答申第108号

掲載日:2017年12月1日

答申第108号

 

                             平成14年1月10日

 

 

 神奈川県教育委員会 委員長 櫻井 義英 殿

 

              神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

 

 

 

    公文書の閲覧等の請求拒否処分に関する異議申立てについて(答申)

 

 

 平成12年3月9日付けで諮問された公立小学校教員に係る事故報告書一部非公開
の件(諮問第96号)について、次のとおり答申します。

 

 

 

 

 

1 審査会の結論
  公立小学校教員に係る事故報告書のうち、学校名及び校長意見については、別表
 に掲げる部分を除いて公開すべきである。

 

2 異議申立人の主張要旨
(1)異議申立ての趣旨

   異議申立ての趣旨は、特定の市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)
  が神奈川県教育委員会(以下「県教育委員会」という。)に提出した公立小学校
  教員(以下「本件教員」という。)が行った体罰に関する事故報告書(以下「本
  件公文書」という。)を、県教育委員会が平成11年12月20日付けで一部非公開と
  した処分(以下「本件処分」という。)のうち、学校名、被害生徒の学年、及び
  校長意見の一部を非公開とした処分の取消しを求める、というものである。
(2)異議申立ての理由
   異議申立人の主張を総合すると、県教育委員会が本件公文書は個人に関する情
  報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得ること及び県の機関が行う
  事務又は事業に関する情報であって、公開することにより、反復継続される同種
  の事業の公正かつ円滑な実施を著しく困難にするおそれがあることから、神奈川
  県の機関の公文書の公開に関する条例(以下、原則として「条例」という。)第
  5条第1項第1号及び第5号に該当するとした一部非公開の処分は、次に掲げる
  理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 条例第5条第1項第1号該当の点について
  (ア)実施機関は、本件体罰事故が発生した学校名を非公開としているが、当該
    情報については、神奈川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)答申
    において公開すべきとの判断がなされている。非公開理由説明書によると、
    第三者情報に関する調査に対する回答の中で、市教育委員会が非公開として
    欲しい旨の意見を述べたとのことであるが、本件公文書は市から提出された
    ものであるとはいえ、県が入手した文書である以上、県の条例に則して判断
    すべきである。
  (イ)県では体罰事故報告書の収受簿を作成しており、そこには該当する学校名
    がすべて記載されているが、上記収受簿を公開請求した結果、非公開とされ
    たものは、本件体罰事故に係る学校名のみであり、また、異議申立人が過去
    に公開請求により入手した体罰事故報告書においても、学校名を非公開とし
    た事例はあまり知らない。こうした事実にかんがみると、学校名は、慣行と
    して公にされる情報であって、県教育委員会として責任の所在を明確にする
    ために、県民に公開することが予定されている情報に当たる。よって、事案
    により学校名の公開、非公開の対応が異なることは理解できない。同種の情
    報の公開又は非公開について、個別事案ごとに判断をしていたのでは、情報
    公開制度の意義が薄れてしまう。
  (ウ)実施機関は、非公開の理由として、本諮問案件には関係者が多いという特
    殊事情があり、学校名を公開するだけで本件教員が特定されると説明してい
    るが、当該市の市立小学校は20校以上あり、学校名からそのような事情の有
    無は知り得ないので、教員名を識別することは一般には不可能である。また、
    関係者からの伝聞による情報の流布は防ぎようがないのであるから、学校名
    を非公開とすることは無意味である。各学校はそれぞれ独立して経営されて
    いるので、責任の所在を明確にする意味でも、学校名は常に公開されるべき
    である。
  イ 条例第5条第1項第5号該当の点について
    校長意見を公開することにより、どのような支障が生じるのか具体的な説明
   がなく、不可解である。

 

3 実施機関(教育庁管理部教職員課)の説明要旨
  実施機関の説明を総合すると、本件公文書を非公開とした理由は、次のとおりで
 ある。
(1)本件公文書について
   県教育委員会は、市町村立学校職員給与負担法第1条及び第2条に規定する職
  員(以下「県費負担教職員」という。)が学校教育法第11条で禁止されている体
  罰を行った場合、服務監督権を有する市町村教育委員会から「市町村立学校県費
  負担教職員人事事務の手引き」に基づき、「体罰に関する事故報告書」を提出さ
  せ、懲戒処分等の人事上の措置を検討し、実施している。本件公文書は、市教育
  委員会が県教育委員会に提出した市立小学校教員が行った体罰に係るものである。
(2)条例第5条第1項第1号該当性について
  ア 体罰事故報告書の学校名については、県民の関心の高さや、県教育委員会の
   体罰防止に向けた姿勢を考慮し、原則として公開している。本件処分に際して
   は、条例の解釈及び運用の基準に規定されている「第三者情報の取扱い要領」
   に基づき、本件公文書を作成した市教育委員会に対して意見聴取を行ったが、
   当該学校の状況を熟知している市教育委員会は、本諮問案件には関係者が多い
   という特殊事情があり、学校名を公開することにより、本件教員及び被害生徒
   が特定されるおそれが極めて高く、その結果、被害生徒に悪影響を与えるとの
   意見を述べている。これを受け実施機関において検討したところ、当該情報は、
   特定の個人が識別され得る情報であるので、条例第5条第1項第1号に該当し、
   例外的に非公開とすることが適当であると判断した。
  イ 被害生徒の学年については、中学校の事案を扱った審査会答申において公開
   すべきとの判断がなされている。しかし、本件は小学校の事案であり、小学校
   においては、生徒に対する指導の大部分をクラス担任が行うものとなっている
   事実を考慮すると、当該情報を公開することにより、本件教員の担当学年が推
   測されることから、本件教員が識別されると考える。また、当該学年のクラス
   数が少ないため、公開することにより、被害生徒が識別される情報であり、ま
   た、体罰を受けたということは、被害生徒にとって他人に知られたくない個人
   情報であるので、当該情報は条例第5条第1項第1号に該当する。
  ウ 校長意見のうち、本件教員に対する評価及び本件教員の休暇状況に関する情
   報は、本件教員にとって他人に知られたくない個人情報であり、条例第5条第
   1項第1号に該当する。
(3)条例第5条第1項第5号該当性について
   校長意見は、これを公開することにより、教員の監督、指導及び評価を行う立
  場にある校長の事務の円滑な実施を著しく困難にするおそれがある。また、県教
  育委員会として校長の率直な評価、見解を得ることができなくなり、県教育委員
  会が実施する懲戒処分等の人事上の措置の検討及び実施を著しく困難にするおそ
  れがあるので、条例第5条第1項第5号に該当する。

 

4 審査会の判断理由
(1)答申するに当たっての適用条例の考え方等について
  ア 神奈川県情報公開条例が平成12年3月28日に公布され、平成12年4月1日に
   施行されたが、本諮問案件は神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(昭
   和57年神奈川県条例第42号)に基づきなされた処分であるので、当審査会とし
   ては、当該条例に基づき本諮問案件を審議することとする。
  イ 閲覧等の請求に係る諾否の決定に関する異議申立てについて、実施機関が当
   審査会に諮問する趣旨は、条例第5条で規定する適用除外事項の該当性等を実
   施機関が改めて判断する際の意見を求めているものと解される。したがって、
   当該諾否の決定後に事実状態等に新たな変動があったときには、処分時の事実
   状態等によって判断しなければならない特段の事情が存在しない限り、当審査
   会は事実状態等の新たな変動をも考慮して審議できるものと考える。
(2)本件公文書について
   本件公文書は、市教育委員会が県教育委員会に提出した本件教員が行った体罰
  に関する事故報告書であり、教育庁管理部教職員課において、平成11年11月19日
  付けで回覧されたものである。
(3)本件異議申立てについて
   本件異議申立ての対象とされているものは、非公開とされた情報のうち、学校
  名、被害生徒の学年、及び校長意見の一部であるので、当該部分について判断す
  る。
(4)条例第5条第1項第1号該当性について
  ア 条例第5条第1項第1号本文該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号は、個人を尊重する観点から、「知る権利」の保
    障と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調整し
    ながら、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定したものであ
    る。そして、同号本文は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別
    され、又は識別され得るもの」(以下「個人情報」という。)を非公開とす
    ることができるとしている。
     したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われるもの
    はもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含めて非公開
    とすることができることを明文をもって定めたものと解される。
  (イ)また、氏名等を削除したとしても、それ以外の部分の情報から、又はそれ
    以外の部分の情報と容易に取得し得る他の情報とを照合することにより、特
    定の個人が推測できるものであれば、当該部分については非公開とするもの
    と解される。
  (ウ)以上のことを総合的に判断すると、本件公文書中、実施機関が非公開とし
    た情報のうち、次に掲げるものは、個人に関する情報であって、特定の個人
    が識別され、又は識別され得る情報であると認められる。
    a 校長意見のうち、本件教員の氏名
    b 校長意見のうち、本件教員の休暇状況に係る部分
    c 校長意見のうち、本件教員に対する評価に係る部分
     したがって、これらの情報は、条例第5条第1項第1号本文に該当すると
    判断する。
  (エ)次に、本件教員が所属する学校名について検討する。実施機関は、本諮問
    案件には関係者が多く存在するため、学校名を公開することで本件教員が容
    易に特定されるとの理由から、また、学校名が明らかになることで被害生徒
    には自らに関する事案であることが分かり、いまだ不登校の状況が改善され
    ない被害生徒に対して悪影響を与えるとの理由から、例外的に非公開とした
    ものであると説明している。
     しかしながら、学校名を公開することにより、本件教員又は被害生徒が一
    般に識別され得るとは解されず、本号に規定する特定の個人が識別され、又
    は識別され得る情報に当たるとはいえないので、学校名は、条例第5条第1
    項第1号本文に該当しないと判断する。
  (オ)被害生徒の学年については、1学年の生徒数が他校と比較して少数であっ
    たとしても、一般的には、その学年に属する相当数の生徒のうちの誰である
    かは知り得ないので、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報である
    とは認められない。しかし、本諮問案件は、小学校の給食時間等の中で発生
    した体罰に係る事案であり、小学校においては大部分の教科等についてクラ
    ス担任が指導するものとなっている事実を考慮すると、当該情報を公開する
    ことにより、本件教員の担当学年が推測されると考えられることから、本件
    教員が識別され、又は識別され得るものと認められる。
     したがって、本諮問案件では、当該情報は、条例第5条第1項第1号本文
    に該当すると判断する。
  イ 条例第5条第1項第1号ただし書該当性について
  (ア)条例第5条第1項第1号本文に該当する情報であっても、同号ただし書ア、
    イ又はウに該当するものは、公開するとされている。
  (イ)上記ア(ウ)に掲げる情報は、条例第5条第1項第1号ただし書アの「何
    人でも法令の規定により閲覧することができるとされている情報」又はウの
    「法令の規定により行われた許可、免許、届出その他これらに相当する行為
    に際して作成し、又は取得した情報であって、公開することが公益上必要と
    認められる」情報とは認められないので、同号ただし書ア又はウに該当しな
    いと判断する。
  (ウ)条例第5条第1項第1号ただし書イ該当性について
    a 条例第5条第1項第1号ただし書イの「公表することを目的として作成
     し、又は取得した情報」は、広報紙等を通じて積極的に広く県民に周知す
     る情報だけでなく、条例第2条前段が「公文書の閲覧及び公文書の写しの
     交付を求める権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用する
     ものとする」と規定している趣旨から考えると、事務事業の執行上又は行
     政の責務として県民の要望に応じて提供することが予定されているものを
     含むと解される。
    b 教員の体罰行為は、学校教育法第11条により行ってはならないとされる
     非違行為であるが、生徒に対する指導の過程でなされた行為であることか
     ら、教員の職務の執行に関する行為であり、当該行為に関する情報は、公
     務員が分掌する事務の執行に関する情報であると解される。
      しかしながら、本諮問案件については、教育現場に与える影響を考慮す
     ると、当該情報を公開した場合、本件教員が教員として今後の教育活動を
     継続する上で、大きな障害となることが予想される。
      したがって、本諮問案件では、本件教員が識別され、又は識別され得る
     本件教員の氏名及び被害生徒の学年に係る情報については、行政の責務と
     して県民の要望に応じて提供することが予定されているものとまではいえ
     ず、条例第5条第1項第1号ただし書イに該当しないと判断する。
    c また、上記ア(ウ)b及びcに掲げる情報は、「公表することを目的と
     して作成し、又は取得した情報」であるとは認められず、条例第5条第1
     項第1号ただし書イに該当しないことは明らかである。
(5)条例第5条第1項第5号該当性について
  ア 条例第5条第1項第5号は、「県の機関又は国等の機関が行う検査、監査、
   取締等の計画及び実施細目、争訟及び交渉の方針、入札の予定価格、試験の問
   題その他の事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は事業の性質上、
   公開することにより、当該事務又は事業の実施の目的を失わせ、又は当該事務
   又は事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれのあるもの」は非公開とする
   ことができるとしている。
  イ 本号に例示されている情報は、該当する情報の典型的な例を示すものであり、
   「その他の事務又は事業に関する情報」には、これらに類似し、又は関連する
   情報も含まれるものと解される。
  ウ 校長意見の内容は、本件教員の対応や体罰防止への取組等に関して述べられ
   ているものであることが認められる。実施機関は、当該情報のうち、本件教員
   に対する評価に係る部分を公開することにより、教員の監督、指導及び評価を
   行う立場にある校長の事務の円滑な実施を著しく困難にするおそれがあると説
   明している。
    また、当該情報を公開することにより、県教育委員会が校長の率直な評価を
   得ることができなくなり、懲戒処分等の人事上の措置の検討及び実施を著しく
   困難にするおそれがあるので、条例第5条第1項第5号に該当すると説明して
   いる。
    しかしながら、校長が意見を述べることは、本来、校長が分掌する事務の執
   行に関するものであるといえる。また、校長意見の内容にかんがみると、公開
   することにより、直ちに校長の率直な評価及び見解を得ることができなくなる
   とまでは解されない。
    したがって、当該情報を公開することにより、実施機関が行う懲戒処分等の
   人事上の措置の検討及び実施を著しく困難にするおそれがあるとは認められな
   い。
  エ 以上の理由から、当該情報は、条例第5条第1項第5号に該当しないと判断
   する。
(6)条例第5条第2項該当性について
  ア 条例第5条第2項は、閲覧等の請求に係る公文書に、部分的に公開すること
   のできない情報が記録されている場合において、それらを「容易に、かつ、公
   文書の閲覧又は公文書の写しの交付を求める趣旨を失わない程度に合理的に分
   離できるとき」は、公開できない部分を除いて公開をしなければならないと規
   定している。
  イ 本件公文書については、当審査会が前記(4)において非公開とすることが
   妥当であると認めた部分の範囲及び内容にかんがみると、その他の情報を分離
   して公開することは、「容易に、かつ、公文書の閲覧又は公文書の写しの交付
   を求める趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」に該当すると判断す
   る。

 

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

別表

 

項目名

該当行字等

校長意見

本件教員の氏名

6行目 16文字目から24文字目まで

10行目 27文字目から最後まで

11行目 1文字目から10文字目まで

 

 備考1 行数は、文字が記載された行を上から数えたものである。
 備考2 文字数は、当該行の記載のある文字について左から数えたものである。句
    点及び記号等の表記は1文字として数えている。

 

 

別紙

               審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成12年3月9日

 

○諮問

 

  12年3月16日

 

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

 

  12年4月18日

 

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

 

  12年4月27日

 

○異議申立人に非公開等理由説明書を送付

 

平成13年8月29日
 (第1回部会)

○審議

 

  13年10月3日

 

○異議申立人から非公開等理由説明書に対する意見書を受理

 

  13年10月5日

 

○実施機関に非公開等理由説明書に対する意見書を送付

 

  13年10月12日

 

○指名委員により異議申立人から意見を聴取
○指名委員により実施機関の職員から非公開等理由説明を聴
 取

  13年10月25日
 (第3回部会)

○審議

 

  13年11月8日
 (第4回部会)

○審議

 

  13年12月6日
 (第5回部会)

○審議

 

 

 

              神奈川県情報公開審査会委員名簿

 

                              (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

 

玉巻 弘光

東海大学教授

部会員

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長

部会員

                          (平成14年1月10日現在) (五十音順)

 

 

本文ここまで
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