神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例案

掲載日:2018年2月27日

1 条例制定の背景

1 健康への悪影響

    たばこの煙には200種類以上の有害物質が含まれており、主流煙よりも副流煙(たばこの先から出る煙)に有害物質が多く含まれています。
    受動喫煙にさらされると、肺がん、心疾患、子どもの肺炎や気管支喘息、乳幼児の突然死症候群、低体重出生、周産期死亡などの危険性を高めるなどの健康への悪影響が生じることが、様々な研究成果によって科学的に明らかになっています。
    日本も含む世界約160か国が批准した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(以下、「枠組条約」という。)」では、「締約国は、たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていることを認識する」としており、枠組条約に基づくガイドラインでは、枠組条約が発効した5年後に当たる2010年2月までに、屋内の公共の場を禁煙とすることなどを求めています。
    また、健康増進法では受動喫煙防止措置をとる努力義務を課していますが、同法施行に伴う厚生労働省健康局長通知では「受動喫煙による健康への悪影響を排除するために」としており、受動喫煙による健康への悪影響があることを前提に、施設管理者に受動喫煙防止対策を求めています。
    このように、受動喫煙によって健康への悪影響があることについては、国際的にも国内的にもコンセンサスが得られており、また枠組条約では、各国政府に効果的な受動喫煙防止対策を実施することを求めています。

2 世界各国での受動喫煙防止対策の推進

    すでに世界各国において受動喫煙防止対策が進められており、例えばEU27か国のうち15か国、アメリカ合衆国の多くの州、また、香港、シンガポール、韓国、タイなどのアジア各国でも、公共の場における禁煙の措置が法制化されています。
    こうした喫煙規制を実施した諸外国(もしくは自治体)において、例えば心筋梗塞で病院に搬送される人の数が減るなど、急性の疾病(心筋梗塞、喘息発作など)が減少していることが報告されており、今後、健康への慢性の悪影響についても明らかになってくることが想定されます。

【図1】
受動喫煙による健康影響の表

健康への悪影響

出典:禁煙支援マニュアル(厚生労働省)

3 条例制定の必要性

    本県では、県民の3人に1人が「がん」で亡くなられる中で、がん克服のための総合対策として「がんへの挑戦・10か年戦略」を策定し、総合的ながん対策を推進しています。
    特に、がん発生の大きな要因とされているたばこ対策については、禁煙支援の推進、未成年者の喫煙防止対策、受動喫煙の防止の3本柱で、重点的に取り組んできました。
    しかし、わが国では、健康増進法第25条において、受動喫煙防止のための措置を講ずるよう定めていますが、これは、施設管理者に対して努力義務を課すのみであり、その実効性が確保されているとはいえないのが現状です。
    こうした中、県が平成19年10月に実施した「受動喫煙に関する施設調査」によると、飲食店や娯楽施設では受動喫煙防止対策を実施していない施設が6割にも上り、また、県民意識調査によると、飲食店や駅・バスターミナルで受動喫煙にあったとの回答が過半数を占め、健康増進法の施行から5年以上を経過した現在においても、まだまだ受動喫煙防止対策が進んでいない現状が明らかになりました。
    さらに、「受動喫煙防止対策に関する飲食店・宿泊施設意識調査」(平成20年10月実施)によると、受動喫煙防止対策をしていない飲食店の7割前後は「対策は必要ない」としており、事業者の選択だけに任せていたのでは、今後も受動喫煙防止対策の進展が必ずしも期待できないことが想定されます。
    さらに、県では、今までの様々な受動喫煙による健康への悪影響に関する研究について、改めて文献調査を行い確認したうえで、県の条例検討委員会に報告し、検討委員会としても、受動喫煙による健康への悪影響を認識し、条例で喫煙規制を行う必要があると結論付けたものです。
    このように、県では、現行の健康増進法の枠組みや喫煙者のマナーに期待するだけでは、県民が望むような受動喫煙を防止するための環境を整備することができないという認識の下で、この条例を制定しようとするものです。

【図2】 受動喫煙に関する県民意識調査(平成19年10月 神奈川県実施)
この1か月間に受動喫煙にあった場所のグラフ

調査H19

2 条例の概要

1 目的・定義・関係者の責務 (第1条~第6条)

目的

受動喫煙による県民の健康への悪影響が明らかであることにかんがみ、県民、保護者、事業者及び県の責務を明らかにするとともに、県民が自らの意思で受動喫煙を避けることができる環境の整備を促進し、未成年者を受動喫煙による健康への悪影響から保護するための措置を講ずることにより、受動喫煙による県民の健康への悪影響を未然に防止する。
用語の定義

受動喫煙とは ・・・
    室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること

公共的空間とは ・・・
    不特定又は多数の者が出入りすることができる室内又はこれに準ずる環境

公共的施設とは ・・・
    公共的空間を有する施設のうち、別表に掲げる施設

第1種施設とは ・・・
    特に受動喫煙による健康への悪影響を排除する必要がある施設

第2種施設とは ・・・
    受動喫煙による健康への悪影響を排除する必要がある施設

分煙とは ・・・
    第2種施設における公共的空間を、喫煙区域と非喫煙区域に分割すること

喫煙所とは ・・・
    専らたばこを吸う用途に供するための区域をいう。

関係者の責務

県民の責務は ・・・
    受動喫煙による健康への悪影響に関する理解を深めるとともに、 他人に受動喫煙をさせることのないよう努めることなど。

保護者の責務は ・・・
    監督保護に係る未成年者の健康に受動喫煙による悪影響が及ぶことを未然に防止するよう努めること。

事業者の責務は ・・・
    事業活動を行うに当たっては、受動喫煙による健康への悪影響を未然に防止するための環境の整備に取り組むよう努めることなど。

県の責務は ・・・
    県は、受動喫煙による県民の健康への悪影響を未然に防止するための環境の整備に関する総合的な施策を策定及び実施し、県民・事業者の自主的な取組を促進するため必要な支援を行うよう努めることなど。

2 禁止行為 (第7条)

何人も、非喫煙区域内においては、喫煙をしてはならない。

3 公共的施設における措置 (第8条)

第1種施設の施設管理者は、禁煙の措置を講じなければならない。

第2種施設の施設管理者は、禁煙又は分煙の措置を講じなければならない。

4 喫煙所の設置 (第9条)

施設管理者は、管理する公共的施設に喫煙所を設けることができる。

5 施設管理者の義務・保護者の義務 (第10条~14条)

施設管理者の義務

非喫煙区域へのたばこの煙の流出を防止するための措置を講じること、非喫煙区域に喫煙器具又は設備を設置してはならないこと、喫煙区域及び喫煙所に未成年者を立ち入らせないこと、非喫煙区域において喫煙を行っている者に対し喫煙の中止等を求めること、施設の入り口などに禁煙又は分煙等の表示を行うこと。
保護者の義務

監督保護に係る未成年者を、利用者として喫煙区域及び喫煙所に立ち入らせてはならないこと。

6 実効性の確保のための措置・罰則 (第15条~第18条、第22条)

立入調査等

知事は、施設管理者に対し、受動喫煙の防止に関する取組の実施状況について報告若しくは資料の提出を求め、又は職員に公共的施設に立ち入り、帳簿書類その他の物件を調査させ、若しくは関係人に質問させることができる。
指導及び勧告

知事は、施設管理者が条例の義務に違反していると認めるときは、当該施設管理者に対し、必要な措置を講ずべきことを指導し、又は勧告することができる。
公表

知事は、勧告に従わない施設管理者が管理する公共的施設の名称、違反の事実等を公表することができる。
命令

知事は、勧告を受けた施設管理者が当該勧告に従わないときは、当該施設管理者に対し、期限を定めて、当該勧告に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。
罰則

虚偽の報告や立入調査の拒否などをした者、知事の命令に違反した者等は、5万円以下の過料に処する。

非喫煙区域において喫煙をした者は、2万円以下の過料に処する。

7 専ら特定の者のみが利用することできる第2種施設 (第19条)

第2種施設のうち、専ら特定の者のみが利用することができる第2種施設であって、特定の者以外の者について受動喫煙が生ずるおそれがないものとして知事が認めるものについては、禁煙又は分煙の措置などの規制は適用しない。

8 特例第2種施設 (第20条)

第2種施設のうち、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項第1号から第7号までに掲げる営業の用に供する施設及び事業の用に供する床面積の合計が100平方メートル以下の飲食店の施設管理者は、第2種施設に準ずる措置を講ずるように努めなければならない。

9 施行期日・条例の見直し (附則第1、第4)

施行期日

この条例は、平成22年4月1日から施行する。
条例の見直し

施行日から起算して3年を経過するごとに、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。