丹沢大山保全計画の概要

掲載日:2020年4月1日

 

目次

 


 

 

1 計画策定の趣旨

丹沢山地は、神奈川県の北西部に位置し、その面積は約4万haです。この山地は、首都圏中枢の自然の砦であり、水源地帯ともいえる地域で、山容は男性的であり、神奈川県民はもとより、首都圏の多くの方々にも親しまれています。

特に、自然林でのブナやモミの生育やツキノワグマ、シカなどの大型動物の生息を初めとする生物相は丹沢の自然を特徴づけるものであり、また、随所に滝を形成する深い渓谷は丹沢の自然を一段と魅力あるものにしています。

しかし、近年、丹沢山地の生態系に大きな異変が起こり、広範囲のブナの立ち枯れ、林床植生とササの後退など、特に主稜線部のブナ帯における植生の劣化が目立ち始めました。

神奈川県では、これらの異変に科学的なメスを入れ、具体的な対策を探るために平成5年度から4ヶ年計画で丹沢大山自然環境総合調査を実施しました。その結果、丹沢山地の自然が豊かな多様性を持つことが改めて示された一方で、その多様性が急速に失われていることも明らかになりました。

このようなことから、丹沢山地の衰退している自然環境の保全及び再生を図り、かけがえのない自然を次の世代に引き継ぐために、自然環境管理に関する総合的な計画として、丹沢大山保全計画を策定しました。

 

 

 

2 計画の位置づけ

この計画は、「かながわ新総合計画21」並びに神奈川県環境基本条例に基づく「神奈川県環境基本計画」及び「かながわ新みどり計画」(みどり分野の個別計画)を踏まえて、丹沢大山の自然環境の保全と再生に関する施策を推進していくための実施計画として位置づけられています。

 

 

 

3 計画の対象地域

計画の対象とする地域は、丹沢大山国定公園区域及び県立丹沢大山自然公園区域(以下、これらの区域を「丹沢大山」と総称します。)とします。

なお、大型動物の生息空間の連続性の確保やその他貴重な自然環境の保全の観点から、その周辺地域も視野に入れた保全の取組みを行います。

 

 

 

4 将来展望と施策の方向

(1) 将来像

将来展望の期間:1999年度(H11)から21世紀半ばまでとします。

この計画では、丹沢大山の将来像を、「多様な生物を育む身近な大自然」とします。

「多様な生物を育む」について

生物多様性条約では、生物多様性を「すべての生物の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む」と定義しています。生物多様性は、人類の生存基盤である自然生態系を健全に保持し、生物資源の持続可能な利用を図っていくための基本的な要素として大変重要なものです。進行している自然環境の劣化に歯止めをかけ、多様な生物を育む丹沢大山を目指します。

「身近な大自然」について

丹沢大山は、都心から約50kmという首都圏の一角に位置していますが、自然林や沢の存在、大型動物の生息などに特徴づけられるように、豊かな自然が残されています。将来的にも、この自然が適切に保全され、魅力ある自然公園としての役割を担うことが期待されます。

 

 

(2) 計画の目標と施策の基本方向

この計画の目標は、丹沢大山の豊かな自然環境を次の世代に引き継ぐことをねらいとして、「丹沢大山の生物多様性の保全・再生」とします。

基本的には、次の方向で目標の実現を目指します。

1.ブナ林や林床植生等の保全

森林や林床植生は、大型動物や小動物の生息地としての重要な役割を担っています。

また、ブナやモミの原生林は丹沢大山の自然を最も特徴づける存在です。そこで、劣化が進んでいるブナ林等の森林や、林床植生等を保全・再生します。

2.大型動物個体群の保全

大型動物個体群の孤立化を防ぐために、その生息域である森林等を整備し、さらには、他山地へ繋がる生息域の連続性を確保します。特に、ニホンジカについては、種の存続、自然植生の保全及び農林業被害の防止の観点から、科学的な手法による個体群の管理を実施します。

3.希少動植物の保全

希少動植物の絶滅を防止するために、その生息・生育状況の把握と情報管理に取り組むとともに、保全手法について研究・実行します。

4.オーバーユース対策等

オーバーユースによるゴミやし尿等の対策、特別保護地区の指定の見直し等を実施し、生物多様性に富んだ魅力ある自然公園の維持や沢、尾根、山頂等の丹沢大山を特徴づける自然景観の保全を図ります。

 

 

(3) 施策を推進するにあたっての基本方針

この計画の施策を推進するにあたっての基本方針は、次のとおりとします。

1.科学的な自然環境の管理

各保全対策の実施後にその結果をモニタリングするなど、丹沢大山の自然環境を科学的に管理することによって、将来の世代との共有財産である「生物多様性」が維持できる空間として保全します。

2.「生物多様性」の原則による管理

野生生物の生息地、魅力的な自然公園、保水力を持った水源林及び木材生産の場としての丹沢大山の役割を踏まえつつ、「生物多様性の維持とその持続的な利用の可能性」という原則に基づいて、自然環境を管理していきます。

3. 県民と行政との連携

県民の自然保護意識が高まっていることを考慮し、また、自然環境を科学的に管理していくことについて、広く県民の理解を得るために、丹沢大山の自然環境を保全していくプロセスに多くの県民が参加する場面をつくります。

 

 

 

5 施策の展開(実行計画)

実行計画の期間:1999年度(H11)から2006年度(H18)までとします。

<主要施策>

この計画の目標である「丹沢大山の生物多様性の保全・再生」を実現するために、施策の基本方向に基づき、今後、2006年度までに、次の施策を主要施策として位置づけ、計画的に推進します。

ブナ林や林床植生等の保全

[1]ブナ林の保全・再生

保護柵の設置等により、高標高地を中心に広がっているブナ林の衰退を防止し、山岳地帯にふさわしい森林の保全・再生をめざします。

[2]林床植生の保全・再生

保護柵の設置等により、退行が著しいササ類や草本類の林床植生を保全・再生し、豊かな林床にします。

[3]登山道周辺の植生の回復

登山道周辺の崩壊地や裸地の補修、登山道の利用休止等により、退行している植生の回復に取り組みます。

[4]その他の森林の保全・再生

県民参加により、モミ、ウラジロモミ等をシカの採食から保護し、また、森林衰退域における植生の回復等に努めます。

大型動物個体群の保全

[5]ニホンジカ個体群の管理

ニホンジカの環境収容力調査、動態調査等を実施した上で、シカ管理手法を確立し、個体群を適正に管理します。

[6]大型動物個体群の孤立の解消

大型動物の生息域である森林等の連続性を確保することを趣旨とする「シカコリドー(*)・緑の回廊構想」を推進することにより、他山地との遺伝的な交流を促進し、ニホンジカ、カモシカ、ツキノワグマ等の大型動物個体群の孤立を解消します。

* シカコリドー…種や遺伝子の多様性を維持するため、各地域間での個体の行き来が容易にできるような移動経路を確保しようとするもので、丹沢の代表的な野生動物であるシカにちなんで名付けている。コリドーとは回廊という意味である。なお、「シカコリドー・緑の回廊構想」は、本県の「シカコリドー構想」と環境庁の「緑の回廊構想」を合せた言葉である。

希少動植物の保全

[7]希少動植物の保全

丹沢大山の希少動植物の絶滅を防止するため、その保全手法について研究・実行します。また、生息・生育状況の把握と情報管理に努めます。

オーバーユース対策等

[8]オーバーユースによるゴミやし尿等の対策

ゴミやし尿等の対策に取り組むとともに、キャンプ等による水質汚濁や渓流周辺の河原等の自然環境の荒廃の防止に努め、生物多様性に富んだ魅力ある自然公園を維持します。

[9]特別保護地区指定の見直しやその他の保全手法の検討・実施

丹沢大山国定公園の既設の特別保護地区以外の自然林、沢等について、特別保護地区指定や、その他の保全手法の検討及び実施に取り組みます。

[10]公園区域の拡大等の検討・実施

自然公園としてふさわしい丹沢大山周辺地域の、県立丹沢大山自然公園への編入や、県立自然公園の国定公園への編入の検討及び実施に取り組みます。

本文ここまで
県の重点施策
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