答申第116号

掲載日:2017年12月1日

答申第116号

平成14年5月30日

神奈川県選挙管理委員会 委員長 碓井 貞弘 殿

              神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

    行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 平成12年9月28日付けで諮問された政治資金収支報告書非公開の件(諮問
第120号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の判断

  公開請求の目的は既に達せられ、不服申立ての意義は失われたものと判断
 する。

2 不服申立ての趣旨

  不服申立ての趣旨は、特定の4政治団体が政治資金規正法(以下「規正法」
 という。)に基づき、神奈川県選挙管理委員会(以下「選挙管理委員会」とい
 う。)に提出した政治資金収支報告書(以下「本件行政文書」という。)を、
 選挙管理委員会が平成12年9月4日付けで非公開とした処分(ただし、写し
 の交付の拒否に限る。以下「本件処分」という。)を取り消し、本件行政文書
 のすべての写しの交付を求めるというものである。

3 審査会の判断理由
(1)答申するに当たっての考え方
   行政文書の公開請求に対する諾否の決定に関する不服申立てについて、
  実施機関が当審査会に諮問する趣旨は、神奈川県情報公開条例(以下「条
  例」という。)第5条で規定する非公開情報の該当性等を実施機関が改めて
  判断する際の意見を求めているものと解される。したがって、当該諾否の
  決定後に事実状態等に変動があったときには、処分時の事実状態等によっ
  て判断しなければならない特段の事情が存在しない限り、当審査会は、事
  実状態等のその後の変動をも考慮して審議できるものと考える。
(2)本件行政文書について
   本件行政文書は、特定の4政治団体が、規正法第12条第1項の規定に基
  づき選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書の平成8年分及び同
  10年分(一部については、8年分又は10年分)である。選挙管理委員会
  は、規正法第20条の2第2項の規定により、当該文書を一定期間一般の閲
  覧に供している。
(3)経緯
  ア 規正法に基づく都道府県の法定受託事務について、自治大臣(現総務
   大臣)は、地方自治法第245条の9第1項の規定に基づき、都道府
   県が当該事務を処理するに当たりよるべき基準(以下「本件処理基準」
   という。)を定めている。そして、規正法第20条の2第2項には「報
   告書の要旨が公表された日から三年間、(中略)当該報告書又は書面
   の閲覧を請求することができる」との規定があり、本件処理基準におい
   て、政治資金収支報告書等(以下「報告書等」という。)の公開につい
   て写しの交付は認められないとされていた。このため、選挙管理委員会
   は、本件行政文書が条例第5条第7号に規定する「地方自治法第245条
   の9第1項の規定による基準(中略)により、公開することができない
   とされている情報」に該当するとして本件処分を行った。
  イ その後、平成13年3月26日付けで、総務省から本件処理基準のうち、
   報告書等の写しの交付が認められないとした規定を削除する旨の通知が
   出され、同年4月1日から施行された。
    そこで、実施機関は、不服申立人に対して、本件行政文書の写しの交
   付が可能となった旨連絡した。
  ウ 実施機関は、不服申立人に対し、平成13年12月7日付けで本件処分
   を変更して、本件行政文書の写しの交付を行う旨の決定を通知した上、
   その写しを交付した。
(4)結論
   以上のとおり、本件処分は、本件行政文書の公開を決定した平成13年
  12月7日付けの本件処分を変更する処分により、その全部が取り消され、
  不服申立人は、本件行政文書の写しの交付を受けている。
   そうすると、時期は遅れたものの、不服申立人の公開請求の目的は、条
  例の定める手続によって、既に達せられたものと判断する。
   したがって、不服申立ての意義は失われたものと考える。

4 その他
(1)不服申立人は、条例第5条第7号は法的拘束力を持たないとされる「地
  方自治法第245条の9第1項の規定による基準」(以下「処理基準」という。)
  を「法令」や「実施機関が法律上従う義務を有する国の機関の指示」と同
  視するものであり、これは地方自治の本旨から逸脱し、地方自治法及び憲
  法に反する違法、違憲なものであると主張する。また、不服申立人は、処
  理基準が条例の規定上、法律上従う義務を有する国の機関の指示と同様に
  位置づけられているとしても、実施機関は当該処理基準が従うべきものか
  どうか独自に判断を行うべきであって、本件処理基準は従うべきものには
  当たらないものであったと主張する。
(2)これらの主張は、条例の解釈運用にも関連する問題でもあるので、検討
  することとする。
  ア 処理基準は、地方自治法第245条の9第1項において「都道府県が当
   該法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準」とされ、一般に法律
   上従うことが予定されているものと解される。そこで、処理基準には従
   うべきものがあるとして、条例上、処理基準において公開することがで
   きないとされている情報を非公開情報の類型の一つとして規定したもの
   と考えられる。
    ところで、仮に国が特定の法定受託事務の処理について示した処理基
   準の内容が、当該事務を所管する県の機関において、当該事務を定めた
   法令の趣旨に反するものであると判断される場合には、当該処理基準に
   従う必要がないことは当然である。したがって、処理基準の内容が当該
   事務を定めた法令の趣旨に反するものであると認められる場合には、当
   該処理基準が「写しの交付をすることは認められない」としている情報
   について、条例第5条第7号を適用しないことは、条例上明文でその旨
   が規定されていないとしても、条例の解釈運用として可能であると考え
   られる。
  イ 規正法第20条の2第2項では、報告書等の閲覧を請求することができ
   る旨を規定しているが、写しの交付については何らの規定も設けていな
   い。このことは、政治活動の公明と公正を確保しようとする規正法の趣
   旨に照らすと、規正法が写しの交付を積極的に認めていないものとは解
   されないものの、一応、規正法においては、報告書等については閲覧を
   認めることで足りるとの判断がされているものと考えられる。
    したがって、本件処理基準が「写しの交付をすることは認められない」
   としたことが規正法の趣旨に明らかに反するものであるとは解されない。

  ウ 報告書等の閲覧が機関委任事務であった当時、報告書等の写しの交付
   について、平成7年2月24日に最高裁判所第二小法廷の判決が出されて
   いる。この判決では、規正法は、報告書等の閲覧を請求することができ
   る旨を定めているが、その写しの交付の可否については何らの規定を置
   いていないこと、一般に「閲覧」の中に「写しの交付」が含まれると解
   するのは困難であることなどを理由に、「規正法は、写しの交付を権利と
   して保障しているものでないことは明らかである」と判断している。ま
   た、自治省選挙部政治資金課長から写しの交付が認められない旨の解釈
   が示された「政治資金規正法関係質疑集」が都道府県の選挙管理委員会
   に送付されたことが、「主務大臣等から公にしてはならない旨の明示の
   指示」に当たるとした上で、条例に基づき報告書等の写しを交付するこ
   とを認めないとした都道府県選挙管理委員会の処分に違法はないと判断
   している。
    しかし、平成12年4月に改正地方自治法が施行され、機関委任事務が
   廃止されたことなどを踏まえると、地方自治体として条例を施行し、運
   用する県の実施機関としては、報告書等の写しの交付について処理基準
   を適用するに当たっては、請求に係る報告書等が形式上処理基準におい
   て写しの交付が認められないとされている情報に該当するかどうかだけ
   でなく、その交付の可能性についても検討した上で、条例第5条第7号
   の規定の適用の有無を判断するべきであったと考える。

5 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別 紙

           審 査 会 の 処 理 経 過

   年  月  日

処  理  経  過

 平成12年 9月28日

○諮問

      10月 3日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

      10月25日

○実施機関から非公開理由説明書を受理

      10月30日

○異議申立人に非公開等理由説明書を送付

      11月 8日

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する
意見書を受理

      11月10日  

○実施機関に非公開説明書に対する意見書を送付

 平成14年 1月22日
     (第6回部会)

○審議

       2月 7日
     (第7回部会)

○審議

       3月13日
     (第8回部会)

○不服申立人からの意見聴取

       4月17日
     (第9回部会)

○審議

       5月 2日
     (第10回部会)

○審議

           神奈川県情報公開審査会委員名簿

                        (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会所属)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会所属)

部会員

玉巻 弘光

東海大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

部会員

堀部 政男

中央大学教授

会長
(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長

 

              (平成14年5月30日現在)(五十音順)

本文ここまで
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