答申第118号

掲載日:2017年12月1日

答申第118号

平成14年6月12日

神奈川県知事 岡崎 洋 殿

              神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

   行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

  平成12年6月9日付けで諮問された広域幹線道路都市計画意見書内容分析
委託関係書類一部非公開の件(諮問第104号)について、次のとおり答申しま
す。

1 審査会の結論

  高速横浜環状北線及び横浜湘南道路に係る平成 10 年度広域幹線道路都市
 計画意見書内容分析委託関係書類の非公開部分のうち、別表に掲げる部分は
 公開すべきである。

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
   不服申立ての趣旨は、高速横浜環状北線及び横浜湘南道路に係る平成10
  年度広域幹線道路都市計画意見書内容分析委託関係書類(以下「本件行政
  文書」という。)を神奈川県知事(以下「知事」という。)が、平成12年
  4月28日付けで一部非公開とした処分(以下「本件処分」という。)の取
  消しを求める、というものである。
(2)不服申立ての理由
   不服申立人の主張を総合すると、知事が本件行政文書については、(1)個
  人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得ること、
  (2)法人の事業活動に関する情報であって、公開することにより当該法人の
  正当な利益を害するおそれがあること、(3)県の機関内部における審議検討
  に関する情報であり、公開することにより意思決定の中立性が不当に損な
  われるおそれがあること、(4)県の機関が行う事業に関する情報であって、
  公開することにより県の財産上の利益を不当に害するおそれがあること
  から、神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)第5条第1号、第
  2号、第3号及び第4号に該当するとした一部非公開の処分は、次に掲げ
  る理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 条例第5条第1号該当の点について
    主任技術者は、私人として業務を行ったわけではなく、主任技術者経
   歴書等は知事に代わって業務を行う資格能力を調べるために提出させた
   ものであるから、個人に関する情報とはいえない。
  イ 条例第5条第2号該当の点について
    高速横浜環状北線及び横浜湘南道路の都市計画意見書の内容分析に係
   る2件の委託業務(以下「本件委託業務」という。)の受託業者は、私
   企業として業務を行ったわけではなく、口座名義人等は受託業者として
   信頼できるか否かを調べるために明らかにさせているものであり、法人
   の事業活動の調査を目的とするものではない。これらの情報を公開して
   も企業活動に支障をきたすとは思えない。
  ウ 条例第5条第3号該当の点について
    住民は、知事が本件の2つの都市計画案に関する住民の意見を正確に
   まとめたか否か、それに対し、知事がどのような見解を示すのかについ
   て、それが作成された時点で知る権利がある。知る権利を考える上で、
   いつ情報を得たのかは極めて重要な構成要件であり、時期を外せば死ん
   だ情報になってしまい、住民の参加権が奪われることになる。当該文書
   を公開することにより意思決定の中立性が損なわれることはない。むし
   ろ非公開処分こそが「中立性」を侵すものである。そもそも知事の処置
   方針は、知事が住民の意見を読んだ上で責任をもって作るべきものであ
   り、民間業者に委託すること自体問題である。本件のように、それぞれ
   の都市計画事業の事業予定者である首都高速道路公団(以下「公団」と
   いう。)及び建設省の契約業者に任せてしまえば、その内容は初めから
   決まったようなものである。
  エ 条例第5条第4号該当の点について
    本件委託業務は、それぞれの都市計画事業の事業予定者である公団及
   び建設省と、環境影響評価書等の作成を委託した契約業者との随意契約
   によって行われていることから、契約の公正さが疑われ、ひいては契約
   金額の妥当性にも疑問が生ずるおそれがある。したがって、予定価格調
   書は積極的に公開されるべきである。
  オ その他
  (ア)不服申立人が本件処分に係る閲覧を行った際に、本件委託業務に係
    る成果品(以下「報告書」という。)については、都市計画地方審議会
    (以下「都計審」という。)開催後は公開することが可能となることか
    ら、不服申立てが行われた場合には都計審終了後に処分変更して公開
    決定を行うことになる旨、都市計画課職員は説明している。
  (イ)しかし、処分の妥当性如何は、処分時点で検討されるべきであり、
    実施機関が当初の処分をその後に変更することによって、不服申立て
    の利益が喪失したと勝手に解釈して、審査会への諮問自体を行わない
    などということは許されるべきではない。実際には処分変更は行われ
    ず、実害はなかったが、このような説明の仕方は、公開請求権を十分
    尊重したものとはいえず、条例第2条の「実施機関は、行政文書の公
    開を請求する権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用
    するものとする」という規定に反するといわざるを得ない。

3 実施機関(県土整備部都市計画課)の説明要旨
  実施機関の説明を総合すると、本件行政文書を一部非公開とした理由は、
 次のとおりである。
(1)本件行政文書について
   本件行政文書は、高速横浜環状北線及び横浜湘南道路に係る平成10年度
  広域幹線道路都市計画意見書内容分析委託関係書類であり、その内訳は、
  執行伺票・支出命令票、請求書、完了検査調書、委託業務完了届、業務工
  程表、着手届、主任技術者指定通知書(横浜湘南道路分析委託においては、
  主任技術者等設置届)、主任技術者経歴書、委託契約書、見積書、委任状、
  予定価格調書、分析委託に係る起案書(以下「起案書」という。)設計書、
  仕様書及び報告書である。
(2)条例第5条第1号該当性について
   主任技術者指定通知書及び主任技術者等設置届の主任技術者氏名・住所、
  主任技術者経歴書に記載された事項並びに見積書及び委任状の代理人氏
  名・印影については、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、
  若しくは識別され得るものであることから、条例第5条第1号本文に該当
  し、また同号ただし書のいずれにも該当しない。
(3)条例第5条第2号該当性について
   執行伺票・支出命令票並びに請求書の取引先金融機関名、預金種別、口
  座番号及び口座名義人は、法人の事業活動に関する情報であり、公開する
  と当該法人の正当な利益を害するおそれがあることから、条例第5条第2
  号本文に該当し、同号ただし書には該当しない。
(4)条例第5条第3号該当性について
  ア 報告書は、都市計画法第18条第2項に基づき、都計審に付議するため
   の法定の審議資料を作成する必要上、委託契約により納品されたもので
   あり、住民の意見の要旨及びこれに対する知事の処置方針の資料作成の
   ための原稿となるものである。報告書は、納品後、実施機関の職員が関
   係機関と連絡を取りながら内容確認等の作業を繰り返し行い、必要な修
   正変更等を行った上で審議資料として取りまとめるため、納品時の報告
   書は未成熟な段階にとどまっている。したがって、これらの未成熟な情
   報が公開されると、住民に無用の誤解と混乱を与えるおそれがある。
  イ さらに、審議資料として取りまとめた時点であっても、都計審の開催
   前に公開することは、審議会委員同士の率直な意見の交換や議決に至る
   意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある。
  ウ 以上のことから、当該文書は、県の機関内部における審議検討に関す
   る情報であって、公開すると率直な意見交換や意思決定の中立性が不当
   に損なわれるおそれ及び不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがあ
   ることから、条例第5条第3号に該当する。
(5)条例第5条第4号該当性について
  ア 予定価格調書の予定価格、起案書の設計額並びに設計書の単価、金額
   及び摘要欄の金額・率については、公開されると契約における県の財産
   上の利益を不当に害するおそれが生ずるとともに、今後反復継続される
   同種の事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第
   5条第4号に該当すると考え、非公開とした。
  イ しかし、その後、公共工事の委託業務における積算の透明性、客観性
   及び妥当性をより確保するために、設計業務等標準積算基準書及び技術
   者単価表を平成12年8月1日から公表することとした。その結果、上記
   のアの情報は、すべてこれらの文書に含まれるか、又はこれらの文書か
   ら算出することができることとなったため、現時点で公開請求があれば
   公開することが可能である。
(6)その他
  ア 報告書については、その部分公開についても検討したが、実施機関と
   して公開可能と判断した受付整理番号一覧表については、全体が数字の
   データのみであり、これだけを公開しても請求趣旨を満たすことにはな
   らないと判断し、公開を請求する趣旨を損なわない程度に合理的に分離
   できるものと認められないため、全体を非公開とした。
  イ 報告書は、都計審の審議資料作成のための原稿(いわゆる素案)であ
   り、審議前は公開できないが、審議終了後は公開しても当該審議の支障
   とはならないことから、時限性公開についても検討したところ、本件処
   分時において本件に係る都市計画案を審議する第 170回都計審の開催日
   が決まっていなかったため、時限性公開を明示した処分は行わなかった。
    なお、不服申立人には、本件処分に係る閲覧のため来庁した際に、都
   計審終了後は公開できる旨の説明を行っている。
  ウ また、報告書については、都計審終了後であれば公開できるため、処
   分変更を行うことも可能であったが、不服申立人は、処分変更により公
   開されれば、報告書の非公開処分が諮問されないこととなり、不服申立
   ての権利が侵害されると主張していたため、処分変更は行わなかった。

4 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
  ア 行政文書の公開請求に係る諾否の決定に対する不服申立てについて、
   実施機関が当審査会に諮問する趣旨は、条例第5条で規定する適用除外
   事項の該当性等を実施機関が改めて判断する際の意見を求めているもの
   と解される。したがって、当該諾否の決定後に事実状態等に変動があっ
   たときには、処分時の事実状態等によって判断しなければならない特段
   の事情が存在しない限り、当審査会は事実状態等のその後の変動をも考
   慮して審議できるものと考える。
  イ 当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査
   会審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は実際に、不
   服申立人及び実施機関の職員から口頭による意見及び説明を聴取した。
   その結果も踏まえて次のとおり判断する。
(2)本件行政文書について
   本件行政文書は、高速横浜環状北線及び横浜湘南道路に係る都市計画案
  の公告縦覧において関係市町村の住民及び利害関係人から提出された意見
  書の内容分析に係る委託関係書類であり、平成10年度に処理されたもので
  ある。その内訳は、執行伺票・支出命令票、請求書、完了検査調書、委託
  業務完了届、業務工程表、着手届、主任技術者指定通知書(横浜湘南道路
  分析委託においては、主任技術者等設置届)、主任技術者経歴書、委託契
  約書、見積書、委任状、予定価格調書、起案書、設計書、仕様書及び報告
  書である。
(3)報告書、予定価格調書、起案書及び設計書の非公開部分について
  ア 報告書については、前記3(6)において実施機関が説明しているとお
   り、都計審終了後であれば公開しても当該審議の支障とはならないため、
   条例第5条第3号には該当しないと判断する。
  イ 予定価格調書の予定価格(入札書比較価格を含む)、起案書の設計額並
   びに設計書の設計額、単価、金額、摘要欄の金額及び率については、前
   記3(5)イにおいて実施機関が説明しているとおり、設計業務等標準
   積算基準書及び技術者単価表の公表に伴い、諾否決定時に非公開とされ
   た情報は、これらの文書に含まれるか、又はこれらの文書から算出する
   ことができることとなったため、条例第5条第4号には該当しないと判
   断する。
  ウ したがって、以下、当該部分を除く非公開部分について判断する。
(4)条例第5条第1号該当性について
  ア 条例第5条第1号本文該当性について
  (ア)条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報の
    保護という二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人を尊
    重する観点から、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規
    定している。そして、同号本文は、「個人に関する情報であって、特
    定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識
    別することはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害
    するおそれがあるもの」(以下「個人情報」という。)を非公開とす
    ることができるとしている。
     したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われ
    るものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも
    含めて非公開とすることを明文で定めたものと解される。
  (イ)本件行政文書のうち、次に掲げる部分は、個人に関する情報であっ
    て、特定の個人が識別され、若しくは識別され得ることから、条例第
    5条第1号本文に該当すると判断する。
    a 主任技術者指定通知書のうち主任技術者の「氏名」
    b 主任技術者等設置届のうち主任技術者の「氏名」及び「住所」
    c 主任技術者経歴書
    d 見積書の代理人の「氏名」及び「印影」
    e 委任状の代理人の「氏名」及び「印影」
  イ 条例第5条第1号ただし書該当性について
  (ア)条例第5条第1号ただし書は、同号本文に該当する個人情報であっ
    ても、例外的に公開できる情報について規定している。
  (イ)条例第5条第1号ただし書ア該当性について
    a 条例第5条第1号ただし書アは「法令又は条例(以下「法令等」
     という。)の規定により何人にも閲覧、縦覧等又は謄本、抄本等の交
     付が認められている情報」については公開することを規定している。
    b 本件委託業務における主任技術者は、建設業法等で建設工事現場
     に氏名及び資格名等を記載した標識の掲示等を義務づけられる場合
     等と異なり、法令等に定められた資格ではなく、県と本件委託契約
     を締結するに当たって、受託業者が当該業務の責任者としてその従
     業員を主任技術者として位置づけたにすぎず、本件委託業務の要件
     となっているわけではない。したがって、前記(4)ア(イ)a か
     ら cまでの主任技術者に関する情報については、法令等により何人
     にも閲覧等が認められている情報とはいえず、条例第5条第1号た
     だし書アに該当しないと判断する。また、前記(4)ア(イ)d及
     びeについても同様に同号ただし書アに該当しないと判断する。
  (ウ)さらに、上記(4)ア(イ)に掲げた情報は、同号ただし書イの「慣
    行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」、ただし
    書ウの「公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る情報」又はただし
    書エの「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開
    することが必要であると認められる情報」のいずれにも該当しないと
    判断する。
(5)条例第5条第2号該当性について
  ア 条例第5条第2号本文該当性について
  (ア)条例第5条第2号本文は、「法人その他の団体(国及び地方公共団体
    を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の
    当該事業に関する情報であって、公開することにより当該法人又は当
    該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある
    もの」は非公開とすることができると規定している。
  (イ)本件行政文書のうち、執行伺票・支出命令票に記載された「取引先
    金融機関名」、「預金種別」、「口座番号」及び「口座名義人」並びに請
    求書に記載された「取引先金融機関名」、「預金種別」及び「口座番号」
    の情報は、法人等に関する情報であると認められる。
     また、これらの情報は、法人等が事業活動を行う上での内部管理の
    事項に属する情報であって、法人等の顧客である商取引上の債務者に対し
    て、支払のために当該法人等が知らせる性格のものであることから、商
    取引と関係なく公開することにより、法人等の事業運営が損なわれると
    認められる。
     以上のことから、これらの情報は、同号本文に該当すると判断する。
  イ 条例第5条第2号ただし書該当性について
    条例第5条第2号ただし書は、同号本文に該当する情報であっても、
   「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開すること
   が必要であると認められる」場合には、例外的に公開できると規定して
   いる。
    しかし、これらの情報は、上記ア(イ)で述べたように、法人等が事
   業活動を行う上での内部管理の事項に関する情報であり、人の生命、身
   体等を保護するため、公開することが必要であると考えるべき特段の事
   情が認められないことから、同号ただし書には該当しないと判断する。

(6)その他
   前記2(2)オの不服申立人の主張の趣旨は理解できないわけではない
  が、当審査会としては、本諮問案件において処分時の事実状態等によって
  判断しなければならない特段の事情があるとは認められない。

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別表

文書名

該当部分

 予定価格調書

 予定価格(入札書比較価格を含む)

 起案書

 設計額

 設計書

 設計額、単価、金額、摘要欄の金額及び率

 報告書

 全部

別紙

               審査会の処理経過

 

 

平成12年6月9日

○諮問

      6月30日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

      7月31日

○実施機関から非公開理由説明書を受理

      8月16日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

平成13年9月20日

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する
 意見書を受理

      9月25日

○実施機関に非公開等理由説明書に対する意見
 書を送付

     10月19日

○指名委員により不服申立人から意見を聴取
○指名委員により実施機関の職員から非公開等
 理由説明を聴取

     10月25日
   (第3回部会)

○審議

平成14年2月6日
   (第7回部会)

○審議

      3月14日
   (第8回部会)

○審議

      5月13日
   (第10回部会)

○審議

            神奈川県情報公開審査会委員名簿

                           (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

部会員

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

 

玉巻 弘光

東海大学教授

部会員

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長
(部会長を兼ねる)

松井 薫子

元県立高等学校校長

 

  (平成14年6月12日現在)(五十音順)

本文ここまで
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