答申第117号

掲載日:2017年12月1日

 答申第117号

 


                         平成14年5月30日

 神奈川県教育委員会 委員長 相吉 靖  殿

            神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男


   行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 平成13年1月4日付けで諮問された公立小学校職員に係る事故報告書等
一部非公開の件(諮問第167号)について、次のとおり答申します。



1 審査会の結論
  特定の市立小学校職員に係る事故報告書並びに当該職員の監督者である校
 長及び教頭の責任等を検討した伺い文書のうち、当該職員の住所、氏名及び
 学校名並びに校長及び教頭の氏名を非公開としたことは、妥当である。

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
   不服申立ての趣旨は、特定の市教育委員会(以下「市教育委員会」とい
  う。)から神奈川県教育委員会(以下「県教育委員会」という。)に提出さ
  れた市立小学校職員(以下「本件職員」という。)に係る事故報告書(以下、
  原則として「本件事故報告書」という。)並びに当該職員の監督者である校
  長及び教頭の責任等を検討した伺い文書(以下、原則として「本件伺い」
  という。)に記載されている情報のうち、本件職員の住所、氏名、学校名及
  び正確な着服金額並びに校長及び教頭の氏名を県教育委員会が平成12年
  11月30日付けで一部非公開とした処分の取消しを求める、というもので
  ある。
(2)不服申立ての理由
   不服申立人の主張を総合すると、県教育委員会が本件事故報告書及び本
  件伺い(以下「本件行政文書」という。)には、個人に関する情報であって、
  特定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別
  することはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害するお
  それがあるもの及び県の機関が行う事務に関する情報であって、公開する
  ことにより、人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支
  障を及ぼすおそれがあるものが記録されていることから、神奈川県情報公
  開条例(以下「条例」という。)第5条第1号及び第4号に該当するとした
  一部非公開の処分は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤って
  いる、というものである。
  ア 学校教育現場で児童の給食費等を着服するなどという行為は、いかな
   る事情があろうとも絶対に許されない。市教育委員会及び県教育委員会
   が、犯罪者を告発する義務さえも放棄し、犯罪者を擁護するという学校
   現場にふさわしくない措置を講じたことに激しい憤りを覚える。
  イ 刑法では、犯罪者を厳しく処分すべきであるとうたっている。
   条例第5条第1号及び第4号に該当するとして犯罪者を隠蔽するのは、
   犯罪を助成しているに等しく、本末転倒も甚だしい。
    個人の権利利益を害する等の理由で非公開とするなら、すべての犯罪
   者の氏名等を新聞、テレビ等の報道から削除しなければならない。
    刑法は、条例より上位であり、刑法をないがしろにする論理は法治国
   家の下ではなじまない。
  ウ 罪を犯しておきながら、懲戒処分を受け、着服金も返済したからとい
   う理由で、罪に問われないというのはおかしい。
    公務員だからこそ、重大な職務に就いているというモラルを持つべき
   で、罪を犯せば、罪に問われるのは当然である。
  エ 以上のことから、本件職員を告発するのに必要な情報である住所、氏
   名、学校名及び給食費の正確な着服金額並びに校長及び教頭の氏名は、
   少なくとも公開すべきである。
    ただし、職員の親睦会費の着服金額についてまでは言及しない。

3 実施機関(教育庁管理部教職員課)の説明要旨
  実施機関が本件行政文書を一部非公開とした理由は、次のとおりである。
(1)本件行政文書について
   県教育委員会は、市町村立学校職員給与負担法第1条及び第2条に規定
  する職員の任命権を有しており(地方教育行政の組織及び運営に関する法
  律第37条)、その職員が非違行為を行う等の事故が発生した場合は、市町
  村教育委員会から提出された事故報告書に基づき、当該職員について、責
  任を検討し、その結果、責任を問う必要があると認められる場合は、地方
  公務員法に基づく懲戒処分等の人事上の措置を実施している。
   本件行政文書は、市教育委員会から、本件職員による給食費及び親睦会
  費の着服に関して県教育委員会に対して提出された事故報告書並びに当該
  報告書に基づき当該職員の監督者である校長及び校長を補佐する立場にあ
  る教頭の責任等を検討した伺い文書である。
   なお、本件職員は県教育委員会が任命権を有しない職員であり、市教育
  委員会では本件職員を懲戒免職処分としている。
(2)条例第5条第1号該当性について
  ア 条例第5条第1号本文該当性について
  (ア) 本件事故報告書には、本件職員が給食費及び親睦会費の着服を行い、
    懲戒免職処分を受けたことが記載されているが、当該処分は、本件職
    員にとって最も不利益な処分であることから、本件事故報告書に記載
    された情報は、他人に知られたくない個人に関する情報である。
     また、本件伺いには、職員が行った着服行為に関し、本件職員の直
    接の服務監督者である校長及びこれを補佐する教頭の責任について、
    人事上の措置を行うか否か、また、行う場合の人事上の措置の軽重等
    の検討内容が記載されており、これらの情報は、校長及び教頭にとっ
    て、他人に知られたくない情報である。
     したがって、本件行政文書に記載された、特定の個人が識別され、
    又は識別され得る本件職員の住所、氏名、年齢、職名、学校名、学校
    名が特定されやすい事項及び在職年月日並びに校長及び教頭の氏名、
    学校名、在職年月日及び退職年月日は、条例第5条第1号本文に該当
    する。
  (イ)「着服金の使途目的、厳重注意に関する履歴に関する事項」は、特定
    の個人を識別できないが、公開することにより、個人の権利利益を害
    するおそれがあり、同号本文に該当する。
  (ウ)「処分基準が推測できる事項」は、校長等の人事上の措置に関し、ど
    のような検討を行ったかを示すものであり、公開することにより、個
    人の権利利益を害するおそれがあり、同号本文に該当する。
  イ 条例第5条第1号ただし書該当性について
  (ア)本件行政文書に記載されている情報は、条例第5条第1号ただし書
    アの「法令又は条例の規定により何人にも閲覧、縦覧等又は謄本、抄
    本等の交付が認められている情報」及び同号ただし書エの「人の生命、
    身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが必要であ
    ると認められる情報」には当たらない。
  (イ)教育委員会には、非違行為を行った職員名を公にする慣行又はその
    予定はなく、本件行政文書に記載されている情報は、同号ただし書イ
    の「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」
    には当たらない。
  (ウ)神奈川県情報公開条例の解釈及び運用の基準では、公務員の職員と
    しての身分取扱いに係る情報は公務員の職務の遂行に係る情報には含
    まれないとされており、本件行政文書に記載されている情報は、同号
    ただし書ウに該当しない。
  ウ 条例第5条第4号該当性について
    「処分基準が推測できる事項」は、校長等の人事上の措置に関し、県
   教育委員会がどのようなことを根拠に、どのような懲戒処分等の措置を
   行うべきかを決定するための内部的な審査に関する情報であり、これを
   公開すると、処分等に関する基準が明らかになってしまい、今後の人事
   事務に支障が生じるおそれがあるため、条例第5条第4号に該当する。

4 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
   当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会
  審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は、不服申立人か
  ら口頭による意見を、また、実施機関の職員から口頭による説明を聴取し
  た。それらの結果も踏まえて次のとおり判断する。
(2)本件行政文書について
   本件行政文書は、市教育委員会から、本件職員による給食費及び親睦会
  費の着服に関して県教育委員会に対して提出された事故報告書並びに当該
  報告書に基づき本件職員の監督者である校長及び教頭の責任等を検討した
  伺い文書である。
(3)本件不服申立てについて
   本件不服申立ての対象は、非公開とされた情報のうち、本件職員の住所、
  氏名、学校名及び給食費の正確な着服金額並びに校長及び教頭の氏名(以
  下「本件不服申立対象情報」という。)であると認められ、実施機関は、当
  該情報が条例第5条第1号に該当するなど旨説明しているため、当審査会
  は、当該情報に係る同号該当性等について判断する。
(4)条例第5条第1号該当性について
   条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報の保護
  という二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人を尊重する観
  点から、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定している。
  ア 条例第5条第1号本文該当性について
  (ア)条例第5条第1号本文は、「個人に関する情報であって、特定の個人
    が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別するこ
    とはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害するおそ
    れがあるもの」(以下「個人情報」という。)を非公開とすることがで
    きるとしている。
     したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われ
    るものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも
    含めて非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。
  (イ)まず、本件不服申立対象情報のうち、本件職員の学校名について検
    討する。
     一般的に、教職員の所属する学校名のみから、特定の個人が識別さ
    れ、又は識別され得るものとは考えられず、判断に当たっては、対象
    文書の公開部分、該当し得る教職員数、容易に取得し得る他の情報等
    を勘案すべきである。
     本件行政文書の公開部分には、事故が特定の市の小学校で発生した
    ことや発生期間、本件職員の職種等が記載されており、本件職員の学
    校名を公開すると、特定の個人が識別され得ると認められるので、当
    該情報は、同号本文に該当すると判断する。
  (ウ)本件不服申立対象情報のうち、本件職員の住所及び氏名並びに校長
    及び教頭の氏名は、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報で
    あることが認められるので、同号本文に該当すると判断する。
  イ 条例第5条第1号ただし書該当性について
    条例第5条第1号ただし書は、個人情報であっても、例外的に公開で
   きる情報について規定している。
  (ア) 本件不服申立対象情報のうち、本件職員の住所、氏名及び前記ア(イ)
      で述べた性質を持つ学校名並びに校長及び教頭の氏名は、条例第5条
    第1号ただし書アの法令等の規定により何人にも閲覧等が認められて
    いる情報、同号ただし書ウの公務員の職務の遂行に関する情報又は同
    号ただし書エの人の生命、身体等を保護するため、公開することが必
    要であると認められる情報とは認められないので、同号ただし書ア、
    ウ又はエのいずれにも該当しないと判断する。
  (イ)条例第5条第1号ただし書イ該当性について
     条例第5条第1号ただし書イは、「慣行として公にされ、又は公に
    することが予定されている情報」については公開することを規定して
    いる。
     本件不服申立対象情報のうち、非違行為を行った本件職員の氏名及
    び学校名並びにその責任等を問われた校長及び教頭の氏名は、慣行と
    して公にされておらず、公にすることが予定されていないことが認め
    られるので、同号ただし書イに該当しないと判断する。
     また、本件職員の住所が、同号ただし書イに該当しないことは、明
    らかである。
 (5) 条例第6条第1項該当性について
  ア 条例第6条第1項は、公開請求に係る行政文書に非公開情報とそれ以
   外の情報が記録されている場合において、それらを「容易に、かつ、行
   政文書の公開を請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できると
   き」は、非公開情報に係る部分を除いて、公開をしなければならないと
   規定している。
  イ 本件行政文書については、当審査会が前記(4)において非公開とする
   ことが妥当であると認めた部分の範囲及び内容にかんがみると、その他
   の情報を分離して公開することは、「容易に、かつ、行政文書の公開を請
   求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」に該当すると判
   断する。
(6)その他
   不服申立人は、給食費の正確な着服金額を公開すべきである旨主張して
  いるが、当審査会が本件行政文書を見分したところ、金額の記載のある部
  分については、すべて公開されていることが認められる。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。



 別紙

           審査会の処理経過

年月日

処理経過

平成13年1月5日

○諮問書を受理

   2月5日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

 3月8日

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

      3月14日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

 3月19日

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する意見書を
 受理

      4月16日

○実施機関に非公開等理由説明書に対する意見書を送付

 12月5日

○指名委員により不服申立人から意見を聴取

○指名委員により実施機関の職員から非公開等理由説明を
 聴取

平成14年 3月13日

 (第8回部会)

○審議

 4月17日

 (第9回部会)

○審議

     5月2日

 (第10回部会)

○審議




          神奈川県情報公開審査会委員名簿

 

                            (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士( 横浜弁護士会 )

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

部会員

玉巻 弘光

東海大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

部会員

堀部 政男

中央大学教授

会長(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長

 

                                          (平成14年5月30日現在)(五十音順)

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • ラグビーワールドカップ2019
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa