答申第115号

掲載日:2017年12月1日

答申第115号
                         平成14年5月13日


 神奈川県公安委員会 委員長 近藤 脩 殿


                                 神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

 

行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 

 平成13年11月21日付けで諮問された特定の団体等に係る視察結果報告書等
非公開(存否応答拒否)の件(諮問第212号)について、次のとおり答申し
ます。

 

1 審査会の結論

  実施機関が、特定団体及びその会員である特定個人に対して警察が視察
を行うこととした経緯及びその結果を記録した文書につき、その存否を答
えるだけで、非公開情報を公開することとなるとして、公開を拒んだこと
は、妥当である。


2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
   不服申立ての趣旨は、特定団体及びその会員である特定個人に対して
  警察が視察を行うこととした経緯及びその結果を記録した次に掲げる文
  書(以下「本件行政文書」という。)について、神奈川県警察本部長
  (以下「警察本部長」という。)が平成13年10月29日付けで公開を拒ん
  だ(存否応答拒否)処分の取消しを求める、というものである。
  ア 視察対象として決定した会議の議事録
  イ 視察結果報告書
  ウ 上記視察に係る平成12年度以降の視察費用及び民間協力費の執行に
   関する文書
(2)不服申立ての理由
   不服申立人の主張を総合すると、警察本部長が本件行政文書を神奈川
  県情報公開条例(以下「条例」という。)第5条第6号に該当するとと
  もに、同条第1号及び第2号に該当し、本件公開請求に係る行政文書が
  存在するか否かを答えるだけで、非公開情報を公開することとなるため、
  条例第8条により、行政文書の存否を明らかにできないとして公開を拒
  んだ処分は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、
  というものである。
  ア 条例第5条第1号本文該当の点について
    公開することにより、不服申立人の権利利益を害するおそれはなく、
   むしろ非公開とされ、視察が続行されたことの権利侵害の方がはるか
   に大きい。
  イ 条例第5条第1号ただし書エ該当の点について
    人権侵害であり、かつ、危険である視察行為の停止を求め、不服申
   立人及びその家族の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため
   の公開請求なので、条例第5条第1号ただし書エに該当する。
  ウ 条例第5条第6号及び第8条該当の点について
    不服申立人は、犯罪行為を企図している者や、今後の警察による情
   報収集活動に支障を及ぼす者には該当しない。
  エ その他
  (ア)不服申立人の受けている視察は、正当な理由のある視察ではなく、
    近所のトラブルから派生した私的な怨念を晴らすための報復の可能
    性が高い。
     この視察は多岐にわたり、規模が大きいので警備公安警察が行っ
    ていると考えられる。
     警察は、不服申立人が特定団体に加入していることを理由に視察
    していると考えられるが、それは単に体裁を整えるためだけの理由
    である。視察の実態は、脅かしと嫌がらせを内容とする不正なもの
    であり、その事実を確認するために本件公開請求に及んだ。不服申
    立人には知る権利がある。
  (イ)私怨の報復のために、適当な理由をつけて国民の税金をふんだん
    に使った不正行為が裏で密かに行われているとしたら、看過できな
    い、職権濫用である。
     調査の上、団体部分は除いても、不服申立人の部分だけでも公開
    すべきである。

3 実施機関(警察本部警備部公安第一課)の説明要旨
  実施機関の説明を総合すると、本件行政文書の公開を拒んだ理由は、次
 のとおりである。
(1)本件行政文書について
  ア 本件行政文書は、請求内容から特定の団体及び個人に対する警察の
   情報収集活動に係る行政文書及びそのための予算執行に係る行政文書
   である。
  イ 警察は、警察法第2条に定められた「個人の生命、身体及び財産の
   保護、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他
   公共の安全と秩序の維持に当ること」を責務としており、その責務を
   果たすために、必要な情報収集活動を行っている。
    このような情報収集活動に係る行政文書には、情報収集の対象であ
   る個人、法人等の情報が記載されているほか、情報収集の着眼点や手
   法等に関する情報が記載されている。
    なお、不服申立人は、行政文書公開請求書等において、「視察」と
   いう言葉を用いているが、その趣旨は、情報収集活動一般を指してい
   るものと解されるので、実施機関としては、より一般的な言葉である
   「情報収集活動」に置き換えて説明する。
(2)条例第5条第1号該当性について
  ア 条例第5条第1号本文該当性について
    特定の個人が警察の情報収集活動の対象とされているか否かは、個
   人の名誉や信用に直接かかわる個人に関する情報であり、当然に個人
   の識別性を有する情報であることから、条例第5条第1号本文に該当
   する。
  イ 条例第5条第1号ただし書該当性について
  (ア)条例第5条第1号ただし書ア、イ及びウ該当性について
     情報収集活動に係る行政文書に記載されている情報は、ただし書
    アの法令又は条例の規定により何人にも閲覧等が認められている情
    報、ただし書イの慣行として公にされ、又は公にすることが予定さ
    れている情報、及びただし書ウの当該公務員の職及び当該職務遂行
    の内容に係る情報に該当しないことも明らかである。
  (イ)条例第5条第1号ただし書エ該当性について
     同規定の該当性判断に当たっては、公にすることにより害される
    おそれがある情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、身体等
    の保護の必要性が上回る場合に、個人情報を公開すべきとするもの
    である。
     本件請求のように、特定個人が警察の情報収集の対象とされてい
    るか否かは、個人の名誉や信用に直接かかわる個人に関する情報で
    あり、これをみだりに公開されないという保護利益を上回るほどの
    生命、身体等への危害が現に生じ、又は過去に生じた事態から類推
    して将来そのような危害等が発生することが予測される状態が存在
    するとは認められない。
(3)条例第5条第2号該当性について
  ア 条例第5条第2号本文該当性について
    特定の団体が警察の情報収集活動の対象とされているか否かは、当
   該団体の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある
   情報であることから、条例第5条第2号本文に該当する。
  イ 条例第5条第2号ただし書該当性について
    特定の団体が警察の情報収集活動の対象とされているか否かという
   情報自体には、「人の生命、身体、財産等を保護するため、公開する
   ことが必要であると認められる情報」は含まれていないことから、同
   号ただし書に該当しない。
(4)条例第5条第6号該当性について
   警察の情報収集活動に係る行政文書には、犯罪の予防、捜査、被疑者
  の逮捕その他公共の安全と秩序の維持に必要な情報として、情報収集の
  対象である個人、法人等の情報が記載されているほか、治安情勢に応じ
  た情報収集の着眼点や手法等に関する情報が記載されている。これらの
  情報が公開されれば、犯罪行為を企図している者、団体等においては、
  防衛措置を強化するなどさらに各種活動を潜在化、巧妙化させることに
  より、警察の情報収集活動に支障を及ぼすおそれがあることから、条例
  第5条第6号の非公開情報に該当する。
(5)条例第8条該当性について
   本件請求のように、団体や個人を特定して、これに対する警察の情報
  収集活動に係る行政文書の公開請求が行われた場合については、当該文
  書の有無を前提にして、公開する又は公開を拒む(文書不存在を含む。)
  との諾否決定を行えば、警察が当該団体、個人に対して情報収集活動を
  行っている事実の有無が明らかになる。
   したがって、非公開とすべき個人に関する情報及び法人等に関する情
  報を公開した場合と同様に個人及び法人の権利利益を侵害するおそれが
  あること並びに今後の警察による情報収集活動に支障を及ぼすおそれが
  あることから条例第8条に該当する。

4 審査会の判断理由
(1)本件行政文書について
   本件行政文書は、もし仮に存在するとすれば、特定の団体及び個人に
  対する警察の視察(以下「情報収集活動」という。)に係る行政文書及
  びそのための予算執行に係る行政文書である。その内容は、一般的に、
  特定の団体名や個人名に関する情報が含まれているほか、警察の情報収
  集活動の方針、対象、関心事項、着眼点、手法等に関する情報が記載さ
  れているものである。
(2)条例第5条第1号該当性について
  ア 条例第5条第1号本文該当性について
  (ア)条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報
    の保護という二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人
    を尊重する観点から、個人に関する情報を原則的に非公開とするこ
    とを規定している。そして、同号本文は、「個人に関する情報であ
    って、特定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定
    の個人を識別することはできないが、公開することにより、個人の
    権利利益を害するおそれがあるもの」(以下「個人情報」という。)
    を非公開とすることができるとしている。
     したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思わ
    れるものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるも
    のも含めて非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。
  (イ)特定の個人が警察の情報収集活動の対象とされているか否かにか
    かわる情報は、特定の個人が識別され得るとともに、当該個人の名
    誉や信用に直接かかわる情報であることから、条例第5条第1号本
    文に該当すると判断する。
  イ 条例第5条第1号ただし書該当性について
  (ア)条例第5条第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的に公
    開できる情報について規定している。
  (イ)本件行政文書に記載される個人情報は、条例第5条第1号ただし
    書アの法令等の規定により何人にも閲覧等が認められている情報、
    同号ただし書イの慣行として公にされ、又は公にすることが予定さ
    れている情報、又は同号ただし書ウの公務員の職務の遂行に関する
    情報とは認められないので、同号ただし書ア、イ又はウには該当し
    ないと判断する。
  (ウ)条例第5条第1号ただし書エ該当性について
    a 条例第5条第1号ただし書エは、「人の生命、身体、健康、生
     活又は財産を保護するため、公開することが必要であると認めら
     れる情報」については公開することを規定している。
    b この規定は、人の生命、身体等への危害等が現に生じているか
     又は過去に生じた事態から類推して将来そのような危害等が発生
     することが予測される状態が存在しており、このような危害等か
     ら県民を保護するため公開することが公益上必要な情報の公開に
     ついて定めたものである。
    c 本件行政文書に記載される個人情報は、特定の個人が警察の情
     報収集の対象とされているか否かという個人の名誉や信用に直接
     かかわる個人に関する情報であり、これを非公開として保護すべ
     き個人の権利利益を上回るほどの人の生命、身体等への危害等が
     現に生じているか又は過去に生じた事態から類推して将来そのよ
     うな危害等が発生することが予測される状態が存在するとは認め
     られないことから、同号ただし書エには該当しないと判断する。
(3)条例第5条第2号該当性について
  ア 条例第5条第2号本文該当性について
  (ア)条例第5条第2号本文は、「法人その他の団体に関する情報又は
    事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することに
    より当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利
    益を害するおそれがあるもの」を非公開とすることができるとして
    いる。
  (イ)特定の団体が警察の情報収集活動の対象にされているか否かは、
    当該団体の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれが
    あることから、条例第5条第2号本文に該当すると判断する。
  イ 条例第5条第2号ただし書該当性について
    本件行政文書に記載される特定の団体に関する情報は、条例第5条
   第2号ただし書の人の生命、身体等を保護するため、公開することが
   必要である情報とは認められないので、同号ただし書には該当しない
   と判断する。
(4)条例第5条第6号該当性について
  ア  条例第5条第6号は、「公開することにより、犯罪の予防、鎮圧又は
   捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障
   を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由があ
   る情報」を非公開とすることができるとしている。
  イ 警察法第2条第1項は、警察の責務は「個人の生命、身体及び財産
   の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取
   締その他公共の安全と秩序の維持に当ること」である旨規定している。
   警察は、「犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕」、「その他公
   共の安全と秩序の維持」に当たるという警察の責務を果たすため、犯
   罪を行い、企て、あるいはそのおそれのある個人又は団体に対し、必
   要な情報収集活動を行っていることが認められる。
    したがって、情報収集活動は、条例第5条第6号に規定する「犯罪
   の予防、鎮圧又は捜査(中略)その他の公共の安全と秩序の維持」の
   ための活動であると認められる。
  ウ 特定の団体又は個人が警察の情報収集活動の対象とされているか否
   かは、警察の情報収集活動の方針、対象、関心事項等に関する情報で
   あり、これらが公開されると、警察の情報収集活動の実態が明らかに
   なり、犯罪行為を企図している者又は団体において各種活動を潜在化、
   巧妙化させるなどの防衛措置が講じられ、犯罪の予防、鎮圧又は捜査
   その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施
   機関が認めるにつき相当の理由がある情報であると認められることか
   ら、条例第5条第6号に該当すると判断する。
(5)条例第8条該当性について
  ア 条例第8条は、「公開請求に対し、当該公開請求に係る行政文書が
   存在しているか否かを答えるだけで、非公開情報を公開することとな
   るときは、実施機関は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当
   該公開請求を拒むことができる」と規定している。
  イ 本件公開請求のように団体又は個人を特定して、警察の情報収集活
   動に係る行政文書について公開請求が行われた場合は、本件行政文書
   が存在しているか否かを答えるだけで、特定の団体又は個人に対して
   警察が情報収集活動を行っているか否かの事実が明らかとなり、条例
   第5条第1号又は第2号の非公開情報を公開することとなると解され
   る。
    また、本件行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、特定の
   団体又は個人が警察の情報収集活動の対象となっているか否かの事実
   が明らかとなるのみならず、警察の情報収集活動の実態も明らかとな
   り、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支
   障を及ぼすおそれがあることから、条例第5条第6号の非公開情報を
   公開することとなると解される。
    したがって、本件行政文書は、条例第8条に該当すると判断する。
(6)その他
   当審査会は、行政文書公開請求に対する決定の当否について実施機関
  から意見を求められているのであり、前記2(2)エの不服申立人の主
  張については、意見を述べる立場にない。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

               審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成13年11月21日

○諮問

    11月28日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

    12月21日

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

    12月27日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付し、非公開等理由説明書に対する意見書の提出を要求

平成14年1月15日

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する意見書を受理

    1月18日

○実施機関に非公開等理由説明書に対する意見書を送付

    1月22日

(第6回部会)

○審議

    2月7日

(第7回部会)

○審議

    2月21日

○指名委員により不服申立人から意見の聴取

○指名委員により実施機関の職員から非公開理由説明を聴取

    4月17日

(第9回部会)

○審議


    神奈川県情報公開審査会委員名簿

                (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

部会員

玉巻 弘光

東海大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

部会員

堀部 政男

中央大学教授

会長

(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長

 

                 (平成14年5月13日現在)(五十音順)

 

 

本文ここまで
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