答申第114号

掲載日:2017年12月1日

 

答申第114号

 

                              平成14年5月13日

 

 

 神奈川県知事 岡崎 洋 殿

 

 

              神奈川県情報公開審査会 会長  堀部 政男

 

 

 

   行政文書一部公開処分に関する第三者からの不服申立てについて(答申)

 

 

 平成13年3月22日付けで諮問された特定の証券会社に係る消費生活相談関係書類一
 部公開の件(諮問第182号)について、次のとおり答申します。

 

 

 

1 審査会の結論
  特定の証券会社に係る消費生活相談カードを一部公開するとしたことは、妥当で
 ある。

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
   本件不服申立ては、神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)第12条第
  1項に規定する手続により反対意見書を提出した第三者からなされたものである。
  不服申立ての趣旨は、特定の証券会社(本件不服申立人。以下、原則として「本

  件法人」という。)に係る平成8年度から同12年度までの消費生活相談カード
  (以下「本件行政文書」という。)を神奈川県知事(以下「知事」という。)が
  平成13年1月26日付けで一部公開するとした処分(以下「本件処分」という。)
  を取り消し、全部非公開とすることを求める、というものである。
(2)不服申立ての理由
   不服申立人の主張を総合すると、知事が本件行政文書の一部について、公開す
  ることにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれが
  あるとはいえないことから、条例第5条第2号に該当しないとした一部公開の処
  分は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものであ
  る。
  ア 条例第5条第2号本文該当の点について
  (ア)企業名を特定できないようにした上で、証券会社に係る苦情相談に関する
    情報を公開することはやむを得ないと考えるが、本件公開請求は、本件法人
    名を特定して苦情相談の内容の公開を求めるものであり、これによって得た
    情報を基に、本件法人に対して不当な要求が行われる可能性が高いものであ
    る。
     したがって、本件法人名を特定して請求されたものである以上、本件行政
    文書に記載されている本件法人に関する情報のすべてが条例第5条第2号本
    文に該当する。
  (イ)仮に、条例の原則公開の考え方にかんがみ、本件行政文書を一部公開する
    ことがやむを得ないとしても、本件処分における非公開部分に加えて、少な
    くとも「件名」及び「相談概要」については、次の理由から条例第5条第2
    号本文に該当するので、非公開とすべきである。
    a 本件行政文書の作成に当たって、本件法人は苦情に対する弁明の機会が
     与えられておらず、消費生活相談という性質上、相談者の誤解に基づくも
     のや事実と異なる内容が記載されている可能性が高いので、本件行政文書
     が本件法人に対する要求に利用された場合、本件法人の正当な利益が害さ
     れるおそれがある。
    b 苦情相談の内容を知り得たすべての者が、相談の内容が事実であるとは
     限らないと認識すればよいが、現実には、本件行政文書を公開することに
     より、その内容があたかも事実であるかのような印象を与えたり、他の事
     実の傍証に利用されるおそれがある。
  イ その他
  (ア)企業名を特定した本件公開請求の態様から、本件法人に何らかの要求を行
    おうとする意図が読み取れるが、このような目的を持った公開請求は、条例
    第1条に規定する条例の本来の目的に沿ったものとはいえず、当該目的の実
    現とは相反する結果を招くので、許容されるべきでない。
  (イ)条例第22条は、公開された情報の適正利用について規定しているが、当該
    規定には罰則がなく、本件法人に対する不当な行為への抑止力とはならない。

3 実施機関(県民部消費生活課)の説明要旨
  実施機関の説明を総合すると、本件行政文書を一部公開するとした理由は、次の
 とおりである。
(1)不服申立てに至る経過
   本件公開請求を受けて、知事が、本件公開請求に係る第三者である本件法人に
  対して、条例第12条第1項に基づき意見書提出の機会を付与したところ、本件法
  人は、本件公開請求に対して公開拒否処分を行うべきであるとの意見書を提出し
  た。知事は、平成13年1月26日付けで、同年2月14日に本件行政文書を一部公開
  するとの処分を行ったが、本件法人は、同年2月9日付けで、本件行政文書を全
  部非公開とすることを求めるとの不服申立てを行った。
(2)本件行政文書について
   本件行政文書は、過去5年間(平成8年度から同12年度まで)に、消費者から
  受けた本件法人に係る消費生活相談の内容及び処理経過を県消費生活センターに
  おいて記録した消費生活相談カードである。
(3)条例第5条第2号本文該当性について
  ア 不服申立人は、本件公開請求の内容から、本件行政文書が本件法人に係る苦
   情相談に関する文書であることが分かるので、本件処分において本件法人名を
   非公開としても、本件行政文書の一部を公開することにより、本件法人の社会
   的信用を損なうと主張する。しかし、条例第5条の規定は、行政文書の内容が
   同条各号に規定する非公開情報に該当する場合に非公開とする趣旨であること
   から、本件行政文書のうち、本件法人の社会的信用を損なうおそれのある情報
   及び請求者以外のものに本件法人名が特定される情報を非公開としたものであ
   る。
  イ 本件行政文書のうち、「件名」及び「相談概要」に記載された内容は、主と
   して相談者の有する評価、意見を記録したものであるが、その内容が事実か否
   か判然としないことを理由に、その全体に対して条例第5条第2号該当性を認
   めることは適当でないと考えられるので、記載されている情報のうち、客観的
   に本件法人の正当な利益を害するおそれがある部分を非公開としたものである。
(4)その他
   不服申立人は、特定の企業を対象とする本件公開請求は、条例の目的に沿うも
  のではなく許されない旨主張するが、公序良俗に反する理由でない限り公開請求
  は認められており、「調査研究」を理由とする本件公開請求は、許容されるもの
  と考える。

4 審査会の判断理由
(1)答申するに当たっての考え方
   行政文書の公開請求に対する諾否の決定に関する不服申立てについて、実施機
  関が当審査会に諮問する趣旨は、条例第5条に規定する非公開情報の該当性等を
  実施機関が改めて判断する際の意見を求めているものと解される。したがって、
  当該諾否の決定後に事実状態等に変動があったときには、処分時の事実状態等に
  よって判断しなければならない特段の事情が存在しない限り、当審査会は事実状
  態等のその後の変動をも考慮して審議できるものと考える。
(2)審査会における審査方法
   当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会審議要
  領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は不服申立人から口頭による意
  見を聴取した。その結果も踏まえて次のとおり判断する。
(3)本件不服申立てについて
  ア 不服申立人は、条例第12条第3項に規定する第三者であり、本件不服申立て
   の対象は、本件処分において公開するとされた部分(以下「本件公開部分」と
   いう。)である。不服申立人は、本件公開部分について、条例第5条第2号に
   該当する旨主張している。
  イ 本件不服申立てに当たり、不服申立人から本件処分の執行停止の申立てはな
   されていないが、実施機関は、公開処分の性質を考慮し、本件不服申立てに対
   する決定がなされるまでの間、行政不服審査法第34条第2項の規定に基づき、
   職権により本件処分の執行を停止していることが認められる。
(4)本件行政文書について
  ア 本件行政文書は、平成8年度から同12年度までの間に、県消費生活センター
   において受け付けた、本件法人に係る消費生活相談の内容を記録した消費生活
   相談カードである。
  イ 実施機関は、本件行政文書のうち、次に掲げる部分については、条例第5条
   第2号ほか同条各号に該当しないとして、一部公開処分を行ったことが認めら
   れる。
  (ア)決裁欄の一部及び職員チェック欄
  (イ)センターコード、年度、受付番号、受付年月日、相談方法区分、相談内容
    区分、商品別分類及び内容別分類
  (ウ)商品・役務欄、ブランド欄の一部及び備考欄の一部
  (エ)相談者欄及び契約当事者欄(地域コード及び年齢を除く。)
  (オ)緊急性区分、拡大損害区分及び契約区分
  (カ)件名の一部及び相談概要の一部
  (キ)販売購入形態区分及び信用供与の有無区分
  (ク)金額欄のうち、第3金額の内容
  (ケ)内容等キーワードの一部
  (コ)処理結果区分、解決内容区分及び再発防止対策区分
  (サ)処理結果概要の一部
  (シ)受付情報の続き欄のうち、余白の記載
  (ス)処理経過及び回答の一部
  (セ)その他消費生活相談カードの様式に係る部分
(5)条例第5条第2号本文該当性について
  ア 条例第5条第2号本文は、「法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。
   以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関す
   る情報であって、公開することにより当該法人等又は当該個人の権利、競争上
   の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は非公開とすることがで
   きると規定している。
  イ 本件公開部分のうち、前記(4)イ(ア)、(イ)、(オ)、(キ)、(コ)
   及び(セ)に掲げる部分については、実施機関が消費生活相談事務の行政内部
   での処理手続の必要から記載している情報であり、公開することにより、本件
   法人の正当な利益を害するとは認められない。
  ウ また、前記(4)イ(エ)に掲げる部分については、相談者等の属性等に関
   する情報であって、公開することにより、本件法人の正当な利益を害するとは
   認められない。
  エ 次に、前記(4)イ(ウ)、(カ)、(ク)及び(ケ)に掲げる部分につい
   て検討する。これらの情報は、相談者から聴取した相談の内容に関して、その
   概要を記録したものである。不服申立人は、これらの情報の内容が相談者の評
   価や意見を反映したものであることに加え、これらに対する本件法人の反論が
   併記されていないため、客観性を欠いており、これらの情報を入手する者に誤
   解を生じさせるおそれがあると主張する。
    しかし、これらの情報が主に相談者の主観を反映したものであることは、消
   費生活相談事務の性質に照らして明らかであり、これらの情報を入手する者は、
   通常、このような性格を承知した上で、その内容を理解するものと解される。
   また、これらの情報が、実施機関が中立の立場で記載する処理結果概要等と併
   せて公開されることを考慮すると、公開することにより、直ちに本件法人の正
   当な利益を害するとまでは認められない。
  オ さらに、前記(4)イ(サ)、(シ)及び(ス)に掲げる部分は、当該相談
   を受けて実施機関が行った処理の経過及び結果について、その概要を記録した
   ものである。その内容は、主に相談者に対する実施機関の職員の対応の経過及
   び処理結果に関する事実であって、公開することにより、本件法人の正当な利
   益を害するとは認められない。
  カ 以上の理由から、本件公開部分は、条例第5条第2号に該当しないと判断す
   る。
(6)条例第6条第1項該当性について
  ア 条例第6条第1項は、公開請求に係る行政文書に非公開情報とそれ以外の情
   報が記録されている場合において、それらを「容易に、かつ、行政文書の公開
   を請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」は、非公開情報に
   係る部分を除いて、公開をしなければならないと規定している。
  イ 本件行政文書については、当審査会が前記(5)において公開することが妥当
   であると認めた部分の範囲及び内容にかんがみると、その他の情報を分離して
   非公開とすることは、「容易に、かつ、行政文書の公開を請求する趣旨を失わ
   ない程度に合理的に分離できるとき」に該当すると判断する。
(7)その他
   不服申立人は、本件公開請求の態様から、本件行政文書が不当な目的に使用さ
  れる可能性があることを理由に、本件公開請求は許容されるべきでないと主張す
  る。しかし、公開請求権の行使は、権利の濫用に当たらない限りその目的を問わ
  ないものである。したがって、請求者が公開された情報を濫用して企業活動を不
  当に侵害することが明らかである場合は格別、単にその可能性があることを理由
  として公開請求を拒むことは、公開請求権を著しく制約する結果となり、県民と
  県との信頼関係の増進という情報公開制度の目的に照らして適当でないと考える。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

 

別紙

               審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成13年3月22日

 

○諮問

 

4月16日

 

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

 

6月22日

 

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

 

7月3日

 

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

 

7月31日

 

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する意見書を受理

 

8月6日

 

○実施機関に非公開等理由説明書に対する意見書を送付

 

12月25日

 

○不服申立人から意見を聴取

 

平成14年1月8日
(第6回部会)

○審議

 

2月4日
(第7回部会)

○審議

 

3月14日
(第8回部会)

○審議

 

4月22日
(第9回部会)

○審議

 

 

 

 

              神奈川県情報公開審査会委員名簿

 

 

                              (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士 (横浜弁護士会)

部会員

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

部会員

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

 

玉巻 弘光

東海大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長

 

                       (平成14年5月13日現在) (五十音順)

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • ラグビーワールドカップ2019
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa