答申第122号

掲載日:2017年12月1日

答申第122号

 

                                                  平成14年11月13日

 

 

神奈川県知事 岡崎 洋 殿

 

 

                              神奈川県情報公開審査会  会長 堀部 政男

 

 

 

   行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 

 

 平成13年8月17日付けで諮問された法人事業税確定申告書非公開の件(諮
問第204号)について、次のとおり答申します。

 

 

1 審査会の結論

神奈川県の特定の県税事務所が管理する法人事業税の確定申告書のうち、
建設業及び化学業を営む資本金額上位20社の平成11年中に事業年度が始ま
る確定申告書記載の事業種目、期末現在の資本等の金額の合計額、事業年度
開始の年及び合計事業税額を非公開としたことは、妥当である。

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨

不服申立ての趣旨は、神奈川県の特定の県税事務所(以下「県税事務所」
という。)が管理する法人事業税の確定申告書のうち、建設業及び化学業を
営む資本金額上位20社の平成11年中に事業年度が始まる確定申告書(以
下「本件行政文書」という。)記載の事業種目、期末現在の資本等の金額の
合計額、事業年度開始の年及び合計事業税額(以下「本件非公開部分」と
いう。)を神奈川県知事(以下「知事」という。)が平成13年3月12日付
けで非公開とした処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める、と
いうものである。

(2)不服申立ての理由

不服申立人の主張は、知事が本件非公開部分について、特定の法人が識
別され得ることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあること及
び地方税法第22条の規定により守秘義務が課されている情報であること
から、神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)第5条第2号及び第
7号に該当するとした非公開の処分は、次に掲げる理由から、条例の解釈
及び運用を誤っている、というものである。

ア 条例第5条第2号該当の点について

不服申立人の知りたい内容は、建設業及び化学業を営む資本金額上
位20社の「合計」法人事業税額であるが、これを統計化した資料は存
在せず、情報提供もできないとのことであったので、やむを得ず法人
事業税の確定申告書の一部を情報公開請求したものである。

また、請求対象については、事前に情報公開課及び税務課と相談し、
会社名や所在地はもちろん、所得金額等も請求対象から外し、必要最
低限の情報である本件行政文書記載の事業種目、期末現在の資本等の
金額の合計額、事業年度開始の年及び合計事業税額に限定した。

このように、上位20社についての限定された情報公開とすることに
より、法人事業税の確定申告書自体は秘密に属する情報であっても、
統計のように素材が処理、加工され、結果として個々の法人等が識別
できなくなるため、法人の特定可能性の問題は解消され、法人の不利
益情報には当たらないと判断した。

また、不服申立人は、情報公開課及び税務課との相談の過程において、
費用対効果の問題の指摘を受け、法人事業税の確定申告書の取扱いの最
も少ない県税事務所を選択したものであって、事前相談の段階において
「特定の法人の識別可能性」の問題は解決されたと考えている。

イ 条例第5条第7号該当の点について

法人事業税の確定申告書の文書全体は守秘義務の課せられている文
書であるが、公開部分を事業種目、期末現在の資本等の金額の合計額、
事業年度開始の年及び合計事業税額に限定することにより、公開して
も法人の特定可能性がなくなっており、守秘義務には違反しない。

法人事業税額は、有価証券報告書を提出する大手企業では、数年前ま
では開示していた。国税の法人税についても、業種別かつ資本金別の合
計法人税額の統計が公開されている。したがって、有価証券報告書や国
税の扱いとの均衡を考えると、守秘義務を理由に公開拒否するのは合理
的ではない。

 

3 実施機関(県税事務所)の説明要旨

実施機関の説明を総合すると、本件非公開部分を非公開とした理由は、次
のとおりである。

(1)本件行政文書について

本件行政文書は、県税事務所が管理する法人事業税の確定申告書のうち、
建設業及び化学業を営む資本金額上位20社の平成11年中に事業年度が始
まる確定申告書であり、不服申立人が公開請求したのは、これら確定申告
書記載の事業種目、期末現在の資本等の金額の合計額、事業年度開始の年
及び合計事業税額である。

(2)条例第5条第2号該当性について

不服申立人が知りたいとする情報は、公開請求の対象となった法人の
法人事業税額の合計であるが、これに関して統計化されたものがないた
め、個々の法人の法人事業税の確定申告書の事業種目、期末現在の資本
等の金額の合計額、事業年度開始の年及び合計事業税額について公開請
求したものである。

しかし、特定の法人の資本金額は、市販の企業情報誌、有価証券報告書、
法人の商業登記簿等により知り得るので、資本金の欄と税額の欄を公開す
ると、資本金額から法人が特定される可能性があり、この場合、特定の法
人の税額が明らかとなり、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利
益を害するおそれがあるため、条例第5条第2号に該当する。

また、不服申立人は、実施機関との事前相談の段階において「特定の法
人の識別可能性」の問題は解決されたと主張するが、実施機関は、資本金
の階層別の合計事業税額のような統計化された資料について情報提供する
ことに関しては事前相談を受けていたものの、法人事業税の確定申告書の
情報公開における「特定の法人の識別可能性」の問題は解決されていなか
った。

(3)条例第5条第7号該当性について

ア 条例の解釈及び運用の基準(平成13年4月)において、条例第5条第
7号に規定する「公開することができないとされている情報」とは、法
令等から見て明らかに公開することができないと判断され得る情報をい
うとされており、これに該当する情報として「地方税法等の特別法によ
り守秘義務が課せられている情報」を挙げ、具体例として県税申告書が
例示されている。

  法人事業税の申告内容については、国税の法人税のように一定額以上
の所得がある法人を公示する制度(法人税法第152条)はなく、法人事
業税の確定申告書はあくまで納税義務を履行するために提出されたもの
であることから、確定申告書自体が守秘義務を課されている非公開情報
である。

イ 確定申告書をマスキングすることにより法人の特定可能性がなくなれ
ば、これを公開することは地方税法第22条の守秘義務に違反せず、条例
第5条第7号に該当しないと考えられるが、資本金と業種を組み合わせ
ると法人の特定はかなり容易であるので、この部分を公開することは、
地方税法第22条の守秘義務に違反するため、条例第5条第7号に該当す
る。

 

4 審査会の判断理由

(1)審査会における審査方法

当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会
審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は、実施機関の職
員から口頭による説明を聴取した。なお、不服申立人については、意見陳
述を希望しなかったため、口頭による意見聴取を行わなかった。この結果
も踏まえて次のとおり判断する。

(2)本件行政文書について

本件行政文書は、県税事務所が管理する法人事業税の確定申告書のうち、
建設業及び化学業を営む資本金額上位20社の平成11年中に事業年度が始
まる確定申告書であり、不服申立人が公開請求したのは、これら確定申告
書記載の事業種目、期末現在の資本等の金額の合計額、事業年度開始の年
及び合計事業税額である。

(3)条例第5条第2号該当性について

ア 条例第5条第2号本文該当性について

(ア)条例第5条第2号本文は、「法人その他の団体(国及び地方公共団体
を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の
当該事業に関する情報であって、公開することにより当該法人又は当
該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある
もの」は非公開とすることができると規定している。

(イ)本件非公開部分には、法人名こそ含まれていないが、期末現在の資
本等の金額の合計額、合計事業税額等が含まれており、市販の企業情
報誌、有価証券報告書、法人の商業登記簿等を調べることにより、資
本金額から法人が特定される可能性があるため、本件非公開部分を公
開すると、特定の法人の法人事業税額が知られることとなり、当該法
人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認
められる。

   したがって、本件非公開部分は、条例第5条第2号本文に該当する
と判断する。

イ 条例第5条第2号ただし書該当性について

条例第5条第2号ただし書は、同号本文に該当する情報であっても、
「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開すること
が必要であると認められる」場合には、例外的に公開できると規定して
いる。

しかし、これらの情報は、上記ア(イ)で述べたように、法人事業税
に関する情報であり、人の生命、身体等を保護するため、公開すること
が必要であると考えるべき特段の事情が認められないことから、同号た
だし書には該当しないと判断する。

(4)条例第5条第7号該当性について

ア 条例第5条第7号は、「法令等の規定(中略)により、公開することが
できないとされている情報」は非公開とすることができると規定してい
る。

イ 地方税法第22条は、「地方税に関する調査に関する事務に従事してい
る者又は従事していた者は、その事務に関して知り得た秘密を漏らし、
又は窃用した場合」には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処す
ると規定しており、地方税に関する調査に関する「事務に関して知り得
た秘密」とは、税務職員がその事務に関して知ることができた私人の収
入額、所得額、課税標準額、税額等と解される。

ウ 不服申立人は、法人事業税の確定申告書の文書全体に守秘義務が課
せられていることは認めているものの、公開部分を事業種目、期末現
在の資本等の金額の合計額、事業年度開始の年及び合計事業税額に限
定することにより、公開による法人の特定可能性はなくなっており、
守秘義務には違反しないと主張する。また、実施機関も、法人の特定
可能性がなくなれば、地方税法第22条の守秘義務に違反しないと説明
する。

エ しかし、本件非公開部分には、期末現在の資本等の金額の合計額、
合計事業税額等が記載されており、前記(3)ア(イ)で述べたとお
り、市販の企業情報誌、有価証券報告書、法人の商業登記簿等を調べ
ることにより、資本金額から法人が特定される可能性があると考えら
れることからすると、地方税法第22条の守秘義務に違反しないとはい
えない。

オ また、不服申立人は、有価証券報告書を提出する大手企業では、数年
前までは法人事業税額を開示していたし、国税の法人税についても、業
種別・資本金額別の合計法人税額の統計が公開されているので、これら
有価証券報告書や国税の扱いとの均衡を考慮すると、守秘義務を理由に
法人事業税額の公開を拒否することは合理的でないと主張する。しかし、
実施機関の説明及び当審査会の調査によると、次のことが認められる。

(ア)有価証券報告書を提出する法人は、証券取引法の適用を受ける法人
であって、5億円以上の有価証券を公募する法人に限られている上、
現行の「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和
38年大蔵省令第59号)第95条の5第1項第1号において、有価証券
報告書中の損益計算書に記載しなければならない科目として掲げられ
ているのは、「法人税、住民税及び事業税」の合計額であり、有価証券
報告書から法人事業税額を知ることができるとはいえない。

(イ)地方税法には、法人税法第152条による公示制度に対応する制度は
規定されていない。

(ウ)神奈川県においては、業種別・資本金額別の合計法人事業税額の統
計は作成されていない。

こうしたことからすると、不服申立人が主張するように、有価証券報
告書や国税の扱いとの均衡から、直ちに本件非公開部分を公開すること
が地方税法第22条の守秘義務に違反しない、とまで解することは困難
である。

カ 以上のことから、本件非公開部分は地方税法第22条の守秘義務が課さ
れている情報であり、条例第5条第7号に該当すると判断する。

 

5 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

別紙

審査会の処理経過

年月日

処理内容

 平成13年8月17日

○諮問

       8月22日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

       9月20日

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

      10月1日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

 平成14年6月12日

   (第11回部会)

○審議

       7月17日

 

○指名委員により実施機関の職員から非公開等理由説明を聴取

       7月25日

   (第12回部会)

○審議

       8月14日

   (第13回部会)

○審議

      10月29日

   (第14回部会)

○審議

 

 

           神奈川県情報公開審査会委員名簿

                                                   (平成13年4月1日委嘱)

 氏名

 現職又は前職

備考

 川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

 

 小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

 鈴木 敏子

 横浜国立大学教授

 平成14年7月1日委嘱

 田中 隆三

 弁護士(横浜弁護士会)

 部会員

 玉巻 弘光

 東海大学教授

 

 千葉 準一

 東京都立大学教授

 部会員

 堀部 政男

 中央大学教授

 会長(部会長を兼ねる)

             (平成14年11月13日現在)(五十音順)

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • ラグビーワールドカップ2019
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa