トマトの土壌抽出液診断

掲載日:2018年3月9日

はじめに

作期の長い作物は施肥を分けて、基肥と追肥(場合によっては複数回)を行うことになります。基肥時に大量の肥料を入れると作物が根いたみなどの障害や肥料の流亡・気散が起こるからです。このように、施肥を分けて行うことは作物の生育阻害や肥料の利用効率の低下を防ぐ技術なのです。

特に、施設トマトの促成長期栽培(12~6・7月まで)では作期が長いため収量の確保には追肥が重要となります。当然、追肥量が少ない場合には減収となりますが、逆に、追肥量が過剰になるとすじ果の増加や根の障害の発生、更には土壌病害の増長などが起こります。

従来、追肥の方法として葉色や樹勢による診断が行われてきましたが、これは経験的な訓練が必要であり、体得が困難でした。

最近になって肥料成分の簡易分析方法が発達してきたため、生育中の土やトマト葉の軸部分(葉柄)の搾汁液の中に溶けている肥料成分濃度の計測が簡単に行えるようになりました。こうした肥料成分濃度の減少程度を測定することによりリアルタイムに追肥の診断ができるようになりました。

このたび、施設トマトの促成長期栽培(12段取り程度)について、生土容積抽出法を用いて、土壌抽出液中の硝酸イオンとカリウムイオンの濃度により、窒素とカリの追肥の基準値を作りました。

生土容積抽出法とは土に含まれる肥料成分を簡易に測定する方法です。

キュウリやバラ、スイートピーのようにかん水量の多い作物では、土壌中の水分を先端が素焼きの器具で吸引して採集できますが、トマトなどのようにかん水量の少ない作物では取ることが困難です。

こうした水分の少ない土から水分を取る方法として、土に水を加えてろ過した液(土壌抽出液)を用いる生土容積抽出法があります。

 

方法

1 5カ所以上の地点から土を表面2~3cmを除いて、15cm深まで採集する。

2 5mmのふるいを通す(このとき、たい肥などのかたまりがあったら取り除く)。

3 ふるった生土を混合して、200mL容量程度の広口の容器に純水2(100mL)に対して生土1(50mL)を加え栓をする。

4 20回(1秒間に1回程度の間隔)転倒混合後、ろ紙でろ過する。

5 このろ液(土壌抽出液)を簡易測定して診断値をえる。


追肥後の土壌抽出液中の肥料濃度

基肥時に牛ふんたい肥2t/10aと窒素とカリを20kg/10aに入れ、窒素とカリの追肥量を4,8,12g/平方メートル(少,中,多肥区)に変えて追肥を3回に分けて栽培してみました。栽培中の施肥量と土から取った土壌抽出液中の肥料成分の測定結果が図1と2です。

肥料の窒素とカリに対して硝酸イオンとカリウムイオンが密接な関係があるのですが、追肥を示す矢印(↓)の後では硝酸イオンとカリウムイオンの濃度が上がる傾向がわかります。

現地圃場で農家の慣行に対して20%増減して追肥を行った場合でも、図3と4のように、窒素とカリの施肥量が多い区ほど、土の中の硝酸イオンとカリウムイオン濃度が高くなり、施肥量間差をあらわすことがわかりました。



窒素の追肥と土壌の硝酸濃度窒素の追肥と土壌のカリ濃度土壌の硝酸施肥反応土壌のカリ施肥反応

 

現地圃場の位置間差

現地1500平方メートル温室内を4地点に区切ってそれぞれの濃度を調べたところ、硝酸イオンでは平均261(149~426)mg/L(図5)、カリウムイオンでは平均27(20~37)mg/L(図6)となりました。

このため、硝酸イオンは100mg/L、カリウムイオンは10mg/L程度地点間差を考慮することが必要であるとわかりました。



硝酸濃度地点間差カリ濃度地点間差

促成長期栽培トマトのリアルタイム診断には生土容積抽出法を用います。その基準値は
窒素の追肥の場合は硝酸イオンを
2月までは250~350mg/Lに維持
3月以降は200~300mg/Lに維持
カリの追肥の場合はカリウムイオンを
栽培期間中20~30mg/Lに維持

 

注意事項

1 この基準値は赤土(淡色黒ボク土)の結果のため、異なる土ではうまくいかない場合があります。例えば水田の跡地に客土しないまま施設を建てた場合などは赤土と性質が違うからです。

2 生土容積抽出法で転倒混合する回数は守ってください。硝酸やカリウムイオンの溶け出る量はこの転倒混合回数で決まるからです。回数が少ないと溶け出る量が減りますが多いと逆に増加します。

3 転倒混合後の上清を用いた場合は簡易分析で異常値が出る場合があり、ろ紙を使ってろ過を行ってください。測定値は土の粘土粒子などに影響されることがあります。

4 基準値の維持は栽培終了の1ヶ月程度前までとし、それ以降はかん水のみに切り替えてください。過度の施肥は無駄になりますし、地下水など汚染につながってしまいます。

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