農総研ニュース第5号

掲載日:2018年5月14日

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アミノ酸(γ-アミノ酪酸)を多く含んだ新しい茶の製造開発

神奈川県の茶の生産は、県西部の小田原・足柄地域が中心で、栽培面積は295ヘクタールです。ここ数年、二番茶の摘み取り面積と生産量の減少が続いています。このような中、当所の津久井試験場では、二番茶の付加価値を高め、県内茶業の活性化を図るために、有効成分の含量を高めた新しい茶の研究開発を進めてきました。
その結果、γ-アミノ酪酸(GABA:ギャバ)を多く含んだ新しい茶を開発することに成功しました。γ-アミノ酩酸は、ヒトなどの脳の神経伝達物質として存在しており、血圧の上昇を抑える作用のあることが知られています(*)。
このγ-アミノ酪酸を多く含んだ茶としては、農林水産省野菜・茶業試験場が開発した「ギャバロン茶」があります。ギャバロン茶は、生葉を窒素ガス中で5から10数時間処理し、製造します。一方、当所で開発した製造方法は、生葉を機械に入れ、かき混ぜながら赤外線を30から50分間照射するもので、これによって葉の中の酵素の活性が高められ、γ-アミノ酪酸が増加します(赤外線照射でγ-アミノ酪酸を増加させる方法は、特許申請中です:特願平8-15556)。またこの方法は、加温作用のある赤外線を照射するため、濡れた茶葉でも製造できます。
この新しい茶には、次のような特徴があります。
1.γ-アミノ酪酸は茶葉1g中、一番茶で2.6mg前後、二番茶では1.3mg前後あり、ギャバロン茶とほぼ同じです。緑茶やウーロン茶と比較すると、1から24倍多く含まれています。
2.うまみの成分であるテアニンは、緑茶と同等に含まれています。
3.二日酔いに効果があるとされるアラニンは、緑茶のから3倍多く含まれています。
4.色は紅茶やウーロン茶のように赤みを帯びています。
飲み方としては、緑茶のように急須に入れ、湯を注いで飲むほか、やや濃いめに湯出しした後、冷蔵庫で冷やしてもおいしいです。なお、このお茶は、(株)神奈川県農協茶業センターで販売しています。

※この新しい茶では、動物実験、臨床試験等は行っていません。

(津久井試験場)

新しい茶と緑茶

新しい茶(左)と緑茶

 

遊離アミノ酸組成比
遊離アミノ酸組成比

 
<研究の動き>
「野菜作の作目別・作型別経済性標準指標一覧(1995年改定版)」発行

経済性標準指標とは、標準より少し上位の生産技術を持っている農家が、どの位の生産コスト(農薬、肥料、資材費など)をかけると、いくら位の売り上げ(生産量×単価)が期待できるか、ということを指標(ものさし)化したものです。この指標は、野菜の種類ごとに現地調査と所内の経済性試験を組み合わせて作りました。
このものさしを自分の経営に当てはめると自己診断ができます。またいろいろの作目・作型を組み合わせて経営設計にも活用できます。
当所では、昭和45年に県内で栽培されている代表的な野菜について、「野菜作の作目別・作型別経済性指標一覧」を発表しましたが、指標は発表以来、社会経済情勢の変化・栽培技術の革新に合わせ、これまで5回の改訂を行い、普及・行政その他に幅広く利用されてきました。今回の改訂では新たに12の栽培タイプを追加し、35作目、76作型について指標化を行いました。
また最近は、きつい農作業労働を軽減し、省力化することが望まれていますので、これまで調査してきた作業別の労働強度を付表にしました。この指標が、都市と共存する生産性の高い神奈川農業実現のために役立てられることを期待しています。

(生産技術部)
ダイコン作の省力・軽労働化をめざして

本県は秋冬ダイコンの全国的な主産地で、平成6年度の栽培面積は1,460ヘクタール、生産量は117,400トンにのぼります。そのうちの50%を生産している三浦地域の播種様式は、べたがけ資材の活用で、1ヶ所3から4粒播きの1回間引きが標準になっています。間引きはつらい作業ですが、生産の安定のためには欠くことのできない重要なものです。
そこで、間引き作業が速くできる種子の播き方と、播種機について検討してきました。その結果、3から4粒の種子を1ヶ所に3cm間隔で直線に播くと、間引き作業がし易いことと、この播き方には真空式播種機が適していることがわかりました。
この播き方をして、バッテリー式作業車に乗って間引き作業をすると、慣行の半分に省力・軽労働化できるので、現地への普及導入が期待されます。
現在、最も労力のかかるダイコンの洗浄・選別作業の省力化を図るため、洗浄能力が良く、選別が自動化できる新しい装置の開発に引き続き取り組んでいます。

(生産技術部)


農地からの肥料成分の溶け出し防止への取り組み

農地への肥料のやりすぎは土壌の環境を悪くします。特に、肥料成分の中でも水に溶けやすい硝酸態窒素は、雨が降ると下層に浸透して地下水を汚すことが心配されています。
当所では、農地からの硝酸態窒素等の溶け出し防止技術を検討するため、土壌中の浸透水に含まれる肥料成分を調査できる「ライシメーター」を利用しています。当所の畑地用ライシメーターは1基の面積が4.8平方メートルで、深さ1mの範囲に多腐植質黒ボク土(黒土)、淡色黒ポク土(赤土)、灰色低地土の3種類の土壌が詰めてあります。土壌を通った浸透水は、地下室にあるライシメーター下部の排水口から自動的に取れるようになっています。浸透水量と浸透水中に含まれる無機イオン濃度を分析すると、肥料成分の溶け出し量が測定できます。
このライシメーターを用いて、1.高度化成肥料、有機質肥料、緩効性肥料などの肥料の種類と硝酸態窒素の溶け出しとの関係、2.土壌の種類と硝酸態窒素の溶け出しとの関係、3.堆肥やその施し方と硝酸態窒素の溶け出しとの関係などを明らかにし、環境への悪影響を減らすための施肥技術を研究しています。

(農業環境部)


<現地ルポ>
パソコンによる土壌診断システムの利用状況

農作物が健全に生育するためには、根を張り、養分を吸収する土壌が健全でなければなりません。このため、県では昭和42年から土壌診断事業を開始しました。年間1万件に及ぶ分析が行われ、その数は年々増加しています。
当所では、地域農業改良普及センター等関連機関の協力を得て、昭和60年にパソコンによる土壌診断システムを完成させました。これは土壌分析値を入力すると、自動的に土壌の健康状態がチェックされ、処方せんが書かれ、記録されるものです。このシステムは、県内すべての土壌診断実施施設で利用されており、平成7年度実績は17,668件(内訳:地域農業改良普及センター54%、神奈川県農協土壌診断センター27%、市町村・農協19%)でした。
農協土壌診断センター(伊勢原市・グリーンピアくみあい園芸センター内)を訪ねると、女性職員2人が土壌分析作業中でした。ここは1日最大40件の土壌診断能力があり、農家から、診断を待つ土壌が持ち込まれていました。
土壌診断システムについて聞くと、1.処方せんを作る労力が省略でき、2.診断結果を迅速に返却でき、3.データベースとして記録できるので、効率的な診断が図られると好評でした。このシステムが信頼され、農業生産安定のために活用されていることを再確認することができました。

(取材:企画調整部)


<お知らせ>
気象観測点が県内9ヶ所に増えました


農林水産情報センターでは、昨年から県下4ヶ所(青丸印)の気象データをパソコン通信で提供してきましたが、本年、観測点を5ヶ所(赤丸印)増やしました。新しい観測点の気象データは、本年中には利用いただけるように調整しております。まだ、県全体をカバーするには至っておりませんが、よりきめ細かい気象情報を県民の皆様にお届けできるようにしていく予定です。

(経営情報部)

気象観測点

 気象観測点


海外技術研修員が先端技術習得に励む


諸外国の研修員を対象に、実践専門研修を実施し、その国の経済や技術の発展に協力することを目的とし て、海外技術研修員の受け入れを行っています。昨年は、2か国から2名の技術研修員を受け入れ、組織培養技術や土壌肥料科学について研修を実施しました。
本年も中国とネパールから1名ずつ、女性の技術研修員を受け入れて、生物資源部で先端技術研修を実施しています。中国・安徽省農業科学院からの研修生は、野菜について、遺伝子検定やバイテクによる新品種育成手法の習得に励んでいます。また、ネパール・王立ゴダワリ植物研究所からの研修生は、特産の油料作物や花きについて、組織培養法とその応用として大量増殖技術の習得に励んでいます。
研修期間は、平成8年9月から平成9年3月までの7ヶ月間ですが、研修を通じて異文化の相互理解を深め、国際親善にも寄与することができるよう、関係者一同暖かく見守っています。

(生物資源部)


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