農総研ニュース第3号

掲載日:2018年5月14日

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力ラシナの新品種「さがみグリーン」が誕生
当所では、神奈川県の特産品となる漬け物用カラシナの新品種「さがみグリーン」を育成しました。
カラシナはアブラナ科野菜の一種で、伊勢原市子易地区の「大山菜」をはじめ、タカナなど地方特有の品種が多数あり、ピリッとした辛味が特徴です。しかし「大山菜」をはじめとしてカラシナは、葉肉質が硬く、葉面に毛が多いため食感が劣るのが欠点でした。
そこで、当所では、昭和61年から葉肉質が軟らかく浅漬け向きで、しかもカラシナ特有の風味を失わない高品質な品種の育成を開始しました。母親には、辛味が強く特有の風味を持つ「大山菜」を用い、父親には、タカナの一種で寒さに強く、葉の柔らかい「晩成平茎大葉高菜(ばんせいひらくきおおばたかな)」を用いて、交雑育種(違った品種をかけ合わせて、子孫の中から良い株を選び出して新しい品種を育成する方法)を実施しました。その結果、このたび葉が極めて柔らかで、緑色が濃く、しかも葉の表面に毛のないなめらかな新品種を育成することができました。
この新品種は草姿が立性で収穫し易く作業性が良いこと、品種の特性が安定していることなど、これまでのカラシナにない良い面を持っております。
また平成7年秋に、県内漬け物業者に浅漬けの試作を依頼したところ、極めて好評でありました。
新しい品種は「さがみグリーン」と命名して、平成8年3月に品種登録の出願を行いました。
今後は「さがみグリーン」の漬け物が神奈川の特産品として大きく成長していくためには、品質の良い原料を長期間にわたって、安定的に供給していく必要があります。そのため、今後は肥料の施し方や病害虫防除などの栽培法の試験を実施する予定です。
(生物資源部)


桑葉を素材とした機能性食品の開発

本県の桑園は111ヘクタール(1995年)あり、蚕の飼料として利用されておりますが、近年のまゆ価格の低迷による飼育農家の減少等から、その面積は減少しつつあります。
桑葉を分析したところ、高等動物の神経伝達物質で、血圧降下作用があるγ-アミノ酪酸(GABA:ギャバ)という物質が、他の植物より多く含まれていることが分かりました。このGABAの含量を増加させることができれば、血圧降下をより期待できることになります。そこで桑葉をポリ袋に入れ、無酸素状態に処理すると、その含量を20倍近く増加させることができました。また、処理した桑葉を実験動物(遣伝的に高血圧になるネズミ)に食べさせたところ、高血圧ネズミの最低血圧を下げる効果があることが分かりました。
さらに、製茶機で乾燥して粉末にすると、鮮やかな緑色になり、うどんやアイスクリームなどの食品素材としても利用できることが分かりました。
桑葉には、GABA以外にも健康の維持・増進、成人病予防などに有効な物質の存在も期待され、栄養的にもすぐれています。これらは、特に害はなく、安全性も確認されています。これからは、桑葉を利用した多くの機能性食品の開発と、実用化が期侍されます。

(生物資源部)


本県育成のハナモモと遺伝資源の保存

サクラとともにハナモモの咲く季節を迎えています。
従来のハナモモは、枝が斜め上に伸びるために狭い場所に植えることは困難でした。また、コンパクトな樹形に維持管理することも容易ではありませんでした。そこで狭い場所にも植えられ、剪定しなくても一定の樹形を維持することができるほうき性で大輪八重咲きの4品種、「照手紅(てるてべに)」、「照手桃(てるてもも)」、「照手白(てるてしろ)」、「照手姫(てるてひめ)」を育成しました。
また、枝が垂れる小面積向きの樹形で、受粉のための樹を必要としないで、1本でも良く実の付く「照手水蜜(てるてすいみつ)」も育成しました。
これら5品種はそれぞれ品種登録され、一括して「照手シリーズ」と呼ばれており、都市の狭い空間や住宅事情にマッチした園芸品種として好評です。
当所ではハナモモ照手シリーズ5品種を中心に、既存の園芸品種や系統など約100品種・系統を遺伝資源として収集保存しておりますので、今後研究材料として利用し、効率的な育種方法についての試験を進めてまいります。

(生物資源部)


キャベツを寒害腐敗病から守る取り組み

三浦半島には1,150ヘクタール(平成6年)のキャベツ栽培面積があり、毎年5万トンが京浜市場、その他長野県から北海道まで幅広く出荷されています。特に、1月から2月を中心に収穫される早春キャベツは、柔らかく甘みに富み、他産地の追随を許さない人気を博しています。
生産上の問題点は、寒害を原因として発生する腐敗病に弱いことです。発生原因は冬期間、キャベツの葉が凍って組織が損傷を受けるためです。葉の凍結は、主として放射冷却と言って、葉の熱が夜間に天空に放出されるために冷却されて生じます。これまでの対策試験から、寒冷紗の浮き掛けや防霜ファンが腐敗病に対して防止効果の高いことが明らかになっています。
最近、アルギンオリゴ糖などキャベツ自身の耐凍性を高める資材が見つかりました。また生育中の降水量が少ない時には、低温になっても耐凍性が増して腐敗病の発生が少ないという関係もあります。寒冷紗や防霜ファンの設置には経費や労力がかかりますが、栽培されているキャベツ自身に耐凍性を人為的に高めることができるならば、腐敗病対策としては非常に実用性が高い技術になります。
このように、キャベツの腐敗病については多くの知見が得られていますので、これらを応用して、実用技術として完成させるための研究に鋭意取り組んでいます。

(三浦試験場)


<現地ルポ>
ネギの機械移植の普及状況

当所では平成6年に、簡易移植器による根探ネギの省力・低コスト移植技術体系を確立し、研究成果として発表しました。楽な姿勢で能率よくネギが移植できる作業方法として評判の高いこの技術の普及状況調査のため、平成8年3月に、三浦市南下浦町の農家へ行き、現地の声を聞いてきました。
訪問した農家は夏ネギを1ヘクタール栽培し、販売は仲間4戸とスーパーへ出荷しており、長所は収穫期間が長くて労力配分に好都合ということでした。現地の具体的な声としては、(1)ハウス内で連結紙筒(商品名:チェーンポット)で苗を育てるため、安定的に揃った苗ができる、(2)簡易移植器(商品名:ひっぱりくん)を使うと、移植作業が早く、楽にできる、(3)小さい苗を直立状態で植えられるので、曲がりネギが少ない、(4)根を切らずにポットごと植えるので、干ばつにも強い、などと好評でした。
当初、問題点として、1.ネギの軟白部が短い、2.小さい苗の移植後に除草労力がかかる、などが心配されましたが、この対策として、1.には、うね幅を広く取って、土寄せを十分行い、乾燥時には土崩れのないように畦立成形鎮圧機を使用する。2.には、管理機や除草剤を使用することによって解決できました。
なお、現在、県下のネギ栽培面積483ヘクタール(平成7年)の1から2割に簡易移植器の技術が普及していますが、農家の関心は高く、年々普及率は上がっています。

(取材、企画調整部)


< 新しい備品による試験研究 >
ICP質量分析装置及びICP発光分析装置を利用した土壌及び作物の栄養診断

「ICP質量分析装置」は作物や畑の土に含まれているカリウム、カルシウム、マグネシウムなどを迅速に測ることのできる装置です。また、「ICP発光分析装置」を使用すると、天然には微量にしか存在しない亜鉛、マンガンなどの作物の生育に欠くことのできない成分を精度良く測ることができます。当所ではこれらの装置を使って、安全で品質の良い農産物を生産するための肥料の施し方を研究しております。
今までの肥料の施し方は、極端な言い方をすると、多収穫のための研究が主でした。例えば、畑に施した肥料と野菜や穀物の収量の関係を調べて、収量の多くとれる施肥法を決めてきました。
もちろん、収量増加を目的とした施肥法でも、肥料の効き方を調べるために土の中の肥料分を測定したり、収穫物の品質もチェックしましたが、それは比較的簡単なものでした。
しかし、食べる量が十分に満たされるようになると、次には、おいしいもの、健康によいものなど、農産物の品質が重要になります。さらに環境に優しい肥料の使い方も求められるようになってきました。栄養分に富んだおいしい野菜や果物を収穫するためには適時的確な施肥技術が必要です。作物が必要とする時に過不足なく肥料や水分を与えてやらなければなりません。
また作物に吸収されないで残った肥料は地下に浸透して地下水を汚染する危険もありますが、そのようなことのないようにしなければなりません。そのためには、土の中での肥料分の動きや作物の栄養状態を詳しく知る必要があります。言いかえると、精度の高い土壌診断技術と作物の栄養診断技術が必要です。「lCP分析装置」はそれらの技術開発に威力を発揮しています。

(農業環境部)


<お知らせ>
ひさかきの木平塚市の保全樹木に指定される
当所のほぼ中央にこんもりと繁る「ひさかき」の木が、平成7年10月31日付けで、平塚市の保全樹木に指定されました。平塚市の「緑化の推進および緑の保全条令」に基づくもので、第78番目の指定になります。
ご覧のような樹形の見事な木で、農総研の建設前は御神木としてとても大切にされ、お稲荷さんも奉ってあったそうです。このため、地元の皆さんの強い要望もあって、そのまま残されることになったという由緒深い木です。
今後は、市民共有の財産として保存されると共に、農総研の歩みを静かに見守ってくれることになる、貴重な木です。
樹齢:約150年
樹高:5メートル
幹周:4.8メートル
枝葉面積:113平方メートル
※最新園芸大辞典(誠文堂新光社)などによると、原産は日本、中国、韓国、台湾、インド、マレーシア。
ツバキ科の常緑の小高木で、葉には通常鋸歯がある。世界には約百種があり主として南アジアに分布する。日本では宮城県以南に自然分布し、古くから庭園に植栽されてきた。病害や虫害も少く防火樹としての効果もあるので、公園や工場緑化などにも多く使われる。
(管埋部)
本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
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