答申第129号

掲載日:2017年12月1日
 

答申第129号

 

                         平成15年3月12日

 

神奈川県教育委員会 委員長 相吉 靖  殿                     

 

 

           神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

 

 

    行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)    

 

 平成12年5月24日付けで諮問された預貯金通帳等一部非公開及び不存在
の件(諮問第102号)について、次のとおり答申します。

 

 

1 審査会の結論

(1)12冊の金融機関の預金通帳のうち、金融機関担当者の印影及びパンフ
レット等で公表されていない振込者氏名を非公開としたことは、妥当で
ある。

(2)上記(1)以外の預貯金通帳及び明細書について、廃棄したことなど
により文書が存在しないとして、公開を拒んだことは、相当である。

 

2 不服申立人の主張要旨

(1)不服申立ての趣旨

   不服申立ての趣旨は、平成4年度から平成12年4月10日までの実施
機関が管理しているすべての郵便貯金通帳(以下「貯金通帳」という。)、
金融機関の預金通帳(以下「預金通帳」という。)及び明細書(ただし、
平成12年3月21日付けで公文書の閲覧等を請求し、公開決定された貯
金通帳3冊を除く。)について、神奈川県教育委員会が、平成12年4月
24日付けで行った次の処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求
める、というものである。

ア 現に管理している12冊の預金通帳(以下「本件一部非公開文書」と
いう。)について、押印されている金融機関担当者の印影及び本件一部
非公開文書に記載された振込者氏名のうち、パンフレット等で公表さ
れていない振込者氏名を神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)
第5条第1号に該当するとして非公開とした処分

イ 本件一部非公開文書以外の預貯金通帳及び明細書(以下「本件公開
拒否文書」という。)について、常時使用する文書として保管する必要
がある期間が経過したため、廃棄したことなどにより存在しないとし
て、公開を拒んだ処分

(2)不服申立ての理由

   不服申立人の主張を総合すると、次のとおりである。

ア 本件一部非公開文書に関する条例第5条第1号該当の点について

(ア)実施機関が条例第5条第1号に該当するとして非公開とした処分
は、条例違反である。

(イ)金融機関職員の業務として押印している以上、その印影を公開す
ることにより、不利益が生じることはない。条例では公開請求によ
り得た情報の適正利用が定められており、仮に交付された行政文書
の写しを悪用したならば、別途刑事処分について問題とすべきなの
であって、条例上非公開とすべき事項には当らない。

イ 本件公開拒否文書の存否について

  (ア)実施機関は、現在、本件処分に関連して、不服申立人との間で平
成4年度から平成8年度までの預貯金通帳の存否について裁判で
争っているが、平成4年度から平成11年度までの貯金通帳は存在
するとしていながら、裁判で争っている期間の預金通帳は存在しな
いとする説明はあまりに不自然であり、認められない。

  (イ)神奈川県財務規則(以下「財務規則」という。)第103条は受領し
た現金を確実な金融機関に預金しておかなければならないと規定
し、かつ、預金通帳は、神奈川県行政文書管理規程によりその保存
期間は10年又は5年とされていることから、預金通帳は保存され
ているはずであり、実施機関はこれを公開する責務がある。

(ウ)実施機関が本件公開拒否文書を廃棄等している場合には、金融機
関から入手して公開することが可能なものも実施機関が管理してい
る文書に含まれるため、公開する義務がある。

ウ その他

(ア)実施機関は、本件一部非公開文書の原本を公開すべきである。

(イ)実施機関は、条例に基づく第三者に対する意見書提出の機会の付
与を行わずに一部非公開処分を行ったが、これが非公開情報に該当
しないため上記通知の必要がないと判断した結果ならば、審査会は
実施機関に本件一部非公開文書を公開するよう求めるべきである。

 

3 実施機関(教育庁教育部スポーツ課)の説明要旨

  実施機関の説明を総合すると、次のとおりである。

(1)本件処分の概要について

 実施機関としては、実施機関が現に管理している給与、前渡金、各種
の実行委員会等に係る預金通帳計12冊を公開請求の対象となる行政文
書として特定し、このうち当該預金通帳に押印されている金融機関の担
当者の印影及び各種の実行委員会に係る預金通帳に記載された振込者氏
名のうち当該実行委員会のパンフレット等で公表されていない振込者氏
名(以下「未公表振込者氏名」という。)を非公開とした。

また、本件公開請求の対象となる預貯金通帳のうち上記12冊以外の預
貯金通帳及び明細書は、既に廃棄したことなどにより存在しないため、
公開拒否処分を行った。

(2)本件一部非公開文書に関する条例第5条第1号該当性について

本件一部非公開文書に押印されている金融機関担当者の印影及び未公
表振込者氏名は、個人に関する情報であり、特定の個人が識別され、若
しくは識別され得るため、条例第5条第1号に該当し、同号ただし書の
いずれにも該当しない。

(3)本件公開拒否文書の存否について

ア 預貯金通帳の存否

   (ア)預貯金通帳は、県において前渡金の支出等の現金管理を行う必
    要から開設された口座の入出金を証するものとして、当該預入先
    金融機関等によって作成され、記載欄の記載限度に達するとその
    都度新たな預貯金通帳が作成、交付される。このため、県は、金
    融機関等から交付された預貯金通帳を複数の会計年度にわたって
    使用しており、このような使用、管理の実態から、神奈川県教育
    庁等行政文書管理規則(以下「文書管理規則」という。)等の規定
    に基づき、「常時使用する行政文書」(以下「常用文書」という。)
    として取り扱っていた。
  (イ)こうした預貯金通帳とは別に、正規の会計文書としては、財務
    規則に基づき、前渡金精算管理票や執行伺票等を作成するととも
    に、前渡金の精算に当たっては、支払いの相手方の受領を証する
    書類等を添付しており、これらを5年間保存している。

しかし、預貯金通帳は、前渡金として現金で支払いを行う際に、
相手方に支払うまでの一時的な預入れや支払残額が生じた場合に

精算まで現金の保管を行う目的で使用しているだけであって、正
規の現金出納簿としての会計文書ではない。

 したがって、常用文書として保管する必要がある期間が経過し
    て、使用しなくなった預貯金通帳は、その都度所属長の判断で廃
    棄してきたものであり、実施機関が現に管理する預貯金通帳は、
    既に不服申立人に公開し、本件公開請求の対象外である3冊の貯
    金通帳を除いては、本件一部非公開文書以外に存在しない。
  (ウ)なお、執行管理の一層の徹底や、より開かれた県政を実現して
    いく必要性等を考慮し、現在では、実施機関においては使用済み
    の預貯金通帳も5年程度保存することとしている。

  イ 明細書の存否

    明細書とは、金融機関等が預貯金通帳以外に取引等の記録を記載し
た文書であるが、本件一部非公開文書のほかには金融機関等との取引
等の記録が記載された文書は存在しない。

  ウ 不服申立人は、実施機関が本件公開拒否文書を廃棄等している場合
には、金融機関から入手して公開することが可能なものも実施機関が
管理する文書に含まれると主張している。しかし、請求時に実施機関
が管理していない文書は、条例上、請求の対象となる「行政文書」に
は含まれず、金融機関等の第三者が管理する文書を取り寄せてまで、
請求者に公開しなければならないものではない。

エ 以上のことから、本件公開拒否文書を実施機関が管理していない
ため、不存在として公開拒否処分を行った。

4 審査会の判断理由

(1)審査会における審査方法

当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査
会審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は不服申立人
から口頭による意見を、また、実施機関の職員から口頭による説明を聴
取した。それらの結果も踏まえて次のとおり判断する。

(2)本件一部非公開文書について

  ア 本件一部非公開文書は、実施機関が管理している平成4年度から平
成12年4月10日までのすべての預貯金通帳及び明細書(ただし、平
成12年3月21日付けで公文書の閲覧等を請求し、公開決定された貯
金通帳3冊を除く。)の公文書の閲覧等の請求に対し、実施機関が現
に管理しているものとして特定した12冊の預金通帳である。

  イ 本件一部非公開文書のうちの非公開部分は、次に掲げるとおりであ
る。

(ア)  金融機関担当者の印影

(イ)未公表振込者氏名

  ウ 条例第5条第1号該当性について

  条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報の
保護という二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人を尊
重する観点から、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規
定している。

  (ア)条例第5条第1号本文該当性について

a 条例第5条第1号本文は、「個人に関する情報であって、特定
の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を
識別することはできないが、公開することにより、個人の権利利
益を害するおそれがあるもの」(以下「個人情報」という。)を非
公開とすることができるとしている。

したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思
われるものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であ
るものも含めて非公開とすることを明文をもって定めたものと解
される。

b 本件一部非公開文書のうち、金融機関担当者の印影及び未公表
振込者氏名は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別さ
れ、又は識別され得る情報であることから、条例第5条第1号本
文に該当すると判断する。

(イ)条例第5条第1号ただし書該当性について

a 条例第5条第1号本文に該当する情報であっても、同号ただし
書ア、イ、ウ又はエに該当するものは公開するとされている。

b 金融機関担当者の印影及び未公表振込者氏名は、条例第5条第
1号ただし書アの法令等の規定により何人にも閲覧が認められて
いる情報、同号ただし書イの慣行として公にされ又は公にするこ
とが予定されている情報、同号ただし書ウの公務員の職及び当該
職務遂行内容に係る情報又は同号ただし書エの人の生命、身体等
を保護するため、公開することが必要であると認められる情報の
いずれにも該当しないと判断する。

(3)本件公開拒否文書の存否について

ア 預貯金通帳の存否

  (ア)本件公開拒否文書のうちの預貯金通帳は、実施機関が一部非公開
処分をした本件一部非公開文書を除いて、常用文書として保管する
必要がある期間が経過したため、廃棄したとされるものである。

  (イ)文書管理規則第9条第1項及び第2項は、第2項別表に掲げる保
存期間の区分及び行政文書の類型に応じて、行政文書の保存期間を
設定しなければならない旨規定している。

     しかし、この例外として、同条第7項において、同項各号に掲げ
る行政文書については、常用文書として必要な期間保管できる旨規
定している。

  (ウ)実施機関は、預貯金通帳を、その使用、管理の実態から常用文書
として取り扱い、現に使用中のもの以外は、所属長の判断で廃棄し
ていたと説明している。

  (エ)本件公開拒否文書である預貯金通帳について、文書管理規則第9
条第7項第4号に規定する「物品管理票、重要物品整理簿、備品出
納簿、借用物品管理票及び物品貸付簿」に類するものとして、第6
号の「前各号に掲げるものに類する行政文書」に該当するものと実
施機関が解し、常用文書として取り扱ったことは、必ずしも誤りで
あるとはいえない。

  (オ)以上のことから、本件公開拒否文書のうちの預貯金通帳は、実施
機関が常用文書として取り扱い、保管の必要がなくなったとして廃
棄したものであり、実施機関が管理していない状態にあったものと
認められる。

  イ 明細書の存否

  (ア)明細書とは、金融機関等が預貯金通帳以外に、実施機関と当該金
融機関等との取引等の記録を記載した文書であると考えられる。

  (イ)通常、実施機関と金融機関等との取引等の記録は、金融機関等に
おいて預貯金通帳を作成し、これに記帳する場合と、当該預貯金通
帳に代わる文書が作成される場合とが考えられるが、本件において
は、預貯金通帳が作成されている以上、これに代わるべき文書が作
成されたとは考え難い。また、これ以外の意味においても取引等の
記録が記載された文書が実施機関において取得されたと解すべき理
由も認められない。  

したがって、明細書は存在しないという実施機関の説明は首肯で
きる。

ウ その他

不服申立人は、実施機関が預貯金通帳を廃棄している場合には、金
融機関等から入手して公開することが可能なものも実施機関が管理し
ている文書に含まれるため、公開する義務があると主張している。

    しかし、条例第3条は、行政文書とは「実施機関の職員がその分掌
する事務に関して職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的
記録であって、当該実施機関において管理しているもの」をいうと規
定している。

    したがって、現に実施機関の職員が職務上取得していない状態で、
金融機関等において管理されている預貯金通帳に代わる文書は、行政
文書には該当しないと解される。

(4)その他

当審査会は、行政文書公開請求に対する決定の当否について、実施機
関から意見を求められているのであり、前記2(2)ウの不服申立人の
主張について意見を述べる立場にない。

 

5 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

 

別紙

              審査会の処理経過      

年月日

処理経過

平成12年5月24日

○諮問

   6月9日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

7月11日

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

7月28日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

10月16日

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する意見書を受理

平成14年7月16日

(第12回部会)

 

○審議

8月7日

(第13回部会)

 

○審議

 

 

9月3日

 

○指名委員により不服申立人から意見を聴取

○指名委員により実施機関の職員から非公開等理由説 

 明を聴取

9月3日

(第14回部会)

 

○審議

 

平成15年2月4日

(第19回部会)

 

○審議

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    神奈川県情報公開審査会委員名簿             

氏名

現職

備考

川島  志保

弁護士 (横浜弁護士会)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

 

会長職務代理者

 

鈴木 敏子

横浜国大学教授

部会員

田中 隆三

弁護士 (横浜弁護士会)

 

玉巻 弘光

東海大学教授

部会員

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長

(部会長を兼ねる)

                 (平成15年3月12日現在)(五十音順)

 

本文ここまで
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