答申第126号

掲載日:2017年12月1日

答申第126号

 

                                               平成15年2月4日

 

 

神奈川県教育委員会 委員長 相吉 靖  殿

 

      神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

                                                                           

 

   行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 

 

 平成13年6月14日付けで諮問された特定の県立高校教員に係る出勤簿非公
開の件(諮問第199号)について、次のとおり答申します。

 

 

1 審査会の結論

特定の県立高等学校の教員2名の平成12年11月1日から平成13年3月
20日までの間の出勤簿のうち、当該教員らの職名及び氏名、整理保管者印、
出勤認印欄の週休日に当たる日曜日、毎月の第2土曜日及び第4土曜日並び
に休日の部分、出勤の押印及び出張の表示(出勤の押印と時間休暇の表示が
重ねて記載されている場合等を除く。)、出張に係る月別及び累計の集計欄の
記載並びに様式に係る部分は、公開すべきである。

 

2 不服申立人の主張要旨

(1)不服申立ての趣旨

不服申立ての趣旨は、特定の県立高等学校の教員2名(以下「本件教員」
という。)の平成12年11月1日から平成13年3月20日までの間の出勤簿
を、神奈川県教育委員会(以下「教育委員会」という。)が、平成13年4
月4日付けで非公開とした処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求
める、というものである。

(2)不服申立ての理由

不服申立人の主張を総合すると、教育委員会が本件行政文書には、個人
に関する情報であって、特定の個人が識別され、若しくは識別され得るも
の又は特定の個人を識別することはできないが、公開することにより、個
人の権利利益を害するおそれがあるものが記録されていることから、神奈
川県情報公開条例(以下「条例」という。)第5条第1号に該当するとした
非公開の処分は、次に掲げる理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、
というものである。

ア 出勤簿に記載された地方公務員の出勤状況は、最も基本的な職務遂行
の内容の一つである。仕事は、原則として出勤して行われるものであり、
各人の出勤状況を表すのが出勤簿である。したがって、出勤簿は、本来、
勤務を記すものであって、休暇を記すものではない。

イ 年次休暇等の休暇を取ることは勤労者としての公務員の権利であり、
それを何に用いるかは本人の自由であるが、それを取る時期、期間につ
いては、勤務との調整が必要であり、したがってそれは職務遂行の内容
に重大な関係を持つ。逆に、出勤状況の公開によって出勤の反面である
休暇・欠勤の日が公開される結果になったとしても、当該公務員の不利
益はないに等しい。なお、休暇の中身は非公開でよい。

ウ もし、教育委員会が、出勤簿について、個人の権利利益を害するおそ
れがあるために非公開とするべきであると主張するのであれば、どのよ
うな権利又は利益をどのように害するおそれがどの程度あるのか、具体
的に明らかにすべきである。

 

3 実施機関(県立高等学校)の説明要旨

実施機関の説明を総合すると、本件行政文書を非公開とした理由は、次の
とおりである。

(1)条例第5条第1号該当性について

出勤簿は、忌引休暇、育児休暇等の職員の知られたくない個人的事項が
記載されているものであり、これらの休暇等を取得するか、あるいはいつ
取得するかは、私生活と深い関係がある。このことから、出勤簿は、たと
えこれらの休暇等を除いて一部公開をしたとしても、非公開としたことに
より、その日に私的な事項があったことは容易に推測できる。

また、休暇の中にも、年次休暇、忌引休暇、療養休暇等があり、その種
類により記載の方法が異なるので、休暇を取った記録から個人の私生活に
関する事項が推測される場合がある。

したがって、これらの情報は、条例第5条第1号に該当する。

(2)条例第6条第1号該当性について

出勤簿は、非公開の部分と公開できる公の部分が渾然一体となっており、
個々の休暇を非公開としても取得状況が推測されるため、条例第6条第1
号に規定する部分的な公開は難しく、全部を非公開とすることにより、初
めて個人の権利利益を害するおそれがない文書となる。

 

4 審査会の判断理由

(1)審査会における審査方法

当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会
審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は、不服申立人か
ら口頭による意見を、また実施機関の職員から口頭による説明を聴取した。
それらの結果も踏まえて次のとおり判断する。

(2)本件行政文書について

本件行政文書は、本件教員の平成12年11月1日から平成13年3月20
日までの間の出勤簿である。出勤簿は、各教職員につき暦年ごとに一葉の
様式となっており、年次休暇日数欄、職名欄、氏名・職員番号欄、整理保
管者印欄、1月から12月までの日付の記載された出勤認印欄及び集計欄が
設けられている。なお、集計欄は、出張、年次休暇、療養休暇、その他の
有給休暇、介護休暇、職務専念義務免除、欠勤及び部分休業の区分ごとに、
月別及び累計の日数等を記載するものである。

県立学校職員服務規程(以下「服務規程」という。)第13条第2項は、
「職員(校長を除く。)は、定刻までに出勤したときは、出勤簿(第17号
様式)に自ら押印しなければならない」と規定しており、出勤認印欄には、
出勤の場合は教職員本人の印が押印され、出張、研修、職務専念義務免除、
休暇等の場合はその内容に応じた表示がなされることが認められる。

また、県立学校の教職員の勤務時間については、学校職員の勤務時間、
休暇等に関する条例(以下「休暇条例」という。)に基づいて県立学校職員
の勤務時間の割振り等に関する規程(以下「割振り規程」という。)が定め
られている。出勤簿が作成された当時の割振り規程第4条第2項において、
高等学校等教育職給料表の適用を受ける職員にあっては、週休日(勤務時
間を割り振らない日をいう。)として、日曜日、毎月の第2土曜日及び第4
土曜日並びにそれ以外に教育委員会が指定した休業日が規定されている。
そして、出勤認印欄には、これらの週休日に当たる日曜日及び土曜日につ
いては、特段の表示はなされないが、それ以外に教育委員会が指定した週
休日(以下「指定日」という。)については、指定の表示がなされることが
認められる。

(3)条例第5条第1号該当性について

条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報の保護
という二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人を尊重する観
点から、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定している。

ア 条例第5条第1号本文該当性について

(ア)条例第5条第1号本文は、「個人に関する情報であって、特定の個人
が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別するこ
とはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害するおそ
れがあるもの」(以下「個人情報」という。)を非公開とすることがで
きるとしている。

したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思われ
るものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも
含めて非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。

(イ)本件行政文書のうち、様式に係る部分を除いた本件教員の職名、氏
名、職員番号及びその出勤、出張、職務専念義務免除、休暇等の状況
に係る情報並びに整理保管者印については、公開することにより、特
定の個人が識別され、又は識別され得る情報であることが認められる
ので、同号本文に該当すると判断する。

(ウ)高等学校等教育職給料表の適用を受ける職員にあっては、日曜日、
毎月の第2土曜日及び第4土曜日については、割振り規程第4条第2
項において週休日として具体に特定して規定されている。また、休暇
条例第4条は、原則として国民の祝日に関する法律に定める休日及び
年末年始を休日とすると規定している。

   以上のことを踏まえると、通常、これらの日に教員が勤務しないこ
とは明らかであるので、本件行政文書の出勤認印欄のうち、出勤の押
印等のない週休日に当たる日曜日、毎月の第2土曜日及び第4土曜日
並びに休日の部分は、公開することにより、特定の個人が識別され、
又は識別され得る情報であるとは認められず、同号本文に該当しない
と判断する。  

イ 条例第5条第1号ただし書該当性について

(ア)条例第5条第1号本文に該当する情報であっても、同号ただし書ア、
イ、ウ又はエに該当するものは、公開するとされている。

(イ)本件行政文書は、条例第5条第1号ただし書アの法令等の規定によ
り何人にも閲覧等が認められている情報又は同号ただし書エの人の生
命、身体等を保護するため、公開することが必要であると認められる
情報とは認められないので、同号ただし書ア又はエのいずれにも該当
しないと判断する。

(ウ)条例第5条第1号ただし書イ該当性について

条例第5条第1号ただし書イは、「慣行として公にされ、又は公にす
ることが予定されている情報」については公開することを規定してい
る。

本件行政文書のうち、本件教員の氏名、出勤の押印及び整理保管者
印については、これらを公開することにより、本件教員及び出勤簿の
整理保管者が識別されることとなるが、公務員の職務の遂行に関連す
る教職員の氏名は、職員録等により公にされていることから、これら
の情報は同号ただし書イに該当すると判断する。

(エ)条例第5条第1号ただし書ウ該当性について

条例第5条第1号ただし書ウは、「公務員の職及び当該職務遂行の
内容に係る情報」については公開することを規定している。

a 本件行政文書のうち、本件教員の職名は、公務員の職に関する情
報に当たり、また、出勤の押印、出張の表示並びに出張に係る月別
及び累計の集計欄の記載については、次のような性格を有するもの
であることが認められる。

(a)出勤の押印は、教職員が当該日に出勤し、職務に従事していた
ことを示すものであること。

(b)出張の表示及びその集計欄の記載は、職務命令を受けて、教職
員が当該日に用務先に出向き、所要の用務に従事していたこと及
びその日数を示すものであること。

以上のことから、これらの情報は、公務員の職及び職務の遂行の
内容に関する情報であると認められるので、同号ただし書ウに該当
すると判断する。

b 職務専念義務免除の表示は、職務に専念する義務の特例に関する
条例に基づき、特定の事由により本来の職務への従事を免除された
ことを示すものであって、本件教員の分掌する職務の遂行の内容に
関する情報とは認められない。したがって、職務専念義務免除の月
別及び累計の集計欄の記載は、同号ただし書ウに該当しないと判断
する。

c 次に、不服申立人は、休暇の中身については非公開でもよい旨主
張しているが、念のため、これらについても検討する。

(a)休暇条例に規定する年次休暇等の休暇はもとより、地方公務員
の育児休業等に関する法律に基づく育児休業及び部分休業並び
に服務規程第16条第1項に規定する欠勤の状況に係る情報は、
教職員の私生活に関する情報であると認められ、これらの表示を
公開することにより、休暇等の取得等に係る理由、時期及び期間
という教職員の私生活に密接に関わる情報が明らかになるもの
といわざるを得ない。

   したがって、これらの表示並びにこれらに係る月別及び累計の
集計欄の記載は、公務員の職務の遂行の内容に関する情報である
とは認められないので、同号ただし書ウに該当しないと判断する。

(b)指定日については、本件教員が勤務していないので、この表示
は、公務員の職務の遂行の内容に関する情報であるとは認められ
ず、同号ただし書ウに該当しないと判断する。

(c)週休日又は休日の振替日については、休暇条例第15条の規定
に基づき、実施機関が教職員に週休日又は休日に特に勤務を命ず
る必要がある場合に、実施機関の裁量によって教職員ごとに個別
に勤務日を週休日又は休日に変更するものである。したがって、
当該振替日は本件教員の勤務日と密接な関係があるといえるが、
当該振替日に本件教員が勤務していないので、これらの表示は、
公務員の職務の遂行の内容に関する情報であるとは認められず、
同号ただし書ウに該当しないと判断する。

(4)条例第6条第1項該当性について

ア 条例第6条第1項は、公開請求に係る行政文書に非公開情報とそれ以
外の情報が記録されている場合において、それらを「容易に、かつ、行
政文書の公開を請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できると
き」は、非公開情報に係る部分を除いて、公開をしなければならないと
規定している。

イ 本件行政文書については、前記(3)で述べたとおり、出勤認印欄の出
勤の押印、出張の表示の部分を公開し、その他の部分を非公開としても、
当該非公開部分からは、単に出勤又は出張ではないという情報が明らか
になるにすぎず、休暇等の内訳が明らかになるものではないことから、
条例第5条第1号の非公開情報を公開することにはならない。このよう
に、当審査会が非公開とすることが妥当であると認めた部分の範囲及び
内容にかんがみると、その他の情報を分離して公開することは、「容易に、
かつ、行政文書の公開を請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離で
きるとき」に該当すると判断する。

ウ なお、出勤認印欄に出勤の押印と時間休暇の表示が重ねて記載されて
いる場合等については、公開すべき情報と非公開とすべき情報が同一箇
所に記録されていることとなるが、この場合は、「容易に、かつ、行政文
書の公開を請求する趣旨を失わない程度に合理的に分離できるとき」に
該当せず、当該部分は非公開とすべきであると判断する。

 

5 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

 

 

別紙

審査会の処理経過

年月日

処理内容

平成13年6月14日

○諮問

     7月10日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

     8月6日

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

     10月1日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

平成14年1月7日

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する意見書を受理

     5月7日

  (第10回部会)

○審議

    5月17日

○指名委員により不服申立人から意見を聴取

6月4日

  (第11回部会)

○審議

6月20日

○指名委員により実施機関の職員から非公開等理由説明を聴取

    8月13日

  (第13回部会)

○審議

    9月4日

  (第14回部会)

○審議

    10月15日

  (第15回部会)

○審議

    11月25日

  (第16回部会)

○審議

平成15年1月20日

  (第18回部会)

○審議

               

 

 

 

 神奈川県情報公開審査会委員名簿

                                         

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

部会員

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

部会員

鈴木 敏子

横浜国立大学教授

 

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

 

玉巻 弘光

東海大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

(部会長を兼ねる)

                (平成15年2月4日現在)(五十音順)

 

 

本文ここまで
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