実例検証による施設内におけるクラスター対策の報告―今後の新型コロナウイルス感染症の予防・感染拡大防止に備える
実例検証による施設内におけるクラスター対策の報告―今後の新型コロナウイルス感染症の予防・感染拡大防止に備える
実例検証による施設内におけるクラスター対策の報告
今後の新型コロナウイルス感染症の予防・感染拡大防止に備える Ver.2(PDF:971KB)
C-CATの活動内容および事例
C-CATの活動内容

C-CATの概要
C-CATはクラスター発生時に感染拡大防止指導や物資の提供等を行なう、県対策本部内の組織です。
概要と活動内容
県内で、同⼀の医療・保健福祉施設等から、感染者(感染が疑われる人を含む)が複数発生した場合に、必要に応じて、実状調査等を⾏い、感染拡大防止指導や必要な資機材の⼿配などの⽀援を⾏う。

C-CATが医療・保健福祉施設等へ
- 実状調査、感染拡大防止対策指導、必要な資機材の⼿配⽀援、転院等の搬送⽀援等を⾏う。
- ⼀定期間後も再訪問し、指導内容の実践状況などを確認することにより、継続的な⽀援を⾏う。
構成メンバー
県対策本部の感染症対策指導班、保健師が中心となり、必要に応じて、DMAT、物資調達班、搬送調整班などが加わる。

クラスターの事例(A病院)
A病院での事例は下記の通りです。
場所:地域の中核病院
時期:4月末から5月初旬
状況:
- 4月末にある病棟で患者・看護師18名が感染
- 5月初旬に別の病棟で患者1名が感染
活動内容:
- 保健所とともにC-CATが訪問し、現地調査を実施し、感染対策を指導した。
- その後、患者・看護師15名の陽性者(これ以外に医師1名が経路不明で発症)が確認された。
- C-CATの訪問はゾーニングと現地調査のため3回訪問した。
(1)PCR検査が陰性でも感染者であった
- 陰性と偽陰性の判断をどうするか?
- 感染対策をいつまで行なうか?
(2)患者ケア時の手指衛生の不足
- 患者と接触する際に手指衛生の実施が徹底されていなかった
(3)職員同士で感染が伝播した
クラスターの事例(B病院)
B病院での事例は下記の通りです。
場所:地域の長期療養型病院
時期:5月中旬から
状況:
- 5月中旬にある病棟にて患者・看護師7名が感染
- 感染者7名のうち3名は無症状
- 無症状の職員の家族2名のPCR検査にて陽性
活動内容:
- 発症確認して5日後に保健所とC-CATが現地調査と感染対策指導を行った。
(1)COVID-19の発見の遅れ
(2)飛沫による防護が不十分(標準予防策)
- 吸引処置・食事介助など飛沫が発生するケアの際に目の防護をしていなかった
(3)擬似症・陽性者の防護用具(PPE)の不適切な使用(飛沫・接触予防策)
- ガウンを使いまわしていた
- ゴーグルを使用していなかった
C病院での事例は下記の通りです。
場所:地域の中核病院
時期:7月中旬から
状況:
- 7月中旬にある病棟で患者・看護師・理学療法士ら19名が感染
- 感染者19名のうち15名は無症状
- 感染発生後に退院した患者が、退院から4日後、転院先の検査で陽性
活動内容:
- 保健所とともにC-CATが訪問し、感染対策や検査状況などを確認し、指導した。
- その後、入院患者・職員8名が陽性と診断され感染者は計27名。ほかに転院先の患者や退院患者の家族が陽性になった。
(1)患者の移動(転室・転棟・転院・退院)
- 感染発生が疑われている時に転室や転棟を実施した
- 感染発生後の転院・退院患者に対する情報提供と対応が遅れた
(2)飛沫による防護が不十分(標準予防策)
- 吸引処置・食事介助など飛沫が発生するケアの際に目の防護をしていなかった
- 複数の患者をひとりで同時に食事介助していた
(3)職員同士で感染が伝搬した
- 食事は時間と場所をずらしていたが、食事以外の休憩室の利用が密接になっていた
- 勤務時間外に大人数で会食していた
課題の解決策
C-CATでは、下記の対策を指導しています。
- PCR検査が陰性の場合、偽陰性の可能性を必ず検討する。
- 患者の問診、臨床所⾒を複数の医師や感染管理担当者と確認したうえで、感染対策の解除を判断する。
- 発症した病棟の患者は移動させない。

- COVID-19を除外できない場合は、疑似症対応を続ける。
- 検査で陰性であっても、疑わしい場合は再検査する。
- 疑似症・陽性者が発生した場合は転棟・転院・退院を制限する。
- 患者に触れる前、患者に触れた後の⼿指衛生を必ず⾏う。
- 職員が汚染した自分の⼿で目・鼻・口を触れないようにする。

- 手がウイルスで汚染されていると、患者・職員へ接触感染するため、必ず手指衛生を⾏うこと。
- また、管理者は職員の手指衛生の実施を把握すること。
- 全ての職員がマスクを常時着用する
- 食事や休憩室・更⾐室でマスク無しの会話をしない
- 仮眠室の枕・布団カバーの交換、バスタオル等で覆い交換する

- 発症前や無症状の感染した職員からほかの職員へ感染することを防ぐために、常時⾏うべき対策を実施する。
- COVID-19の疑いがある場合は下記を実施する。
- 外来・入院時に必ず問診する
- 疑う症状があれば検査をする
- 職職員も健康観察を⾏なう

- 感染初期に、両側性すりガラス影、LD(H)・CRP・フェリチン高値、リンパ球数減少、プロカルシトニン基準範囲内を満たすとCOVID-19の可能性が高い。
- フェイスシールド・ゴーグル施設内に準備している
- 使用方法を職員教育している

- 発症前や無症状の感染患者から、職員へ感染することを防ぐための標準予防策が実施できている。
- 感染経路を遮断する。
- ⻑袖ガウン・サージカルマスク・フェイスシールド(ゴーグル)・⼿袋を着用
- ⻑袖ガウンと⼿袋は退室時に廃棄する
- 使用方法を職員教育している

- PPEは原則すべて退室時に廃棄する。
- フェイスシールド・ゴーグルは在庫が少ない場合は0.05%
次亜塩素酸ナトリウム・アルコールでリユース可
- ガウン・手袋の使い回しは、職員の感染リスクになる。
施設内に感染を拡大させないためのベッドコントロール
擬似症・陽性者が発生した病院においては、転棟・転院・退院を制限することで感染拡大を防止します。
疑似症・陽性者の病棟の移動はしない
- COVID-19疑似症・陽性者の病室・病棟の移動をしない(個室への移動はOK)。
- 発症した病棟の患者は、接触者の可能性があるため、転棟しない
- COVID-19流⾏時、患者の移動は最⼩限に留める
- 感染者を移動することで、ほかの病室の患者、ほかの病棟の職員へ感染を拡大させる
疑似症・陽性者以外は転院・退院を制限
- 疑似症・陽性者はCOVID-19対応医療機関への搬送を検討する
- 濃厚接触者をはじめ潜在する感染者を他院・施設に移動させない
- 完全に陰性が確認されずに転院・退院することで、ほかの病院や高齢者施設等に感染を拡大させる
- 未接触の患者は、症状を確認のうえ、転院・退院先に連絡して核酸増幅検査もしくは抗原定量検査(注意)を実施
- 感染期間に転院・退院した者のリストを作成し、全員へ感染について説明・対応を依頼する
- 転院・退院については、必ず転院・退院先への情報提供を行い、感染拡大防止に努める
院内でCOVID-19発生があった病院においては、検査を強化することで感染拡大を防止します。
接触者の検査は速やかに広い範囲に⾏う
- 接触度合、発症リスクにより、接触のあった職員と患者の核酸増幅もしくは抗原定量検査(注意)を⾏う
- 潜伏期ならびに発症間隔(4から7日)を考慮して検査する
- 抗原定量検査は核酸増幅検査より感度が低いため、全体の結果次第では核酸増幅検査による再検査も検討
- 健康観察10日目で核酸増幅検査もしくは抗原定量検査を実施し、陰性であれば復職も可能
- 職員に感染発生した場合、入院患者から感染した可能性も考慮する
- すでに多くの職員や入院患者に感染者がいる前提で調査・検査する
- 発生後、速やかに、できるだけ広い対象者に検査する
接触者は健康観察を⾏う
- 最終接触日より14日間は健康観察期間として、他院への転院、多床室への移動などは控え、感染対策を徹底する。
- 健康観察期間中に退院を希望された場合は、退院先でも周囲の方とできるだけ接触しないような対策を指導する。
- 健康観察期間中にCOVID-19が疑われる症状が出現した場合は、核酸増幅検査等を実施する。
- 入院患者の接触者は、原則入院のまま健康観察を実施する
- 転棟・転院・退院は、1回目の検査で陰性であっても、健康観察を終了するまでは控える
注意:無症状者への抗原定性検査は推奨されていません
感染症の拡大防止に向け、C-CATでは下記5点を徹底指導して参ります。
(1)職員の手指衛生、健康観察

(2)PPEの適正使用

(3)ユニバーサルマスキング

(4)検査の強化(速く・広く・複数回)

(5)慎重な患者移動判断(病棟間・転院)

これらをいかに徹底し実践できるかがカギになる