答申第113号

掲載日:2017年12月1日

            

答申第113号

        平成14年5月13日

 

神奈川県知事 岡崎 洋 殿

           神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

   行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 平成13年3月22日付けで諮問された鎌倉都市計画市街化区域及び市街化調
整区域に関する素案不存在の件(諮問第181号)について、次のとおり答申し
ます。

1 審査会の結論

  昭和44年12月に示された鎌倉都市計画市街化区域及び市街化調整区域に
 関する素案を実施機関が保存していないとして、公開を拒んだことは、相当
 である。

2 不服申立てに至る経過
(1)不服申立人は、神奈川県情報公開条例(平成12年条例第26号。以下「条
  例」という。)第9条の規定に基づき、平成13年1月17日付けで神奈川県
  知事(以下「知事」という。)に対して、昭和44年12月に示された鎌倉都
  市計画市街化区域及び市街化調整区域に関する素案(ただし、当該素案の
  前段階で作成されたとされる第一次素案の趣旨。以下「本件行政文書」と
  いう。)について、行政文書公開請求(以下「本件公開請求」という。)を
  した。
(2)これに対し、知事は、平成13年1月31日付けで、本件行政文書を保存
  していないとして公開を拒む決定(以下「本件処分」という。)をした。
(3)不服申立人は、平成13年3月8日付けで知事に対して、行政不服審査法
  第4条の規定に基づき、本件処分の取消しを求めるという趣旨の不服申立
  てをした。

3 不服申立人の主張要旨
  不服申立人の主張を総合すると、次のとおりである。
(1)市街化区域と市街化調整区域の決定(以下「線引き」という。)は、都
  市計画の最も基本となる制度である。しかも、昭和44年に行われた当初の
  線引きに関する手続文書は後の線引き見直しの基礎となる文献であるから、
  都市計画制度が続く限り永年保存すべき重要な公文書であって、不存在で
  あるわけがない。万一不存在であれば、廃棄した責任は重大である。
(2)線引き手続においては、第一次素案、第二次素案(県素案)、第三次素
  案(原案)及び県確定案という形で県と市町村の間において調整した過程
  を経て、線引き計画が確定し、告示される。当初線引き手続においては、
  現在の手続とは異なり、県が第一次素案を作成し、市町村に提示すること
  になっていた。県が自ら作成した重要文書を廃棄したとは考えられない。
(3)実施機関は、保存すべき関係行政文書の総体は都市計画法(以下「法」
  という。)に定められた縦覧図書と同一であるといっているが、これは法定
  縦覧図書と保存文書を故意にあいまいにしたものであり、県民を愚弄して
  いるか、地方公務員法に規定されている職務専念義務を無視している。
(4)線引きの一連文書は、線引き見直し作業が制度上なくならない限り完結
  することはなく、継続事務として「保管文書」の扱いとなるため、現用の
  行政文書として担当課に保管されるべきものである。事務が完結したとし
  て「保存文書」にされるいわれはない。
(5)不服申立人が、平成13年5月18日に公文書館において確認した鎌倉市
  の都市計画書類ファイル(以下「本件ファイル」という。)には、目次がな
  く、都市計画が決定するまでの経過を知る資料のみならず、法で縦覧図書
  として定められている「市街化区域と市街化調整区域を区分けした総括図」
  ですら保存されていなかった。線引きが決定するまでの経過説明や変更理
  由等が文書として残っていないのは全く不可解である。ちなみに、逗子市
  では第一次素案からの情報が今も公開されている。
(6)平成13年1月26日から3月9日まで、都市計画課職員が、公文書館か
  ら本件ファイルの貸し出しを受けて、調査をしていたにもかかわらず、不
  服申立人は5月18日までその事実を知らされなかったため、何度も無駄足
  をさせられた。また、そのほかにも、不服申立人が異議申立書を提出した
  日の夜に「異議申立書の件で自宅に行って説明したい」旨電話で申し入れ
  てくるなど、都市計画課の職員には疑念を抱かせる対応が見られた。
(7)神奈川県情報公開審査会規則(以下「審査会規則」という。)第8条では、
  審査会の調査権限として、「諮問をした実施機関に対し、条例第10条第1
  項の規定による諾否の決定に係る行政文書に記録されている情報の内容を
  審査会の指定する方法により分類又は整理した資料を作成し、審査会に提
  出するよう求めることができる」と規定している。審査会は上記の調査権
  限に基づいて調査を実施し、実施機関から本件行政文書を出させてほしい。

4 実施機関(県土整備部都市計画課)の説明要旨
  実施機関の説明を総合すると、次のとおりである。
(1)実施機関において「素案」という場合、一般的には公聴会で提示される
  都市計画の素案(以下「都市計画素案」という。)を指すが、本件行政文書
  の内容について請求時に不服申立人に確認したところ、既に都市計画素案
  は承知しており、公開を求めているのは、都市計画素案の前段階において
  作成されたとされる「第一次素案」であるとのことであった。
(2)不服申立人のいう第一次素案は、昭和44年に初めて全県一斉に線引きを
  行うに当たり、都市計画素案を作成する過程の初期段階において、県と鎌
  倉市(以下「市」という。)との間で調整、検討を行うために県が提示した
  資料であると思われる。第一次素案は、法第14条第1項に規定する縦覧図
  書ではないため、法定の保存文書には該当しない。また、本件行政文書は、
  当時の文書管理規程に基づいて管理され、現在は神奈川県行政文書管理規
  則(以下「文書管理規則」という。)等に基づいて管理されることになるが、
  文書管理規則等に基づいて保存されている文書の中には存在しない。した
  がって、おそらく当時保存する必要がないとして廃棄されたと考えられ、
  現在、第一次素案は保存されていない。
(3)実施機関としては、法定縦覧図書である総括図、計画図、計画書につい
  ては保存すべきであると考えているが、それ以外の都市計画決定に至る過
  程での事務的資料のすべてを半永久的に保管、保存する必要はないと考え
  ている。第一次素案は、都市計画素案を作成する過程の初期段階で、市町
  との調整を図るために県が提示した案であり、素案の素案ともいうべき未
  成熟なものであって、半永久的に保管、保存する必要はないものである。
(4)本件ファイルに目次が付いていないとの不服申立人の指摘については、
  目次は、すべての保存ファイルに付けているわけではない。また、都市計
  画決定までの経過を知る資料が保存されていないとの指摘については、都
  市計画決定に必要な認可等の法手続に関する文書については保存している。
  ただ、縦覧図書として本来存在するはずの総括図が保存されていないとの
  点については、指摘のとおりであり、その原因は不明であるが、不服申立
  人が公文書館で閲覧した際には、保存されていなかった。現在は、市から
  借用した総括図から写しを作成し、保存している。
(5)都市計画課職員の対応については、誤解や行き違いがあったようにも思
  われるが、都市計画課が本件ファイルを持っていることを5月18日まで全
  く知らされなかったという不服申立人の主張は、事実と違う。少なくとも
  2月27日に不服申立人が来館した際に、本件ファイルが都市計画課にある
  ことを公文書館職員が説明している。

5 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
   当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会
  審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は実施機関の職員
  から口頭による説明を聴取した。また、審査会において、不服申立人から
  口頭による意見を聴取した。それらの結果も踏まえて次のとおり判断する。
(2)本件行政文書の存否について
  ア 本件行政文書は、昭和44年に初めて全県一斉に線引きを行うに当たり、
   都市計画素案を作成する過程の初期段階において、市との調整を図るた
   めに県が提示したとされる、鎌倉都市計画市街化区域及び市街化調整区
   域に関する第一次素案である。
  イ 法第20条第1項は、「都道府県(中略)は、都市計画を決定したとき
   は、その旨を告示し、かつ、都道府県にあっては国土交通大臣及び関係
   市町村長に、(中略)第14条第1項に規定する図書の写しを送付しなけ
   ればならない」とし、同条第2項は、「都道府県知事及び市町村長は、国
   土交通省令で定めるところにより、前項の図書又はその写しを当該都道
   府県又は市町村の事務所において公衆の縦覧に供しなければならない」
   と規定している。
    これらの規定からすると、法第14条第1項に定められた図書(総括図、
   計画図及び計画書)については、当該都市計画が定められている間はい
   つでも縦覧に供することが必要であると解されるため、その間は当該図
   書を保存すべきであると考えられる。
    しかし、本件行政文書は法第14条第1項に定められた図書には該当せ
   ず、その整理及び保存については法令に定めがないことから、実施機関
   においては昭和45年当時の文書管理規程に基づいて処理を行っていた
   と考えられる。
  ウ 当時の文書管理規程では、文書の保存期間は、法令で特別の定めがあ
   るものを除き、永年、10年、5年、3年又は1年と定められ、保存期間
   永年として処理された文書(以下「永年保存文書」という。)を除いて、
   保存期間満了後は廃棄される取扱いであることが認められる。その後、
   平成5年に公文書館が設立されたことに伴い文書管理規程が改正された
   結果、永年保存文書は30年保存文書とみなされることとなり、保存期間
   が満了するまで公文書館で中間保管される取扱いとなっている。
    なお、中間保管されている30年保存文書のうち、保存期間が満了した
   ものについては、あらかじめ各課等から保存文書返還又は保存期間延長
   の請求があったものを除いて、すべて公文書館に引き渡されることにな
   っている。その後公文書館において、保存すべき文書の選別が行われ、
   選別されなかった文書は廃棄されることとなる。
  エ 当審査会が調査したところ、当初線引きに係る都市計画地方審議会決
   定に関する文書は、当時の文書管理規程に基づいて永年保存文書として
   処理され、現在は30年保存文書として公文書館に中間保管されているこ
   とが認められる。しかし、本諮問案件において問題となっている、鎌倉
   都市計画市街化区域及び市街化調整区域の決定に関する文書(簿冊件名
   「第9回都市計画地方審議会 鎌倉」)の中には、本件行政文書の存在は
   確認できなかった。また、同時期に他の市町で実施された当初線引きに
   係る都市計画地方審議会決定に関する文書の中にも、本件行政文書に相
   当する第一次素案の存在は確認できなかった。
  オ 行政文書の保存期間は、当該行政文書に関する法令等の定めによるほ
   か、文書管理規程等の規定に基づき、実施機関が実務上の必要性、行政
   文書の性質等を勘案して定めているものであり、一連の手続に関連する
   文書のすべてが必ずしも同一の保存期間で管理されなければならないわ
   けではないと考えられる。第一次素案は、都市計画素案の作成過程で県
   と市町の間で調整を図るために作成されたものであり、法定縦覧図書に
   も都市計画決定に必要な認可等の法手続に関する文書にも該当しないこ
   とからすると、当時永年保存文書として処理されなかったことが不適切
   であったとは認められない。
  カ 以上のことからすると、第一次素案については、当時永年保存文書と
   して処理されていなかったものと考えられ、本件行政文書は、既に廃棄
   されており、現在は保存されていない旨の実施機関の説明は首肯できる。
(3)その他
  ア 不服申立人は、公文書館で本件ファイルを閲覧した際に、法で縦覧図
   書と定められている総括図が保存されていなかった旨主張するが、その
   指摘のとおり、総括図の原本は保存されていないことが認められる。
    現在は、市から借用した総括図を基に写しが作成され、保存されてい
   るとしても、本来原本を保存しなければならないものについて、原本の
   所在が不明であるという点については、文書管理に適切さを欠いている
   といわざるを得ず、今後は適切な管理が望まれる。
  イ また、不服申立人は、審査会は審査会規則第8条の調査権限に基づい
   て調査を実施し、本件行政文書を実施機関から提出させるべきである旨
   主張する。しかし、同条は、諾否の決定に係る行政文書に記録されてい
   る情報の内容を分類又は整理した資料を作成し、提出することを審査会
   が実施機関に求めることができる旨を定めたものであって、不存在とさ
   れた行政文書の存否について直接確認するために調査する趣旨の規定で
   はない。

6 付言
  本諮問案件においては、県庁及び公文書館での行政文書閲覧時における実
 施機関の職員の言動や不服申立てがなされた後の電話対応等で、適切とはい
 えない対応が見られたことから、今後は適切な対応が望まれる。

7 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

               審査会の処理経過

年月日

処理内容

 平成13年3月22日

○諮問

       4月16日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

       5月18日

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

       5月23日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

       6月13日

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する
 意見書を受理

       6月18日

○実施機関に非公開等理由説明書に対する意見
 書を送付

 平成14年 1月8日
   (第6回部会)

○不服申立人から意見を聴取

       1月18日

○指名委員により実施機関の職員から非公開等
 理由説明を聴取

       2月4日
   (第7回部会)

○審議

       3月14日
   (第8回部会)

○審議

       4月22日
   (第9回部会)  

○審議

          神奈川県情報公開審査会委員名簿

                         (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

部会員

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者
部会員

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

 

玉巻 弘光

東海大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長

 

              (平成14年5月13日現在)(五十音順)

本文ここまで
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