 本件教員の氏名については、個人に関する情報であって、特定の個人が識別
   される情報であるので、条例第5条第1項第1号に該当する。
  イ 本件公文書は、本件教員に対して責任を問うべき非違行為の有無の確認を求
   めた文書であり、市教育委員会の見解及び事実確認に当たっての留意点として
   記載した事項を含めて、これらの情報は本件教員にとって他人に知られたくな
   い個人情報であるので、条例第5条第1項第1号に該当する。
(3)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 市教育委員会の見解は、これを公開することにより、教員の監督、指導及び
   評価を行う立場にある市教育委員会の事務の円滑な実施を著しく困難にするお
   それがある。また、県教育委員会として市教育委員会の率直な評価、見解を得
   ることができなくなり、県教育委員会が実施する懲戒処分等の人事上の措置の
   検討及び実施を著しく困難にするおそれがあるので、条例第5条第1項第5号
   に該当する。
  イ 事実確認に当たっての留意点として記載した事項は、県教育委員会が本件教
   員の行為が責任を問うべき非違行為に当たるかどうかの判断を行うための基準
   となるものであり、公開することにより、県教育委員会が実施する懲戒処分等
   の人事上の措置の検討及び実施を著しく困難にするおそれがあるので、条例第
   5条第1項第5号に該当する。

 

4 審査会の判断理由
(1)答申するに当たっての適用条例の考え方等について
  ア 神奈川県情報公開条例が平成12年3月28日に公布され、平成12年4月1日に
   施行されたが、本諮問案件は神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(昭
   和57年神奈川県条例第42号)に基づきなされた処分であるので、当審査会とし
   ては、当該条例に基づき本諮問案件を審議することとする。
  イ 閲覧等の請求に係る諾否の決定に関する異議申立てについて、実施機関が当
   審査会に諮問する趣旨は、条例第5条で規定する適用除外事項の該当性等を実
   施機関が改めて判断する際の意見を求めているものと解される。したがって、
   当該諾否の決定後に事実状態等に新たな変動があったときには、処分時の事実
   状態等によって判断しなければならない特段の事情が存在しない限り、当審査
   会は事実状態等の新たな変動をも考慮して審議できるものと考える。
(2)本件公文書について
   本件公文書は、市教育委員会が県教育委員会に提出した本件教員に係る事故報
  告書に基づいて、県教育委員会が本件教員等に対して事情聴取を実施したところ、
  県教育委員会として本件教員に対して責任を問うべき非違行為の存在を確認でき
  なかったため、県教育委員会が市教育委員会に対して再度本件教員の行為の内容
  等について確認するように依頼した文書である。本件公文書の中で、県教育委員
  会は、市教育委員会が本件教員の行為に関する事実確認を行うに当たって留意す
  べき点を5項目にわたり列挙していることが認められる。
(3)本件異議申立てについて
   本件異議申立ての対象とされているものは、非公開とされた情報のうち本件教
  員の氏名を除く部分であるので、当該部分について判断する。
(4)条例第5条第1項第1号該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号本文該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、「知る権利」の保
    障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調整し
    ながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定したものであ
    る。そして、同号本文は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別
    され、又は識別され得るもの」(以下「個人情報」という。)を非公開とす
    ることができるとしている。
     したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われるもの
    はもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含めて非公開
    とすることができることを明文をもって定めたものと解される。
  (イ)また、氏名等を削除したとしても、それ以外の部分の情報から、又はそれ
    以外の部分の情報と容易に取得し得る他の情報とを照合することにより、特
    定の個人が推測できるものであれば、当該部分については非公開とするもの
    と解される。
  (ウ)以上のことを総合的に判断すると、本件公文書のうち、事実確認に当たっ
    ての留意点として記載されている事項における本件教員に対する評価に係る
    部分は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され
    得る情報であると認められる。
     したがって、これらの情報は、条例第5条第1項第1号本文に該当すると
    判断する。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号本文に該当する情報であっても、同号ただし書ア、
    イ又はウに該当するものは、公開するとされている。
  (イ)上記ア(ウ)に掲げる情報は、条例第5条第1項第1号ただし書アの「何
    人でも法令の規定により閲覧することができるとされている情報」、同号た
    だし書イの「公表することを目的として作成し、又は取得した情報」又はウ
    の「法令の規定により行われた許可、免許、届出その他これらに相当する行
    為に際して作成し、又は取得した情報であって、公開することが公益上必要
    と認められる」情報とは認められないので、同号ただし書ア、イ又はウに該
    当しないと判断する。
(5)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、「県の機関又は国等の機関が行う検査、監査、
   取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価格、試験の問
   題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は事業の性質上、
   公開することにより、当該事務又は事業の実施の目的を失わせ、又は当該事務
   又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれのあるもの」は非公開とする
   ことができるとしている。
    この規定は、事務又は事業の性質に着目し、当該事務又は事業の円滑な実施
   を確保する観点から定められたものであり、同号前段は、本来公開になじまな
   い性格を有する情報の典型例を示したものであることから、これらの情報のほ
   か、これらに類似し、又は関連する情報についても、「その他の事務又は事業」
   に関する情報として、対象となると解される。
    また、公開することにより、反復継続される同種の事業の公正かつ円滑な実
   施を著しく困難にする情報についても、同号後段の「当該事務又は事業の実施
   の目的を失わせ、又は当該事務又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそ
   れのある」情報に含まれると解される。
  イ 本件公文書のうち、市教育委員会の見解については、教員の監督、指導及び
   評価を行う立場にある市教育委員会の事務並びに県教育委員会が行う懲戒処分
   等の人事上の措置の検討及び実施に関する情報であると認められる。
    また、事実確認に当たっての留意点として記載されている事項については、
   県教育委員会が行う懲戒処分等の人事上の措置の検討及び実施に関する情報で
   あると認められる。
  ウ しかしながら、本件公文書における市教育委員会の見解は、先に県教育委員
   会に提出された事故報告書から引用したものであると認められる。そして、事
   故報告書において市教育委員会が見解を述べることは、市教育委員会が分掌す
   る事務の執行に関するものであると解される。このことにかんがみると、公開
   することにより、直ちに市教育委員会の率直な評価及び見解を得ることができ
   なくなるとは考えられない。
    したがって、当該情報を公開することにより、教員の監督、指導及び評価を
   行う立場にある市教育委員会の事務並びに県教育委員会が行う懲戒処分等の人
   事上の措置の検討及び実施を著しく困難にするおそれがあるとは認められない。
  エ さらに、事実確認に当たっての留意点として記載されている事項は、本件教
   員の行為の詳細について具体的な報告を求めるという趣旨にとどまり、その概
   要は、市教育委員会に対する再度の報告依頼という本件公文書の性格から、容
   易に推測できるものと考えられる。
    したがって、これらの情報を公開することにより、県教育委員会が行う懲戒
   処分等の人事上の措置の検討及び実施を著しく困難にするおそれがあるとまで
   は認められない。
  オ 以上のことから、これらの情報は、条例第5条第1項第5号に該当しないと
   判断する。
(6)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開すること
   のできない情報が記録されている場合において、それらを「容易に、かつ、公
   文書の閲覧又は公文書の写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理的に分
   離できるとき」は、公開できない部分を除いて公開をしなければならないと規
   定している。
  イ 本件公文書については、当審査会が前記(4)において非公開とすることが
   妥当であると認めた部分の範囲及び内容にかんがみると、その他の情報を分離
   して公開することは、「容易に、かつ、公文書の閲覧又は公文書の写しの交付
   を求める趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」に該当すると判断す
   る。

 

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

別表

 

該当行字等

17行目 7文字目から20文字目まで

20行目 3文字目から14文字目まで

 

 備考1 行数は、文字が記載された行を上から数えたものである。
 備考2 文字数は、当該行の記載のある文字について左から数えたものである。句
    読点及び記号等の表記は1文字として数えている。

 

別紙

                審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成12年2月16日

 

○諮問

 

  12年2月22日

 

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

 

  12年3月21日

 

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

 

  12年3月23日

 

○異議申立人に非公開等理由説明書を送付

 

平成13年8月29日
 (第1回部会)

○審議

 

  13年9月18日
 (第2回部会)

○異議申立人から意見を聴取

 

  13年10月25日

 (第3回部会)

○審議

 

  13年11月8日

 (第4回部会)

○審議

 

  13年12月6日

 (第5回部会)

○審議

 

 

 

              神奈川県情報公開審査会委員名簿

 

                              (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

 

玉巻 弘光

東海大学教授

部会員

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長

部会員

                        (平成14年1月10日現在) (五十音順)

 

 

本文ここまで
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