答申第124号

掲載日:2017年12月1日

答申第124号

 

                             平成14年12月17日

 

 

 神奈川県教育委員会 委員長 相吉 靖 殿

 

              神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

 

 

 

     行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 

 

 平成14年2月7日付けで諮問された特定教諭の出勤簿非公開の件(諮問第218号)
について、次のとおり答申します。

 

 

 

1 審査会の結論
  特定の県立学校教員の平成10年の出勤簿のうち、当該教員の職名及び氏名、整理
 保管者印、出勤認印欄の週休日に当たる日曜日及び土曜日並びに休日の部分、出勤
 の押印、出張及び研修の表示(出勤の押印と時間休暇の表示が重ねて記載されてい
 る場合等を除く。)、出張に係る月別及び累計の集計欄の記載並びに様式に係る部
 分は、公開すべきである。

 

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
   不服申立ての趣旨は、特定の県立学校教員(以下「本件教員」という。)の平
  成10年の出勤簿(以下「本件行政文書」という。)を県教育委員会が平成13年12
  月28日付けで非公開とした処分の取消しを求める、というものである。
(2)不服申立ての理由
   不服申立人の主張を総合すると、県教育委員会が本件行政文書には、個人に関
  する情報であって、特定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定
  の個人を識別することはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害
  するおそれがあるものが記録されていることから、神奈川県情報公開条例(以下
  「条例」という。)第5条第1号に該当するとした非公開の処分は、次に掲げる
  理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものである。
  ア 判例及び国の情報公開審査会答申は、出勤簿の一部を公開すべきであると判
   断しており、これに反する県教育委員会の決定は誤りである。
  イ 出勤簿は、公務員が公務を行っていたか否かを記載した文書であり、給与を
   支払うために、県民に公開することを前提に作成される性格のものである。出
   勤簿に年次休暇や特別休暇等の表示がなされているとしても、それは単なる分
   類にすぎず、休暇中の行動内容を示すものではないので、公務員の私生活に関
   する情報とはいえない。
  ウ 仮に、年次休暇等の表示が私生活に関する情報であるとしても、当該部分の
   みを非公開とすればよいのであって、分離が困難であるとの実施機関の説明は
   正当な理由には当たらない。

 

3 実施機関(県立学校)の説明要旨
  実施機関が本件行政文書を非公開とした理由は、次のとおりである。
(1)条例第5条第1号該当性について
   出勤簿には出勤日だけではなく、年次休暇等の教職員の私生活に関する事項が
  記載されており、これらの情報を公開することにより、当該教職員個人の権利利
  益を害するおそれがあるので、条例第5条第1号本文に該当する。
   また、これらの情報は、慣行として公にされ、又は公にすることが予定されて
  いる情報ではなく、公務員の職務の遂行に関する情報にも当たらないので、条例
  第5条第1号ただし書に該当しない。
(2)条例第6条第1項該当性について
   年次休暇等の取得は、それをいつ取得するかという点を含めて、私生活と深い
  関係にあるので、たとえ年次休暇等の表示を分離して一部非公開としても、非公
  開とされた日に私的な事由が生じたことが容易に推測できることとなる。
   このことから、出勤簿については、公開できる情報と非公開とすべき情報が渾
  然一体となった文書であるといえ、条例第6条第1項の「容易に、かつ、行政文
  書の公開を請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」に該当しな
  い。

 

4 審査会の判断理由
(1)本件行政文書について
   本件行政文書は、本件教員の平成10年の出勤簿である。出勤簿は、各教職員に
  つき暦年ごとに一葉の様式となっており、年次休暇日数欄、職名欄、氏名・職員
  番号欄、整理保管者印欄、1月から12月までの日付の記載された出勤認印欄及び
  集計欄が設けられている。なお、集計欄は、出張、年次休暇、療養休暇、その他
  の有給休暇、介護休暇、職務専念義務免除、欠勤及び部分休業の区分ごとに、月
  別及び累計の日数等を記載するものである。
   県立学校職員服務規程(以下「服務規程」という。)第13条第2項は、「職員
  (校長を除く。)は、定刻までに出勤したときは、出勤簿(第17号様式)に自ら
  押印しなければならない」と規定しており、出勤認印欄には、出勤の場合は教職
  員本人の印が押印され、出張、研修、職務専念義務免除、休暇等の場合はその内
  容に応じた表示がなされることが認められる。なお、通常、週休日に当たる日曜
  日及び土曜日並びに休日の部分については、特段の表示はなされていない。
(2)条例第5条第1号該当性について
   条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報の保護という
  二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人を尊重する観点から、個人
  に関する情報を原則的に非公開とすることを規定している。
  ア 条例第5条第1号本文該当性について
  (ア)条例第5条第1号本文は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識
    別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできな
    いが、公開することにより、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」
    (以下「個人情報」という。)を非公開とすることができるとしている。
     したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われるもの
    はもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含めて非公開
    とすることを明文をもって定めたものと解される。
  (イ)本件行政文書のうち、様式に係る部分を除いた本件教員の職名、氏名、職
    員番号及びその出勤、出張、研修、職務専念義務免除、休暇等の状況に係る
    情報並びに整理保管者印については、公開することにより、特定の個人が識
    別され、又は識別され得る情報であることが認められるので、同号本文に該
    当すると判断する。
  (ウ)学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例(以下「休暇条例」という。)
    第2条第5項は、原則として日曜日及び土曜日を週休日(勤務時間を割り振
    らない日をいう。)とすると規定しており、同第4条は、原則として国民の
    祝日に関する法律に定める休日及び年末年始を休日とすると規定している。
     このことから、通常、これらの日に教職員が勤務しないことは明らかであ
    るので、本件行政文書の出勤認印欄のうち、出勤の押印等のない週休日に当
    たる日曜日及び土曜日並びに休日の部分は、公開することにより、特定の個
    人が識別され、又は識別され得る情報であるとは認められず、同号本文に該
    当しないと判断する。
  イ 条例第5条第1号ただし書該当性について
  (ア)条例第5条第1号本文に該当する情報であっても、同号ただし書ア、イ、
    ウ又はエに該当するものは、公開するとされている。
  (イ)本件行政文書は、条例第5条第1号ただし書アの法令等の規定により何人
    にも閲覧等が認められている情報又は同号ただし書エの人の生命、身体等を
    保護するため、公開することが必要であると認められる情報とは認められな
    いので、同号ただし書ア又はエのいずれにも該当しないと判断する。
  (ウ)条例第5条第1号ただし書イ該当性について
     条例第5条第1号ただし書イは、「慣行として公にされ、又は公にするこ
    とが予定されている情報」については公開することを規定している。
     本件行政文書のうち、本件教員の氏名、出勤の押印及び整理保管者印につ
    いては、これらを公開することにより、本件教員及び出勤簿の整理保管者が
    識別されることとなるが、公務員の職務の遂行に関連する教職員の氏名は、
    職員録等により公にされていることから、これらの情報は同号ただし書イに
    該当すると判断する。
  (エ)条例第5条第1号ただし書ウ該当性について
     条例第5条第1号ただし書ウは、「公務員の職及び当該職務遂行の内容に
    係る情報」については公開することを規定している。
    a 本件行政文書のうち、本件教員の職名は、公務員の職に関する情報に当
     たり、また、出勤の押印、出張及び研修の表示並びに出張に係る月別及び
     累計の集計欄の記載については、次のような性格を有するものであること
     が認められる。
    (a)出勤の押印は、教職員が当該日に出勤し職務に従事していたことを示
      すものであること。
    (b)出張の表示及びその集計欄の記載は、職務命令を受けて、教職員が当
      該日に用務先に出向き、所要の用務に従事していたこと及びその日数を
      示すものであること。
    (c)研修の表示は、職務命令を受けて、教職員が職務の遂行に必要な知識、
      技能等を習得するために研修に参加していたことを示すものであること。
      以上のことから、これらの情報は、公務員の職及び職務の遂行の内容に
     関する情報であると認められるので、同号ただし書ウに該当すると判断す
     る。
    b 職務専念義務免除の表示は、職務に専念する義務の特例に関する条例に
     基づき、特定の事由により本来の職務への従事を免除されたことを示すも
     のであって、本件教員の分掌する職務の遂行の内容に関する情報とは認め
     られない。したがって、職務専念義務免除の表示並びにその月別及び累計
     の集計欄の記載は、同号ただし書ウに該当しないと判断する。
    c 次に、不服申立人が年次休暇等の表示は分類にすぎず、本件教員の休暇
     中の行動内容を示すものではないことを理由に、公開すべき旨主張してい
     るので、この点について検討する。
    (a)休暇条例に規定する年次休暇等の休暇はもとより、地方公務員の育児
      休業等に関する法律に基づく育児休業及び部分休業並びに服務規程第16
      条第1項に規定する欠勤の状況に係る情報は、教職員の私生活に関する
      情報であると認められ、これらの表示を公開することにより、休暇等の
      取得等に係る理由、時期及び期間という教職員の私生活に密接に関わる
      情報が明らかになるものといわざるを得ない。
       したがって、これらの表示並びにこれらに係る月別及び累計の集計欄
      の記載は、公務員の職務の遂行の内容に関する情報であるとは認められ
      ないので、同号ただし書ウに該当しないと判断する。
    (b)週休日又は休日の振替日については、休暇条例第15条の規定に基づき、
      実施機関が教職員に週休日又は休日に特に勤務を命ずる必要がある場合
      に、実施機関の裁量によって教職員ごとに個別に勤務日を週休日又は休
      日に変更するものである。したがって、当該振替日は本件教員の勤務日
      と密接な関係があるといえるが、当該振替日に本件教員が勤務していな
      いことは明らかであるので、これらの表示は、公務員の職務の遂行の内
      容に関する情報であるとは認められず、同号ただし書ウに該当しないと
      判断する。
 (3) 条例第6条第1項該当性について
  ア 条例第6条第1項は、公開請求に係る行政文書に非公開情報とそれ以外の情
   報が記録されている場合において、それらを「容易に、かつ、行政文書の公開
   を請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」は、非公開情報に
   係る部分を除いて、公開をしなければならないと規定している。
  イ 本件行政文書については、前記 (2)で述べたとおり、出勤認印欄の出勤の押
   印、出張及び研修の表示の部分を公開し、その他の部分を非公開としても、当
   該非公開部分からは、単に出勤、出張又は研修ではないという情報が明らかに
   なるにすぎず、休暇等の内訳が明らかになるものではないことから、条例第5
   条第1号の非公開情報を公開することにはならない。このように、当審査会が
   非公開とすることが妥当であると認めた部分の範囲及び内容にかんがみると、
   その他の情報を分離して公開することは、「容易に、かつ、行政文書の公開を
   請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」に該当すると判断す
   る。
  ウ なお、出勤認印欄に出勤の押印と時間休暇の表示が重ねて記載されている場
   合等については、公開すべき情報と非公開とすべき情報が同一箇所に記録され
   ていることとなるが、この場合は、「容易に、かつ、行政文書の公開を請求す
   る趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」に該当せず、当該部分は非
   公開とすべきであると判断する。

 

5 審査会の処理経過
  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

 

 

別紙

                審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成14年2月7日

 

○諮問

 

    2月18日

 

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

 

    3月11日

 

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

 

    3月15日

 

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

 

    4月23日

 

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する意見書を受理

 

    6月12日
 (第11回部会)

○審議

 

    7月25日
 (第12回部会)

○審議

 

    8月14日
 (第13回部会)

○審議

 

    11月13日
 (第15回部会)

○審議

 

 

 

 

             神奈川県情報公開審査会委員名簿

 

                               (平成13年4月1日委嘱)

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士 ( 横浜弁護士会 )

 

小林 重敬

横浜国大学教授

会長職務代理者

鈴木 敏子

横浜国立大学教授

平成14年7月1日委嘱

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

部会員

玉巻 弘光

東海大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

部会員

堀部 政男

中央大学教授

会長
(部会長を兼ねる)

                          (平成14年12月17日現在) (五十音順)

 

本文ここまで
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