答申第131号

掲載日:2017年12月1日

 

答申第131号

                                平成15年3月12日

神奈川県教育委員会 委員長 相吉 靖 殿

                 神奈川県情報公開審査会 会長 堀部 政男

   行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)

 平成12年7月13日付けで諮問された教育庁経理課が管理する預貯金通帳等
一部非公開及び不存在の件(その2)(諮問第108号)について、次のとおり
答申します。

1 審査会の結論
(1)平成11年6月から諾否決定の日までの給与、共済費及び国費に係る預金
  通帳並びに平成12年4月から諾否決定の日までの旅費に係る預金通帳のう
  ち、金融機関担当者の印影を非公開としたことは、妥当である。
(2)上記(1)以外の預貯金通帳及び明細書について、廃棄したことなどに
  より文書が存在しないとして、公開を拒んだことは、相当である。

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
   不服申立ての趣旨は、平成4年度から平成12年度までの実施機関の管理
  下にあるすべての預貯金通帳及び明細書(当該文書に記録されている情報
  で金融機関が保有するものも含む。)に関して、神奈川県教育委員会が、
  平成12年6月21日付けで行った次の処分(以下「本件処分」という。)の
  取消しを求める、というものである。
  ア 平成11年6月から諾否決定の日までの給与、共済費及び国費に係る預
   金通帳並びに平成12年4月から諾否決定の日までの旅費に係る預金通帳
   (以下「本件一部非公開文書」という。)について、押印されている金
   融機関担当者の印影を神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)
   第5条第1号に該当するとして非公開とした処分
  イ 一部非公開文書以外の預貯金通帳及び明細書(以下「本件公開拒否文
   書」という。)について、常時使用する文書として保管する必要がある
   期間が経過したため廃棄したことなどにより存在しないとして、公開を
   拒んだ処分
(2)不服申立ての理由
   不服申立人の主張を総合すると、次のとおりである。
  ア 本件一部非公開文書に関する条例第5条第1号該当の点について
    実施機関は、本件一部非公開文書に記載された金融機関担当者の印影
   を条例第5条第1号に該当するとして非公開としたが、当該情報は当該
   法人職員の職務上の情報であり、これを公開しても不利益を与えるおそ
   れはない。非公開処分は、条例の解釈を誤ったものであり、条例に違反
   している。
  イ 本件公開拒否文書の存否について
  (ア)実施機関は、本件一部非公開文書以外は文書保存期間経過等により
    不存在であるとして、公開拒否処分を行ったが、不服申立人は旅費、
    給与、共済及び国費の4つの項目に関する預金通帳に限定して請求し
    た事実はない。また、1ケ月前や1年前の預貯金通帳を既に廃棄した
    との主張は認められないため、4冊の預金通帳以外に預貯金通帳が存
    在しないということはあり得ない。
  (イ)実施機関は、預貯金通帳は「常時使用する行政文書」である旨主張
    するが、通帳には入金及び出金が記録されており、神奈川県行政文書
    管理規程によれば、こうした文書の保存期間は10年又は5年であるこ
    とから、使用しなくなった段階で廃棄してよい文書でないことは明白
    であり、実施機関は預貯金通帳を公開する義務がある。
  (ウ)実施機関が本件公開拒否文書を廃棄等している場合には、金融機関
    から入手して公開することが可能なものも実施機関が管理している文
    書に含まれるため、公開する義務がある。
  (エ)不服申立人は、国体旅費残金につき、平成9年11月以降公開請求を
    しているが、実施機関は不存在等を理由に公開を拒んでおり、現在横
    浜地裁において訴訟中である。実施機関は、文書を公開することによ
    り公表済みの金額が大きく変わってしまうことを避けるため、当該文
    書を隠している疑いがある。
  ウ その他
  (ア)実施機関は、本件一部非公開文書の原本を公開すべきである。
  (イ)実施機関は、条例に基づく第三者に対する意見書提出の機会の付与
    を行わずに一部非公開処分を行ったが、これが非公開情報に該当しな
    いため上記通知の必要がないと判断した結果であるならば、審査会は
    実施機関に本件一部非公開文書を公開するよう求めるべきである。

3 実施機関(教育庁管理部経理課)の説明要旨
  実施機関の説明を総合すると、次のとおりである。
(1)本件処分の概要について
   実施機関は、本件公開請求に対して、現に管理している平成11年6月か
  ら諾否決定の日までの給与、共済費及び国費に係る預金通帳並びに平成12
  年4月から諾否決定の日までの旅費に係る預金通帳計4冊を請求対象行政
  文書として特定した。そして、当該預金通帳に押印されている金融機関担
  当者の印影を非公開とした。
   また、本件公開請求の対象となる預貯金通帳のうち上記4冊以外の預貯
  金通帳及び明細書は、既に廃棄したことなどにより存在しないため、公開
  拒否処分を行った。
(2)本件一部非公開文書に関する条例第5条第1号該当性について
   本件一部非公開文書に押印されている金融機関担当者の印影は、個人に
  関する情報であって、金融機関名等公開される他の情報などと照合するこ
  とにより、比較的容易に特定の個人を推測できる情報であり、条例第5条
  第1号本文に該当する。
(3)本件公開拒否文書の存否について
  ア 預貯金通帳は、県における経理事務のうち前渡金の支出等現金管理を
   行う必要から開設された口座の入出金を証するものとして、当該預け入
   れ先金融機関等によって作成され、記載欄の記載限度に達するとその都
   度新たな預貯金通帳が作成、交付される。このため、県は、金融機関等
   から交付された預貯金通帳を複数の会計年度にわたって使用しており、
   このような使用、管理の実態から、文書管理規則等の規定に基づき、
   「常時使用する行政文書」(以下「常用文書」という。)として取り扱
   っていた。
    したがって、使用しなくなった預貯金通帳は、常用文書の通常の取扱
   いと同様にその都度所属長の判断で廃棄してきたものである。実施機関
   の管理下にある預貯金通帳は、不服申立人に一部公開を行った預金通帳
   4冊がすべてであり、これら以外の預貯金通帳は存在しない。
  イ 明細書とは、金融機関等が預貯金通帳以外に取引等の記録を記載した
   文書であるが、本件一部非公開文書のほかには金融機関等との取引等の
   記録が記載された文書は存在しない。
  ウ 不服申立人は、実施機関が本件公開拒否文書を廃棄等している場合に
   は、金融機関から入手して公開することが可能なものも実施機関が管理
   する文書に含まれると主張している。しかし、請求時に実施機関が管理
   していない文書は、条例上、請求の対象となる「行政文書」には含まれ
   ず、金融機関等の第三者が管理する文書を取り寄せてまで、請求者に公
   開しなければならないものではない。
  エ 以上のことから、本件公開拒否文書を実施機関が管理していないため、
   不存在として公開拒否処分を行った。

4 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
   当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会
  審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は不服申立人から
  口頭による意見を、また、実施機関の職員から口頭による説明を聴取した。
  それらの結果も踏まえて次のとおり判断する。
(2)本件一部非公開文書について
   本件一部非公開文書は、平成4年度から平成12年度までの実施機関の管
  理下にあるすべての預貯金通帳及び明細書(上記文書に記載されている情
  報で金融機関が保有するものを含む。)の公開請求に対し、実施機関が現
  に管理しているものとして特定した4冊の預金通帳である。
   本件一部非公開文書の非公開部分は、預金通帳に押印されている金融機
  関担当者の印影である。
  ア 条例第5条第1号該当性について
    条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報の保
   護という二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人を尊重す
   る観点から、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定して
   いる。
  (ア)条例第5条第1号本文該当性について
    a 条例第5条第1号本文は、「個人に関する情報であって、特定の
     個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別
     することはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害
     するおそれがあるもの」(以下「個人情報」という。)を非公開と
     することができるとしている。
      したがって、同号本文は、個人情報は明白にプライバシーと思わ
     れるものはもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるも
     のも含めて非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。
    b 本件一部非公開文書のうち、押印されている金融機関担当者の印
     影は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識
     別され得る情報であることから、同号本文に該当すると判断する。
  (イ)条例第5条第1号ただし書該当性について
    a 条例第5条第1号本文に該当する情報であっても、同号ただし書
     ア、イ、ウ又はエに該当するものは公開するとされている。
    b 本件一部非公開文書のうち、押印されている金融機関担当者の印
     影は、同号ただし書アの法令等の規定により何人にも閲覧等が認め
     られている情報、ただし書イの慣行として公にされ、又は公にする
     ことが予定されている情報、ただし書ウの公務員の職及び当該職務
     遂行の内容に係る情報又はただし書エの人の生命、身体等を保護す
     るため、公開することが必要であると認められる情報のいずれにも
     該当しないと判断する。
(3)本件公開拒否文書の存否について
  ア 預貯金通帳の存否について
  (ア)本件公開拒否文書のうちの預貯金通帳は、実施機関が一部非公開処
    分をした本件一部非公開文書を除いて、常用文書として保管する必要
    がある期間が経過したため、廃棄したとされるものである。
  (イ)神奈川県教育庁等行政文書管理規則(以下「文書管理規則」という。)
    第9条第1項及び第2項は、第2項別表に掲げる保存期間の区分及び
    行政文書の類型に応じて、行政文書の保存期間を設定しなければなら
    ない旨規定している。
     しかし、この例外として、同条第7項において、同項各号に掲げる
    行政文書については、常用文書として必要な期間保管できる旨規定し
    ている。
  (ウ)実施機関は、預貯金通帳を、その使用、管理の実態から常用文書と
    して取り扱い、現に使用中のもの以外は、所属長の判断で廃棄してい
    たと説明している。
  (エ)本件公開拒否文書である預貯金通帳について、文書管理規則第9条
    第7項第4号に規定する「物品管理票、重要物品整理簿、備品出納簿、
    借用物品管理票及び物品貸付簿」に類するものとして、第6号の「前
    各号に掲げるものに類する行政文書」に該当するものと実施機関が解
    し、常用文書として取り扱ったことは、必ずしも誤りであるとはいえ
    ない。
  (オ)以上のことから、本件公開拒否文書のうちの預貯金通帳は、実施機
    関が常用文書として取り扱い、保管の必要がなくなったとして廃棄し
    たものであり、実施機関が管理していない状態にあったものと認めら
    れる。
  イ 明細書について
  (ア)明細書とは、金融機関等が預貯金通帳以外に、実施機関と当該金融
    機関等との取引等の記録を記載した文書であると考えられる。
  (イ)通常、実施機関と金融機関等との取引等の記録は、金融機関等にお
    いて預貯金通帳を作成し、これに記帳される場合と、これに代わる文
    書が作成される場合とが考えられるが、本件においては、預貯金通帳
    が作成されている以上、預貯金通帳に代わる文書が作成されたとは考
    え難い。また、これ以外の意味においても取引等の記録が記載された
    文書が実施機関において取得されたと解すべき理由も認められない。
    したがって、明細書は存在しないという実施機関の説明は首肯できる。
  ウ その他
    不服申立人は、実施機関が預貯金通帳を廃棄等している場合には、金
   融機関等から入手して公開することが可能なものも実施機関が管理して
   いる文書に含まれるため、公開する義務があると主張している。
    しかし、条例第3条では、行政文書とは「実施機関の職員がその分掌
   する事務に関して職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記
   録であって、当該実施機関において管理しているもの」をいうと規定し
   ている。
    したがって、現に実施機関の職員が職務上取得していない状態で、金
   融機関等において管理されている預貯金通帳に代わる文書は、行政文書
   には該当しないと解される。
(4)その他
   当審査会は、行政文書の公開請求に対する諾否決定の当否について実施
  機関から意見を求められているのであり、前記2(2)ウの不服申立人の
  主張については、意見を述べる立場にない。

5 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別紙

          審査会の処理経過

年月日

処理内容

 平成12年7月13日

○諮問

      8月8日

○実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求

       9月5日

○実施機関から非公開等理由説明書を受理

       9月14日

○不服申立人に非公開等理由説明書を送付

       10月16日      

○不服申立人から非公開等理由説明書に対する
 意見書を受理

 平成14年8月7日
   (第13回部会) 

○審議

       9月3日

○指名委員により、不服申立人から意見を聴取
○指名委員により、実施機関の職員から非公開等
 理由説明を聴取

       10月17日
   (第15回部会)

○審議

 平成15年 2月4日
   (第19回部会)  

○審議

            神奈川県情報公開審査会委員名簿

氏名

現職又は前職

備考

川島 志保

弁護士(横浜弁護士会)

 

小林 重敬

横浜国立大学教授

会長職務代理者

鈴木 敏子

横浜国立大学教授

部会員

田中 隆三

弁護士(横浜弁護士会)

 

玉巻 弘光

東海大学教授

部会員

千葉 準一

東京都立大学教授

 

堀部 政男

中央大学教授

会長
(部会長を兼ねる)

            (平成15年3月12日現在)(五十音順)

本文ここまで
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