答申第127号

掲載日:2017年12月1日

 答申第127号

 

                         平成15年2月4日

 

神奈川県公安委員会 委員長 石井 明 殿

 

            神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

 

 

行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 

平成14年5月8日付けで諮問された速度取締り結果の統計等一部非公開の件(諮問

第223号)について、次のとおり答申します。

 

1 審査会の結論

特定の自動車専用道路に係る速度違反の検挙状況統計資料のうち、「高速30km/h

未満」以下の指定最高速度取締り件数の欄及び「高速30km/h未満」以下の小計欄に

ついて非公開としたことは、妥当である。

 

2 不服申立人の主張要旨

(1)不服申立ての趣旨

   不服申立ての趣旨は、特定の自動車専用道路に係る速度違反の検挙状況統計資

料(以下「本件行政文書」という。)を神奈川県警察本部長(以下「警察本部

長」という。)が、平成14年3月4日付けで一部非公開とした処分(以下「本件

処分」という。)の取消しを求める、というものである。

(2)不服申立ての理由

   不服申立人の主張を総合すると、警察本部長が本件行政文書については、公開

することにより交通取締りに係る事務に関し、違法又は不当な行為を容易にする

おそれがあるものが記録されていることから、神奈川県情報公開条例(以下「条

例」という。)第5条第4号に該当するとした一部非公開の処分は、次に掲げる

理由から、条例の解釈及び運用を誤っている、というものである。

ア 条例第5条第4号該当の点について

(ア)本件行政文書の非公開部分である「高速30km/h未満」以下の指定最高速度

取締り件数に関する部分は、取締り件数全体のうちの圧倒的多数を占めてい

る。これを公開することは、違法又は不当な行為の抑止力につながると考え

るべきであり、違法又は不当な行為が容易になるという説明は合理性に欠け

る。

(イ)不服申立人は、自動車に関する研究者やジャーナリストで組織する団体の

幹事を務める自動車ジャーナリストであり、仮に非公開部分の公開を受ける

ことによって交通取締りの基準(以下「交通取締り基準」という。)を了知

したとしても、実施機関が非公開等理由説明書でいうように「交通取締り基

準に至らない程度の違法行為を敢行」することはあり得ない。

(ウ)不服申立人は、優良ドライバーであり、「交通取締りを免れるなどの対抗

措置をとる蓋然性が高く」という説明は現実性、具体性及び客観性に欠け、

非公開理由としての妥当性を欠く。

(エ)仮に非公開部分が公開されることによって、交通取締り基準が類推される

ことになるとしても、道路交通法第1条にあるように「交通の安全と円滑を

図る」必要があれば、交通取締り基準に至らない程度の違反を取り締まるこ

とは可能であるため、「交通取締りを免れる」という理由は妥当性を欠く。

イ 条例第5条第6号該当の点について

(ア)実施機関は、非公開等理由説明書において非公開理由として条例第5条第

    6号を追加した。この非公開等理由説明書には、「交通取締り基準を公開す

    ることは、交通違反を容易にするばかりでなく、交通違反が蔓延し」とある

    が、現在、取締りが行われていないということは、その程度の違反は取り締

    まらなくても、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼさないと警察が判断し

    ているからに他ならない。

(イ)また、同様に「非公開部分に記載された交通取締り基準に関する情報

は、刑事手続に移行する場合には捜査の基準にもなり得る」とあるが、それ

が直ちに非公開の要件である捜査に支障を来すことになる具体的根拠はな

い。

ウ その他

今回、公開請求の対象となった道路が、現在、20km/hから30km/hまでの速度

超過が常態化していることは警察も認識しているところであり、すでに違法行

為が常態化している。

 

3 実施機関(警察本部交通部交通指導課)の説明要旨

実施機関の説明を総合すると、本件行政文書を一部非公開とした理由は、次のと

おりである。

(1)本件行政文書について

   本件行政文書は、平成13年中の特定の自動車専用道路に係る速度違反の検挙状

況を各月別に集計した統計資料である。

 本件行政文書には、超過速度を高速15km/h未満、高速20km/h未満、高速25km/h

未満、高速30km/h未満、高速35km/h未満、高速40km/h未満、高速50km/h未満及び

高速50km/h以上に区分けをした上で、各区分ごとに特定の自動車専用道路の上下

線別の速度取締り件数を記載する欄が設けられており、このうち「高速30km/h未

満」以下の指定最高速度取締り件数の欄及び「高速30km/h未満」以下の小計欄

(以下「本件非公開部分」という。)について非公開としたものである。

(2)条例第5条第4号該当性について

ア 交通取締りは、道路交通法第1条に規定された「道路における危険を防止

し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に

資する」という道路交通法の目的を実現するために行っているものである。

イ 交通取締りに当たっては、交通取締りを適正、かつ、公平妥当に推進するた

めに基準が設けられており、本件非公開部分には、実施機関の速度違反に対す

る交通取締り基準が推認される情報が記載されている。

 交通取締り基準は、交通取締りが検挙主義に走ることなく、真に交通事故防

止を推進するために、個々の取締りにおいて、その違反の態様、交通状況から

取締り・検挙すべきものと、危険性・迷惑性が少なく指導・警告すべきものと

を区別して、取締りの公平性の観点から設けたものである。

  ウ 本件非公開部分が公開された場合には、交通取締り基準を了知した者が、取

締り・検挙にまでは至らない程度の違反を敢行し、交通取締りを免れるなどの

対抗措置をとる蓋然性が強く、公平な交通取締りの事務に支障を及ぼすことは

明らかである。

さらに、本件非公開部分が公開された場合には、公平な交通取締りができな

くなるといった交通取締りの事務に支障を及ぼすだけでなく、道路における危

険が増大し、交通の安全と円滑が保てなくなるなど道路交通法の目的そのもの

を実現することができなくなり、道路交通行政の事務に多大な支障を及ぼすお

それがある。

以上のことから、本件非公開部分は、条例第5条第4号に該当する。

(2)条例第5条第6号該当性について

   本件行政文書については、条例第5条第4号を適用し、交通取締りの事務に支

障があるとして本件処分を行った。その後、非公開等理由説明書において、本件

非公開部分は同条第6号にも該当するとして、以下のとおり非公開理由の追加説

明を行った。

  ア 交通取締り基準を公開することは、交通違反を容易にするばかりでなく、交

通違反がまん延し、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすことになる。

  イ 交通違反の大半は、交通反則通告制度を適用して処理されるが、違反者が反

則金を納付しない場合や違反事実を否認したり居所又は氏名が明らかでないと

き、逃亡するおそれがあるときは刑事手続で処理されることとなる。本件非公

開部分に記載された交通取締り基準に関する情報は、刑事手続に移行する場合

には捜査の基準にもなり得る事項である。

  ウ 交通取締りは、捜査活動と密接不可分の関係にあり、本件行政文書について

は、前記3(2)で述べたとおり条例第5条第4号に該当すると同時に、同条

第6号にも該当するという二面性を有している。

交通取締り基準に関する情報を公開することは、犯罪の捜査にも支障を及ぼ

すおそれがあることから、両者を区分けして考える実益はなく、むしろ同一視

すべきものである。

 

4 審査会の判断理由

(1)審査会における審査方法

当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会審議要

  領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は、不服申立人から口頭による

意見を、また、実施機関の職員から口頭による説明を聴取した。それらの結果も

踏まえて次のとおり判断する。

(2)本件行政文書について

本件行政文書は、平成13年中の特定の自動車専用道路に係る速度違反の検挙状

  況統計資料である。本件行政文書には、各月別に、特定の自動車専用道路の上下

線別に応じて、高速15km/h未満から高速50km/h以上までの法定・指定別速度取締

り件数を記載する欄、小計欄及び合計欄が設けられており、このうち実施機関

は、「高速30km/h未満」以下の指定最高速度取締り件数の欄及び「高速30km/h未

満」以下の小計欄について非公開とする決定を行った。

(3)条例第5条第4号該当性について

ア 条例第5条第4号は、「県の機関又は国等の機関が行う事務又は事業に関す

る情報であって、公開することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は

事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるも

の」は非公開とすることができるとし、本来公開になじまない典型的な支障を

例示するものとしてアからオまでを類型化している。そして、その典型例の一

つとして、「監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把

握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその

発見を困難にするおそれ」のある情報を掲げている。

ここでいう「監査、検査、取締り」とは、指導監査、立入検査、法令違反の

取締り等のほか、各種の監視・巡視等の事務が含まれ、「正確な事実の把握を

困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見

を困難にするおそれ」のある情報とは、当該監査等の計画やその方針、内容等

が該当すると解される。

  イ 本件行政文書に記載されている情報は、実施機関が速度違反に対して行う交

通取締り事務に関する情報であると認められる。

    また、本件非公開部分は、「高速30km/h未満」以下の超過速度の区分ごとの

速度取締り件数に係る情報であり、当該情報が知られることにより、交通取締

り基準が推認されるものと認められる。

  ウ 不服申立人は、「本件非公開部分を公開することは、違法又は不当な行為の

抑止力につながる。また、本件非公開部分が公開されることにより、交通取締

り基準が類推されたとしても、交通取締り基準に至らない程度の違反を取り締

まることは可能であるため、『交通取締りを免れる』という理由は妥当性を欠

く」旨主張する。

    しかし、交通違反について、取り締まるべき基準に関する情報が公開された

場合、違法ではあるが検挙されない範囲が明確となり得る。その結果、検挙さ

れない範囲内における違法な行為が容易となり、交通取締りを免れるなどの対

抗措置がとられる可能性があり、公平な交通取締りの事務に支障を及ぼすおそ

れがあると考えられる。

    また、このような交通取締り基準に関する情報が公開されることにより、取

締りの対象とならない程度の交通違反が増加することが十分に予想され、その

結果、道路における危険が増大し、交通の安全と円滑が保てなくなるなど道路

交通法の目的そのものを実現することができなくなり、道路交通行政の事務に

多大な支障を及ぼすおそれがあると考えられる。

    したがって、本件非公開部分は、条例第5条第4号に該当すると判断する。

  エ 不服申立人は、自己の職業及びこれまでの運転経歴等の事情から、交通取締

り基準を了知したとしても交通取締り基準に至らない程度の違法行為を敢行す

ることはあり得ず、また、交通取締りを免れるなどの対抗措置をとる蓋然性が

高いとはいえない旨主張している。しかし、実施機関による公開・非公開の判

断は、不服申立人の主張するような個別の事情を考慮して行われるものではな

く、条例の規定に基づいて行われるものであり、これが条例の趣旨である。

(4)条例第5条第6号該当性について

   実施機関は、本件行政文書について、当初、条例第5条第4号に該当するとし

て本件処分を行ったが、その後提出した非公開等理由説明書において、同条第6

号にも該当するとして非公開理由を追加した。

  ア 条例第5条第6号は、「公開することにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、

公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ

があると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」は非公開とする

ことができるとしている。

    条例第5条第6号は、実施機関の犯罪等に関する将来予測としての専門的・

技術的判断を尊重する趣旨から、当該実施機関の裁量的判断に相当の理由があ

ると認められる場合には、同号該当性を認めるものであるから、以下、本件行

政文書に記載されている情報の同号該当性について、実施機関の判断に合理的

な理由があるかどうかを検討する。

  イ ここでいう「捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに犯人及び

証拠を発見、収集、保全する活動をいい、「その他の公共の安全と秩序の維

持」とは、犯罪の予防、鎮圧等のほかに、これらには該当しないが社会生活に

必要な法規範等のルールが害されないよう保護し、それに対する障害を除去す

ることであると解される。

  ウ 交通取締り基準に関する情報が公開されることにより、取締りの対象となっ

ていない程度の交通違反が増加することが十分に予想され、その結果、道路に

おける危険が増大し、道路交通行政の事務に多大な影響を及ぼすことが考えら

れることは、前記4(3)ウで判断したとおりである。

    また、当該情報が公開された場合、社会生活に必要な法規範等のルールが害

されることが十分に予想され、実施機関が公共の安全と秩序の維持に支障を及

ぼすおそれがあると判断したことには、合理的な理由があると認められる。

  エ 実施機関は、交通違反といえども違反者が反則金を納付しない場合や違反事

実を否認したりする場合などには、刑事事件として処理されることもあり、そ

の場合、交通取締り基準に関する情報は、刑事手続に移行する場合の捜査の基

準にもなり得ると説明する。

    交通違反の処理には、刑事事件として取り扱う場合も予想され、実施機関

が、当該情報が公開された場合、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあると

判断したことには、合理的な理由があると認められる。

  オ 以上のことから、本件非公開部分は、公開することにより、犯罪の捜査その

他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認める

ことにつき相当の理由がある情報であると認められ、条例第5条第6号に該当

すると判断する。

(5)その他

当審査会は、行政文書公開請求に対する決定の当否について実施機関から意見

を求められているのであり、前記2(2)ウの不服申立人の主張については、意

見を述べる立場にない。

 

5 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別紙

審査会の処理経過

年月日

処理内容

 平成14年5月8日

○諮問

       5月15日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

       6月26日

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

       6月28日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

8月14日

  (第13回部会)

○審議

 

8月22日

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する意見書を受理

 

8月28日

○実施機関に非公開等理由説明書に対する意見書を送付

 

9月 3日

 

○指名委員により不服申立人から意見を聴取

○指名委員により実施機関の職員から非公開等理由説明を聴取

10月29日

(第14回部会)

○審議

11月13日

  (第15回部会)

○審議

     12月 9日

  (第16回部会)

○審議

平成15年 1月15日

  (第17回部会)

○審議

 

 

 

神奈川県情報公開審査会委員名簿

氏名

現職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

鈴木 敏子

横浜国立大学教授

 

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

部会員

玉巻 弘光

東海大学教授

 

千葉 準一

東京都立大学教授

部会員

堀部 政男

中央大学教授

会長(部会長を兼ねる)

                           (平成15年2月4日現在)(五十音順)

 

本文ここまで
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