環境にやさしい施肥技術と今後の方向

掲載日:2018年3月6日

1.なぜ環境への配慮が必要か

平成11年に施行された食料・農業・農村基本法(新農業基本法)の施策に、自然循環機能の維持増進を図るため、農薬及び肥料の適正な使用の確保、家畜排泄物等の有効利用による地力の維持増進等の推進が掲げられています。 これらの背景には化学合成肥料や農薬の過度の使用や家畜ふん堆肥の不適切な使用が環境に負荷を与えているという問題があるといえます。たとえば、地下水の硝酸態窒素濃度が水質の環境基準(10mg/L)を超過している事例がみられていますが、この原因として農耕地に施用した化学肥料や家畜ふん堆肥が懸念されています。 ここでは、肥料成分の中の窒素を中心に、環境に負荷を与えない施肥方法と今後の課題について紹介します。

2.環境にやさしい施肥法

農耕地に施用される窒素肥料は、有機態と無機態に大別されますが、植物は主として無機態窒素を吸収します。(1)式に示すように、土壌中の有機態窒素は微生物により無機化され、アンモニア態窒素(NH4-N)を経て硝酸態窒素(NO3-N)に変化(硝化作用という)します。 有機態N→NH4-N→NO3-N・・・・(1)

ここで重要なことは、NH4-Nは土壌に吸着して移動し難いが、NO3-Nは水溶性のため降雨により下方に移動し易いことです。

肥料による環境負荷を軽減するには、効率的な施肥により無駄な肥料を少なくすることにあります。化学肥料の多くは速効性肥料であり、硝化作用で生成するNO3-Nは降雨によって下方に流れ(溶脱という)、地下水汚染の要因となり得ます。窒素の溶脱を防ぐには土壌中のNO3-Nの存在量を少なくしておく必要があります。このため、肥料を何回かに分けて施用する分施が行われますが、施肥に要する労力が大変となります。そこで、肥効調節型肥料の利用が一つの手段となります。

3.肥効調節型肥料の利用

肥効調節型肥料は成分が徐々に効いてくるため、一度に多量施用しても濃度障害が起きず、さらに、土壌中のNO3-Nの存在量が少ないため、降雨による溶脱も防ぐことができます。なお、肥効調節型肥料は、その性質によって被覆肥料、緩効性窒素肥料、硝化抑制材入り肥料の3種類に分けられています。 この中の被覆肥料は、肥料粒の表面を物理的に被覆(コーティング)することによって、肥料成分の溶出をコントロールしたものですが、様々な種類があり、溶出タイプについても、単純溶出タイプと、シグモイドタイプに区分され、後者は一定の溶出抑制期間の後に溶出が開始するものを指しています。 被覆肥料の利用はその溶出パターンをよく理解し、作物の生育パターンに応じて上手に被覆肥料を使うと、施肥量の削減や環境への負荷の軽減につながります。しかし、作物の生育パターンと一致しない資材では、収穫後まで溶出が継続すること等、環境負荷軽減に反することになります。

4.有機物の上手な使い方

家畜糞堆肥に代表される有機物は土作りに不可欠な資材であり、積極的な利用が推進されてきました。また、家畜糞堆肥以外にも未利用の有機物があり、国内の環境問題を考えるとこれらの資材の有効利用も不可欠であります。しかし、有機物は窒素を含んでおり、多量の施用は農耕地に窒素が多量に入ることを意味しています。 有機物単独で作物を栽培しようとすると化学肥料に比べて窒素の肥効が劣るため、資材の施用量が多くなります。このようにして有機物を連用すると土壌の可給態窒素(地力窒素という)量が増加しますが、このことは土壌の窒素供給量が多くなることを意味しています。 図1は10年間処理を継続した土壌について、作土層を20cmと想定した10アール当たりの地力窒素発現量を示していますが、牛ふん堆肥連用区では年間30kgと推定されます。また、時期別にみると夏期に多く、6月~9月に年間の半分が放出すると考えられます。このため、有機物の施用においてはその養分を考慮して施用量を決定する必要があるとともに、有機物に過度に依存した施肥体系では夏期の圃場管理が重要となり、とくに降水量の多い梅雨期の裸地状態は避けたいものです。さらに、家畜ふん排泄物の野積み対策等適正な有機物資材の管理が必要となります。


図1 推定年間無機化窒素量

5.今後の土壌診断の方向

環境保全型農業における土壌診断の方向は以下に示すような体系が考えられます(図2)。 作物が吸収可能な窒素には、(1)土壌残存窒素、(2)地力窒素、(3)有機物窒素の3種類があり、土壌残存窒素は、前作の栽培後に残存する窒素量を、地力窒素は土壌から有効化する窒素量を、有機物窒素は施用する堆肥等の有機物から有効化する窒素量を示しています。ここで、個々の窒素量が計算できると、施肥基準量からこの植物が吸収可能な窒素量を差し引いた量が、実際の施肥量になります。 さらに、作物が生育中は土壌溶液診断や栄養診断のリアルタイム診断を行い、適期の施肥を行うことにより、施肥量の低減や過剰な施肥を防止することが可能となります。しかし、現段階ではこれらの窒素量の測定には一部を除いて多くの手間と時間を要します。このため、より簡易な分析法の開発とともに、その結果に基づいた施肥支援プログラムの開発が必要とされています。


図2 環境保全型農業における土壌診断の方向
図3 土壌調査地点の1つ

図3 土壌調査地点の一つ

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